a room

行く先もない部屋のドアは開かれないままで
鍵を失くした心の部屋には、何かの欠片が残ってた

遠くから届く誰かの声に怯えて
くだらない声に耳寄せては捉まえられないでいた

部屋の隅っこで一人震えてた

窓一つ超えたら突き刺すような外の世界がある
そして非科学の恐怖がぬくもりを奪う

気分を切り替えようと部屋の模様替えとか
意気込んで無理にでもしてみようとするけど
疲れて途中で頓挫してただ呆然とする

行き場を無くした憧れだけが
ただ部屋の中を行ったり来たりしていた

暗闇の奥から、ときめきが
透明な空気になって押し寄せてくるのがわかる

ラジオから流れた浮遊感のある歌が耳に残る
MDに録音するタイミングさえ掴めないまま……

コンポの前に座り込んですがるように聴いた
テクノなあの歌のボーカルがすさんだ心を浸食する

やるせない想いを綴ろうと
目が疲れることさえ無視して
パソコンの画面を食らいつくようにスクロールした

ガラクタの中で一日を過ごし、眠る
時々襲ってくる、皿の割れる音に怯えて

本のなにげない言葉がやけに気になる
テレビから流れるCMが恨めしい

最近眠れないなあ、動悸がする
毎日のように夜をラジオのそばで更かしたりする

ラジオから流れるニュースだけが
暗闇のベッドの上に横たわる僕の耳に届く
この震える手をどう伸ばせばいい

抱えてる問題を紙に書き出してみるけど
あれ、どうにも解決できないぞ?

泣いた、泣いた、泣いた
切なくて、怖くて、でもどこか愛おしくて

行きたい場所のリストだけが机の上に残って
人混みに紛れれば紛れるほど
その影で心にトゲが突き刺さるようで

失った空気のにおいを取り戻したくて

ただ闇の中にいた。闇の中でなお、生きていた……
どうしようもない不安の中、
それから訪れる破滅も知らないまま……
長い長い極夜が訪れようとしていることでさえ……

ただ、今の自分から言えることは
心の中にある扉を開けて、扉を開けて
常識を捨てて、全ての罠を断罪して
目の前の(リアル)と自分の心の声だけを信じて
いつか気づけるときが来るだろう

いつの日か夜明けの中に飛び込むことを信じて……

a room

■(Date Unknown)

a room

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-05-27

Copyrighted
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