ブラジャー【Ⅶ】

【ブラジャーⅦ】


 呪い

 
【一話】




 
 三流大出の三流商社に勤務する三流ライフを送る二十七歳の恋愛とは縁のない独身男は、八時から十七時の勤務であったにも関わらず朝は七時から出社し終業はほとんど夜の九時を過ぎている。

 成績も悪く営業と言っても半ば雑用係りと言って良いほどの扱われようで、勤務先の会社では初の大卒として有望視されていたものの口下手な上に小柄で鈍才、動きの鈍さから「モスラ」とあだ名されるほどだった。

 それでも入社してすぐの頃は将来は会社を支える栄光の波に乗っていたが、徐々に明らかになる男の無能さに会社は勿論のこと周囲にまで愛想を付かされ会社からは自主退職して欲しいとさえ囁かれていた。

 だがこの不況では流石に鈍才男とは言っても「はい。 そうですか」と、辞めることも出来ずに男は名ばかりの営業職にいて会社の雑務をサービスでこなす日々を送っていた。

 そんなある日のこと、男はいつものように誰も居なくなった会社に一人で残り残業手当の付かないサービス残業をこなしようやく終えると既に時間は夜の九時を過ぎていた。

 そしてサービス残業に追われクタクタになって帰宅した男は、そのまま翌朝分のゴミ出しに出かけそこで転んで起き上がろうとした時、電柱の明かりの下に異物をみつけた。


「こっ! これってもしかして…… 警察! 警察、警察、警察!!」


 男は慌てて携帯を取り出すと震える手で百十番をプッシュしたが何度もボタン操作を間違え一度リセットするように深呼吸をした。

 そして斜屈んでもう一度袋の中身を凝視した男は携帯の明かりを近づけ何やら違和感を覚え、恐る恐る誰かが捨てたゴミ袋を開封して中を覗き込んだ。


「ドキッ! ドキドキドキドキドキ…」


 男はゴミ袋の中の肌色の物体に心臓をドキドキさせながら、お化けでも見たかの表情をして右手を入れると「ムニュッ」と、した感触に顔色を変え口を半開きに息を潜めた。

 そしてネクタイを左手で緩め辺りをゆっくりと見回し気にしながら静かに中のモノを掴んで取り出した瞬間「うわあぁ!」と、声無き叫びをして目を閉じ静かに目を開くと右手に持っていたモノを直視し尻餅ついて息を大きく吐き出した。


「あはっ! あっははははは♪ こりゃいい傑作だ~♪ 百十番しなくてよかった……」


 地面に尻餅付いていた男は「フッ」と、ヌーブラを手に女性のバラバラ死体と勘違いした自分が情けなくそして哀れに思えた。

 そしてそのまま自分の住んでいるアパート街をゴミステーションから見回して手に持ったヌーブラを元あった袋に戻そうとした。

 その瞬間、男はそのヌーブラに元に戻すに戻せない妙な感覚を覚え時間が経過した。

 男はヌーブラを持ったまま左腕の時計を見ると三十分以上もそこに居たことに驚き、無意識にヌーブラを背広の右ポケットに入れたままゴミステーションを後にした。

 そして再び帰宅した男は背広からヌーブラを取り出すと立ったまま両手で顔近くに近づけ凝視した。

 すると何処からともなく微かに女性の楽しげな笑い声が聞こえた気がして、男は驚いてブラを片手に自室をグルリと見回した。

 男は気の所為だと安堵してヌーブラを台所のシンクの横にポンと置いて、コンビニで買ってきた弁当と缶入りのお茶を袋から出し食べ始めた。

 そして座卓の上にあったノートパソコンで「ヌーブラの洗い方」と、検索してマウス操作しながら弁当を食い「ほほぅ~ なるほどなるほど」と、独り言をいい台所の横に置いたヌーブラをチラリと見て「ニンマリ」と、笑みを浮かべた。

 座卓を前に床に胡坐する黒髪の短髪、ギョロ目で骨っぽい百八十センチ台の男は太い眉毛を動かしてパソコンのモニターを読み続けた。


「水で洗って拭き取らずにそのままか…… 専用洗剤があるのか……」


 男は弁当の最後の楽しみにしていたコロッケを一気に頬張るとニンマリして束の間の幸福感に一人浸り飲み込むまで目を閉じて軽く上を向いた。

 夜の十時半過ぎ缶ビールを手に壁に凭れながら床に両足を投げ出した男は、台所で水洗いだけして自然乾燥させているヌーブラをチラリと横目で見て「どんな女性(ひと)がしていたんだろう…」と、一人でニヤニヤしてニンマリ笑みを浮かべてタバコに火を点けた。

 そして一口、タバコを吸うと目を閉じて「髪型は… こんな感じかぁ~」と、名前の分からないサイドアップの髪型を思い浮かべタバコを一口吸うと「背丈はこうで顔立ちはこうで…」と、孤独な男らしい想像力豊かな優雅で気品があってそれでいて少し子供っぽい美女を思い描いた。

 
 閉じたギョロ目の閉じた瞼が震える……


 そして翌朝、男は誰も居ない自室の玄関でカバンを手に「行ってくるよ~♪」と、干してあるヌーブラに声をかけると玄関の鍵を閉めて会社へと向かった。

 普段はポォーっと部屋を出て行く男もこの日は珍しく自然と笑みが零れ、会社へ到着するも普段は一時間かかる仕事を三十分で済ませ、サービス残業でやるはずの仕事に朝から着手し時間を短縮した。

 朝の八時、次々に出社する先輩たちは次々に面倒な書類を男の机に「バサッ! バサッ!」と、置いて行きいつのまにやら机は書類の山に変わり果てた。

 男は自分の机の上に次々に重なる書類の山を見て「やっぱり今日も残業だな…」と、小声で呟くも先輩や同期に後輩たちが男を見てヒソヒソ話して笑った。

 そして八時半、朝の朝礼が部長を前に全員整列して始まるも女子社員たちはワイシャツの後ろの裾が出ている男をチラチラ見て薄笑みを浮かべ誰も教える者は一人も居なかった。

 それどころか女子社員達を笑わせようと男の後輩が近づき、出ている裾を上に巻く利上げ朝礼は爆笑の渦に変り、慌てた男が部長に睨まれるという理不尽な叱責の一こまもあった。

 一見、ポォーっとしている長身の男は誰が見てもボォーっとしていた。



【二話】



 いつものようにサービス残業していた男は夜の八時、次々に明かりの落ちる窓の外のオフィスを気にすることなく仕事に励んでいた。

 社員も役職者も誰も居なくなった社内にポツンと一人で書類整理に追われる男は、黙々と淡々と仕事をこなしては壁掛け時計を見て書類の山を見渡して再び姿勢を丸めた。

 そしてドアを開ける守衛の足音に気づけば結局九時という時間に大きな溜息をついて守衛に戸を振って席を立った。

 誰よりも早く出社し誰よりも遅くに会社を出る男を、守衛たちは影で「社長さん」と、愛称していたことを男は知らない。

 男はヨレヨレになりながらボロボロの自転車に跨ると自宅アパートまでの四十分をひたすら漕ぎ続け、コンビニで馴染みの客の一人として弁当と缶入りの御茶を買うと再び自転車を漕いだ。

 コンビニでは決まった時間に来店する男のことを「巡回さん」と、影で愛称していたことを男は知らない。

 無口でギョロリとした大きな目と太い眉毛が印象的な男はアパート近くのタバコ屋の婆さんから「モアイ」と呼ばれ、男が店の前を通ると「そろそろ寝る時間だ」と、部屋の明かりを落とした。

 そんな男がアパートの階段を靴音を立てて上ると、一階の住人は「そろそろ寝る時間だ」と、部屋の明かりを落とした。

 男は自分が時計代わりになっていることも知らずに部屋のドアを開き、中に入ると「ただいま~」と、嬉しそうに小声を出して月明かりに照らされたヌーブルラを見てはにかんだ。

 靴を脱いで真っ直ぐにヌーブラへ近づくとニンマリして立ち尽くしてその光沢を目で楽しんだ男は深呼吸して部屋に明かりを灯すと、窓辺に移動して不審者のように窓の外を気にしながらカーテンを閉じた。

 そしてノートパソコンの載っている小テーブルにコンビニで買った弁当と缶茶を置くと、台所の上に干してあるヌーブラをチラチラ見ながらニンマリして弁当に喰らいつき、腹を満たすと部屋に備えられた小さな風呂場に腰を下ろした。

 長身の男にとって縦横九十センチの真四角の風呂は両膝を抱えて身動き一つ出来ないながらも、一日の疲れを癒すホッと一息つける場であったが、この日はその憩いの場から早くも撤退する男はパンツ一枚で首からタオルをさげベッドに凭れてタバコに火を点けた。

 片足膝立てで缶ビールを開けると一日の疲れが瞼を蕩けさせ十時を過ぎた時計を見てビールを一気に喉の流し込むと、男は枕にヌーブラを紐で装着すると縦に置いて自分は座布団を枕にしてヌーブラの感触を楽しみながら明かりを落とした。

 それから数日間、男は彼女でも出来たかのように毎日、帰宅するのが楽しみで部屋を出入りするときは必ず彼女(ブラ)に声をかけ続けた。

 
 数日後の金曜日の夜のこと、男はいつもどおりに帰宅し、いつもどおりに食事と入浴しいつもどおりに枕に装着したヌーブラを抱いて寝ようとしたが、彼女(ブラ)が来てからマスターベーションをしていないことにムラムラして気付いた。

 男は彼女(ブラ)に気遣ってブラとは逆側の壁を向くとパンツを下ろして元気のない肉塊をシコシコし始めたが、後ろに彼女(ブラ)が居ると思うと中々大きくならず困惑してパンツを元に戻した。

 だがムラムラ感が止まらない男は彼女(ブラ)の方を向いて左手を柔らかさの上にソッと這わせると目を閉じて寝ようとしたが、男はその柔らかさとブルブル感に胸のうちを「ムラムラモヤモヤ」と、最初の頃に自分がイメージした美女を思い出してしまった。

 そのことで更に眠つけなくなった男は思い切ってベッドから起き上がると明かりを灯し彼女(ブラ)に手を這わせたまま左を向いて、パンツを下ろして肉塊をモミモミそしてシコシコし始めた。 すると元気のなかった肉塊は途端に大きくそして天狗の鼻のように聳え立って男を興奮させた。

 男は聳えた硬いモノをシコシコし続け途中で手を止めティシュをシーツに数枚敷いて再びシコシコし始めた。 そして数分後にティシュの上にドロリと撃ち付けた黄色み掛かったゼリーのような液体に男は、ホッと額の汗をぬぐってティシュを丸めた。

 だが一本抜いただけでは収まらなかった男は再び二本目へとそのまま続けそして三本目を終えると精力は急激に減退したものの、胸のモヤモヤ感は残ったまま男は眠りについた。

 そして深夜、男は喉の渇きに目を覚まし胸のモヤモヤ感が消えていないことを気にしながら台所で水をガブ飲みしてそのままトイレに入った。

 男は目を擦りながらトイレから出ると座卓を前に胡坐してタバコに火を点けた。 そして深く一口吸うとカーテン越しに入る月明かりに照らされたベッドの彼女(ブラ)をチラりと見た。

 そして時計を見た男は深夜の二時少し手前にもう一眠りしようか迷いながら「これってどんな感じなんだろ…」と、枕に紐で装着されベッドに横たわる彼女(ブラ)を見つめた。

 女装趣味など全くなかった男はベッドに手を伸ばすと枕からヌーブラを外すとそのまま自分の手にとってみた。 プルプルした感触が男の手に心地よさとヒンヤリ感を伝えると、男はそのままヌーブラを自分の胸に装着しようと合わせて見た。

 その瞬間! 男を焼けるようにそして刃物で胸肉を切り裂かれるように凄まじい激痛が襲った!

 
「ギエェェー! 痛てええぇー! 痛えぇぇー!! グオッ! ウゲエェ! ウギヤアァー!」


 男の心臓は不整脈のように高鳴り脈拍を急激に上げ全身に高熱を伴い頭の中はインフルエンザのごとく、そして胸の凄まじい痛みは胸のみならず全身に広まり男は胡坐をしていられずにそのまま床に転がり蹲った。

 声も出ず動くことも出来ない男は胸からブラを外そうと試みたが両手の筋肉が石のうに硬直して動かず、そのまま数時間も脂汗を額から流して痛みと高熱に呻き続け思考回路は完全に停止した。

 そして二時間ほど経過した頃、全身の焼けるような痛みと高熱は嘘のようにピタリと止まり、四肢を動かせることに気が付いた男は起き上がって額の汗を手ぬぐいで拭いて壁掛け時計を見て「ギョッ!」と、した。


「そんな馬鹿な……」


 男は二時少し前の時計を見て唖然とした。 そして辺りをキョロキョロと見回しタバコを手にとって火を点けようとした瞬間、ライターの炎の中に揺らめく女の顔が座卓の向うの食器棚のガラスに映りこんでいるのを見て固まった。

 そして男はガラスに映った女から目をゆっくりと外して後ろのベッドに後ずさりし、視線を下に向けたまま静かに立ち上がると目を瞑って部屋に灯りを灯しそのまま台所を前に立つと、手探りでコップを掴んで水道から水を出した。

 目を瞑ったままで男は水をゆっくりと一口飲んでは自分に「落ち着け… 落ち着くんだ…」と、言い聞かせながら二口目、そして三口目で水を飲み干してから目をゆっくりと開いた。


「うぎゃああぁぁーーーー!!」


 男は目の前の壁掛けの鏡に映る女の顔に震撼し悲鳴を上げそしてその悲鳴の女声に更に強烈な悲鳴を上げその場に尻餅ついて両手で顔を覆いガタガタと全身を振るわせた。
 
 両手で顔を覆った男は「南無阿弥陀仏! 南無阿弥陀仏!」と、声を震わせ唱えるものの唱えた声に知らない女の声が重なって聞こえ唱える口を閉じて心の中で念じ続けた。

 そして静まり返った部屋に安堵した男はゆっくりと目を閉じて頬を緩ませながら息を吐き出し顔を下に向けた。 その瞬間、男は眼下の光景に口を半開きさせ「あわわわわわわわわ」と、両手で頭を押さえ声を震わせた。

 
「夢だ! 夢に違いない! 俺は寝てるんだ!」


 眼下でプルプルと柔らかく揺れるCカップほどの乳房とピンク色した乳首と乳輪を見た男は、息を荒げて吐き出すと両手を頭から下ろしてそっと乳房を両側に這わすと「プルルン」と、ゼリーのように弾んだ乳房に目玉をギョロギョロさせ眉毛をヒクヒクさせた。

