目を開けて

目を閉じて

夜の中、闇の中、暗いのは昔から苦手で、小さいころはいつも泣いていた。

あたしは泣き虫。

　いつのまにか大人と言われる年になっていた。ここにくるまでいろんなことがあったけど、いろいろありすぎて一言じゃ話せない。辛いこともあったし、楽しいこともあったし、付き合った人もいた、好きな人もいる。あたしもそれなりに生きてきたと思う。なんて、ふと友達の人生設計という言葉を聞いて思い返してみた。

「人生まだまだこれからだけど、ここまでは予定通りに進んでる？」

「そういうあんたこそどうなのよ？」

「進んでるわけないじゃん。いろいろあってこんな所にいるわよ。・・・あ、午後からお客さん来るらしいからお菓子準備しといてってさっき」

「はーい」

「うっわ、今日、雷を伴う大雨だってさ、買い物行きたかったのにー・・・朝言ってなかったよね？天気予報なんて嘘つきだー」

「あ、洗濯物！」

「どんまい」

　小さいころは夢見がちなバカな子だった・・・今も・・・いや、もう今はあきらめる。大人になるってそういうこと。そう思っていた。

「え、うそ停電！？」

突然真っ暗になる。帰り支度をし終わってトイレに寄っていた時だった。
壁をつたってトイレからたぶん出た
緑の明かりを見つけてそこでうずくまる

もう、とっくに慣れたと思っていたのに。いつも家に帰れば真っ暗なのに。

こんなに、こんなに・・・
だいじょうぶ、すぐ明るくなる、胸がドキドキする、
まるで小さいころのあたしに戻ったみたいで
なんだか涙まで出そうになってきた

なんであんなに小さいころ暗いのが怖かったのかな

だめだなんか別のこと考えよう
・・・好きな人のことでも、目を閉じて想ってみよう
目を閉じてしまえば真っ暗だ、
だいじょうぶ、そう、あの人も言ってくれるだろう
声を姿を手のぬくもりを
だいじょうぶ
だいじょうぶ

「大丈夫ですか！？」

だいじょうぶ、だいじょうぶ・・・
ほら、だんだんはっきり聞こえる

「・・・聞こえてます！？だいじょぶですか？」

なんだろう揺れる
怖い・・・

「こわい・・・！」

「もう大丈夫ですよ！電気復旧しましたよ？」

「え、」

　目を開けたら眩しすぎて目の前には好きな人が
まだあたしの妄想の中？夢の中？

「具合、悪いですか？」

「ごめんなさいっ」

「いえいえ」

　・・・思い通りにはいかないけど

「何が起こるかわからないもんだなー」

「何？機嫌いいわね、なんかあったなー！」

「なにもないって！」

「じゃ、彼に聞いちゃお！月島くーん！！」

「やめてやめて！！！」

「なによ亜夜子（あやこ）～いいじゃん！」

暗いのが怖いのは何かが起こりそうだから

でも必ず朝は来る
ちょっとずつ目を開けてみる

そうしてちょっとずつ大人になっていく