暗闇の中の光
朝、起きるとそこはいつも通りの暗い世界。
「・・・」
この世界はいつも暗い。だから夜なのか朝なのかすら分からない。
「お腹へった」
僕のお腹は今空っぽに近かった。前の食事から何時間たったのかすら分からない。
「お腹へった」
それ以外言葉がでなかった。
すると・・・
「ご飯だよ」
女の子が入ってきた。
「お腹へったでしょ?」
いつも女の子は僕に話しかけてくれる。
そして女の子の手にはいつも僕のために用意された「ご飯」と「懐中電灯」だけだった。
その懐中電灯の明かりだけが僕の知っている唯一の「光」だった。
女の子が話している間ぼくはその光だけを見ている。
女の子がなにを話しているのかは全然分からない。
そして女の子が話し終えると僕はご飯を食べはじめる。
そして僕がご飯を食べ終えると彼女は帰って行く。僕は暗闇の中にまた閉じ込められる。
そんな日常が何日も続いた。
ある日僕が起きると身体に異変があるのに気付いた。
「痛っ!!頭がガンガンしてるなぁ」
朝から頭が痛い日というのは最悪だ(朝かどうかも分からないけど・・・)
そしてまた女の子がくる。
「うわぁぁぁ!!」
頭痛が今までと比べ物にならないくらいひどくなった。
「ちょっと大丈夫!!駿!!」
ーなに?駿だって!?どこかで聞いたことある・・・
「駿!!聞こえる!?駿!!」
「駿ってなに?」
声を振り絞ってきいてみる・・・
「!?なにってあなたの名前じゃない!!」
「名前だって!?僕の!?」
名前なんて僕ですら知らないのに何でこの子が知っているんだ?
ドクン!心臓が早くなったと思ったら急に意識が無くなった。
「眩しい・・・」
目を瞑っていても分かる。懐中電灯の光しか知らない僕の目に飛び込んだ大きな光。
かすかな光の中で僕は誰かが話しているのを聞いた。1人は良く知る女の子の声。もう一人は
聞き覚えの無い低い男の声。
「ふざけるな!!コイツに関係する情報は一切話すなと言ってあっただろうが!!」
「ごめんなさい、でも名前くらい教えていると思って。」
「ふざけるな!!名前一つでコイツの記憶が戻ってしまうかもしれんだろう」
「ごめんなさい・・・」
「私はちょっと出てくる。コイツのことはお前に任せる。しっかり見張っていろ。」
「・・・はい」
そして女の子が近づいてきて泣いている。
僕はその顔を見てすべてを思い出した。
そうだ僕はただ記憶を消されて監禁されていただけなんだ・・・・・・・
ただ僕が妖怪だから・・・。
暗闇の中の光