 乳房に這わせられた自分の両手に視線を移した男は、自分の手ではない他人(おんな)の手に顔を引き攣らせて両手を顔に這わせた瞬間、自分の顔ではないその顔に激しい違和感歯を感じて歯をカチカチ鳴らすほど震えて立ち上がった。

 そして顔から両手を離して鏡に顔を映すと「だれだあぁこりやあぁ!」と、女の声を鏡の前に放った瞬間「ジュワッ!」と、台所の前で失禁し生暖かい小便を両足に伝え床を濡らしたが、男は失禁していることにも気づかぬまま鏡に映った女が以前、自分が思い描いていたタイプの女性であるこに背筋を凍らせ呆然としていた。

 だがもっと男を仰天させたのは足元に視線を移した時、股間にあるはずのモノが無く、無いはずのモノが付いていたことに男は腰を前に曲げたままその場に崩れ失神してしまった。


「こんな馬鹿な… 馬鹿な… 馬鹿な… 馬鹿な…」


 男は過去に自分が思い描いていた想像通りの女になっていたことをブツブツと否定しつつ、小便に塗れた身体を深夜の二時半にシャワーで洗い流し薄い陰毛の下に「パックリ」と、割れる縦筋から目を背けながらセッケンで泡立てた手ぬぐいで夢のような美しい女体を洗い流していた。

 この男の名は浜田健吾、二十七歳独身で未だ童貞であるが、生まれて初めて見た女性のヌードが自分だったという皮肉な状況に、悲しさと嬉しさを幾重にも重ね両脚を開いて鼻から血をポタポタと滴らせた。


「夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ……」


 健吾は優雅で気品のある清潔感漂う美しい女性の身体で、首に手ぬぐいをぶら下げて屁を「ブリュッ!」と、放って風呂から出るとこの美しい身体の置き場に困惑して散らかった部屋の雑誌を押しのけベッドに腰を下ろした。

 そして学生時代に使っていて今は殆ど使っていない大き目のパイプ枠の鏡を押入れから取り出すと自分の前に置いて再びベッドに腰を下ろした。

 健吾は正面に置いた鏡の中に美しい女性の白い肌と形のいいツンと上を向いた乳房とピンク色の乳輪と乳首を照れ臭そうに見入り、身体を軽く揺らしてプルプルと震える全身の柔らかさに嬉し恥ずかしいの表情をニンマリ浮かべ両脚をソッと開いて薄い陰毛の下を凝視し鼻の下を像のように伸ばした。

 どうせこれは夢なのだから何をしても許されるのだと自分に言い聞かせ、鏡の前で立ったり座ったりベッドに横になったり後ろを向いたり窓の外が明るくなり始めたことにも気付かずに健吾はひたすらポーズを楽しんだ。

 歩けばゼラチンのようにプリンプリンと揺れる身体に健吾は両手を前に後ろに頬を紅く染め照れまくりだったが、小さいクシャミをしたことで自分が全裸であることを改めて痛感した健吾は急に肌寒さを感じてパンツを履き肌着を首に通したがその大きさに驚いた。

 首を傾げる健吾はとにかく着るモノをと、グレーの上下のスウェットを取り出すとそれを身に纏ったが、余りのダボダボ感に「ハッ!」と、して玄関のドアへ移動してドアと自分の身長を確かめると身体が縮んでいることに衝撃を覚えた。

 だかこれは夢なのだと薄笑みを浮かべてズボンの裾と服の袖口を折って窓を覆うカーテンを開くと、眩しい太陽の光が燦々と部屋の中に降り注ぎ両腕を頭の上に伸ばして大きな背伸びをしてニヤリと笑みを浮かべた。

 健吾は狭い部屋が突然大きくなったかのように嬉しくなって両手を広げてクルクルと部屋の中を回って遊び、一人で声無き歓声をあげ小さくなった喜びを噛み締めた。

 


【三話】


 
 童貞の健吾は遊んでいた。 童貞が故に触ったことも見たこともなかった女性、しかも超美人で自分のタイプに健吾は触りまくりの揉みまくりで時間を費やし、恐る恐る触れた女性の秘密の部分と乳首の快感に震撼して失神を繰り返した。

 そして女性の身体の素晴らしさと美しさを身を持って知った健吾は「この夢が永遠に続きますように」と、秘密の部分に滑らせた指を動かしながら愛苦しい表情をして心の中で願った。 そして睡眠不足からそのまま昼寝に突入した土曜日の午前、健吾が目覚めたのは昼過ぎだった。

 寝起きの健吾はベッドから起き上がるとボオォーっとしながら両手で顔を触り毛布を剥ぐって元の姿に戻っていないことを知ると、トランクスに両脚を通し上へ引き上げたものの慣れることのない履き心地の悪いトランクスに顔を顰めた。

 そして室温三十度近い部屋の中でスウェットズボンを手にベッドに座って考えこむと、スウェットをバサッとベッドの上に放り投げ乳房丸出しで押入れを開いた。

 確かこの辺りにあったはずだと、押入れの下段に上半身突っ込んでガサゴソやって引っ張り出した白い大きな布袋。 半所間商店街で買った一万円の福袋を開いた健吾は自分が履くには小さいサイズのジーンズと男物のビキニブリーフを取り出した。

 そしてトランクスを脱いだ健吾はビキニブリーフを履くとそのままジーンズを着衣し、マーカーで太もも辺りに印を付けて再び脱いで鋏でチョキチョキ他作業を始めた。


「よし! 出来た♪」


 健吾は履けなかったジーンズでショートパンツを作ると早速、両脚を通して鏡の前に立った。

 腰をフリフリして履き心地を確かめた健吾はニッコリすると鏡に映った自分の笑顔に顔を紅くさせ、後は何でもいいやと取り敢えずスウェットの上で上半身をごまかすと財布を手に男物のサンダルを履いて部屋を出た。

 腹を満たそうと近所のコンビニに弁当を買いに出かけた健吾はその全身に突き刺さる男たちの嫌らしい視線に気づくことなく店内に入ると、目当ての弁当と缶茶の他に貧乏人の強い味方である「若葉」を買い求めた。

 カウンターに立つ健吾は他の男たちに目で犯されていることにも気づかずいつも通りに店を出ると真っ直ぐに部屋に向かったが、通り道で小さな衣料品店の大きなガラスに映った自分に立ち止まった。

 
「あれだけ寝てたのに髪が崩れていない… やっぱり夢なんだな…」


 健吾は夢なら夢でもいいと、衣料品店に立ち寄ると籠を持って下着売り場へ移動し店内の鏡に映る自分を見て「この女性ならこんなのかな…」と、白や薄水色のフリルのついたスキャンティーを手に取ったが、籠に入れようとした瞬間、自分のサイズを知らないことに気づいた。

 腕組する健吾は暫く考え込んで清算カウンターに居たオバちゃんに近づくと「あのぉ… ちょっとお尋ねしますが、私の下着のサイズって解りますか?」と、小声で話しかけると、オバちゃんは健吾を下から上へ見流して「お客さん自分のサイズわからないのかえ? 変った人だねぇ♪」と、突然横に来て健吾の尻に両手を這わした。

 健吾はオバちゃんに触られる感触に首を少し仰け反らせ背伸びし不思議な心地よさに一瞬「ウットリ」と、目を虚ろにさせると「お客さんならLかLLってとこだねぇ~♪」と、笑顔するオバちゃんにペコリと頭を下げ無表情のまま再び下着コーナーへ戻った。

 ショーパン越しに尻に残る触手の余韻に健吾は直ぐにはモノ選び出来ずに立ち尽くした。 そんな健吾を見つめるカウンターのオバちゃんは「今時、自分のサイズを知らないなんて、何処の御嬢さんだろうねぇ~」と、不思議そうな表情を浮かべていた。

 健吾は取り敢えず両方のサイズを数枚籠に入れると再びカウンターに近づいて「すみません… 私のブラジャーのサイズって解りますか?」と、二度目ということもあって申し訳なさそうにオバちゃんに聞く健吾を、オバちゃんは神妙な顔して「コクリ」と、頷くと健吾の手を引いてカーテンボックスにつれて行った。

 そして健吾の顔を見てからスウェットを脱ぐように囁き健吾は恥らうことなく上半身を裸にした。 オバちゃんは驚いた顔して「キレイな胸だねぇ~♪」と、乳房を下から斜めから正目から見入るとアンダーとトップを図ってサイズをメモすると「取り敢えずスリップの寸法とスカートや服にストッキングも書いとくからね♪」と、健吾に寸法の記されたメモを笑顔で手渡した。

 健吾は渡されたメモを手に下着コーナーに再び移動し、その様子を見入るオバちゃんは「やっぱり金持ちの娘さんだわ…」と、溜息をついて健吾を見つめた。 自分がオバちゃんに観察されているとは考えていない健吾はサイズを見ながら取り敢えず書いてあるからには必要なのだろうと、メモに書かれているモノを籠に入れ婦人服のコーナーに移動するとカウンターに居たオバちゃんも吊られて移動した。

 そしてズラリと並ぶ婦人モノを前に健吾は「何を選べばいいんだろう…」と、カウンターに居るはずのオバちゃんを目で探すと、突然「あらあら♪ お困りのようねぇ~♪」と、何故か嬉しそうに健吾を驚かせ夢の中の親切なオバちゃんのお陰で自分のサイズを知りそして取り敢えずは夢の覚めるまでの間、着るモノを手に入れたことに健吾は安堵した。

 
 大きな買物袋と紙袋と弁当を持った健吾は「夢にしては随分とリアルだ」と、息を切らせて自宅アパートの一室に戻ってくると、さっそく全裸になって汗を拭き取りスキャンティーに両脚を通した。 ピッタリとフィットしたLモノと少し余裕のLLモノを履き比べた健吾は自分のパンツはLLと決め、ブラジャーを装着するや否やプルプルと揺れて邪魔だった乳房がスッキリ覆われたことに安堵した。

 そしてブラジャーの上からスリップを付けた健吾は自分を鏡に映して、腰を左右に振ってヒラヒラと舞うスリップの裾に「クスクス」と、照れ笑いしベッドに座ってパンティーストッキングを恐る恐る下半身に伝染させることなくフィットさせ、そのスリスリ感にウットリしながらも思わずガッツポーズを一人決めた。

 そんな健吾は衣料品店のオバちゃんの一押しだった薄水色のベルト付きの膝丈ワンピースを着衣すると、髪型と顔立ちと身体にピタリとマッチしたオバちゃんの見立てに百点を進呈した健吾は買ってきたサンダルを履くと思いつく全てのポーズを鏡の前で実演し一人笑みを浮かべて腹が減っていることも忘れた。


「おかしいな~ 何で夢なのに腹が減ったり、それに街並みもリアル過ぎるし… 時間も正確だし… 妙だなぁ…」


 ワンピース姿で床に胡坐をする健吾は弁当を食いながら缶茶を飲み窓から外を眺めてようやく異変に気づき始めた。 とは言いながらも鏡に映る自分はどう見ても女性であって男の自分ではなく、しかも自分の思い描いた通りの美女であることに首を傾げながら弁当を食い終え、タバコに火をを付け体育座りした。

 そしてタバコを一口吸う度に「いつ夢から覚めるのだろう…」と、不安げに膝に片手を置くと、カレンダーを見て「明日は日曜だからいいとして明後日はどうなるんだろう」と、両肩をすぼめ両脚のつま先を見つめ突然の尿意に立ち上がった健吾は、顔を強張らせて「あわわわわわわわ!」と、トイレに駆け込むとヒラヒラするワンピーの裾に「畜生! こんなときに!」と、手を焼きスキャンティーとパンストを一気に膝まで下ろして便座に座った瞬間、チョロチョロと割れ目に生暖かい小便を感じその後、勢いよく飛び散る小便に胸を撫で下ろした。


「確か拭くんだよな女は……」


 小便をし終えた健吾はワンピーの裾を邪魔にしながら両脚を開いてペーパーを丸めると股に入れ「何処にあるんだ? 小便の穴は!?」と、ペーパーを解らぬまま取り敢えず拭き上げた。 

 そして再び立ち上がった健吾はワンピーのヒラヒラする裾にイライラしながら、中腰にしスキャンティーをフィットさせ伝染するかも知れないパンストを戦々恐々の思いで下半身に覆い被せ、一安心とばかりに「プピイィー!」と、可愛い屁を放ってトイレを後にした。

 健吾は小便の度に一々脱がなければならないことに面倒臭さを感じながら、部屋の中でゴロゴロしてるのが勿体無いと近所の小さな公園まで散歩することにした。

 不慣れな女物のサンダルを履きアップにした髪の毛に微風を感じながら歩く健吾は、行き交う男たちの嫌らしい視線に気づくことなく歩いて十分ほどの公園に辿りつくも、行き交う女性たちはみんな手にバックなどを持っているということに気づいた健吾は、急に自分も何か欲しいなと辺りを歩く女性たちが気になり始めた。


「この格好ならハンドバックかな……」


 ベンチに腰掛て公園の柵の向こう側を通る女性たちを観察する健吾は、何を買おうと何を持とうと「どうせ夢なんだから」と、立ち上がると公園を出て歩道を商店街へと進んだ。

 水色のワンピースの胸元を内側からさり気無く飾る程よい大きさのCカップと、キュッと引き締まった細身のウエスト、そして形の良いヒップとそれを支えるスラリとした脚にサイドアップの髪型が似合うセレブ系の美人顔に行き交う男たちの足取りがピタリと止まる。

 優雅で気品に溢れそれでいて愛らしさの残る健吾の顔は、歩く度に成熟した女の香りを漂わせ男たちは無意識に進行方向を合わせていることらすら気づかなかった。

 そして健吾が店に入れば店先は催眠術にかかったように亡者がウインドーにへばりついて健吾を血走った目で凝視した。 その光景を目にした店員たちは慌てて健吾の接客に当たり何も気付かない健吾は「私に似合うバックはありますか?」と、飲んでしまいたくなるような愛らしい声を発し、女性店員ですら健吾に見とれるほどだった。


「これなど如何ですか?」


 陳列コーナーに導かれた健吾はその値段に暫しボオォーとし無言で見つめると「これ僕にプレゼントさせて下さい!」と、突然見知らぬ男が顔色を赤くして健吾と店員を驚かせた。

