これは俺の知ってるもみじじゃない! 第三話<頼みごと>
「そーいえば今年も応援来てくれるだろ?誠人。」
「ん?あぁ、もうそんな時期か。」
今は7月。もうすぐ新が所属している野球部で一番大きな大会。いわゆる夏(なつ)大(たい)と呼ばれる全国高校野球大会の県予選が始まるのだ。うちの高校はそこまで強くない。でも今年は新が1番をつけるのだ。
「んじゃあ日付が決まったら教えてくれよ。絶対行くからよ!」
「あ、あとさ……お願いがあるんだけど。」
「珍しいじゃん。新がお願いなんて。」
そうなのだ。新がお願いなんて珍しすぎて聞き逃しそうになるくらいだ。
「お前の妹も応援に連れてきてくれないかな。」
「えー?私だって陸上があるんだよ?いくらおにぃのお願いでもそれは厳しいって……」
ですよねー。わかってましたよさすがに。でもここで引き下がるほど俺は弱くない。
「でもな、もしかしたらお前の好きな人がそこでできるかもしれないじゃないか。今は陸上部男子の市川先輩のことが憧れかもしれないけど相手のエースに憧れえるかもしれないだろ?」
「あのさ?おにぃ……」
嫌な予感しかしないのは俺だけか?
「エースって何?」
小鳥遊誠人。小鳥遊紅葉の爆弾発言により撃墜。
「……というわけだ。」
とりあえずこのまま俺は新に報告した。紅葉が陸上部とかがあるからいけるかどうかは分からない。そんでもって野球のルールおよび専門用語はまったくもってわからない。わかってたのは俺が少年野球でやっていたポジションであるキャッチャーのことだけだった。
「でもでも、応援だけは連れてこれるようにしてくれよ?ホント、マジで、頼むよ?」
「わかったわかった……でも期待するなよ?」
紅葉side
「俺の友達の新ってやつのためにそいつの応援一緒に来てくれないか?」
私は困った。いくらおにぃのお願いでもそれはどうしようもできないから。
「えー?私だって陸上があるんだよ?いくらおにぃのお願いでもそれは厳しいって……」
本当に陸上部の練習とかもしかしたら記録会とかも入ってくるかもしれない。おにぃが私の記録会とか練習の時に来てくれるのは大歓迎なんだけど。行くのはさすがに……
「まぁそうだよなーさすがに。わかった。新にもそう言っとくよ。」
「ご、ごめんね?おにぃ。」
「紅葉が謝ることじゃないよ。」
おにぃは私の頭に手をおいて撫でてくれる。
「まぁ近いうちにまた練習の時にスポーツドリンク差し入れに行くからな。」
「やったぁっ!!!」
なんか私簡単に機嫌とられてない!?
一人自分の部屋に戻る。新君のことは小学校の時から知っている。だって唯一おにぃが私が大好きなスポーツをやっていてその時の相棒だから。おにぃがキャッチャーで新君がピッチャーとかいう守備位置だったのだ。それ以来だから新君がどれくらいすごい人なのかが見てみたいって言う気持ちもあるけど、今の私は陸上って言う大切なものがある。これだけは誰にも譲れない。
次の練習前のミーティング。
「えーっと野球部の大会の日は私たちは応援に行きまーす!」
『やったぁぁぁぁぁ!』
なんでこうなっちゃうかなぁぁぁぁぁぁっ!?
これは俺の知ってるもみじじゃない! 第三話<頼みごと>