ラヴ・キューブ~同姓にならなくても~第2話
例の如く同性愛表現注意です。
大事な事だから二度言います。
運動会まであと10日ごろになった。
みんな練習に燃えているが、私は恋に燃えている。
どのくらいかと言うと、練習を放り出して優と一緒にいたいくらい。
でもそんなことをしたら確実にみんなに怒られそうなので控えている。
ただ息抜きの時には確実に優と話せるから別に無理に放り出す必要は無い。
まあ、麻美に邪魔されないようにしないといけないのが難なんだけどね。
と思ってる今も確実に妨害されてるわけで、
「なんで優がここにいるの。」
「急に来てそのセリフはおかしいと思うよ。どうせまともな理由なんてないだろう?」
この通り二人の口喧嘩が始まった。
崎斗に止めてもらおうにも、崎斗のクラスは違うので来る保証はない。
という事は私が止めるしかない。
「二人ともちょっと落ち着いてよ。」
「そんな事言われても、こいつが五月蝿いからこいつを何とかしてくれないとできないな。」
「そっちが黙ればいいのに!」
「君が言えた事じゃないだろう。」
どうやって止めればいいんだろうか。
こんな二人の喧嘩を止められる崎斗は凄いと思う。
とりあえす二人を引き離した方が良さそうだ。
「優、ちょっといい?」
そう言って、私は優を連れて行こうとしたけど、
「裕那さんはあたしのとなりにいた方が良いでしょ。こんな人なんかより。」
「女子が大好きな女子が言えたことじゃないね。」
「男子が好きな男子は消え去った方が良いの。」
そのうち優は男子じゃなくて私のことが好きになるよって言いたいけど、この二人だけは私が優が好きであることを知らない。
こんなタイミングでいうのはいくらなんでも問題ある気がしたので、何も言わなかった。
それにしても、二人で協力しようと思わないのかな?
私は崎斗と協力して、優と一緒にいようとするのに。
でも協力はしてほしくないのが本音だけどね。
私は優と付き合いたいから、一緒にいることが多いようにしてる。
「とりあえず裕那、女子好きなのから避難しようか。」
不意の優の発言に私は赤面して立ち止まった。
頑張って声を絞り出した。
「え、あ、う、うん、そ、そうだね。」
やはり麻美が止めようとする。
「裕那さん!あたしよりそっちがいいの?」
好きだからしょうがないものね。
もちろんそんなことは言えない。
私は優に付いていくことにした。
「裕那を持っていくな~!」
それにしても、何で麻美は私と話す時はさんをつけるのに、他の人と話す時は私がいてもさんを付けないのだろう。
そんなことを考えながら、変わらずに優についていった。
私は今優と二人きりだ。
さっきのは優が私を連れて来てほしいと崎斗からメールが来たそうだけど、誰もいない。
例の如くと言えばいいのだろうか、私と優が二人きりになるために仕込んだことのようだ。
目的は私と優が話をするだけだろう。
ただ、崎斗は不意を突いてすることがあるので、油断できない。
それにしても今は授業中の時間なのに、体育館の裏で待ってると言われて、あっさりと信じる優はどういう神経してるんだろう。
「はぁ、またこれか…何回目なんだろう…?」
優は少し期待してた分がっかりしてる。
でも私は優といられるだけでいい気がする。
幸い今は昼休み前で授業は運動会の練習だけだ。
別に私の運動能力を考えると、個人種目は問題ない。
学年種目は…まだできない。
クラス対抗二人三脚リレーなんだけど、組み合わせが決まってない。
しかも後に分かったことだけど、一組だけがどうしても異性同士のペアになるのでそこが抉れている。
いくらなんでもそれだけはしたくないと私以外のみんなが言っている。
とは言え、決まらないと全員練習ができない。
「え?ちょっと裕那これ見てくれる?」
優に見せられたのは、さっきのメール。
どうやら凄い下の所に何か書いてあるようだ。
別名、崎斗の常套手段に使う場所と呼ばれるところだ。
「えっと…このまま二人でいたら二人三脚リレーのペアになれるからそのままで居ろ?」
「一体どこでこんな情報を…ってことはこのままでは確実にここで…。」
すると、私の後ろから体育委員の金沢さんの声がした。
分かってると思うけど崎斗のことじゃないよ。
「あっ!芹沢くんと笹浪さん!二人ともここにいたのか~。じゃあ二人がペアでいいよね?」
「ちょっと待って、どうしてそうなるの。」
「だって、男子は芹沢くんしかいないし、女子は大半は決まってるし。」
優は小さい声で何か言ってるようだけどは金沢さんは気にしてない。
「で、笹浪さんは芹沢くんと一緒で良いよね?こうして二人でいるわけだし。」
「もちろん!それに…。」
私は金沢さんの耳元で理由を言った。
「そういえばそうだったね!もともと悩むことでもなかったね。」
さっき言ったとおり私が優のことが好きなのは優と麻美だけ知らない。
逆に言うとそれ以外のみんなは知っている。
優に教えない理由はもちろん告白するのは自分からしたいから。
麻美に教えない理由は教えるといやな予感しかしないから。
そのうち感づかれるんじゃないって思うけど、思いのほか二人とも気づきそうにない。
「ちょっと崎斗の所に行ってくる。」
突然優が言い出して金沢さんは驚いた。
確実にさっきのメールが原因だろう。
もちろん私も付いていこう。
もう昼休みの時間になるころだ。
「崎斗、あれどういうつもりなんだい?」
崎斗に会ってすぐ優はこう言った。が、あっさりと返した。
「あ~あれか、結果はちゃんと裕那と組むことになったか?」
崎斗は私にちょっと微笑んだ。