 すると見る見る間に健吾の周りは見知らぬ男たちで溢れ店内は殺気に満ち女性店員は危険を感じて健吾の腕を腕を掴むと奥の事務室へと連れ立った。

 男たちは店内で轟々と怒鳴り大声を上げそれに吊られるように外から男たちが押し寄せ我も我もと健吾への貢物の争奪戦が繰り広げ似れた。

 そして女性店員はソッと事務所の裏口へ健吾を案内すると「ここから脱出して下さい」と、丁寧に挨拶して健吾を裏口から店外へ出した。

 健吾は結局、パックを買うことが出来ないまま裏道を通って別の店に行くことにしたものの、歩いているうちにドンドン健吾の後ろは人集りになりその様子はまるで軍隊行進のように物々しく殺気だっていた。

 そしてさっきの店では高価なハンドバックが飛ぶように売れ在庫が尽きるほどの大盛況に変った。 そんなこととは気付かない健吾が立ち止まる度に後方の男たちは風に乗って飛んでくる健吾の香りにウットリして瞼を閉じ静まった。

 ザッザッザッザッと、軍隊行進のように健吾が進むたびに靴音が街中に広まり健吾が止まればピタリと靴音が止まり辺りは静まり返った。 


「何だろうコイツら……」


 健吾が立ち止まって後ろを振り返ると何百人にもなる男たちがまるで神でも見るかのような眼差しで健吾を見入り、健吾が突然ダッシュすると後ろの男たちは「うおおおぉぉー!」と、ダッシュし健吾がピタリと止まると男たちは静まり返ってピタリと止まった。

 男たちは殺気だち健吾が行く方向を個々に予想しつつ息を呑んで静まり返り、その数はドンドン増えて行きどれだけの数なのか解らない程になっていた。 そして再び歩き出した健吾を追うように軍隊行進が始まると健吾は右に左にフェイントを掛けると軍隊行進は「うああああああ! うおおおおお!」と、殺気だった大声を上げて右に左に大きく蛇行しそれはビックウェーブのように大揺れに揺れた。

 するとすかさず健吾はサンダルの音を立てて真っ直ぐにダッシュし健吾の後方は左右と直進で団子状態で騒然とし、数十人の男たちに追われるように健吾は別の店に入った。 するとそこでも同じように店内は健吾を追う男たちで溢れ返り、健吾が「アレを見せて」と、店員に言えば男たちは「うおおおおー!」と、一つのバックを奪い合い、健吾が「アレも」と言えば「うおおおおおー!」と、争奪戦が始まる始末。

 数人居た店員たちは清算カウンターにバックを持って殺到する男たちの対応に追われたが、健吾は物々しさの中で椅子に腰を下ろすと一息付いて脚組して辺りを見回した。 すると男たちは「アレを見た! コレを見た! そっちを見た!」と、ハンドバックを奪い合いカウンターは押すな押すなの大盛況にパニックになった。

 結局、ここでもハンドバックを買えなかった健吾は「何でコイツらついてくるんだ!?」と、不機嫌な表情を浮かべ店を出ようと出入り口に向かうと突然、男たちは「サッ!」と、道を一メートルほど開けた。 そして健吾が店を出ると店内に居た男たちは一斉に出入り口に殺到した。

 そして店先でポツンと立ち尽くした健吾の車道側に一台のタクシーが突然、猛ダッシュして急停車すると「さあ! 乗って!!」と、健吾を乗せその場から急発進した。


「御嬢さん芸能人かい♪ 危なかったね~♪」


 運転手はよく芸能人を乗せると言い数キロ走った場所で車を停めると「ちょっと待ってて」と、車を降りた。 健吾はそのまま顔を下に向けてジッとしていると運転手が戻ってきて「これ使いなさい♪ これなら顔を隠せるから♪ わたしからのプレゼントだから遠慮は要らないよ♪」と、色の濃い大きめのサングラスを健吾に手渡した。

 そしてタクシーカードを健吾に渡すと「今日は料金はサービスでいいから次回から呼んで下さいよ♪」と、健吾に送り先を聞くと自宅アパートの裏側を指定した健吾は無事にタクシーを降りて自宅アパートへと辿りついた。 そして部屋に入るなりグッタリと疲れを見せた健吾はウエストベルトを外し窓にカーテンを引くとワンピースを脱いでドスンッとベッドに腰を下ろした。 


「そろそろ夢から覚めないとマズいな…」


 スリップの下から突き出た両脚の膝を見る健吾は鑑に映る自分を見入ると言い聞かせるように独り言を呟き、ゴロンと仰向けに両腕を枕にして天井を見つめた。

 そして「はあぁ~」と、大きな溜息をするとゴロンと今度は膝を曲げて横向きになって乳房の重みが移動するのを感じた。 


「どうすれば夢から覚めるんだろ……」


 スリップの上からケツを掻いて、ブリッと屁を垂れた健吾は美人の屁も臭いんだなと、ケツの辺りを手の平で仰いだ。

 既に自分(おんな)の身体を見たり触れたりするのに飽きていた健吾だったが、憂鬱が故にケツを仰ぐ手でスリップの上からスリスリしながらしなやかな感触を楽しむうち、健吾は疲れからウトウトしそのまま熟睡してしまった。

 そして蒸すような暑さの中で寝苦しさに目を覚ました健吾はその暑さに仰向けのままスリップを慌てて脱ぐと、続けてパンティーストッキングを脱ぎ捨てブラシャーをも外した。

 全てから解放された健吾は左右に寝返りを打つたびにプルプルプルーンと、揺れ動く乳房を邪魔に思いながら胸の辺りに激しい痒みを覚えた。

 痒くて痒くて耐えられないほどの壮絶な痒みに襲われた健吾はプルプルと揺れる乳房を手当たり次第に掻いたものの、一向に痒みが収まらない健吾は「ならば!」と、スキャンティーを「パアッ!」と、脱ぎ捨て一路、狭い風呂へと突進し熱い湯を身体に浴びたが一向に治まらない痒みにイラだって風呂から出ると今度はクーラーを前回にして前にたった。

 だが、健吾の胸の激しい痒みは治まるどころか激しさを増すばかりで遂に業を煮やした健吾は、両乳房を掻き毟るように両手の爪を立て無意識に左乳房の脇近くを掴んだ瞬間、凄まじく乳房から全身に走る痛みと高熱に絶叫して気を失った。



【四話】



「あうぅ… どうしたんだ俺は……」


 脂汗を額に滲ませたまま健吾はベッドの上にうつ伏せに倒れている自分を見て辺りを見回し、記憶を辿りながら起き上がるとベッドの上に落ちているヌーブラを見て身体が男に戻っていることに驚いた。

 ようやく長い夢から覚めたのだと思わず笑みを零した健吾はベッドから降りて部屋に灯りをともし、ベッドの上を見て唖然とした。 ベッドの上に置かれた女物の下着とストッキングを見た健吾は首を小刻みに左右に振り「えっ!?」と、顔の表情を曇らせ床に落ちている薄水色のワンピースと腰ベルトに目を奪われた。


「そ! そんなはずないだろう! 夢の中の出来事が! 有り得ない!」


 健吾はベッドの上のパンティーストッキングを手にとって部屋の中を見回して時計を見ると、気絶する直後と時間にズレがないことに再び驚いた。

 そしてベッドの上の下着と床に落ちているワンピースと腰ベルトを一箇所にベッドま上に集めると、慌てて震える手てせ財布の中身を数え始めた。


「そんなアホな!! 夢の中で使った金なのに!」


 家賃を振り込もうと入れていた財布の金が減っていることに愕然とした健吾は、そのまま床に崩れて今までのことが全て現実だったことを悟った。

 だが、現実とは言いながらも自分が思い描いていた美しい女性になっていたなどとは到底信じられない健吾は、財布の中に入っていたタクシーカードを見て震撼した。

 そして座卓に置いてあるタクシー運転手から貰ったサングラスを手に、一番最初から最後までを記憶を一つ一つ確かめる健吾はベッドの上に置かれたヌーブラを見て「もしや!」と、腕を伸ばしてそれを掴んだ。

 健吾は掴んだヌーブラを目の前に、この場で着けてみようか悩んだ末にそれを座卓の上にポトリと置いて、そのまま風呂へ移動し冷たい水で顔をジャブジャフと洗い流すとそのまま温めのシャワーに身体を浸した。


「もしあれで本当に女に変身できるとしたら…… 痛ええぇぇーー!!」


 健吾はハンドバックを買うために街中を歩いていた時のことを思い出しながら身体を泡立て股間を洗い、何故かパンパンに溜まりに溜まった睾丸に触れて飛び跳ねるような痛みに顔を顰めた。

 余りの痛みに健吾は両手で睾丸を左右から抱くように支えると、肉袋の中の玉が病気にでもなったかのように腫れていて触れているだけでも激痛を感じて顔色を変えた。

 健吾は睾丸の腫れが変身と何か深い関係があるに違いないと思いながらシャワーを終えると首からタオルをブラさげて風呂場を後にした。

 タバコに火をつけ自分が女としてさっきまで自分が履いていたスキャンティーを左手に、その内側の汚れ見た瞬間、突然健吾の一物はムクムクムクッと大きく聳え立ち硬さを自らの根元に伝えた。

 美人が一日中着けていたスキャンティーとは言え、その美人が自分であると認識しながら男の悲しい性(さが)か健吾は、タバコを消すと右手で硬く聳えた肉棒をグイッと握り左手にもったスキャンティーの内側に鼻先を押し付け「スウゥー!」と「臭っせええぇぇぇーー!!」と、深く吸い込んで口からの吐息を外に吐き出し余りの激臭に涙目になった。

 何とも言えない熟成した美女の使用済みスキャンティーの匂いに、健吾は涙目で右手は忙しく前後を繰り返しスキャンティーを吸い込む鼻と吐き出す口は蒸気機関車のように給排気を繰り返し健吾の舌がスキャンティーの当布の上を滑る頃、前後する右手はその動きを益々早めた。

 そして散々匂いを嗅ぎ舐めまわしたスキャンティーに風味が無くなると健吾はスキャンティーで肉棒を包んで尚も手を忙しく前後させ、数分後に濃厚な男の体液を根元をズキズキさせながらティシューにタップリと撃ち放った。

 だがそれだけでは腫れた玉は元に戻らず、健吾の左手は下半身を覆い包んでいたパンティーストッキングを掴むと再びその濃厚な女の匂いに、給排気を早めながら手の動きを加速させ二度目のフィニッシュを向かえブラジャーで三度目に突入しスリップで四度目を撃ち果たした。

 健吾の睾丸は次第にその腫れをひいて普通の大きさに戻ったものの精神的にも体力的にも凄まじい衰えをこのとき感じていたが、フラつく足取りで立ち上がるとヌーブラを台所で水洗いし自然干しして買い置きのカップメンとレトルトライスで腹を満たした。

 そして使ってしまった家賃をどうしようかと安いコップ酒を飲みながら考え始めた健吾は、ハンドバックを買おうと街中で男たちに追いかけ回されたことを振り返った。 


「待てよ… アレが夢じゃないとすると……」


 健吾は台所の上に干してあるヌーブラを見つめ数秒間動きを止めると、男たちが口々に高価なハンドバックを自分にプレゼントしうとする必死な形相を思い出し「これを使えば家賃分取り戻せるかも知れない」と、神妙な表情を浮かべた。

 そして翌朝の七時、目覚めた健吾はヌーブラが乾いているのを確認すると持ってきて座卓前の床に胡坐して、深呼吸を一度してからヌーブラを胸に装着した。


「痛ええぇぇー!! うぎやあああぁぁー!!」


 胸に装着したヌーブラを眼下に見た健吾は、ヌーブラから無数に伸びた同色の針金のような物体が自分の胸の肉に突き刺さるのを見た瞬間、壮絶な痛みに絶叫して気を失った。

 そして数時間も痛みに耐えていたと思っていた健吾が目を覚まして時計を見ると、装着した瞬間の時間に戻っていることに気付き、痛みの残る中で床から起き上がると健吾は眼下にプリンプリンした乳房と丸みを帯びた美女になっていることに驚愕した。


「やっぱり夢じゃなかった!!」


 健吾は目を丸くして自分の身体を見回すと立ち上がって鏡にグルリと全身を写し、その美貌たるやに頬を紅く染め照れながら男物のトランクスからバンティーに履き替え、ブラジャーとスリップそしてパンティーストッキングを下半身に密着させた。

 そして白いブラウスに深スリット入りの膝上黒タイトスカートを纏うと、鏡に映った自分が美女とは言えスッピンであることに違和感を覚えた健吾は、ついでに「化粧道具も買ってもらうか」と、鏡の前で可愛らしい笑みを浮かべると、時間が来るのを待ってアパートから外へと向かった。

 健吾はアパートの近所で目立ったも仕方ないと、サングラスを掛け人目を避けるように歩き始めること十分「そろそろいいだろう」と、サングラスを外しブラウスの胸元に掛けた瞬間、何処からともなく沸いたように健吾の後ろは男達で溢れ街へ行くためのバス停につくころには付近は催眠術に掛かったように男たちで埋め尽くされた。

 商店街の近くのバス停をグルリ取り囲む男達は殺気を漂わせ健吾に声をかけるチャンスを伺い、健吾はそれに気付きながらも目を合わせないように両手を前側にバスを待った。

 すると猛スピードで近づく数台の乗用車が健吾のいるバス停で急ブレーキをかけ降りてきた数人の男達は健吾に声を掛けようとして掴み合いの喧嘩が始まった。 そしてそれに周囲の男たちも加わって辺りは騒然とし大乱闘に発展、バス停に立つ健吾を中心に半径五メートルの円を描いてバトルが始まった。

 健吾は周囲の光景と騒音にイライラし愛らしい顔に険しさを滲ませると、大きな声で「うるさあああぁぁーーーーーーいぃ!!」と、黄色い声を高らかに発した。 その瞬間、二百人以上の大乱闘はピタリと静まり一斉に男たちの熱い視線が健吾に注がれた。


「今日、私は○○に化粧道具とハンドバックを買いに行く予定です!! もしみんなが私のことを思ってくれるなら! 静かにして欲しいの!!」


 健吾の可愛らしい声が高らかに付近に届くと男達は一斉にその声にウットリし、癒されたかのごとく萌え萌えの空間に男達はドップリと浸った表情を個々に見せ静まり返ったと思った瞬間、車の男達もバイクの男達も自転車の男達も徒歩の男達も一斉に健吾の行き先を目指してその場から一瞬にして姿を消した。

 そして健吾はサングラスを再び掛けてバスに乗ると座席で俯いたまま到着するのを只管待ち続けた。 だがそんな健吾を見逃すはずもなく健吾に魅かれるうに一人、また一人と健吾の座る座席に男が近づきスリットから零れる美味しそうな脚に男達の目は充血していった。

