たいしたもん

しがないサラリーマンの俺は、らせん階段を登りながら考え事をしていた。

「良くも悪くもこの世界は自由。」

考え事というより自己暗示に近い。
同じフレーズがぐるぐると頭の中を駆け巡る。

きっと俺はそういう人間なんだ。
他の人とは違う。

「良くも悪くも世界は自由。」

何が自由だ。
そもそも、世界は自由を求めて死んでいく人達だらけじゃないか。
何が自由だ。

「まったく俺という奴はたいしたもんだ。」

遥か下方の暗闇から忍び寄ってくる地獄の業火から逃れるには、永遠にらせん階段を登り続ける他に無い。

たいしたもん

たいしたもん

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-05-14

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted