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ー・・・私、人の心が読めるんです。

そんなことを言えるはずもない。

この能力のせいでいつも損していた。

でも、あなたにあって

    いやなものではない
             そう気づいたのー・・・・

1.mindocolor

『茜ちゃんとは一緒に居たくないー・・・』

ピピピピ  ピピピピ

部屋の中に目覚ましの音が鳴り響く。
時刻は6:40。
茜はベットから下りて制服に着替えリビングへ向かう。

星山高校2年佐々谷茜(ささやあかね)
学力は普通の方。
運動も普通
スタイルも普通
何もかもが普通。

でも・・・・唯一人と違うことは
 私には”人の心が読める”ということだ。

このことは誰も知らない。
このことを誰かに言ったところで誰も信じない。
それに、私にはそんなことを言う友達もいないからだ。

茜は朝食をとった後艶のある黒いロングヘアーをブラシで整えバックを手に取ると、
ローファーをはいて外に出た。

数十分歩いて校舎に入る。
上靴に履き替えクラスまで行き席に着いた。
「さ、佐々谷さん。数学のノート今日まで提出の・・出してもらえるかな・・。」
声をかけてきたのは学級委員長の、川嶋美砂(かわしまみすな)だった。
「あ、うん。」
一言だけ添えてノートを渡した。
「あ・・ありがとう。」
『佐々谷さん恐い・・。』

あ、今の。
川嶋さんの心の声・・。
仕方ないじゃん、話すこともないんだし。
まあそう思われてもいいけど。

昔からだ。みんな『恐い』って思ってる。
あの人もそうだったー・・・・

       □■□■□
「茜ちゃんー、今日一緒に帰ろぉ♪」
日南(ひゅな)は私の唯一の友達だった。
中学2年生のとき初めて同じクラスになってそれから2週間。
席が近くて毎日話しかけてくれて2週間で仲良くなった。
「うん。」
「こらー、スマイルスマイル!」
日南は冗談ぽく言った。
「え・・喜んでるんだけどな・・・」
「あはは!これだからみんなに誤解されちゃうんだよ~」
日南は笑っていった。
『私は茜ちゃんのそんなところが気に入ったんだ。』
日南の心の声が聞こえた。

・・・・。ありがとう。日南。

「ありがとう。」

それから3ヶ月。私たちはもっと仲良くなった。
だから、打ち明けようとしたんだ。

私の秘密を。
心が見えるということを。

茜は日南との帰り道、「話があるんだけどいい?」というと
「うん。何?」
と日南は優しく笑っていった。

「あのね・・・」  


  ー私・・・心が見えるの・・・。


「あはは。嘘だぁ~」
どうしよう。
ここで”嘘”といっても良い。でも・・・
「本当なの。」
「・・・本当に?」
「うん。」
「・・・そっか。」
日南はさっきと同じ優しい笑顔を見せた。
『気持ち悪い・・。』
『茜ちゃんとは一緒に居たくない。』

「え?」
どこからか声が聞こえた。
これは・・・日南の心の声・・・?

「ぁ・・・」

日南は茜の異変に気づいたのか、声を漏らした。
心が読まれたと気がついたのだろう。

「「・・・・。」」
2人は黙る。
そして、先に口を開いたのは日南だった。
「・・・ごめん。」
日南は茜と目を合わせず、そっけなく言った。
「・・・。」
このごめんは・・・なんのごめん・・?
茜は思った。

その次の日から、日南は茜を避けるようになった。
声をかけようとしてもすぐいなくなる。
毎日・・・。

       
       □■□■□

信用した、信頼した人に秘密を明かして避けられるくらいなら、
信頼する人を作らないほうがいい。
秘密を明かさなければいい。
誰ともかかわらずに。

周りを見ても、皆人と固まっている。
「友達」と思っているからだろう。
でも絶対に違う。
友情は意外ともろい。

ガタンッ

不意に聞こえた音先を見ると、先ほど声をかけてきた美砂が、膝を床につけて倒れていた。
周りにはノートが散らばっていた。
「ちょっと、邪魔なんだけど。」
「あ~ぁ。ノート汚れたらどうしてくれんの。」
美砂の周りに女の子が囲むように立ち、次々と心配などではない言葉を発する。

「ご・・・ごめんなさい・・・。」
美砂は涙目になって小さな声で言った。
「ちょっと嫌だ、泣かないでよ?」
「うちらがいじめてるみたいじゃーん。」
「・・・」
美砂は真青な顔をして黙り込んだ。
「うちらは友達なんだから、ね?」
女の子がそういうと、「・・うん。」と小さな声で美砂は言う。

ほら。簡単に”友達”と口にするけど、
友情なんか初めからないでしょ?
あなた達は、
人間は、残酷だね。
心が黒くて、黒くて。
真っ黒で、真っ黒すぎて

狂う。

2.明光

「ねえ川嶋さん、宿題やってないんだけど写させて?」
昼休み、女の子が美砂に言った。
「でも・・自分でやらないと・・。」
「良いよね?友達なんだから」
「・・・・・うん。」
美砂は顔を真青にしてゆっくりとノートを渡した。

嫌なら断ればいい。
従うからいつまでも来るんじゃん。
茜はそう思った。
ほかの人は見てみぬふりをしている。
いじめられたくないからだ。
私もそう。

だって、他人を助けたせいで自分がひどい目にあうのは嫌だから。
茜はそっと目を閉じた。
美砂と女の子の声を聞くと、あのときを思い出す。
本当のことを打ち明けた次の日から避けられるようになり、
次第にいじめまで発展した。

私は悪くない。
悪いのはこの能力のせいなのに。

茜はずっとそう思ってきた。

すると「おまえそういうのやめろよ。」
前のほうでそう聞こえた。
目を開くと美砂の隣には男の子が立っていていじめていた女の子に言っていた。
山崎日向(やまざきひゅうが)
サッカー部で背が高くてもてている男の子。
女の子は「え・・?なに、が」と目を開き言った。
最初は顔を赤くしていたが見る見るうちに青くなっていく。
多分日向のことを好きだったのだろう。
「お前がやってるの、いじめだよな。」
「ち、違うよっ私たち仲がよい・・・」
「じゃあ、どうして川嶋は震えてんの?」
「・・・・・。」
女の子たちは黙り込んで涙目になって廊下へ出て行った。
日向は美砂に「大丈夫?」と声をかけると
「ありがとう」と微笑んだ。

「・・・・・」
茜は目線を窓の外に変えた。
あのときの私にもこういう人がいてくれればよかった。
そしたら、少しは変わっていたのかもしれない。
そう思った。
       □■□■□
放課後、茜はバックを手に取り帰ろうとした。そのとき「佐々谷さん」と声をかけられ反射的に声が聞こえた後ろへ振り向いた。
そこにいたのは、 川嶋美砂。
「急にごめんね。今良いかな・・。」
「・・・うん。」
「あの・・・急なんだけど、私、佐々谷さんと友達になりたいの・・・」
美砂は少し涙ぐんで手に力を入れて心細そうな声で言った。
「え・・・。」
・・・いきなり言われても・・。
しかも何で、私なの?
「何で・・・私なの・・・?」
茜は美砂にそうたずねるとゆっくりと微笑んで言った。
「私、いじめられてるでしょ・・?だけど・・・佐々谷さんは違ったから・・。」
ちがう。
私はあなたたちに絶望してただけ。
加わるのが怖かっただけ。
あなたの思っているような、優しい人間じゃない。
なのに・・・どうして。
「私人が嫌いなんだ。」
茜は一言そういった。
「私も・・・きらいかな。」

・・・は?

茜は美砂の予想がいの言葉に驚く。
嫌い?ならなんで私と友達になりたいの?矛盾してるでしょ。
「嫌い・・だけど、佐々谷さんはちがう。」
「・・それは、私は人じゃない?」
茜が顔をしかめて言うと美砂は目を見開き、頭を横に振る。
「違うよ!そうじゃなくて・・佐々谷さんは私の知ってるいままでの人間じゃない。周りにつられない、良い人。」
美砂はそう言って笑った。

・・・・・・。
違う。
違うよ。
私は良い人なんかじゃないんだってば。
人間に、この世界に、絶望して、興味がなくなってるだけなんだって。

「私はそんな善人じゃないよ。優しい人と友達になりたいんなら、山崎君となったら?」
茜は眉をそらしふっと笑う、一般的に言う苦笑いをした。
「・・・・・。」
美砂は、黙った後「ごめんね」と言い、帰っていった。

友達・・・・か。
いつ裏切るかわかんない。
所詮形だけ。
影で必ず悪口を言う。
言われてない人なんていないんだよ。

そんなつらい思いをするなら
友達なんて、いないほうがマシ。
「・・・・。」

ー・・・茜ちゃん、私たち友達だよ。親友だよ。

嘘つき。友達?親友?
嘘つき。

ー・・・『心が読めるなんて気持ち悪い。』
日南は、あの日そう言った。
友達と言っといて。
友達なんて形だけだから。
川嶋さんも私のことを知ったら離れていくから。
それなら一人でいたほうが良い。
そうでしょ?

茜は靴を履き変え校舎を出た。
「………。」
言葉はなにもでなかった。
もう、話す気もなくなった。
話す人がいなかった。

茜は夕日に染まった赤い空を見上げた。
空はこんなに赤いのに心はどんどん黒くなっていくー・・・

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  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-05-22

Copyrighted
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