 そんなところへ次のバス停で乗ってきた体格のいいオバサンが男達を腰でガンガン蹴散らし「ドッコイショ!」と、健吾の窮地を救った。 男達は窓際にいる健吾が見たくて何とかして見ようと試行錯誤したが結局、巨漢のオバサンに阻まれて願いは適わなかった。

 だがバスに揺られること十数分、たまたま隣りの巨漢オバサンと降りる場所が一緒だった健吾は一緒に立ち上がるとオバサンの後をついて降り口に移動したものの、突然の太ももへの何者かのタッチに「キヤアァーー!」と、無意識に悲鳴を上げた健吾にバスの中は再び騒然になった。

 
「コイツだああ!! コイツが痴漢しやがったあ!!」


 数人の男たちがバスの中央部で怒声を発し健吾に痴漢したと思われるサラリーマン風の男を取り囲んだ。 そして次のバス停の直前でバスは騒ぎに急停車し、健吾は前に立つ巨漢オバサンの背中に救われ難を逃れるべくバスからトッとと下車したが、一瞬とは言えストッキング越しに触られた肌の感触が脳裏に焼きついた。

 自宅近くの商店街で衣料品店のオバサンに尻を、そしてバスの中での痴漢に太ももを触られた健吾は触られる快感(よろこび)を忘れられなくなっていた。 だが、巨漢オバサンの後ろを歩いていた健吾は目的地の辺りに黒々とした人集りを見た瞬間、大きな溜息を付きながらも「あのくらいならいいや…」と、後ろに視線を感じて振り返った瞬間! 押すな押すなの男集りの山に顔色を青くし巨漢オバサンをバリケードにして俯き加減でデパートを目指した。

 だが健吾を追う男達は群集となって車道と歩道を塞ぎ交差点は人と車がゴッた返して辺りは車のクラクションで大きな渦と化した。 そんな中、健吾は巨漢オバサンの後ろを付いて行くものの店先の群集に行く手を阻まれ、健吾は再び「みんなー! 静かにしてえぇぇー!!」と、店の前で両手に拳を握り叫んだ瞬間、辺りはウッソウとした森林地帯のように静まり返った。


「私はここで化粧用品とおー! ハンドバックを買うのおお!! 誰か私にプレゼントしてええぇぇー!!!」


 静まり返った大都会の街中、健吾の声だけが空を駆け巡りビルとビルの間にこだました瞬間、何千、何万という群集が「うおおおおおおーーー!!」と、デパートの玄関へ健吾を菱形に避けるように突進し飲み込まれていくと、車を降りた男達もまた次々にに群集化してデパートへ飛び込んで行った。

 まるでアニメのようにそして映画のように男達は健吾の声に催眠術に掛かったように一心にものすごい勢いで掛けぬて行った。 だが健吾は「こんな状態ならプレゼントを受け取ったら殺し合いになりかねない…」と、近くにあった交番へと飛び込んだ。

 すると交番の警察官までもが健吾を見た瞬間「うおおおおおー!!」と、交番を飛び出しデパートの玄関へ突進して行ってしまった。 健吾はホトホト困り果て交番の中のパイプ椅子に力が抜けて座り込んでしまったところへ婦警さんが来てくれた。


「そおぅ…… それは困ったわねぇ~ でもここなら取り敢えず安全よ♪ 少し様子を見ましょう♪」


 健吾の魔法のような催眠効果は女性には効果なかったのか、交番へ来た婦警さんは親切に対応してくれると出入り口の引き戸の前で外を見張った。

 そして十分ほど経過すると、再びデパートの出入り口から「うおおおおおおーー!!」と、言うものすごい群集の雄たけびと足音が聞こえ、健吾を震え上がらせそれに気付いた婦警さんは健吾を自分の身体で隠したものの、群集が「居たぞおお! アソコだあぁー!!」と、交番を数万の男達が一斉に取り囲んで「うおおお! うおおおお!」と、雄叫びを上げ始めた。

 そんな光景を目にした婦警は身体をガクガクと震えさえ顔色を真っ青に変えた、そしてその瞬間! 男の警官が血相を変えて交番に入るや否や「プレゼントを持って参りましたあぁー!!」と、高価そうな小箱を健吾の前に跪いて両手で差し出した。

 警官の姿に婦警は目を丸くしてそれに見入り唖然とし、警官から小箱を受け取った健吾は黙ってそれを受け取ると「お願い! 私を助けて!」と、跪く警官を見入ると「ムクッ!」と、立ち上がった警官は腰ベルトとから拳銃を取り出して天に掲げ、入り口に立って黒々プレゼントを手に持つ群集をグルリと見回した。

 健吾はその勇壮果敢な警官の背中に身を潜めると「お化粧道具が欲しいの…」と、耳打ちし「フッ~」と、軽く息を吹き掛けた瞬間、警官は「次は化粧道具だあああーー!!」と、群集に向かって怒声を放った。 その瞬間警官の怒声に静まり返った群集は「うおおおおおー!!」と、デパートの入り口へ轟音を立てた。

 そして再びその光景を見た婦警は後ずさりして奥の別室へ姿を隠し、健吾は警官に隠れるようにしてパイプ椅子に再び腰を掛けると「兄が御家賃を払えなくて困っているの…」と、切なげな声を警官の背中に呟くと「よっしゃああ!」と、ガッツポーズを決めて健吾に「振込先は何処?」と、健吾を振り返ってウットリ見つめて優しく尋ねた。

 そうしていると再びデパートから轟音が立ち上がり、健吾に受け取って貰おうと一番を目指した群衆が交番に突進して、それを見定めるように警官は入り口に立って拳銃を空に向けた。 群集は両手に様々な大きさのデパートの袋を持ち中には化粧台ごと抱える者も汗だくになって警官に「渡してくれえぇー!! プレゼントだあぁ!」と、血相を変えた。

 すると警官が拳銃を持った手を左から右方向へゆっくりと振ると、騒然としていた辺りは突然静まり返り、警官はゆっくりと健吾を振り向くと「好きなモノを選んで下い御嬢さん…」と、優しい笑みを浮かべた。 健吾は警官の前に立つと「みなさん! ありがとうございます!」と、少し大きな声を辺りに掛けると熱い眼差しで見つめる群集の中から化粧道具が入った袋を受け取った。

 その瞬間、群集は「うおおおおおー!! パチパチパチパチパチ!」と、雄叫びとともに盛大な拍手が空いっぱいに響き、健吾は笑みを群集に向けた瞬間、群集は感動したとばかりに号泣し始めた。 そんな中、健吾は警官の後ろに再び戻ると警官は拳銃を持つ手を空に向けて数回左右に激しく振って辺りを静まらせた。


「このお嬢様の兄が家賃を払えなくて困っているらしい! 九万円! 振込み先はここに貼っておくから宜しく!!」


 警官は健吾から聞いた健吾の預金通帳の番号を書いたメモを入り口の引き戸の窓ガラスに貼り付けると、引き戸を閉めて中へと入った。 健吾は貼られたメモに群がる群衆を前に警官に立ち上がって笑みを零すと、警官は立ったまま感無量の涙を流し群集はそれに気付かぬまま近くの銀行を人で埋め尽くした。 だが健吾はその数に戦々恐々と警官に「あんなに親切な人が… でも私… 怖い…」と、表情を曇らせると「日本は親切な人で溢れている! 貰っておきなさい!」と、沈む健吾を元気付けた。

 そんな警官に「家の近くまで送って頂けませんか…」と、切羽つまった表情を見せると、警官は「了解!」と、健吾に敬礼し不動の姿勢を示し、奥に部屋に居る婦警にパトカーを取ってくるように命じ、健吾は交番をグルリと取り囲んで山積みされたプレゼントを婦警に「良かったらこれ貰って下さい」と、出て行く瞬間の婦警に笑顔を見せた。

 すると男性警官は「あぁ… なんて御優しい御言葉…」と、根性ドラマのように号泣して右腕で涙を拭き、婦警がパトカーを持って来ると何十台ものパトカーが騒ぎを聞きつけ交番へ向かって来ると、婦警が「巡査部長が! 巡査部長が!」と、警官を大勢の警官達に指差して教えた瞬間「うおおおおーー!!」と、警官達は健吾目掛けて突進し婦警の目の前で全員が跪き婦警を呆然ささせた。

 
「さ、お足元をお気をつけ下さい」


 健吾は警官にエスコートされパトカーの助手席に乗ると警官はサイレンで群集を蹴散らしながらチラチラと健吾の右太ももを見て鼻血を滴らせ遠回りな道を進んで途中からサイレンを止めて走行した。

 そしてハンドルを握る警官に「お巡りさん優しいのね♪」と、微笑みかけた瞬間、警官は鼻血を「プファー!」と、噴出しフロントガラスを白いティシューで埋め、自宅近くで降りようとした健吾に「もし何かあれば私に連絡して下さい!」と、名刺を手渡して名前を尋ねた。

 健吾は警官に二度と会うことも無いだろうと「麗華」と名乗り、深々と頭を下げて建物と建物の間に姿を消した。 警官は健吾をウットリして見送ると健吾が座っていたシートに頬擦りに匂いを嗅ぎ再び鼻血を悪化させた。

 そして人目を忍んで自室に戻った健吾は台所で水を飲むと「ブリュ!」と、屁を垂れてタバコに火を点け高価そうなハンドバックを取り出してニッコリと笑みを浮かべると「ブリュッ!」と、再びへを垂れて化粧道具の入ったデパートの紙袋から大きな箱を取り出した。

 すると健吾はタバコを吸いながらブラウスのボタンを全て外し「あんまりモテるのも困りものだよ♪」と、笑いかけて脱ぐとベッドの上に置いて床に座ったままで深スリットのタイトスカートを脱ぎ、再び「ブリユゥッ!」と、大き目の屁を垂れ、鏡に映る美女に「こんな美しい人でも屁は垂れるんだよな~」と、笑いかけた。

 そして胡坐をして手を伸ばして小さな冷蔵庫から麦茶を出してゴクゴク飲んだ健吾は、自分の股間から俄かに立ち上る成熟した女の匂いに腰を後ろに傾げ「パタパタ」と、雑誌で股間を仰いで匂いを蹴散らした。

 


【五話】



「浜田くん! まだ終わってないのおぅ! 全くグズなんだからぁー! これから会議があるのにぃー!」


 健吾は朝から同期入社で高卒のイヤミと呼ばれる高野真由美に頼まれた書類作成が間に合わず、叱責されていたが口答えせず黙って仕事をやり遂げようと黙々と手を動かしていたが、イヤミなる女子社員は健吾の前から書類を奪い取るとそのまま会議室へとその場から立ち去った。



女子社員:あっひゃひゃひゃー♪ モスラがまたイヤミさんに叱られてるわぁ~♪ モスラに頼むと遅くなるの知っててああやってさ~ クスクスクスクス……
 ヒソヒソ話しで盛り上がる数人の女子社員たち。


女子社員:ああしてモスラを虐めるのがイヤミさんの月曜日じゃん♪ 毎週月曜はイヤミさんのモスラ虐めでスタートよぉ~♪
 ヒソヒソ薄笑みして健吾を遠くから見る女達。


女子社員:だけどさぁ~ モスラもよく黙ってるわよね~♪ 役立たずのモスラだって一応は係長なのにねえ~♪ あっひひひひ♪ まあ、何でもやりますの係だけどさ~♪
 辺りをキョロキョロ見回して顔を並べて声を弾ませ、部長の小山を見るなり女達はチリジリに消えた。



小山:浜田君♪ すまんがタバコを切らしてしまってね。 君、お使いを頼まれてくれんか♪
 夢中になって机に噛り付く健吾の肩をポンと軽く叩いた小山は右上を見上げる健吾にニッコリと笑むと小銭を手渡した。


健吾:あ… あう… あ… はい部長……
 歯切れの悪いいつも通りの返事をして席を立つ健吾は小山に一礼するとフラフラと千鳥足で部署を出て行き、相変わらず山になって机を埋め尽くす書類を見て感慨深げに右手を頬に当てた。

  
小山:津崎くん! ちょっと浜田君のことでちょっと……
 小太りで丸顔の小山は尖った顎のバッタのような顔した課長の津崎を手招きで呼びつけ何処かへ消えてしまった。


 その頃、本社ビルから外へ出た健吾は真っ青な空を見上げ吹き抜ける温い風に髪の毛を靡かせ一路コンピニを目指した。

 周囲はキビキビと書類の入ったカバンを手に営業へ向かうエリート風の男や女たちで溢れ、歩道で立ち止まって空など見上げている者もない場所で、健吾は小銭を落とさぬよう握り締めた。

 
オバちゃん:いらっしゃい♪ 健ちゃん♪ 今日は誰かのお使いかい♪
 小銭を握り締める健吾の右手を見たコンビニ経営の馴染みのオバちゃんはニッコリ笑ってタバコの棚を見上げた。


オバちゃん:今日は専務さんかえ? それとも常務さん?
 タバコ棚に腕を伸ばして健吾に尋ねた。


健吾:ああ。 うん。 ああ。 きょうは部長さん♪ あは。 あははは♪
 オバちゃんにタバコ銭を渡してガム一枚を貰い満面の笑みを浮かべる健吾はルンルン気分で店を出た。

 そして青々とした空を見上げると両手を空に向け大きな背伸びして白い歯を見せた健吾は風に揺れる街路樹の葉を見て足を薦めた。


「部長。 遅くなりました♪」


 部署に戻ってタバコを二つ手渡した健吾に、笑みを浮かべてキャンディーを数個手渡す部長は、課長の津崎に「後は頼んだよ」と、言い残すと仕事場からそのまま老化へ姿を消した。

 そして健吾が自分の席に戻ろうとすると、課長の津崎が健吾を呼び止めた。


津崎:浜田くんちょっと… ああ、いやいい。 すまんな呼び止めたりして…
 健吾を呼び止めた津崎は何か言おうとしてそれを取りやめるとそのまま部屋を廊下へと移動し、健吾はそのまま自分の席に戻り再び仕事に身を入れた。

 一々相手のことを詮索しない性格の健吾は黙々と山積みの書類整理に追われ、誰もいない部署の静けさに壁掛け時計を見て昼休みに入っていたことを知った。

 そして健吾は再びオバちゃんのコンビニへ出たものの財布の中身を見て唖然とし、やむ得ず預金から昼食代を引き出そうと再びオバちゃんのコンビニのATMへ向かった。


オバちゃん:健ちゃん♪ 今からかえ♪ みんな当に食べ終わってる頃なのに精が出るわね~♪ 健ちゃんの好物弁当、一つとってあるからね♪
 ニコニコして健吾に話しかけるオバちゃんは奥の事務室をチラッと見た。

 健吾はオバちゃんに頷くとそのままATMへと向かって残高照会をした瞬間、首を傾げたままモニターを見る目が点になりそのまま石地蔵のように固まった。

 そしてモニター画面に表示された数字を人差し指で数え始めた健吾は再び最後に固まり、前日のデパートの一件を思い出し、呼吸が増し顔が火照るのを感じた健吾は両手で顔を覆った。

 何度数字を数えてもそこには「四億六千五百五十三万八千円」と、言う巨額が入っていることに健吾は両膝をガクガクさせ何度も何度も慌しく数字を確認すると、五百八十円だけ引き出してそのままオバちゃんの元へ千鳥足で移動した。


オバちゃん:どしたの? 健ちゃん!? 大丈夫!?
 顔色こそ変っていないが様子がおかしい健吾を見抜いたオバちゃんはカウンター内の小さな脚立に上ると健吾の額に手を当てた。

 健吾はボオォーと立ち尽くして熱を計ってもらうとオバちゃんの目をジーッと見つめると「あう… あう…」と、返事した。

 
健吾:オバちゃんありがとう……
 コンビニを出た健吾はフラつきながら歩道をテクテク歩きだし、立ち止まっては巨額を考え再び歩き出してはまた止まった。

 そんな健吾が買物袋を提げて会社へ着くと部署の入り口前の廊下の壁が俄かに騒々しかったが、頭の中が巨額で埋まっている健吾はそれ所ではないまま部屋の席に戻ると弁当を食い始めた。

 すると廊下で騒いでいた大勢の女子社員たちが健吾のそばにやってきて左右から挟んで「浜田係長! 課長昇格おめでとうごさいまーーす♪」と、健吾の肩の左右に手を乗せて右に左に大きく揺すった。


 その瞬間!
 
