ウイルス・マスター 宇宙ウイルスの危機
宇宙に人類が進出し始めて、ずいぶんと久しい時代。それまでロボットにだけ宇宙開拓をさせ続けた。100年以上、人類は誰も宇宙に行かなかった。現代に限りなく近い文明の未来社会。それほど、テクノロジーは進化しなかったのは、1日20時間パソコンで、「あーでもない」「こーでもない」とネガティブな意見を言うニートたちだった。彼らは新しい技術を嫌悪している。逆に古い技術とか軍事技術だけは賞賛した。
23世紀、貧困が西洋文明社会から撲滅した時代。人類は再び宇宙を目指すようになった。そして彗星サンプルリターンの結果、地球に謎のウィルスに汚染された。
幸せな人たちが多い時代。それは超管理社会を受け入れることで実現した。
23世紀、宇宙開拓時代。地上に蔓延するウィルスとは
「ええ!!お寿司を食べるの」
宇宙ウィルスが蔓延する世の中、生ものは禁物。下痢や風邪に近い症状が出る。未知の病気にかかる危険性がある。
「そうよ。わるい。私、もう22歳。アイドル学院で一生懸命になっても・・・、全然、有名になれなくて」
「そうね。今は未知のウィルスが宇宙から来ている。で、そのウィルスみたいなものが、私たち地球にすむ生命のもと。で、その生命のもとは、彗星から運ばれるのね。彗星からきた生命のもとはどこから」
「それは『たまごが先かニワトリが先か』の議論だよ。わかればノーベル賞がもらえるよ」
「でも、そのウィルスで体調が悪くなる。それに宇宙開拓時代と言うけど、かなり厳重な装備がないと、バンアレン帯の外では強い放射線で老化が早まる。とてもじゃないけど火星に行くのは難しいわ。磁力で宇宙船を守らないと」
私、ほのかは、やけになって生魚をお米にのせたお寿司をたべる。
「おいしい。生のマグロもサーモンも」
「ええい。私も食べる。歳をとりたくない。いくらアンチエイチングが発達しても、体力と知力の衰えはおさえられないし」
私、ほのか。22歳。アイドルとして出発するには遅い年齢。でも、まだまだ10代にみえる。
他のアイドル歌手群がたくさんいる。美少女アンドロイドが普及した時代、そう、一人に1体のアンドロイドがいる。かなり粗末に扱えば、『器物破損罪』として犯罪者にさせれる。人格も疑われる。
いまの世の中、中東やアフリカ、東アジアの一部をのぞいて、貧困がなくなった。先進国は全て超管理社会だから。超管理社会ではモラルが高い。宗教狂いの中東諸国よりもはるかに道徳が高い。
世は『1000年王国』の時代に突入したのではないかと思うクリスチャンも多い。
全ての人たちが熱心なキリスト教信者になると、この世の終りが来る。最後の審判。もし現在、この23世紀にイエスキリストが再臨したら人類35億人の人生が同時に終わる。20世紀から21世紀まで、悲観論がノアの洪水の水のように全地に満たされた。でも、人類は侮れない。徐々に社会が良くなった。でも、問題は限りなく発展する宇宙開発で未知のウィルスに弱いこと。
私たちは、決してみんなの信頼を裏切らないアイドルになる。もう20代、他のアイドルたちよりも歳上である。
クラッシクなデザイン・一眼レフカメラ型スマートフォンとは
コンタクトレンズに、とても小さいコンピューターが内蔵している。当然、カメラ機能がある。でも、盗撮防止のため、撮影したデーターは全て警視庁のクラウドへと送られる。
スマートフォンとは、私たちからみて、古典的なもの。一眼レフカメラである。レンズの描写力は、どんなに科学が進歩しても、より高画質を求められる。人間の眼の100倍以上の解像度がある。一眼レフカメラにマイクジャックがついている。
私たちは常に一眼レフカメラに、ハンディタイプの無線機を持ち歩いている。バックには水筒もある。サバイバルキットに乾パン、この時代でも地震が来れば、あっという間にライフラインを切断される。他のアイドル歌手群は、ほとんど無防備である。
日本列島の人口は最大時には1億3千万人も住んでいたが、いまは人口が減って、外国人を入れて4千万人しかいない。
東京23区は再開発され、緑におおわれる。市街地の80パーセントを自然へと還す。多摩川の水は飲めるほどきれいになり、私たちは水着に着替えて川で遊ぶ。
「ねえ、コンタクトはちゃんとつけているでしょう。これでもコンピューターなの。それには、社会保障番号が記録しているの」
「はい」
私は目を守るためにゴーグルをつけ、ビキニの水着をきてサンダルで川辺を歩く。
「足元がきもちいい」
「そうだね。昔は汚れた水がながれていたけど。ねえ、ホームレスも住んでいたのよ」
「ホームレスとは」
