たいしたもん
しがないサラリーマンの俺は、らせん階段を登りながら考え事をしていた。
「良くも悪くもこの世界は自由。」
考え事というより自己暗示に近い。
同じフレーズがぐるぐると頭の中を駆け巡る。
きっと俺はそういう人間なんだ。
他の人とは違う。
「良くも悪くも世界は自由。」
何が自由だ。
そもそも、世界は自由を求めて死んでいく人達だらけじゃないか。
何が自由だ。
「まったく俺という奴はたいしたもんだ。」
遥か下方の暗闇から忍び寄ってくる地獄の業火から逃れるには、永遠にらせん階段を登り続ける他に無い。
たいしたもん