ひまわりと太陽

ひまわりと太陽

プロローグ

真夏の暑い日差しを一心に浴び、太陽に向かって伸びるベランダの小さな鉢植えで咲くヒマワリ。
ポツリポツリと水滴が花びらに落ちる。

春が終わりを告げた6月の初夏、先日亡くなった妻の葬儀が執り行われ夜から続く雨の中、静かに葬儀が終わった。


静かな住宅街に救急車のサイレンが響く。
季節外れの雷雨が街中を荒々しく降り注いでいた。

走行する車のフロントガラスを激しく雨が叩き付け、ワイパーで払い除ける。
不意に鳴る携帯の着信に気づき慌てて車を停め出ると、妻が緊急搬送された先の医療センターからであった。
つい先程亡くなった事を知らせる電話だった。




通夜の参列者一人一人に頭を下げ、膝に乗せた拳に力を込める。

みな、目を泣き腫らし口にハンカチを当てまた一人一人去っていく。


妻を担当した医者に呼ばれ急いで病院に駆け付けると、海(カイ)と咲良(サクラ)が暗くなった待ち合わせの椅子にクッタリとした様子で座っていた。
俺は慌てて走り寄り2人の体を抱き上げ妻の眠る霊安室に向かった。



遺影の中の可奈(カナ)はいつもの明るい笑顔を見せる。
可奈が俺の後ろからひょっこり現れて死んでないよと姿を見せ普段と変わらず、
仕事から帰った俺にお疲れさまと言って得意料理のかぼちゃカレーをテーブルに置く姿が浮かび、可奈の柩に手を当て、木の窓から覗く蒼白い顔を眺める。
「なあ、可奈・・・起きてくれよ・・・お前の作ったかぼちゃカレー食いてぇんだ、頼むよ!!起きろよ!死んだなんて嘘だろ?!なあ!!」
「可奈・・・・か・・・な・・・・・・・・・・・うっ・・・くっ・・・!うっ・・。」

棺ごと可奈を抱きしめるように腕を回し、畳に溢れ出した涙が落ちた。



霊安室のベッドに横たわる可奈の体に冷たさはまだなく、手や足に痛々しい傷があるだけで、顔にかかった白い布を取り、頬に触れ前髪を撫でる。
生傷以外は生きている頃となんら変わらない妻に自然と涙が溢れ落ち、子供達は俺の体から離れて母親のベッドに寄り、体をゆすり、
「ママ・・・・いたいの?・・・まだネンネ?ママー・・・」と返答のない母親に話しかけ、俺は床に膝をつき口に手を当て泣き声を押し殺した。

出入り口のドアが開き、屈強(クッキョウ)な体躯(タイク)の男達が俺達に近寄りスーツの内ポケットから手帳を取り出し開いて見せてきた。
見ればそれが警察手帳だということがすぐに分かり、ゆっくりと立ち上がるとその男達に向き直った。
「東京警察署のものです、奥様の事故の件で2、3お聞きしたいことが・・・・」
「妻はどうして事故に遭ったんですか?!」
俺の言葉を聞いた男達は顔を見合わせてドアを開き、出るように促した。

俺は海と咲良を抱き上げて廊下に出る。
「待合の椅子で伺っても?」
「はい」と短く答え、長く感じる廊下をゆっくりと歩いて行く。



気が付けば朝になっておりいつの間にか眠っていたのか、柩に付けていた頬に寝痕が着き肩にはブランケットが掛けられていた。
静かに眠ったままの可奈に小さくおはようと呟き傍らに寝る2人にそのブランケットをゆっくり掛け、立ち上がり物音を立てないよう注意して、部屋を出ていき、洗面所に入り顔を水道の水で洗い歯を磨き、台所に向かった。

ひまわりと太陽

ひまわりと太陽

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-05-30

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted