ぱすてる 1
Prologue
"君が死んだ"
ケータイの電話口」から、たしかに私は聞いた。
「匠が死んだよ…。」
「うそ…。」
きっと私のどこかに、君という支えがあったんだ。
それが今、おとをたてて
一筋に崩れ落ちた。クロが私の心をかきむしる。
「――――っ」
ブチッ、ツーツー…
電話は切った。だって晃、何か言おうとするから。
ソレを聞いたらきっと、
私は現実から逃げられなくなる。
怖い。
走り出した私の足。
どこへゆくかなんてないんだ。
ただ、君に会いたい
空にはパステル。
地には碧。
1話―音無い雨―
"自由人"
仁(めぐみ)に言われた。
そうかな??
仁の言い分
「晃(あきら)は絶対、柚姫(ゆずき)の事好きじゃん?
なのに分かってて思わせぶりすぎる!!
それじゃぁ、晃がみじめだよ」
って。
別によくない?
晃にこくられたわけじゃないんだもん。
突然素っ気なくなる方可愛そう…だと、思う。
「…だと、思う。」
って付けたのは、
私には未だ知らない感情だから。
好き
って何??仁がすき、晃もすき、
それと晃の私への好きって別モンなのか。
「ちぃーっす!よっす!柚姫ぃっっ!」
テンション高っ。
福留 晃(ふくとめ あきら)
15歳、熊山高校1年
「うん、ぉはよ…。」
私、芹尾 柚姫(せりお ゆずき)
15歳、熊山高校1年
「え、柚姫冷たっ!そんだけ?」
私の机に手をかけながら言う晃を、
「ちょっと、どいて、じゃーま。」
畝川 仁(せがわ めぐみ)
16歳、熊山高校1年
が蹴散らした。
「柚、合コン行こォ!!」
え…?合コン、ですか?
「はぁっ?合コ…」
といいかけた晃を仁はギロッと睨みつけ、
私に笑顔を向けた。
「でも、あたし行ったこと無いんだよね。」
自信なさげな私を無視すると、
「よしっ、じゃあメンバー決定―♪」
と、廊下へ出て行った。
え、ちょ、仁――――?!
「…行くのか?合コン。」
「うん、みたいだね。」
これが始まりだった――――。
「熊高1年、大東あゆみです。」
「同じく、熊高1年細川優那でーす。」
「熊山高校1年、桑田あみなって言います。」
皆キラキラしてる。
私、ほんと場違いだったんじゃないかな?
はずかしい。
「熊高1年の畝川仁です。」
あ、私の番だ。
「えっと…、私立熊山学院、高等部1年、芹尾柚姫です…。」
皆が一斉に引いた…。
しまった詳しすぎた…。
馬鹿馬鹿馬鹿、帰りたい。
「えと、ね。
男子群のじこしょーかいいきまーす、はは。」
空気シケさせてスイマセンでした。
「北央高3年の、黒川真澄だよ―。」
「北央3年、相田みつぐ、よ・ろ・し・くネ――――!」
キャラ濃すぎるでしょ。
「北央3年、速水竜朗だよォ。」
「ほくおーサン年、福留匠。」
めんどくさいって顔に書いてある。
福留…?あれ、晃と同じ名字だ。
「最後、北央3年、星京矢です。」
皆が盛り上がり始めた頃、
ウザがってる顔の匠君。
私もなにげあんまり楽しくなかった。
「ねぇ、匠君」
私が声をかけると、ダルそうに私を見た。
「弟いますか?」
意外にもその質問に食いついた。
「晃のこと?」
「はい!やっぱりだ!顔似てるなぁって!」
「あれ、君柚姫ちゃん?」
「え、あ。はい。」
「あ、タメでいいよ。
そっかぁ、君かぁ!!」
テンションの上がってきた匠君を見て
笑ってしまった。
「晃、君の話ばっかするんだよね。ウザいくらい。」
「私もよく、晃から"兄貴"の話きいてて!」
一端話し出すと、止まらないくらい話は尽きなかった。
冷たい顔の匠君は本当は弟思いで、
本当は楽しそうに会話してくれる、
いい人だと思った。
「んじゃ、そろそろケー番交換して帰ろ?!」
皆一斉にケータイを開く。
私にとって晃とお父さん以外の男子のアドレスは
初めてだった。
「もう遅いし、俺ら家までおくるよ」
京矢の提案で2人一組で帰ることになった。
「いや、あたし家遠いから、ひとりで帰れるよ。」
私がそう言って、帰ろうとしたとき、
「まって、家そっちなら俺も同じ方向だからおくる。」
「え、ありがと…。」
相田みつぐ君…だよね。
「そんじゃ、ばいばーいっ」
みつぐ君がおっきく皆に手を振った。
「今日あんま話さなかったね?、俺ら。」
「そだねー、メールいつでも待ってるよ。」
「うん、俺も。」
静かになった路地に私のくつの音が鳴る。
沈黙。
「家、ほんと遠いから、みつぐ君家近くなったら帰っていいよ。」
「いや、最後までおくらせて…。」
大人な言葉が静かに響く。
2りっきりで、しかも会話無くて、突然大人な発言されて、
相手がこんなカッコいい人なら、女子は落ちそう。
どうしようはずかしくなってきた。
「みつぐ君って今日の合コンで誰きになってた?」
あはっ、とみつぐ君は笑って
「柚姫ちゃん★」
とか言う。
「そんなアイドルみたいな返事いいから?」
私もつられて笑う。
「え?ほんとほんと!まじだってw」
「嘘だぁー!」
「いや、だってもう、あの自己紹介されたら
インパクト大すぎて気になっちゃうでしょ??!」
「ヒドっ!だって合コン初めて参加したんだもん!」
ザアアアアアアアアアアアアッッ
「きゃあっ」
「うわっっ」
イキナリの豪雨。唖然として立ち止まった私の手を引いて
「走れっ!」と駆けだしたみつぐ君。
「あ!うん」とあどけなく返事をして走り出す。
雨のなかバシャバシャと音が鳴り、
笑いが漏れた。
2りとも傘がないせいでズブヌレ。
「みつぐ君、ありがとここまで送ってくれて。ハイ傘。」
「あ、サンキュ。」
「みつぐ君、家どっち?」
「あっち」と、私の家の向こうを指した。
「私より家とおいんだね。」
「うん、だから言ったでしょ?最後までおくるって。」
ばいばいっ、と言って家に入った。
あ、そうだタオルも貸してあげなきゃだった!
急いでタオルをかかえて玄関をでる。
「え?」
みつぐ君は元来た道を戻っていた。
「みつぐ君ってやっぱ家こっちじゃないじゃん。」
「あっ、えっと・・・」
あせってみつぐ君が言い訳を考えようとした。
そんなみつぐ君にタオルを押しつけ
「ほんといいのに、私ひとりでかえれるよ?」
と言って家に戻ろうとした。
「柚姫ちゃん、タオルと傘、かえしにまたくるね」
「え?!いーよそんなくらいでここまでこなくて。」
「何かを口実にしなきゃあえない距離だからこそ
がんばってるんだよ?」
んじゃ、と笑って背を向いた。
"何かを口実にしなきゃあえない距離だからこそがんばってるんだよ?"
その言葉がマワル。
ドキドキと鼓動が波打つ。
言われ慣れないセリフだからドキドキしてるの?
"んじゃ"と言ったみつぐ君の口調が頭に残った。
雨が音無く降っている。
いや、わたしにはそう感じただけだと思う。
2話へ続く
ぱすてる 1
すっごい長文になります。
てか、まだまだこの話長いです。
次回から恋愛要素が濃くなっていく予定です。
私の脳内ではすでに完結してる話なんですけど、
自分的に大好きな小説で、←自ら言っちゃう。
このぱすてるを書くために星空文庫に入ったといっても
過言じゃないです!!!
次回も是非呼んでいただけたら幸いです。
―キサラ―