 
 健吾は大好物のコロッケを口に入れる直前、ポロリと床にそれを落とし、それに気付いた女子社員達は一斉に顔色を変えゆっくりと後退りを始めた。

 顔を下に向け目を床の一点に集中させた健吾は全身をプルプルと小刻みに震えさせ両手を置いた書類山積みの机をガシガシと揺らせた。 

 女達はその光景に顔色を変えコッソリとその場から離れるとドアと壁の陰から顔を縦に並べて目を丸くして見据え、食事中の健吾に近づいてはいけないという部署のルールを忘れ近づいたことで健吾の爆発を恐れた。

 食事中の健吾にはあの通称イヤミと呼ばれる高野真由美ですら近づかないほど健吾の顔は見る見る間に大魔神のように変化したが、頂点に達した瞬間、見入る女子社員達は顔を顰めたものの健吾は何故か怒りを沈静化させた。

 いつもなら椅子の一つや二つ飛ばすはずの健吾はこのとき、心の中で「これはコロッケ弁当ではなく、漬物弁当なのだ」と、自分に言い聞かせ帰宅したら「コロッケ弁当を買おう」と、巨額の残高を少しだけ使わせてもらおうと考えた。

 そんな健吾を女子社員達は戦々恐々としながら見定めると始業開始とともにチリジリに何処かへ消えて行き、健吾もまた黙々と自分の仕事に没頭し廊下の張り紙など見る時間も無いままに終業時間を経て、尚も九時までのサービス残業に打ち込んだ。

 そんな姿を遠くから見守る守衛さんは廊下で健吾の昇進をひそかに喜び、同僚達や後輩や先輩たちは居酒屋で健吾を肴に盛り上がっていた。

 健吾は何も知らないまま九時過ぎに守衛さんから声を掛けられペコリと頭を下げて会社を後にした。


 そして自転車を漕ぎ続ける健吾はいつもののようにコンビニでコロッケ弁当を買い、自宅アパートへヨレヨレになって帰宅すると、散らかった部屋に置かれたヌーブラをチラッと見て心の中で「ただいま」と、同時に座卓の前に胡坐して弁当を食い始めた。

 その間、健吾はコロッケから一瞬たりとも目を離さず見入ったまま黙々と弁当を食いそして最後に残ったコロッケを「パクリ」と、頬張るとこの世の春とばかりに満面の笑みを浮かべた。

 タバコに火をつけいつもと同じように一口吸うと上着を脱いでスボンのベルトを緩めベッドに寄りかかりながら天井を見つめ、一日が終わったことを自分に言い聞かせるも昼に床に落としたコロッケが今、何処でどうなっているのか考えてもいた。


 健吾はタバコを吸い終えるといつものように狭い風呂場に入り、いつものように身体を縮めて縦横九十センチの箱のなかに身体を丸めた。

 そして預金残高を思い出し「返さなきゃ…」と、家賃分を差し引いた全額をどうやって返すのかを考えた。 誰が振り込んだのかもわからない巨額をどうやれば返金出きるのか健吾は頭に手拭いを乗せて考えた。

 
「そうだ! あのお巡りさんに相談して!」


 健吾は俄かに思いついた秘策に風呂を出ると身体を乾かして、干してあるヌーブラを全裸の胸に装着した。 そして数時間の痛みと苦痛に耐え目を覚ました健吾はその痛みと苦痛が幾分和らいでいることを悟った。

 そして時計を見て、渡された警官の名刺の携帯へ電話をかけながら一日ぶり会う女の自分と鏡の仲で再開した健吾は、電話が繋がった瞬間「麗華です。 覚えていますか?」と、声を細めると相手の警官は「どちらへお掛けですか? 貴女のお名前に心当たりは無いのだけど…」と、間違い電話のごとくな対応に、健吾は前日のことをさり気無く伝えた。

 だが警官は麗華(けんご)に「昨日はそういうことは無かったが…」と、不思議そうな声を麗華(けんご)に聞かせた。 間違い電話と警官に伝えた健吾は電話を切ると悔しし表情を浮かべ警官の名刺をくずかごに破り捨てると、肌寒さに箪笥から女物の下着を出して取り敢えず肌を覆うと、腕組してベッドに寄りかかった。

 タバコに火を灯した健吾は鏡に映った麗華の悩ましい姿を見ながら「みんな記憶がなくなるのか!?」と、何も覚えていない警官のことに質問を重ね「てことは… あの大金のことも誰も?」と、困惑した表情を浮かべ「これじゃ返せないじゃないか」と、額の汗をタオルで拭いた。

 そして冷蔵庫に手を伸ばして缶ビールを取ろうと四つんばいで手を伸ばした瞬間、座卓にあったテレビのリモコンスイッチを触れた。 テレビ画面が明るくなるのを横目にビールを取り出した健吾は再びベッドに寄りかかって缶ビールを開けた。

 
「昨日、○○交番に突如現れた大量の小箱に入ったハンドバックと化粧道具は今も引き取り手の無いまま………」


 何処かのテレビ局のリポーターがマイク片手に交番の屋根よりも高く積み上げられた品々を険しい表情で伝え、交番をスッポリと包む量に道行く人たちは驚きの顔してそれに見入っていた。

 健吾は婦警さんにあげたことを思い出していたが、テレビに映った大型トラックで数十台はあろうかという量を見て息を飲みながらテレビをオフにした。


【六話】



「どおーですこの広さ! しかも最上階で中古ながら内装からバスやキッチンまで新品入れ替えでこの価格なら借りるより遥かにお得ですよ♪」


 1ヵ月後、健吾は女物の衣類と男物の衣類整理をするべく不動産屋の担当者と一緒に街中の二十階建てのマンションの部屋を見に来ていた。

 不動産屋の言うとおり二十階建ての最上階は付近に高層物のない景色も見晴らしも最高だった。 借りれば保証人やらなんやで面倒くさいことになることを嫌った健吾はこの4LDKのマンションを一括現金払いで購入し、管理費用やら積立金やらも二十年分を前金で納めた。

 悪いことと知りつつも返そうにも返すことの出来ない金だったが、増えていく女物の置き場にベッドの場所も取られる状態を打開すべく今回の事態となった。

 今、住んでいる場所かに勤務先までも二十五分以上の短縮になる上、街場までも近い立地条件に健吾は後ろ髪引かれる思いで五千万円を現金で納めた。

 そして不動産屋のサービスで引越しを終えた健吾は一人で住むには広すぎる程に広い4LDKを一人で見て回ると「ここは麗華の衣裳部屋だな」と、新しく買い入れた彼女に相応しい洋服ダンスを見て笑みを浮かべながら、自分をリッチにしてくれたヌーブラが収められた桐の化粧箱の前で頭を下げた。


「麗華さえ傍にいてくれたら俺は…」


 旗日を利用しての引越しは丸一日を要したが衣類以外に荷物の少ない健吾は、夜の九時にはホッと一息つける状態になっていた。

 悪いと思いながらもボロの自転車からミニバイクに乗り換え、ヨレヨレの背広を安物だが新しいのに替えた健吾は、名ばかりとは言え課長に相応しい様相を自分なりには見せていた。

 偶々、空きのあった庶務課長のポストを貰った健吾だったが相変わらずの部下無しだったが、誰にも邪魔されずに黙々と仕事に打ち込める納戸のような小さな小部屋を貰ったことで、健吾は自分なりには充実していた。

 そしてそればかりか、麗華(おんな)になって街を歩けば追い掛け回されるだけの最初の頃とは違い、ヌーブラにモテ過ぎは困ると頼んだ所為なのか追いかけ回されることが少しだけ軽減した。

 缶茶とコロッケ弁当が大好物だった健吾は知らぬ間にドンドン贅沢な食事が普通になっていった。 そして月日がかさむうちに麗華になっている間は女言葉と可愛らしい仕草が無意識に出るようになって、変身時の痛みや熱も殆ど出なくなっていった。

 そして当然のことながら男女の関係を迫る紳士も多くその都度、無意識ながら口から出る断り方に健吾本人も度肝を抜かれることはシバシバだった。

 だが麗華になっている時の健吾は徐々に「この紳士(ひと)になら触れられてみたい」と、思うようになりそれを抑える別の自分が身体の中にいることもシバシバだった。

 そのうち頭は二分割されたように相手を欲しがる麗華と、相手は男なんだと引き止める健吾が明確に二人いることに気付いて行くものの、あわやキスを許してしまいそうになる場面も登場した。

 だが健吾は時間の経過とともに「麗華になっている間だけなら男に触れられて見たい」と、男に愛欲される気持ちよさを想像してベッドの上で自慰する日も増えつつあった。

 そして健吾は次第に自慰では満足出来ずに熟した肉体を持て余すように麗華側に近づいて行った。

 
 ある日のこと健吾は麗華に変身して夜の街をいつものように漂っていると白髪交じりの五十代の紳士と出会った。 大手企業の重役の名刺を差し出す彼は清潔感ある爽やかな印象で、魅かれた健吾はその紳士とホテルのバーで会話を楽しみそして彼の部屋へ導かれた。

 彼の部屋でウインドーから見える夜景を見ながら再び酒を口にした彼は、数年前に妻に他界され独り身であることを健吾に聞かせると一瞬寂しさを表情に滲ませたが直ぐに別の話題へと振り替えた。


紳士:失礼だが見たところ遊びで夜の街を俳諧しているようには思えないのだが……
 窓辺のソファーに対座する紳士は上着を脱ぎながら麗華に尋ねるように呟いた。


麗華:私を! 私を買って下さい!
 テーブルの向うにいる紳士を見つめて直ぐに俯いた麗華は自らの言葉に恥じ入るように無言になった。


紳士:話してごらん……
 麗華の表情に只ならぬものを感じた紳士はネクタイを緩めながら麗華の右横に移動すると、軽く麗華の右肩に手を這わせた。


麗華:父の会社が倒産して… 婚約者とも破談して… 
 紳士は麗華の話に表情を硬化させたが直ぐに優しい笑みを浮かべた。


紳士:今夜は帰りなさい。 帰って自分が何を言っているのか確かめるんだ。 第一、君は男を知らんのだろう見れば解るよ…
 俯く麗華を右側から覗き込む紳士は優しく麗華をなだめた。


 紳士は麗華の話を三十分ほど聞いた後、ソファーを立ち上がると別室へ行き再び戻ってくると麗華に「いくら必要なんだね。 言って見なさい…」と、再び麗華の右横に腰掛けた。


紳士:一千万か… 安くはないが君ほど美しい女性でしかも処女となれば一千万が一億でも高くはないな… その代わり君の操を朝までの条件なら……
 俯いたまま涙を零す麗華に紳士は額面を書いた小切手を手渡すと左肩を抱き寄せて足組してウイスキーを一口、含むとそのまま麗華に口移しした。

 
 麗華はその口移しに両肩を強張らせると紳士は直ぐに麗華から驚きの表情を見せて離れた。


紳士:まさか君はキスも経験が無いのかね!? まさか今回がファーストキスなのかね!? そ… そんな!?
 ファーストキスであることに無言で俯いた麗華を見た紳士は麗華に渡した小切手を奪い取って破ると、新しい小切手に数字を書き込んでそのまま麗華のバックに捻じ込んだ。

 紳士に導かれ寝室へ移動した麗華は紳士を前に後ろ向きになると、ドレスを涙ながらに脱ぎ紳士はその狂おしいほどの麗華の美しさに息を飲み部屋の明かりを小さく絞った。

 黒いスリーインワンから伸びたガーター紐と、それに吊るされた黒いガーターストッキングに包まれた見事なまでの脚線美を見て紳士は目を大きく見開いて呼吸することさえ忘れた。

 そしてガーター紐の下のレースの更に下に見える黒い小さなスキャンティーを見た紳士は、麗華が本気で自分の人生の全てを投げ出す覚悟が出来ていることに感服し、それならば男としての全てを麗華(このこ)のためにと意気込んだ。

 下着姿になった麗華は俯いたまま無言で心身の方を向くとベッドに腰掛ける紳士へと歩き出すと、紳士は両手で麗華の腰を受け止め腹部に頬を寄せるとそのまま両手を尻から裏モモへと滑らせた。

 麗華は触れられる感触に全身を強張らせ雨に濡れた子猫のように震えると、紳士は感動したように頬を離して真下から麗華を見上げ、ポタポタと落ちる涙の雫に麗華をそのままベッドへ抱き倒すと、麗華の肩から肩紐を途中まで外して両手を優しく顔に這わせると、口の中に舌を入れて麗華の唾液を貪った。

 紳士は腫れ物に触るような手つきで麗華に乳房を晒させると、純潔を守り通したビンク色のつぼみを唇で覆い隠し、両手で優しく丁寧に乳房を揺らしストッキングを脱がしスキャンティーを剥ぎ取って愛撫を繰り返した。

 麗華はそれだけで頭の中が真っ白になり自分に何が起きているのか解らぬまま、ギコチない身悶えと喘ぎ声を奏でそして突然の凄まじい陰部の奥への痛みに「痛あぁぁぁーーーい!」と、泣き叫んで紳士の硬いモノを体内に受け入れた。

 紳士は薄明かりの下でベットシーツを鮮血で染め痛がって泣く麗華を見て、何という酷いことを麗華にしたのだろうと自分を責めながらも、美しい裸体を見せる麗華に獣の本能を止められず再び麗華の身体を貪った。

 そして早朝、紳士をそのままに身支度を整えた麗華はベッドで眠る紳士に両手を前にして深々と頭を下げるとその場を静かに離れたが、それに気付いていた紳士は麗華と出会えたことを人生最大の幸福と位置づけベッドに漂う麗華の残り香に酔いしれた。


 


【七話】



 健吾はたった一晩で一億円という法外な金額を稼いだことに味をしめ、そして処女を失ったことで女として自信をつけたことも手伝って、同じように二度目のチャレンジに踏み切った健吾だったが、二度目にして健吾は思わぬハプニングに驚いていた。

 それは確かに凄まじい痛みを伴って処女喪失を果たしたはずなのに、麗華の身体はその痛みの元である処女膜を再生させていたことだった。 処女喪失後少しずつ女の喜びというモノを感じられると信じていた健吾にとって、それは信じられない事実だった。

 男に全身を舐められ味見される喜びと辱められる快感を満喫した後にやってきた処女喪失の痛みは慣れることの出来ない苦痛でしかなく、二度目だというのに麗華はベッドの上でその痛みに泣き叫び相手の男を喜ばせた。

 相手の男は美しい麗華の鮮血と痛がる様相に処女を貰った喜びに浸り多額の金額を援助したものの、麗華はショックを隠し切れぬまま相手の男のベッドから立ち去った。

 
「もしかしたらこの身体は永遠に処女再生を繰り返すのか!?」


 ならば確かめてやれと、男に戻った健吾は麗華に変身しドレスアップして夜の街へ相手を探しに出かけるも、結果は同じで麗華の身体は処女膜を再生し、それが四人、五人と回を重ねても麗華は女の喜びに浸ることはなかった。

 相手の男達は麗華の処女喪失に人生最大の喜びと御満悦だったが、男を体内に受け入れる度によみがえる処女喪失の痛みに麗華は女として絶望の淵に立たされていた。

 そして麗華に変身と同時に酷い生理痛に見舞われた健吾は「麗華にも生理があるのだ」と、知りショックを受けたが、過去を振り返り今の月日を重ねた時、今までは麗華が生理に突入しているときに変身したことが無かったことに気付いた。

 予め用意していなかったナブキンの変わりに手拭いを切ってパンテイーの中に折り畳んで入れた麗華は、股間をゴワゴワさせながらサングラスを掛けナプキンを買いに行くものの、何がどう違うのか解らず途方に暮れながらテレビCMで見たモノを買い込んだ。

 そして腹の奥からドゥルドゥルと降りていく得体の知れない不快な感覚に「女は一生この感覚と痛みを…」と、男として生まれたことに感謝しつつ薬店のトイレで血糊のベッタリついた手拭いを捨てナプキンに交換し、割れ目の溝にピタリとフィットするナプキンに違和感を覚えながらパンティーストッキングで下半身を包むとスカートの裾を直して麗華は買物袋を手に店を出た。

 大き目のツバつきの帽子を被り大き目のサングラスで顔を隠しても尚も麗華に魅かれる男達に健吾は追われながら、帰宅してタバコに火をつけた瞬間「男に戻ればいいんじゃないかー! 俺は一体何をしてんだよ! 全く! あっははははは♪」と、高級ソファーに座り高い天井を見て大笑いするも、男に戻った健吾は顔色を青ざめさせた。


「そ! そんな馬鹿な!!」


 男に戻ったはずなのに生理痛はそのまま残った健吾は、麗華同様に腹の奥の不快な感覚が肛門に達しているを知ると、慌てて全裸になってトイレに駆け込んだ。

 そして下痢したように肛門から便器に「ブフアァー!」と、吹き出た血糊を見て生理になったら男に戻っても無駄なんだと言う事に青ざめた。


「これなら麗華で居たほうが合理的だ…」


 健吾は再びヌーブラを胸に当てて麗華へと変身を遂げると再び女として生理痛に悩まされ、ソファーにゴロンと横になって痛みが和らぐのを待ったが頭痛は治まったが腹痛は延々と続いた。

 そして健吾は翌日、男に戻りトランクスの下にサニタリーショーツを履き肛門にナプキンを挟んで出社すると、腹痛に耐えながら黙々と仕事に打ち込みいつのまにか腹痛が治まっていることに気付いた。

 いつものように出社しいつものように机の上の書類に追われいつものように夜の九時に会社を出た健吾は最近、口にしていないコロッケ弁当を思い出し前に通っていたコンビニへとバイクを走らせた。

 そしてコンビニに入ると、この時間に居るはずの顔馴染みの店員が辞めたことを聞かされショックを受けた。


「あの! いつも同じ時間に来る。 もしかして巡回さんですか!?」


 レジにいた店員の女の子は健吾に視線を合わせて何かに期待するような表情を見せたが、健吾は始めて聞く巡回さんという呼称に「はて?」と、言う顔すると女の子の店員は気まずそうに無言になった。

 健吾はその巡回さんという呼称が自分のことを指していると何となく思ったことで、嬉しさが込上げて店を出るとこの店にはもう来ることはないだろうと自分に言い聞かせてバイクに跨った。

 ただ、話したことすら無い男性店員だったが店に入ると「あっ!」と、言う表情を見せられ健吾もまた「あ!」と言う表情を見せていただけの知り合いだったが居なくなったことへの寂しさが急に込上げた。

 そしてバイクのエンジンを掛けようした時、店の中から女の子が出てきて「あの! 前の人から九時半ごろにコロッケ弁当を買いに来る人が居るから必ず一つは取って置いてくれと言われたんです! 巡回さんというのは身内で使ってる名前なんです! ごめんなさい! でも、もしお客さんが巡回さんなら、コロッケ弁当は巡回さんの分は取って置きますからまた来て下さい!」と、緊張した面持ちで急ぎ言葉を健吾にかけるとそのままお辞儀して店の中へと女の子は消えた。

 健吾はバイクの上から店内から自分を見る女の子に右手を振るとペコリと頭を下げて駐車場を後にした。 健吾は自分を毎日待っていてくれる人が居るという事実にヘルメットの下を嬉涙で濡らし、帰り道を更に遠回りして自転車と同じような経路でアパートまでバイクを走らせた。

 ボロの自転車で額に汗して漕いだ経路をバイクでトロトロスピードで走ると、今まで気付かなかった店やら看板やらがあって健吾を驚かせた。 そしてアパートの前に着いた時、長年住んでいた建物の部屋が空室になっていることに安堵の表情を浮かべ健吾は「フッ」と、麗華との出会いをくれたゴミステーションに視線を移動した。

 すると外灯の下でブツブツ何かを言ってゴミを漁る不審な人影に「ギョッ!」として目を凝らした健吾はバイクに跨ったままゴミステーションに近づいてバイクを止めた。


「どうしたんですか? 何か探し物ですか?」


 薄気味悪さもあって敢えて声をかけた健吾だったが、背を向けて中腰に両手で何を探すロングヘアーの女性は健吾を振り返ることなく「探さなきゃ… あれが他人に渡ったら大変なことになる… 探さなきゃ… あれが他人に…」と、声をボソボソ繰り返して放っていて、健吾は関わりになりたくないとバイクのエンジンを再び掛けて走ろうとした瞬間、背を向けていた女性が健吾を振り向いた。

 その瞬間、健吾は「で! で! で! 出たああぁぁぁーーーー!!」と、大声を出し無我夢中でアクセルを回してその場から逃げ出したが、五十過ぎの黒髪ロングのカツラをかぶって女装した男とハッキリ分かる様相はまるで幽霊のようだったことに健吾は帰宅しても尚、身体の震えが治まらなかった。

 そしてその日の夜、麗華になって眠りに就いた健吾は「探さなきゃ… あれが他人の手に渡ったら大変なことになる…」と言うエコーの効いた声を発する醜いオカマに追いかけ回される夢にうなされ、その悪夢は数時間続き丁度、生理が終わる頃に健吾はその夢をピタリと見なくなったことに安堵した。

 だが健吾はあのゴミステーションで拾ったヌーブラがもしかしたら醜いオカマの探し物なのではないか「いつか取り返されるのではないか」と、不安に陥りそれならば確かめてみようと土曜日、デパートの婦人服コーナーで買ってきたヌーブラをその日の夜、あのゴミステーションに放置して身を潜めてオカマを待った。

 すると夜の九時四十分。 黒毛ロングのオカマがワンピース姿で再び何処からか現れゴミステーションを探し始め、数分後「キエエェェェー!」と、奇声を上げると辺りを見回してそのまま中腰でアパート街へと消えて行った。

 健吾はその一部始終に「やっぱり…」と、顔を強張らせバイクのある場所まで逃げるように走り、二度とこの辺りには近づくまいと心に誓いその場を離れた。 だが数日経っても健吾の疑問は薄れることなく麗華に変身する度に「大変なことって何なんだ…」と、ヌーブラを両手に考えるようになった。

 ヌーブラを着けて麗華になることの何が大変なことなのか、変身後の魅力溢れる成熟した身体を鏡の中に見る健吾は、そのピンク色の乳首とキレイな割れ目を指で弄りながら身悶えして愛らしいヨガリ声を自らの耳に聞かせた。

 黒いレースのスキャンティーを履き腰に着けたガーターベルトの紐に黒いストッキングを吊るし立ち上がると、黒いブラジャーの上に黒いミニスリップを纏って、鏡の中に立つ妖しい色香を放つ麗華にウットリして見入る健吾は「何もない… あるはずがない… このヌーブルは俺にとって神以上の存在だ!」と、ミニドレスを纏い化粧を施した。

 男として麗華を抱くことは出来なくても麗華の美しさは永遠に自分(おれ)のモノなのだと健吾は幸せに浸って、動く度に柔らかく弾力するその揺れに満足感を漂わせた。 そして俺は一生独り身でも麗華さえ居れば「ヌーブラさえあれば幸せなんだ…」と、歓喜してオバケオカマの独り言を払拭した。

 そして黒いストッキングに包まれた両脚の爪先をヒールの中に入れた麗華は高級スーツに身を包み夜の街へと消えて行った。

 



【八話】



 会社の仕事も順調でからかう者も居ない個室での課長職は、会社の厄介者だった健吾を必要な人間に変えその能力の高さに噂は確実に広まりを見せた。

 ボサボサ頭はスッキリした形に変わり一着しかなかった万年スーツは、毎日替えても日数が足りないくらいに増えていき、ネクタイもビシッと決まり健吾を密かに想う女子社員たちも増えつつあった。

 将来は部長はおろか役員にも取り立てられるのではと囁かれたが、当の本人の耳には全く入らず健吾は朝七時出勤の夜九時終業を変えることなく黙々と静かな環境の中で成果を重役達に見せていった。

 そして夜は絶世の美女として夜の街に出没し、麗華が男に戻ればその記憶は全て海の泡のように消えた。 そして着実に健吾名義の預金通帳の残高はその額を数十億にまで膨らませ、自分が勤める会社の取引企業の筆頭株主にまで辿りついていた。

 引っ越してきた当初は広すぎて何処でどう暮らせば良いのかと悩んだマンションも、買い求めた高級家具と男達からのプレゼントに溢れ既に引越しをも考えなければと思うようになっていた。

 欲しいモノがあればサングラスと帽子を外し街場に出向いて追っかけに漏らせば、転売できるほどのプレゼントの山がいくつも出来て、金額を提示すれば一億や二億などは一瞬にして振り込まれる麗華としての日々を謳歌した。

 だが肉欲においては未だに処女喪失を何度も繰り返し、その痛みは薄れることも慣れることもないまま麗華は完全な女になることの出来ない身体に悔しさを滲ませた。 そして数ヶ月が半年そして一年と経過したが、麗華の美貌に陰りはなく話し慣れた会話術には磨きがかかり麗華は男を手玉に取れる女になっていた。

 そしてヌーブラを手にしてから二年目に突入した頃、ゴミステーションにいる何処かの主婦を見て例の幽霊オカマを思い出した健吾は「探さなきゃ大変なことになる」と言う意味深な言葉を振り返り、わが身に何ら変化がないことに鼻で笑った。

 そんな健吾は鏡に映る麗華に恋焦がれるも身近に居て手の届かない彼女にイラつくことも多々あった。 麗華の身体を触ることは出来ても男として麗華を抱けない自分に業を煮やし、その度に麗華の身に着けた下着やストッキングの匂いで自分を誤魔化し続ける健吾は童貞と言う惨めな思いのまま麗華を抱く紳士に自分の想いを重ねた。

 そればかりか本来知る必要の無い美しい麗華の脱糞の色や形や臭気、そして目糞に鼻糞に耳糞と言った男として耐えられない現実に健吾は打ちのめされてもいた。 そして鏡の前で両脚を開き更に割れ目を両手でひらいて写真撮影しプリントした写真を見ながら麗華(じぶん)が一日中履いていたパンティーの匂いを嗅ぎマスターベーションに明け暮れる。

 味気ない性処理は代わり映えせず鏡の前で両脚を開く度、麗華の割れ目を直に舐めて味わって見たいという願望は叶うことはなかった。 


 健吾はこの日もいつものようにドレスを身に纏うと夜の街へと出かけ、金を持っていそうな紳士を探して高級店に顔を出していた。

 麗華を見て鼻の下を伸ばさない男はいないと頑なに信じていた健吾(れいか)にも強敵がいない訳ではなかった。

 それは「ゲイ」であり「同性愛者」たちだったが、彼らだけは女性同様に麗華の魅力の虜にならない性質を持っていた。

 大勢の男達が麗華を追う中で逸れ鳥のようにその集団とは明らかに違う行動をとる、一見普通の男性達は麗華の魔法にかかることなく振舞っていた。 

 だから麗華(けんご)には一目で男の正体を見抜くことが出来たが同じ雰囲気を楽しむなら麗華はそういう場所に身を潜めることもあった。

 ただ、そうは言いながらも女装しているにも関わらず男の本性を丸出しにして麗華の魅力の虜になる、女装して何も知らない女をハンティングする犯罪紛いの女装子も大勢見受けられた。

 そして店の中には当然のこと普通の女性もいることで、麗華も一息つける場所になっていたが、よく来るこの店で何処かで聞き覚えのある声に麗華(けんご)は胸の奥をドキッとさせた。


