新しい風

新しい風

がむしゃらに 歩いていた

悲しみも 楽しさも
全部見えないふりをして


それでいいと思っていた


幸せになるためだったら
なんだってできた


転んでも 歩いた

しんどくて 立ち止まりそうになっても
歩いた


ずっとずっと 歩き続けた


目の前には 咲くことを忘れた
桜の木があった


どれだけ近づこうとしても
触れられない 時の止まった桜


あの桜を 咲かせないといけなかった


幸せにならないと
私はわたしではなくなってしまう


けれど


どれだけ手を伸ばしても 届かない


泣きたかった


でもそれは許されないから
たた歩き続けた


そんな苦しみのなかで
ふと誰かが私の手をつかんだ


けがだらけの体を
泣きはらした顔を



みっともない私ごと 抱き締めてくれた


その時 まだはるかにある桜の木が
そぁっと風に揺れた気がした

新しい風

新しい風

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-05-24

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