性転換【ⅩⅡ】
一話
【性転換ⅩⅡ】
【一話】
「見るなあああぁぁー!!」
「だって漏れちゃううぅぅ!」
「俺が! 俺が出してやるからお前は触るんじゃないぞ!! いいか!!」
「キヤァー! わ! 私の手で触らないでええぇー!」
「うぬぬぬぬ… なら! これならどうだあぁ!」
「あんっ!」
「こらあ! 俺の顔で悶えるんじゃあねえぇー!」
「で… でるうぅぅ……」
「俺の顔でいやらしいこと言うなああー!」
「あんっ!」
「はぁはぁはぁはぁはぁ……」
「何て吐息してんだ!」
「だっ… だってぇ… 」
「よし。 終ったか!? 終ったら振るからな!」
「ああんっ! へ… へんな気持ち… ふ、拭かなくてもいいの?」
「頼むから俺の声で嫌らしい言葉を出すんじゃねえ! 拭かないんだよ男は!」
そして……
「だ! ダメだあぁ! お前の小便見たら俺までしたくなってきた! 我慢出来ねえ!」
「ちょ! ちょっと! 何言い出すのよお! やめてよぉ!」
「漏れちまう! おいどうすんだ! おい!」
「解ったわ! アンタは目を閉じてて。 全部私が準備するから言う通りにして!」
「ところで女って何処から出るんだ!?」
「や! やめてえぇー! 見ないでえぇー!」
「うっ! で! でるうぅ! 小便の調節が出来ねぇ! この身体にはブレーキはねえのか!」
「いいから黙ってしてよ!」
身体が入れ替わって思案に暮れていた二人のうち、愛は突然尿意を感じた。 だが、女である愛は隼人がやってくれると言ったものの、それを断ったがために隼人は辺りを見回して棒切れを二本見つけ、愛のペニスに手を伸ばし二本の棒を箸のように使って支え愛に小便をさせた。 愛はその間、左を向いて目を閉じて棒に挟まれるペニスに違和感を覚えながら感じたことの無い放尿の感覚に切なげな声を出し隼人を困惑させた。
そして数分後、今度は愛の身体になっている隼人が小便を催し、目を閉じて愛にパンティーを膝まで下ろして貰いそのまま斜屈んで用足しをした。 そして隼人の真ん前に居る愛にティシュで陰部を拭いてもらったがティシューで拭かれる感覚に隼人は感じたことの無い違和感を覚えた。
一時間前……
「あれなんだろ……」
「ああ!?」
「ほら、電柱から何かがブラ下がってる…」
「おいおい! ありゃ電柱から切れた電線だよ! やべえ近づくな!」
「でも何で…?」
「何でもいいから近づくなって!」
「とにかく誰かに知らせなきゃ! 大変なことになっちゃう!」
「知らせるったって… おい! 愛! そっち危ない! おい!」
「こっちから行った方が近道でしょ! 隼人も早く来て!」
「愛! 危ねえから遠回りするんだ! 愛!」
その時、一羽のカラスが空から切れた電線の根元に舞い降りた。 そして近づく愛を見て咄嗟ににカラスは逃げるように飛び立った。 その瞬間、切れた電線はその先端を愛目掛けて飛んできた。
「キヤアアァァーー!!」
「愛ーーーーーーー!!」
「うわああああーー!!」
電線の先端が愛の頭部に辺った瞬間、愛は悲鳴を上げ助けようと手を伸ばした隼人も凄まじい電気ショックに絶叫した。 そして二人は感電しその場に倒れ意識を失った。 百ボルトの農業の用に備え付けられた電気ケーブルだった。
そして一時間、誰も通らぬ過疎地の農道。 二人は奇跡的に命をとり止めた。 だが、先に意識を取り戻した隼人は身体に激しい違和感を覚えた。
「俺… 死んだのか…… 何で横に俺が居るんだ?」
車道に仰向けになっていた隼人は上半身を起こして辺りを見回すと、パチパチとフラッシュする切れた電線を数メートル先に見た。
「おい! 俺えー! しっかりしろ! こんなとこで死んで堪るか! しっかりしろ!」
隼人はガクガク震える両足に力を込めて立ち上がると、横たわる自分の身体の両脇を抱えて後ろに引き摺って移動した。
「やっぱり死んでるのか俺は! 死んでなきゃ自分を見れるはずがねえ… そう言えば愛は何処に!? 愛はどうなったんだ!? 愛いいぃぃぃーーーー!!」
隼人は片膝を路面に付いて動かない自分を覗き込んで見当たらない愛を辺りを見回して叫んだ。
その瞬間、隼人は凄まじい違和感に襲われ違和感の正体に気付いた。
「何で俺の声が愛になってるんだ!? そ! そんな馬鹿な!! 夢? 夢だこれは夢に違いない! こんなことがあるはずがない!」
自分の声が愛になっていることに気付いた隼人はゆっくりと眼下を見下ろした。
「夢だ! あっははははは♪ 夢を見てるんだ♪ ばっかだな~♪ 俺は♪」
白いブラウスにヒダスカートを履き紺色のハイソックスを履いた自分の姿に隼人は手を叩いて大笑いして辺りをヨタヨタとフラついた。
「そうか~ 感電して夢を見てるに違いない♪ それじゃ、こうしたらどうだ! それえぇー! あっははは♪ ピンク色のパンティー履いてるじゃん♪」
手を叩いて一人で大笑いする隼人は自分の履いているスカートを両手でフワリと捲くり上げた。
その瞬間、突然隼人の行動を制止する大声が耳に伝わった。
「やめて!! 何してるの!! 私の身体に!! えっ!? 今、私何て!? え!? えっ…… 私の身体にって……」
目を覚ました隼人は傍で大笑いする自分に咄嗟に声を放った後、自分の姿を見回し声を裏返した。 そしてそんな隼人を目を大きく見開いて呆然と立ち尽くす愛が居た。
「何で私が隼人になってるの!? 何で私の目の前に私がいるのお!! そんな馬鹿なことって… ……… 死んだの? 私、もしかして死んだの!?」
真っ青な顔して自分の両手を見回すと、傍で呆然と立ち尽くして自分を見入る自分にクビを回して視線を合わせた。
自分と目が合った瞬間、愛は瞬きを止め息を静めた。
「お前… 愛? 愛なのか!? 愛なんだろう!? 俺だよ隼人だ… 解るか。 俺達… 生きてたんだ… よくわかんねえけどとにかく生きてる…」
自分の声で自分に語り掛ける自分ではない自分に驚愕し声を失った愛は恐怖に顔を強張らせた。
「隼人ーーー!! うわあぁーーーん!!」
愛は自分達に起きている訳の解らないことに怯え大粒の涙をポロポロと零して目の前にいる自分(はやと)の身体にしがみ付いて泣いた。
隼人は自分の身体に泣き付かれ抱きしめられる強烈な違和感の中で、眼下の小さな胸の膨らみに感じる押し付け感に恐れ戦いた。 そして胸に埋まる自分の頭部を右手で撫でると言う摩訶不思議な感触に瞬きを忘れた。
そして三十分ほどして心を穏やかにした愛に隼人は一つの仮説を立てて聞かせると、愛は電柱にブラ下がる電線を見据え走り出そうとした。 もう一度感電すれば元に戻るかも知れないと叫んだ愛に隼人は今度こそ死ぬと絶叫した。
隼人の絶叫に足がすくんで立ち止まった愛はスポーツ刈りした頭を両手で抱え「アハ… アハハハハハ…」と、力ない笑い声を出してその場に跪いて身体をうずくまらせた。
性転換【ⅩⅡ】