これは俺の知ってるもみじじゃない! 第二話<親友>
「まさとーっ!」
俺を呼ぶ声がした。だから俺は振り向いた。
「なんだよ朝っぱらから元気だな新。」
星野(ほしの)新(あらた)。幼馴染で野球部に所属していてしかもエースピッチャーである。
「こっちから言わせてもらえば朝からお盛んすぎるんだよあんたら兄妹は。」
「そんなの俺のせいじゃないだろ……」
そんなたわいもない話をしながら二人は席に着いた。
「そーいえばまだ始業まで1時間くらいあるけど練習はどうしたんだよ。」
「ん?サボってきた。」
前言撤回。エースピッチャーだけど『練習をさぼるクズ』。
「だってまさとんところの妹さんめっちゃかわいいんだもん。そんなかわいい子がなんでこんなにもとりえのない兄に引っ付いてるのかが気になってさ。野球部でも噂なんだぜ?」
「んなこと言ってもなぁー。ただでさえ今は両親が海外出張で1年間居ないから嫌でもずっと一緒だからなー。で、お前はなんでそんなに睨む……」
「そりゃ睨むだろ……あんな可愛い妹と一つ屋根の下なんてどんだけいい思いしてるんだよ……うちの妹なんて厨二病で腐女子だぞ。」
それはお前が泣く前に親が泣くから……
そして俺は教室の窓から陸上部の練習を見る。やっぱり妹はバカっ速かった。男子にも引けを取らないスピード、そしていつも家とかクラスメートに見せるような可愛い顔ではなく、今から怠慢でもやるような顔をしている。このギャップに惹かれてる男子もいるんだろうなと俺は勝手に自己分析してみる。去年くらいまでは俺のほうが短距離速かったのにな……なんで急にあんなに速く走るようになったのかな……
「シスコン?」
「んなわけあるか!ドアホッ!」
紅葉side
練習が終わってHR(ホームルーム)に行く私。クラスメートの軽い挨拶に私は挨拶を返しながら教室へ向かって行った。
「くっれはぁぁぁぁっ!ぎゅっ!」
「ん!?くうひぃほぉ~」
中川(なかがわ)心愛(ここあ)が私に抱き着いてきた。私の顔はそこまで小さいわけではないのだが心愛の胸に埋まってしまった。言うまでもない心愛の胸は大きすぎるのだ。
「ほんっと紅葉はすごいんだからぁ~!陸上部でエースだし、禁断の兄弟恋愛の真っ最中だし。」
「エースだなんてそんな……って禁断って!?ちょっ!な、何の話?」
「そんなことわかるでしょ?でも誠人先輩とは正真正銘の兄と妹の関係なんでしょ?」
「そ、そうだけどさぁ……」
た、確かにそうだけども……
「血がつながってたら好きって思っちゃいけないのかな……」
「そんなことないと思うけど壁は大きいと思うなぁー。私は可愛い可愛い紅葉の味方だよーんっ。」
「ありがと。」
こういってくれる友達はうれしい。でも私が思ってるのは兄として好きなんだけどな……やっぱり周りから見ると恋人同士に見えるのかな……気を付けないと。そんなことより……
「そんなことより、く、くるしい……」
「だって可愛いんだもん?」
「あんたはレズか……?」
「んなわけあるかーいっ!」
これは俺の知ってるもみじじゃない! 第二話<親友>