奪還

パンダといえばあの白黒はっきりさせた熊をみんな想像するわけですが、これには名前を奪われた一族、いや一属?の悲しい秘話があるのです。

だからいつもそんな始まりなんだ!

調査員は腕章および顔写真入りの従事者証を付け、作業服でお伺いしておりますと、爽やかな笑顔で説明をされ、目の前と同じ笑顔で映っている従事者証を見せられた。
怪しいどう見ても怪しい。だって霊感調査員なんて今時そんな詐欺に引っかかるわけないじゃん。
しかも相手が悪いよ。この美少女天才詐欺師軍団を壊滅させた、流浪の天才パンダ飼育員、『にこにこ熊猫新聞』主筆の私に何を言う。ところが調査員、薄ら笑いを浮かべながら「パンダの水子に祟られていますよ。この霊障除けのパンダのぬいぐるみを置いてきますから、一週間何事もなければお金を払ってください。」と言いながら懐から出してきたパンダのぬいぐるみを私に向かってデスクの真ん中に置いた。そして、こちらが唖然としている間に体を出口に向けさっさ部屋から出て行った。

どういうことだ

あからさまに怪しい。いや怪しいくあろうとしている。だってパンダのぬいぐるみって言ってもレッサーバンダだぜ。
すぐに気を取り直し、窓から下を覗くと調度件の調査員がビルから出たところだった。私はすぐに尾行することを決意した。
路地を曲がったところで突然後頭部の衝撃に気づく間もなく気を失った。気が付けばどこかの地下室だった。
逆光に浮かび上がるシルエット。
「お、おまえは!美少女天才詐欺師軍団の小島春菜!コジハル!」
「総選挙で忙しいはずだと安心していたのに・・・」
「あんなのはお遊びさ、私の真の目的は日本中にいるジャイアントパンダを誘拐し中国の奥地に送り返してやることさ。行きがけの駄賃に身代金は頂くけどね。」
「それと私と何の関係があるというんだ!組織を壊滅させたことを恨んでいるなら、それこそ逆恨みだ」
「組織は壊滅なんかしてないよ。そうみせかけただけ。その方が動きやすいからね。そして、あんたを捕えた理由は逆恨みなんかじゃない。にこにこ熊猫新聞主筆は仮の姿その正体は日本パンダ保護協会名誉会長黒柳徹子直属の調査機関-通称「徹子の部屋」-所属のエージェント、大熊猫ひろし君。そうだろ?(冷笑)」
「ど、どうしてそれを・・・」
「我々の情報網を甘く見てもらっては困る。」
「ひとつ君に尋ねたいことがあってね。わざわざ手の込んだことをして君にご足労願ったわけだ。」
「何も応えんぞ!拷問なんて無駄だからな!」
「さてどうかな」
冷笑を浮かべながらコジハルはインターフォンで何かを伝えていた。
しばらくすると部下らしき男がジャイアントパンダのこどもを連れてきた。
「その子をどうするつもりだ!」私は思わず叫んだ。
「こうするのさ!」
いきなりコジハルがパンダと戯れはじめた。コロコロところがるパンダ。コジハルの足によちよちと掴まるパンダ。
「か、かわいい」愛くるしいその姿を見ていると監禁されていることも命の危険も忘れ、心の底から癒される思いがした。
拷問ならわかるが癒してどうする。まったく意味がわからん。
しばらくしてコジハルが「どうだ?君もこの子と遊んでみないか?パンダと遊ぶなんて国内はもとより中国でも飼育員以外は素手で触れないぞ」と誘ってきた。
「ゴクリ」と自分の唾液がのどを通る音が大音量に聞こえた。
『混ざりたい!あの戯れに混ざりたい!』頭蓋のどこかから木霊するように響いてくるこの言葉に抗いながら、「断る!」と言い放った。
それからも間断なくつづくパンダとの戯れ。バランスボールに乗っかるパンダ、そのままひっくりかえってしまうパンダ、ボールを抱えたまま仰向けにねころがるパンダ。

『た、たまらん』
自白剤を注入されたり、電気ショックを与えれたりする方がどれほど楽なことか。エージエントになったからには拷問も覚悟していた。
しかしなんだ、この拷問は。もっとまともな拷問をしてくれ!それがれっきとした悪党のすることだろう。』
私の心は遂に折れた。
「答えるどんな質問でも答える!一体何が聞きたいんだ?」
「とうとう答える気になったか。質問はただ一つ、おまえたち徹子の部屋でもごく一部のものしかしらないという、パンダの本質に係わる秘密だ。」
「だめだ!それだけは答えれない。」
「・・・・、続けろ」
更に続けられる彼らの拷問にとうとう耐えられず私は降参した。
「・・・わかった、答える」


「レッサーパンダからパンダの名称を奪った書付はどこにある?」

奪還

パンダ。
ジャイアントパンダをみんな想像するけど、もともとパンダはレッサーパンダのことだった。
ジャイアントパンダが発見されたとき、これをジャイアントパンダと名付けたため、パンダをレッサー(Lesser)を付けてレッサーパンダと。

奪還

  • 小説
  • 掌編
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-05-28

Copyrighted
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