計画通りといったところだろうか。
「なんでこんなことをしたんだい?」
「いづれ分かることだ。まあ、感づかないのもすごいよな。な、裕那。」
「そ、そうだね。」
本音はいい加減気づいてほしいけど、そう簡単に気づいてくれない。
でもこれからは二人三脚の練習ということだけで一緒にいられるからいろいろできる。
例えば、こっそりと二人だけで作戦会議したり…特訓とかしてみたり…。
考えるだけで楽しみだ。
「とりあえず練習なんかしたらどうだ?もちろんふ・た・り・だ・けで。」
崎斗の言い方は明らかに二人だけというところだけを強調しているのがわかる。
もちろん私はうれしさと恥ずかしさが入り混じった感じで、優は何で二人だけを強調したか分かってない。
「優、食べたら後で一緒に練習しよ?」
「できればこのまま崎斗と一緒にいたいかな。もう少し質問したい。」
私の誘いを優はあっさりと断った。
「裕那、ちょっと耳を貸してくれないか?いい方法を思いついた。」
崎斗に言われて耳を貸すと面白そうな方法を教えてくれた。
「そういうことだ。別に今日じゃなくていいんだろ?」
私は頷いてその場を後にした。
私が教室に戻ると、金子が話しかけてきた。
「お疲れ~!優とペアになったんだって?」
「うん、崎斗がうまくはめた感じなんだけどね。」
「それってどういうこと?」
私はさっきまでの話を金子に話した。
「あ~なるほどね、多分それ体育委員の子が教えたんじゃない?」
「え?どうやって?」
「分からないけど…細かい指示は金沢のことだから授業中に送ったんじゃない?」
つまりこういうこと。
どこかで崎斗がクラス対抗二人三脚リレーのペアが決まってないことを知ってて、今日決めることを知っていた。
それで私と優をわざと二人きりで離して、その間にペアを決める。
そうすると、決まらないのは私と優の二人だけになるだろうから崎斗が体育委員に体育館裏に向かうように指示する。
その結果、私と優がペアになるということだ。
野球部一器用な崎斗だからこそできるのではと思う。
「ところで裕那、麻美がどこにいるか知っている?さっきから見ないけど。」
「そういえばいないね。」
金子に言われて気が付いたけど、麻美がいない。
呼び出すのは崎斗以外考えられないけど、優と麻美を同じ所にいるのは喧嘩が始まるだけ。
考えてみるとさっき崎斗に言われたことを思い出した。
『優と麻美をこっちでなんとかするから、この後に教室で体育委員がどの種目をメインに練習するかクラスで話し合うはずだ。そこでクラス対抗二人三脚リレーがしたいって言えば全員認めるだろうし、あまり練習してないのと優と一緒にいられるからっていえばより確実にそれをメインに練習するだろうな。』
崎斗に言われたとおりなら、今は麻美が崎斗に言われてどこかに行ってるところだ。
…それにしても、こんなに器用な小学校からの友達がいたなんて思ってなかったけどね。
すると、崎斗の言うとおりに体育委員が来た。
「えーっと、今回は今後どの練習をメインにするか、話し合おうと思うけど、何をメインにする?」
体育委員の金沢さんが相変わらずのペースで話す。
私は崎斗の言うとおりにした。
「クラス対抗二人三脚リレーの練習をメインにしたいです。殆ど練習してないし、それに個人的な事だけど優と一緒にいられるから…。」
「そういえば、裕那はそうなってるんだよね。他にないよね?」
誰一人として意見は出さないので、あっさり通った。
というのも何度も言うけど、私が優の事が好きなのは優と麻美以外全員知ってるからみんな私のためにやろう!という感じになっている。
「じゃあこれで大丈夫だね。女子はあたしがやって、男子は佐藤がやればいいから、優と裕那のことは裕那に任せていい?」
「うん。」
私は素直に頷いた。
放課後、今日は運動会の練習は無いので、真っ直ぐ部活に向かった。
行ってみると何かを先輩方と同級生が話し合っていた。
私に気づくと先輩方があわてて片付けた。
「何をしてたのですか?」
「別に何もしてないよ!!うん。」
明らかに何かを隠しているようだけど流石に問い詰めたりなんかはしたくないので、聞かないでおいた。
「そうそう、優とはどんな感じ?」
「う~ん、あまり進展はないけど…あ、二人三脚のペアになったよ。」
素直に答えると、先輩方は何かを話し合っている。
「へぇ~そうなんだ。遂にそこまで来たんだ。」
「自然とそうなったんですけどね。優はため息をついていたし。」
これが計画されたことである事なんて言い辛い。
まあ、その内わかることかもしれないけどね。
先輩方はまたこっそりと話し合っているのが見える。
こちらから見える時点でこっそりというには語弊があるかもしれないけどね。
そのまま部活は始まった。
因みに金子は今日は来てないようだ。
ランニング等の基礎練習だからってわけじゃないと思うけど。
部活が終わって自分の部屋に戻る。
リナリアの花はまだ咲いている。
片思いは長く続くと思うと少し悲しい。でも私の恋に気が付いてほしい。
そんな思いが巡っている。
「故意は一瞬、恋は一生…なんてね。」
私は一人部屋の中でそう呟いた。
明日からは二人三脚リレーの練習がある。つまり優と二人きりの時間が容易にできる。
でも焦りは禁物だ。落ち着いていこう。
時がなんとかしてくれるわけじゃないからできるときにやらないとだめだね。
落ち着いて、真っ直ぐ優と向き合う。
それが私の最善の行動のはず。
ラヴ・キューブ~同姓にならなくても~第2話
思いの他かなり早くできました・・・
当初は6月以降になるんじゃないかと思いました。