「住所不定、無職の人たち」
「そんな人たちがいたの」
私は驚いた。
「そんなに驚かないで。まあ、資本主義という競争社会がいけないのよ。競争社会は弱肉強食。それに運が悪い人が、仕事にありつけないのよ」
「かわいそうに。今は、みんなロボットやアンドロイドが仕事をしてくれる」
「でも、未知の病が蔓延しているのが、厄介なのよ。免疫力が急激に落ち込む。そして、気がついたときには死んでいたということがある。平均寿命は21世紀の最盛期よりも短い」
「薬の次はナノマシン。それでも病気はなおせない。1000年王国時代と言われる平和な社会でも、不老不死はないのね」
「そうなの。未知のウィルスが蔓延して」
「むかしコンピューターの普及期にインターネットがでたとき、悪意あるハッカーが人為的に作ったウィルスプログラムから守るために、ウィルスソフト防御ソフトで守っていたのと同じ」
「で、私たちの売りは『信頼性』なの。確実に病気にならない健康なアイドルになること。それを他のアイドル歌手群にも教えないと」
「そうね」
足元に冷たい川の水が気持ちよく感じる。魚が泳いでいる。
周囲は深い森に囲まれている。使わなくなった橋もある。人口が少なくなって23区は、ほぼ廃墟となった。それを自然へ還す。秋葉原を除いて多摩地区が日本の首都として機能している。
都内、23区だったところの多摩川で水遊び・今夜はテント張ってキャンプしよう
「水がきれいだね」
「でも、22世紀まで日本では、人口が多すぎて、それに先進工業国でしょう。過度の科学の進歩は安全な社会を作ったけど、自由を失った。でも、人類はそれでも宇宙に夢を見る。そして、もちこんだのが未知の宇宙ウィルス。未知の病気が急増して」
「ねえ、厳しい現実ばかりみないで。今日は休日でしょう。ゆっくりあそびたいわ」
6月、昼間が最も長い時期。これから暖かくなる。
「まだ、水が冷たいわ。でも、魚が泳いでいるのが見える」
「ねえ、まったりしましょう。ここで、キャンプして」
「うん」
超管理社会の良いところは、犯罪がほとんどないこと。幸福率も高い。全体主義=不幸な社会とは限らない。むしろ21世紀の社会が不幸だった。
終戦100年目、日本は直接、外国とは戦争をしないが、アメリカの次にいろんな国に軍隊を送り込んだ。ダメな政治家がアメリカにNOと言えない。アメリカの奴隷となっている。奴隷国家を作るため、TPPという関税を撤廃させる条約で、加入した国々はアメリカの属国になった。TPPで最も大きな被害を受けたのが、アメリカ合衆国市民である。
99パーセントの市民が貧困に陥り、生活水準が下がった。各地で暴動がおき、2020年代に北米統一政党ができ、一党独裁性が引かれた。民主主義の終焉。逆にヨーロッパ最後の独裁国家ベラシールが民主化した。中央アジアの独裁国家トルクメスタン共和国も民主主義国家になり欧米諸国の一員になった。南側にはイスラム全体主義国家がある。イスラム法による全体主義国になるくらいなら大規模な戦争をいつまでも続けたほうがマシである。
ロシアと合併論があり、旧ソ連の復活論もあった。
23世紀、さまざまな諸問題を解決した。人類の人口が急激に減少。先進国では非婚化に少子化で人口が少なくなりすぎた。低開発国においては、貧困に飢餓の問題が数世紀も解決しない。当然、人類の人口が減るわけである。
でも、私たちが住む日本列島は平和で、ちゃんと管理されているので、治安も良い。今日は天気がよいので、テントを張って多摩川沿いでキャンプをした。
月曜日、今日からアイドル学園の授業をする
気分転換ができ、今日から5日間、いつもどおりの学園生活が始まる。私はアイドル学園で働いている。
教師として・・・。全然、知名度が低い私が授業をしてもいいのだろうか?生徒たちに、説得力がない。
私は大学を出て22歳になる。
寮にもどったのが早朝、外がまだうす暗い時に戻り、シャワーを浴び、学生服に着替え、寮の食堂で、朝食を食べた。
「たのしかった」
「また、キャンプをしましょう」
「でも、この日本列島のいたるところに監視カメラがあるでしょう」
「そう。でも、あとで寮長さんに怒られるかも。早朝の4時に帰ったから」
「そうだね。でも眠い」
私たちは、朝食を食べ、学園に行くバスに乗ってでかけた。
ウイルス・マスター 宇宙ウイルスの危機
けっして民主主義を否定するつもりはありません。
未来社会=全体主義・管理社会になるという構図があり、どうしても悲観的に考えてしまいます。
それなら、「明るい未来」ということを考えました。
超高層ビルがあるところに、どこか牧歌的な雰囲気を出したいと思います。