これは俺の知ってるもみじじゃない! 第一話<始まり>

第一話<始まり>

『今日から1年間お母さんとお父さん海外出張で家を空けるので妹のことよろしくねby母』
『ちゃんと毎日学校に行けよ!!!by父』

「意味わかんねー……それならもっと早くいってくれよ……。とりあえず紅葉起こしに行くか。」
 俺には妹がいる。といっても俺と違って成績は常にトップ、陸上部の1年生エース、極めつけは校内かわいい子ランキング第一位ということだ。
 俺は紅葉(くれは)の部屋のドアをノックする。
「紅葉。朝だぞー、陸上部の練習遅刻するんじゃないのかー?」
『ん~……まだ寝る……』
 いつもこうだ。
「じゃあ陸上部の市川先輩に報告しとくなー紅葉は今日練習サボるらしいですって。」
『ん!?★△×○☆ミ!!!!!!!』
 こうでもしないと起きないのだ。ちなみに市川先輩とは陸上部男子の3年エース。むっちゃかっこいい。男の俺でもかっこいいと思う。そんで紅葉のあこがれの先輩である。


「お、おはよ~おにぃ……」
「んー。とりあえず服が裏表逆だぞ?」
 紅葉はあわてて服を直す。その時下着が丸見えなのは見なかったことにする。
 紅葉はいつものようにご飯にお味噌汁。そしてアミノヴァイタルを飲む。
「それじゃあ言ってくるね、おにぃ。」
「おう!頑張ってこい。練習も先輩へのアピールも。」
 紅葉は照れ笑いをして玄関を出て行った。
 さて、俺も準備しないとな。と言っても俺は帰宅部だからあと2時間くらい余裕がある。ただ今の時刻は5:00である。

 結局何もすることがなかったので妹を送り出してから30分後には家を出て学校についた。
 グラウンドでは強化指定部の陸上部、サッカー部が練習。そして野球部は俺が中学生くらいの時に流行った『もしも高校野球部員がドラッガーのマネジメントを読んでしまったら』という本の影響で同じく強化指定部の吹奏楽部と一緒に練習している。そこだけまるで甲子園のアルプスのようだった。
 実は紅葉はこの応援が好きなのだ。これは市川先輩から聞いた話なのだが吹奏楽の応援があると紅葉のタイムはコンマ5秒速く走るらしい。短距離のコンマ5秒って大変なイメージがあるから応援はすごい力を持ってると改めて実感できる。
「あっ!おにぃだぁ!!!」
「紅葉……家以外で『おにぃ』は禁止だ。」
「なんで?いつも『おにぃ』って読んでるからいいじゃんおにぃ。」
「紅葉はいいかもしれないけど、俺にとっては校内にいるときは悪いことしかないの。」
「そうなの?」
「そうなんです。」
 このやり取りでもなかなかなもんだけどな。まぁまだ6時になるかならないかの時間なので人が少ないのがせめてもの救いだ。といっても校内の男子生徒の半分はもう来てるんだけどな。
「次、紅葉のタイム計測だよー!」
「はーい!今行きますー!。じゃあまたあとでねおにぃ。」
「おう!だけどおにぃはナシ!」
 こうして妹と別れて俺は教室へと向かうのだ。


紅葉side
 アップを終えるとグラウンドの端っこにおにぃの姿があった。
「あっ!おにぃだ。」
「ほんと紅葉のお兄ちゃんはかっこいいよねぇー。」
「そうだよねー、うちの野球バカ兄貴と交換しない?」
「絶対嫌だよ?だって私だけのおにぃだもん!」
『アハハハハ』
 陸上部女子は3~1年まで笑顔で包まれる。陸上部エースと言っても陸上部の中ではいじられる担当なのだ。
「紅葉のタイム計測までまだ時間あるからお兄ちゃんのところ言ってお話でもしてきたら?」
 3年生キャプテンの聖城先輩が言ってくれた。
「やったぁ!じゃあ行ってきますキャプテン!」
 私は猛ダッシュでお兄ちゃんのところまで行った。
「はーい陸上部女子は紅葉のいちゃいちゃtimeが終わるまで休憩!」
『はーい!』
 これが陸上部女子のいつもの流れである。

これは俺の知ってるもみじじゃない! 第一話<始まり>

これは俺の知ってるもみじじゃない! 第一話<始まり>

  • 小説
  • 掌編
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  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-05-19

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