「何で彼女がこんなとこに!?」


 振り向いた麗華(けんご)は係長時代に散々自分を馬鹿にした、高野真由美(通称・イヤミ)の存在を目の当たりにして動揺した。

 ドレスアップした彼女は、メガネを外し周囲の女装子たちに打ち解けて好かれている感の漂う美人系だったことに麗華(けんご)は彼女の別な顔を見た気がした。

 そんな麗華(けんご)の視線に気付いた真由美もまた、麗華(けんご)に視線を重ねると、突然その場を離れて麗華(けんご)の隣りに席を移した。

 酒と雰囲気を楽しむ麗華と真由美は直ぐに打ち解け互いに親しみを持つレベルに達したが、会社とはガラリと違う真由美に麗華(けんご)は違和感を覚えた。

 だがこの日を境にして真由美と麗華(けんご)はこの店で待ち合わせをするほどの仲に発展し友情関係を構築した。


真由美:そっかぁ~ 麗ちゃんも浜田さんて言うのか~ 実はアタシね好きな男性(ひと)が居たんだけど、その人はアタシの手の届かないとこへ行っちゃったんだ…… まあ、自分で言うのも変だけどさ。 グスでノロマのモスラって言う仇名なんだけとさ~
 麗華(けんご)は耳を疑う事実に直面していた。

 真由美の話しを端的に言えば次の通りだった。

 初の大卒として入ってきた有望されし男は能力はあるものの人付き合いが下手だというだけで周囲から敬遠され孤立し、やがて無能社員のレッテルを貼られたが実績を上げれば上げるほどモスラは周囲のストレス解消の的にされた。

 何とか真由美はモスラの名誉挽回を模索したものの、多勢に無勢で手に負えず、やむ得ず、真由美がみんなの前でモスラを叱り飛ばすことで周囲を圧倒し、周囲がモスラにそれ以上何も言えなくする奇策に転じたと言う。

 だが真由美は周囲から女王様と呼ばれ陰口を叩かれ、それまで付き合いのあった同僚や後輩たちは見る見る間に関わりたくないという心理から離れて行ったという。

 そして自らもモスラに嫌われるながらにしてモスラは係長から課長へ昇進し真由美が顔を見ることも出来ない部署へ移っていったと言い、会社側が何故モスラを課長に昇進させたかと言えば、数年以内に離島の営業所長を務めている人が定年を迎えるべくその後任として課長経験者を当てる会社の規定にモスラを乗せるための措置だったと麗華(けんご)だと知らずに打ち明けた。

 本当は優秀な人なのに誰も解ってくれないと真由美は麗華(けんご)の前で涙を溢れさせた。


 麗華(けんご)は、まさか真由美が自分を好いて応援してくれている女性だなどとは夢にも思わっておらず、真由美の話に吊られて麗華として涙を見せる場面もあった。

 

「あん… あああああぅ! ぅあっ! あひっ!」


 麗華と真由美は街中のホテルでベッドを共にしていた。

 同性は初めて同士の二人だったが、互いに上になり下になるうち互いが互いの片脚を支えあって一つの形を形成し、何度もそれは繰り返された。

 早朝、麗華は真由美を残し静かに立ち去ると自宅へ急いで帰り男に戻るべくヌーブラを外そうとしたが、どういう訳かこの日に限っては中々外れず業を煮やして、爪を立てて乳房を引き剥がそうとした。


「いぎいいぃ! うおぉーりゃあぁぁー! 痛てええぇーーー!」


 爪を食い込ませた乳房はそのまま激痛を麗華(けんご)の脳に伝え麗華はソファーの上で七転八倒して尚も外れぬヌーブラに顔色を変え表情を歪めた。

 このままじゃ会社に行けないと乳房に血を滲ませながらも麗華(けんご)は乳房の脇近くを掴んで引っ張ったが、女にしか解らない乳房を痛みに絶叫し続けた。

 そしてようやく乳房(ブラ)が外れかけた瞬間、乳房は剥がされまいと何十本もの針を指のように出して胸にしがみ付いているのがチラリと見えた。


「なんで今日は頑固なんだよ!! すんなり外れてくれよおおぉ! 頼むから!!」


 麗華(けんご)は剥げかけた乳房(ブラ)に顔を歪め壮絶な痛みに耐えながら嘆願すると乳房(ブラ)は「パカッ」と、何事も無かったかのように外れた。

 荒い吐息を肩でする健吾は男に戻った自分を見回した後、外したヌーブラを手にとって、語りかけるようにヌーブラに「もしかして女同士は嫌なのか? そうなのか?」と、小声を震わせると、ヌーブラは意思を持った小動物のように健吾の手から「フワリ」と、跳ねるように床に落ちた。

 それを見た健吾は唖然として「もしかしてお前、生きているのか!?」と、首を傾げるとヌーブラは縦に立ち上がって「ペコリ」と、健吾に頷いて見せた。


「そ… か… き… 気付かなくて悪かったよ… で… でも! も… もしかして俺の言葉とかも解るのか!?」


 縦に起き上がったヌーブラを前に健吾は表情を強張らせながらも冷静に問うと、ヌーブラは人間が頭を下げるように頷くと健吾は真っ青になって言葉を失った。

 ヌーブラは健吾が麗華として使っているスマホの画面に「ようやく貴方と心が繋がった」と、文字をブラのカップの端で打ち込むとそのまま力が抜けたようにパタリと床に倒れた。

 健吾が驚いてヌーブラを拾い上げるとヌーブラは全体を熱くさせ、まるで風邪を引いて熱を出したようになっていることに、健吾は麗華の服装のままヌーブラを寝室のベッドに運び、頷いた方を頭にして手拭いを折りたたんで枕に寝かしつけると、全身にタオルを重ねて掛けてやり、台所から持ってきた濡れタオルで冷やしてやった。

 ヌーブラは仰向けのまま軽く頭を「ペコリ」と、するとそのまま意識を失って動かなくなり、数分間ヌーブラを見守った後、触って見ると熱くなっていたヌーブラは少しだけ熱が下がってきたことにホッと胸を撫で下ろした。

 健吾はベッドに寝かしつけたヌーブラの傍を静かに離れると寝室から出て、衣装部屋へ移り時計を気にしながら下着と服装を麗華から健吾に替えた。

 そしてチラリと寝室を見た健吾は意思疎通の出きるヌーブラに「看病できなくてゴメンよ…」と、囁くと会社に向かった。



【九話】



 ヌーブラの容態を心配しつつ会社に到着した健吾は仕事場に来ると外で買ってきた缶コーヒーを飲みながらタバコに火を着けて、ヌーブラのことを考えていた。

 健吾はヌーブラがスマホに書いた文字と頭を下げる仕草を思い出しタバコを一口吸うと、長時間麗華に変身して起こる副作用を股間に感じて、ズボンの上から触れてみると、精液が溜まってパンパンに膨れ上がった睾丸に激痛を感じた。

 そして仕事前に「トイレで抜かけりゃダメだな…」と、タバコを吸って一仕事始め流れる時間の中に身を置いた後、ドアがノックされ手を止めた瞬間、ドアの向うから「一課の高野です」と、早朝まで麗華として愛欲しあっていたその声に健吾は仰天しつつ応答をドアに向けた。

 ドアを開いて中に入ってきた高野真由美はその視線を健吾に向けながら机の前に立って「お話しがあるのですが…」と、神妙な表情を見せ山積みされた書類を見渡した瞬間、健吾は「ハッ!」と、麗華になっていた時、真由美に「告白」を勧めたことを思い出した。 


「あたし! あたし!! ずっと前から浜田くん… 浜田課長のこと好きでした!! それだけです!!」


 視線を健吾から外した真由美は視線の焦点定まらぬまま赤面して両手を前に重ねると、突然大きな声を発して一礼するとそのまま逃げるように部屋を出て行ってしまった。

 健吾はその様子に真由美と同じく赤面して石地蔵のように固まり真由美が出て行った後、暫く思考回路が停止していた。

 数分後、正気に戻った健吾は告白を麗華(じぶん)で真由美に勧めていながらも、実際に面と向かって言われた告白に照れてしまっている自分が恥ずかしかった。

 そして健吾が時計を見て再び仕事を始めようとすると、間違って持って来てしまったスマホがカバンの中で着信音を健吾に聞かせ、その音に驚いてカバンから麗華専用のスマホを取り出すと真由美からのメールに仰天した。


「浜田くんに告白した。 胸がドキドキドキしてる。 恥ずかしい…」


 麗華宛のメールを机の上で見た健吾はその文面に照れながらも同じ文面を何度も読み返すと、麗華の気持ちで「おめでとう♪ 課長さんのお部屋に行って、お色気振り撒ちゃいなさい♪ そして押して押して押し捲りなさい! ここまで来たらやるしかないよ♪」と、真由美をけしかけた。

 すると数分後、麗華に言われた通り再びドアがノックされ部屋の中に俯き加減で真由美が入ってきて、健吾に一礼するなり「ツカツカツカ」と、サンダルの音を立てて健吾の席の真横に来て「浜田課長が好きなんです!」と、スカートの両端を掴むと「スルスルッ」と、上に引きあげライトブラウンのパンストに包まれた太ももを健吾の真傍にあらわにした。

 真由美は顔を真っ赤にして肩を小さく震えさせると健吾は迷うことなく真由美の右脚の内モモに右手を這わせた。 真由美は目を閉じて健吾からの触手に全身を強張らせ健吾はそんな真由美が可愛くて、太ももをスリスリしながらその手を上へと滑らせた。

 健吾は男として初めて触れる自分の手に馴染む柔らかくて弾力のある真弓の下半身に、胸の中は爆発寸前になって股間にテントを張り、真由美は内モモの付け根にスリスリする健吾の手に膝をガクガクさせ首を軽く仰け反らせて小さな喘ぎ声を健吾に聞かせた。

 そして健吾の手がストッキング越しパンティーの上から真由美の恥ずかしい部分に這わせられると、真由美は健吾に触れられた嬉しさから閉じた瞼の内側に涙を滲ませ、健吾はその手を前後に優しく擦った。

 真由美はブラウスの襟元近くにまで伸びた長い黒髪を身体の振動でサラサラと揺らせ、健吾の触手に深く吐息すると、真由美は突然健吾の前に斜屈んで健吾のテントの上に頬ずりしてチャックに手を掛けた。

 健吾は胸の奥を「ドッキン! ドッキン!」と、高鳴らせ真由美に下半身を任せると、やがて硬くなった肉棒は真由美の顔の前に晒され「カポッ」と、紅い口紅が飛び上がるような快感(しげき)を健吾の脳を爆撃した。

 真由美の両肩に置いた健吾の手はキリキリと真由美の肩を掴んでそして健吾の視線は真由美の口元に釘付けになった。 そして真由美のフェラチオに健吾はものの数分もしない内に水分を失ってドロドロした精液を撃ち放った。

 健吾の放った精液を飲みながら尚も舌を滑らせ首を前後する真由美に、健吾は直ぐに肉棒を復活させ二度、三度と溜まりに溜まった精液を撃ち放ち溜まり過ぎて痛かった睾丸を縮小させ、健吾がスッキリする頃には真由美は六本もの精液を飲み干していた。

 
健吾:あとで連絡するから……
 肉棒の根元を親指と中指で押さえて中に残った精液を搾り出して飲み干す真由美は下から健吾を虚ろな目で見入ると、小さく頷いてズボンのチャックを閉じて立ち上がると、メモに連絡先とメアドと住所を記して健吾に手渡した。

 健吾はそれを受け取ると胸ポケットに仕舞いこみ目の前の真由美を見上げると、立ち尽くす真由美は自分のしたことが突然恥ずかしくなって表情を強張らせると、椅子から降りた健吾は真由美の前に斜屈むと真由美のスカートの中に顔を埋めて中の匂いを吸い込んだ。

 恥ずかしい匂いを嗅がれた真由美はその耐え難い行為に火の出そうな顔を両手で覆い隠し、尚も健吾に吸い込まれるパンティーの中を体温に両脚を内側に強張らせた。

 健吾は心の中で「これでようやく童貞とお別れ出きる…」と、密着させた鼻先で吸い込んだ真由美の匂いに胸を躍らせ、時間を忘れて仕事に没頭した。

 そして夜の九時、巡回の警備員に声を掛けられ時計を見た健吾は「もうそんな時間か…」と、後片付けをすると会社を後にしてミニバイクに跨ってエンジンを掛けようとした瞬間、突然後ろからの声にビックリして肝を潰した。


「お疲れ様です♪ 浜田くん♪」


 振り返るとそこには真由美が立っていて、バイクから降りた健吾に突然抱きついて猛烈な口付けをした。

 真由美は舌を健吾の口の中に入れて絡めると、健吾はその猛烈なアタックに真由美を抱いて身体を密着させた。

 
「じゃあ、住所はここですから♪ あたしは電車で待ち合わせしましょう♪」


 ミニバイクを押しながら歩いて真由美を駅まで送った健吾は胸を躍らせて教えられた住所へとミニバイクを走らせた。

 そして先に着いた健吾は今か今かと真由美が出てくるであろう駅の前でタバコに火を点けて、カバンの中の麗華のスマホの電源を落として待っていると駅から手を振って出てきた真由美は満面の笑みを浮かべて近づいた。

 健吾はバイクを押しながら左肩に頬を寄せて甘える真由美の甘い香りに鼻の下を伸ばし、短く感じる十分の道のりを「アッ!」と、言う間に終えて真由美の暮らすマンションにたどり着いた。

 1LDKだという真由美の部屋は七階建ての五階の角部屋で鉄筋コンクリート造りのマンション群の中の一つだった。

 健吾は真由美に連れられてエレベータに乗りそして部屋の中へとそのまま吸い込まれた。


「男性にはちょっと狭いけど女一人には丁度いい広さでしょ♪」


 リビングに通された健吾に振り替えって笑顔を見せる真由美は、生まれて初めて入った真由美(じょせい)の部屋に照れる健吾に視線を重ねると、健吾は我を忘れて真由美を抱き寄せると唇を重ねた。

 そして濃厚な口付けをしながら真由美を後ろから抱いてそのまま近くのソファーに腰掛けた健吾は「こんな俺で本当にいいのかい…」と、真由美の右耳に囁くと真由美が頷くのを待ってブラウスのボタンを後ろから腕を回して外していった。

 
「あんっ… ああああぅ…」


 真由美の後ろからブラウスを両肘まで降ろしブラジャーとスリップの肩紐を外した健吾は、そのまま蛍光灯の下で乳房を後ろから「ムニュムニュ」と、揉み回しその指を徐々に乳首に絡めて行った。

 恥ずかしそうに左側に俯く真由美は心地よさにフワフワと上半身を揺らし、乳首に指が絡み始めるとスカートから伸びる両脚をクネクネとクネラセながらモジモジと絡み合わせ、全身をビク付かせて愛らしい声を後ろの健吾に聞かせた。

 そして健吾の右手が真由美の太ももをストッキングの上から滑り始めると、真由美は絡みつかせた両膝を震わせて両肩を小さく揺らした。 そんな真由美をそのまま左側に抱き倒し仰向けにした健吾は、スカートを捲くり上げそのまま両足の間の白いパンティーに顔を埋めると、真由美は恥ずかしさに「いやぁん…」と、頬を紅く染め両手でパンティーの上を覆い隠した。

 すると健吾は真由美の両手を片方ずつ避けて再び真由美のパンティーの上に顔を埋め鼻先で匂いを嗅ぎながら、真由美の下半身を右側から起こし気味にしてホックを外しファスナーを降ろしてスカートをスルリと脱がした。

 その瞬間、真由美は「いやぁん…」と、恥ずかしさ前回に両手で顔を覆い全身をモジモジさせると、健吾はスリップの裾を捲くり上げてストッキングに包まれた真由美の両膝を支えて左右に開かせた。

 両脚を開かれた真由美はその瞬間、健吾の行動を先読みしたのか両手で股間のパンティーストッキングのシームを覆い隠して「お願い! お風呂に行かせてぇ! ねっ! お願い!」と、匂いを嗅ごうと陰部を見入る健吾に目を潤ませて哀願し始めた。

 だが、真由美の匂いを嗅ごうとする健吾はその部分から真由美の両手を優しく外すと、そのまま顔をパンティーをパンスト越しに思い切り鼻先を押し付け嗅いだ瞬間、真由美の濃厚なの女の匂いに頭をクラクラさせ心臓の鼓動を早めた。

 真由美は一日中、パンストとパンティーの中で蒸れに蒸れた恥ずかしい匂いを嗅がれ、顔から火が出るほどに熱い火照りを健吾に見せ恥らう真由美の匂いに健吾は時折、咽て咳込みながらも匂いを嗅ぎ続けると真由美はとうとう恥ずかしさに涙で目を潤ませた。

 健吾は麗華に変身していて蒸れた女の陰部がどれほどの刺激臭を放つのか熟知していながらも、恥ずかしがる真由美の表情を楽しんでいた。 そしてパンティーストッキングに長時間包まれた真由美のカガトを持ち上げた健吾はその爪先に鼻先を近づけ匂いを吸い込んだ瞬間「ゲホゲホゲホッ」と、高濃度の塩分と酸味の混ざった納豆臭に咳込んで涙目になった。

 真由美は女として男には知られたくない秘密を暴かれ遂に潤ませた目から涙を流して吐息を振るわせた。 だがその仕草や表情さえも健吾を獣のように興奮させる要素だった。

 健吾は涙を流して恥らう真由美の表情に女らしさを見いだし背中をゾクゾクさせると、伸ばした両手で真由美から下半身を包むパンティーストッキングをスルリと剥ぎ取るとプルプルと揺れる乳房に両手を添えて乳首に貪りついた。

 
「ぅあっ! あひっ! あんっ! あああああぅ…」


 真由美は首を仰け反らせソファーに降ろした両脚をモジモジと絡ませて密着する健吾の足にその感触を楽しませると、健吾は鼻息を荒くさせ甘い味のする真由美の乳首を左右交互にしゃぶって乳房を揉み回した。

 柔らかい肌を持つ女の麗華では感じることの出来なかった真由美の柔らかさを、健吾はゴツゴツした男の手で充実感を得ていたが、その触手と味見の仕方に真由美は麗華の存在を脳裏の隅に思い浮かべ麗華と健吾が時折重なる妙な違和感を抱いていた。

 そして乳首を味わいながら真由美からパンティーを剥ぎ取った健吾は再び真由美を辱めるべく、彼女の目の前で剥ぎ取ったパンティーの内側に鼻先を押し付け「スウゥーハアァー」と、激しい吸引力を真由美に見せると、真由美は「うううぅぅぅ…」と、両手で口と鼻を覆い隠すと健吾に恥じらいの泣き声を聞かせ、健吾はその表情と声に女を辱める喜びに浸った。

 真由美はそんな健吾が次に何をするのか考えた瞬間、ソファーから這い出して逃げ出そうとしたが健吾に両脚の自由を奪われ左右に開かれた。 健吾は真由美の両脚を押し付け後転姿勢にさせると汚れた割れ目を左右に開いて直に鼻先を近づけ深呼吸するように鼻で凄まじい臭気を吸い取った。


「いやあぁん! やめてえぇ! やめてえぇー! 汚れてるからやめえぇー!」


 汚れた割れ目を開いて匂いを嗅ぐ健吾から全身を揺すって逃げようとした真由美は泣き声を発して健吾に哀願を重ねたが、健吾は一日の汚れが内肉にベッタリと張り付いている真由美の割れ目に舌を押し付け「ベェロリ!」と、膣からクリトリスに滑らせた。

 真由美は健吾の舌の感触に「クハッ!」と、喉を鳴らし、腰と首を限界まで仰け反らせるとソファーに両手の爪を立てた。 健吾の舌は真由美の一日分の汚れを削ぎとって口の中に運ぶと「クチャピチャクチャピチャ」と、口の中に音を立てそれを飲み込むと、直ぐに割れ目の内肉に舌を押し付け「ベロベロチュパチュパ」と、中の具材を舐め回して味わった。

 プリプリと弾力のある太ももと尻肉を弾ませて振動させる真由美はソファーを掻き毟りヨガリ声を部屋の隅々にまで溶け込ませ健吾は男として女を味見する獣の醍醐味を満喫していた。

 そして真由美の生肉を味わいながら下半身を裸にした健吾はカウパー視線液の溢れて滴る肉棒を聳えさせそのまま真由美の中に先っぽを挿入し、体温とヌルヌルした真由美の感触を亀頭に感じると肉棒を一気に真由美の奥へと到達させた。

 
「痛あぁぁーーーい! あああああん! 痛い! 痛い! 痛ああぁぁーーーい!」


 真由美は首を左右に振って健吾の背中に両手の爪を立て出血させるも、その量よりも遥かに多い鮮血で尻下のクッションを紅く染めた。

 早朝のフェラチオと麗華との愛欲で真由美は経験済みの女だと思い込んでいた健吾は真由美の痛がる表情に感動を覚え、痛がって泣き揺れる真由美をしっかりと支えて尚も腰を振り続けた。

 そして健吾が射精し終え真由美に身体を重ねると真由美は両腕でしっかりと健吾に下から抱きついて離れず、好きな男との処女喪失に感動の涙を見せた。

 



【十話】

 

 

「麗ちゃん。 アタシねぇ! 遂に彼に守ってきた処女を捧げること出来たんだ♪! これも麗ちゃんが背中を押してくれたおかげだよ♪」



 真由美からメールを受け取った麗華(けんご)は真由美と会うべく夜のホテルへと出かけバーで祝杯をあげたあと、ベッドの横で見詰め合って脱衣し下着姿になるとどちらからと言う訳でもなく抱き合って口付けを交わした。

 黒いパンティーストッキングに包まれた二人の美女の両脚が触れるか触れないかの間合いで胸と胸が押し付け合いながらそのままベッドに静かに崩れた。

 ベッドに仰向けにした真由美の両肩からブラとスリップの肩紐がスルリと降ろされると、麗華はその白い乳房に唇を吸い付かせ豊胸ではない、自然な柔らかさの乳房に両手の指を溶け込ませた。

 真由美の乳首は麗華の愛撫に直ぐに反応して勃起すると、真由美の両手の指は麗華の尻をパンストの上から円を描くように回され滑らされ、麗華はその刺激に両脚の爪先を閉じさせられた。

 二人の美女の甘い香りが重なって溶け合って濃厚さを増す頃、互いのパンティーの内側は当て布にヌルリとした湿り気を帯びさせた。

 高まる体温と荒くなる吐息の中で、互いの唇と四肢が様々に絡み合い窪みの肌と肌が擦れ合うと、可愛らしい女の鳴き声が薄暗い部屋の明かりに溶け込んだ。

 
 その頃、街中のとある精神病院では、ゴワゴワの長い髪の毛を振り乱し帯の解けた入院着を大きくユラユラさせる患者が口からヨダレを床に滴らせ「何とかしないと大変なことになる…」と、独り言をブツブツ唱える老婆のような女が千鳥足で鍵の掛かった白い部屋の中をグルグル回っていた。

 シワシワだらけの垂れ下がった乳房が歩く度に前後左右に揺れ、シミだらけの水分を失った全身は九十代の老婆を思わせその顔には覇気はなく目は虚ろに一点を見つめていた。

 そんな光景を廊下側から鉄格子のついた小窓に見入る看護士は「可愛そうに…」と、歩きながら失禁する下半身の割れ目を見て目を伏せた。 割れ目からガリガリの足伝いに床に落ちる小便を足の裏が踏みつけてピチャピチャと音を立てた。

 看護士はドアの横についているインターホンで雑巾を持ってくるように別の看護士に連絡してその場を立ち去った。

 老婆のような醜い女は「何とかしないと大変なことになる」と、プツプツ呟き休むことなく部屋を回り続けた。

 
看護士A:何かさぁ~ オカルトみたいだよねぇ~ 怖いわ… 
 ミィーティングテーブる両肘立てて二人の看護士に話しかける女性看護士。

看護士B:そうそう。 先生達も驚いてアチコチに問い合わせしてるみたいよ。
 巻いた包帯を解いたり巻いたり繰り返す女性看護士。

看護士C:もうこの街だけで十人以上になってるし。
 二人を見回す女性看護士。


 三人の看護士たちは表情を強張らせ原因不明の突発的なことに戸惑っていた。


 その頃、ホテルのベッドで真由美を右腕で枕する麗華は、息を整えながら真由美の乳房を後戯するように左手で回しては乳首を軽く指で弾き、身体をビクつかせる真由美はその刺激に麗華に虚ろな視線を合わせた。

 
真由美:アタシ… 麗ちゃんと別れたくないから… いいでしょ!? 今まで通りアタシの親友でいて欲しいのぉ…
 麗華に甘えるように声を掠れさせる真由美は切なそうな表情を浮かべた。


麗華:だめよ。 真由には彼氏が出来たんだから浮気なんかしたら…
 乳首を弾いていた左手をそのまま真由美の右頬に這わせてオデコに軽いキスをする麗華。


真由美:いやあ! いやいやいや! お願い~! 麗ちゃん!
 甘えて目を潤ませる真奈美は自分を見下ろす麗華に下から抱きついて涙声を小さな放った。


麗華:しょうがない甘えん坊さんねぇ~♪ 
 抱きつく真由美をベッドに降ろして顔を密着させて視線を絡み合わせる麗華はそのまま口付けして舌を絡ませた。

 引力に吸い寄せられた麗華の柔らかい乳房が仰向けで流れる真由美の乳房に密着し互いの硬くなった乳首が互いの乳房に食い込んだ。

 そして麗華の舌は真由美の乳房に吸い付き二度目の愛欲に突入すると、そのまま開いた真由美の割れ目に舌を押し滑らせた。

 激しい真由美の身悶えとヨガリ声は麗華の割れ目の奥を愛液で溢れさせ、そのまま麗華は身体を回して真由美の顔を跨いでシックスナインの体位へと突き進んだ。

 二人の女は互いの尻を抱きながらネットリした舌で割れ目の内肉を味わい溢れた愛液を舐め摂ってはクリトリスを舌先で回し互いのクリトリスはそのコリコリ感を互いの舌に感じさせた。

 そして深夜の一時過ぎ二度目の愛欲を終えた二人はそのまま一つのベッドで静かな寝息を立てたが、寝静まって三時間が経過した頃、麗華は身体の異変に気付いて目を覚ました。


「ドキッ!! ドキドキドキドキドキ……」


 ベッドの中、真由美を横にして麗華から男姿に戻っていたことに気が付いた健吾は口から心臓が飛び出さんばかりに震撼して身を隠すようにベッドから降りて、シーツの上に転がったヌーブラを持って寝室から静かに抜けるとトイレに急いだ。


「どうしたんだよ!? おい!? おい!?」


 トイレの中でヌーブラに問いかけたが応答なく健吾は仕方なく、デカイ男姿(からだ)のまま寝室へ戻り麗華の下着と衣類をリビングに運ぶと、小さい麗華の下着と服を着てオカマのごとく大き目のサングラスで顔を覆いそのまま逃げるようにホテルを飛び出した。

 そしてタクシーを拾おうとしたものの、自分の薄気味悪い姿を省みた健吾は、辺りをキョロキョロしてオカマバーがある場所までサイズの合わないヒールのまま走り、オカマバーの辺りでタクシーを拾って飛び乗った。

 だが乗った場所が場所だけに運転手は健吾を見ても動じることも驚く様子もみせずにそのまま健吾を乗せて走り、健吾は目をサングラスで隠し俯いたままマンションの近くに到着するのを待った。

 
「ちくしょおう! どうしちまったんだあぁー!」


 ハンドバックから取り出したヌーブラに怒り心頭の健吾は立ち上げたノートパソコンの傍にヌーブラを置くと、ヌーブラはフラフラと立ち上がってパソコンのキーボードの上に「ヒョイッ」と、乗って「疲れた… エネルギーが足りない… 男に抱かれてくれ…」と、疲れ果てたような仕草をしながらキーボードを打ち文字をモニターに映した。

 そしてヌーブラの話しによれば美しい女を抱く男の欲望のエネルギーを吸い取って生きていると言い、相手が女の場合は逆にエネルギーを吸い取られるのだと語った。

 だから少し前に真由美と愛欲した後に胸から外れなくなったのはエネルギーが不足して離れる力が不足したためだとも付け加えられた。

 そう語ったヌーブラに丁度いい機会だからと、健吾は「何故、何度も男に入られてるのに処女膜が再生し続けるんだ!?」と、聞くとヌーブラは「もうそんなことは無い。 童貞を失った時点で次からは女の喜びにドップリと浸れる」と、健吾を喜ばせた。

 健吾はヌーブラに何度も念を押すように確かめると急に「ニンマリ」と、笑みを浮かべて「疲れたから寝る」と言うヌーブラ専用に購入した子供のオモチャのベッドに寝かせると優しく布団を掛けた。

ブラジャー【Ⅶ】

ブラジャー【Ⅶ】

  • 小説
  • 中編
  • 青春
  • サスペンス
  • ホラー
  • 成人向け
  • 強い性的表現
更新日
登録日
2013-05-21

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