咲かない花
「花」は、本当に咲くだけの生き物なのだろうか。
「花」は、咲かなければ「花」じゃないのだろうか。
「恋花」は、絶対綺麗に咲くことができるのだろうか。
「咲かない花」は、そんなに寂しいのだろうか。
つぼみ
枝垂桜ー まだ残雪があり、肌寒く、桜も咲けない気温の中、“華舞(かまい)中学校”は、
入学式を迎えた。
慣れないセーラー服のスカーフを縛り、長い髪を後ろで結んだ。
なんと私、「藤咲 花菜(ふじさき かな)」は、今日からピカピカの中学一年生になるの
です!!
「おねぇちゃん、スカートなんか履いちゃって、かわいいー。」
「ちょー棒読みなんだけど・・・。」
これは、私の妹の「藤咲 舞菜(まな)」。
小三のくせに、ほぼ完璧人間(?)だ。
私より頭いいのだ‥‥。
「あら、花菜起きたの?」
「ん、お母さん、おはよ~。もうすぐ行くよ。」
「いってらっしゃい~。」
お母さんがいつものように見送ってくれた後、私は、家を飛び出した。
外は、すがすがしい春の風が吹いていた。
なんかいいことありそう!
そんな気がした。
「おっっっはよぉぉ!!」
「うべっ!?」
女の子として、はしたない声が出た。
後ろから私を襲ってきたのは、「星川 木葉(ほしかわ このは)」だった。
「・・・・・。」
「んねぇ、かな・・・・・。」
私達は、呆然と真っ正面を眺めた。
何せ、五十人くらいの女子が、巨大な壁と化しているのだった。
きゃー!!・・・くん、こっち向いて~♥
・・・くん、今日もかっこいー♥
「ん~、誰かいるのかな~?」
木葉は、そんなのん気なことを言っている。
そんなことより私は・・・
クラス表が見たいんですけど!?
「ちょっ、かなぁ?!」
止める木葉にも関わらず、ずんずんと、輪の中に入っていった。
「やだ、何よ!」
「ええ~い、うるさぁい!
私は、クラス表が見たいの、だーー!」
私は、最後に目の前にいた女子を押しとばした。
やっと前列にたどり着いた。
「さぁて、何組か・・・。」
クラスを確認しようと思ったのだが。
ここは、円の中心。
イケメンらしき人の目の前。
あ、目があった。
周りの視線がやたらと怖い。
「・・・・・・・。」
なんか急に具合が悪くなってきたかも。
すると、中心にいた、イケメンもどきが、ハッハッハッ と、大げさに笑った。
「君、なかなか面白い、気に入ったよ。
いいよ、特別な僕のファンにしてあげるさ。
光栄に思いな。」
は・・・・・・
はあああああ~~~??
悪天候予報
「あの人盛り、何?」
とある教室の窓から顔を覗かせ、呟く。
すると、面白い物を見つけたかのように、巧み笑いをみせる。
「へぇ~。」
もう一人の少年はつまらなそうに流した。
「・・・楽しみだな。」
「やめとけって。」
二人は、ポケットに隠していた飴をなめる。
そして、何事もなかったように、教室を出た。
☆ ★ ☆
「あれから?そりゃ大変だったよ。
んー、変なファンと勘違いされるは・・・。
もうこりたね、コリゴリ。」
「「・・・・・・・。」」
壊れかけた花菜をまじまじとみる、木葉と、もう一人、“城崎 彩(しろさき あや)
〈花菜ちゃん、何かあったの?〉
そんな事を言いそうな目で、彩は、木葉を睨む。
〈あたしだって知らないし!〉
「い、いやぁねぇ、そのぉ・・・“鶴来 龍(つるき りゅう)も、全くだよねぇ。」
「ま、まぁ?お疲れさまでしたわ。」
二人は、頑張ってごまかそうとするが、花菜は、全く興味を示さないどころか、
「え?つるきって誰?」
と、名前すら知らなかった。
「は!?知らないの?!」
「先ほどお会いした方ですのに…?」
木葉も彩も身を乗り出して叫んでくる。
「ふぇ?あの人のこと?」
「うん。あたし達と同じ中1には見えないくらいの学力みたい。
しかも、イケメンで、街でスカウトされたくらいだし。」
「しかも、ファンクラブもあって、大人気なんだそうです。
花菜ちゃん、特別なんて羨ましいですわ。」
二人とも頬を赤くそめて、羨ましがる。
別に嬉しくなんかないのに・・・・。
と、そのとき。
「ちわ~☆」
聞き慣れない声が教室中に響いた。
すると、たちまち女子からの盛大な叫びと、男子のうんざりした顔が浮かぶ。
「二年の“桃谷 遥希(とうや はるき)”だよ。
えっと、藤咲さん…いる?」
彼の口から花菜の名前が出たとき、一斉に視線が集まる。
寒気を感じながら、薄々返事した。
「龍が、呼んでるよ?」
「は、はぁ・・・・。」
渋々机をかぎ分け、“桃谷”の所へ近づく。
そして、桃谷に連れられて、ざわめいていた教室をでた。
「案内するよ。」
「あ、はぁ・・・・。」
思えば、さっきから曖昧な返事しかしてないと思った。
私は、冷たい廊下を歩き、未知の世界に入ったのだった。
未知の世界
「あんた、龍様と、遥希くんとどういう関係なの!?」
数人の女子か囲まれて文句ばかり垂らしてくる。
私は、30分弱聞いているので、疲れ、あくびを一つこぼした。
それは、さかのぼること1時間前。
私は、桃谷に呼ばれて、ある、部室にたどり着いた。
☆ ★ ☆
「・・・・こ、ここは・・・?」
学校の最上階、まあ、四階の見晴らしの良いとこにひとつ、たくさんのポスターで埋め尽くされた、ドアが浮かび上がった。
「僕達の部室さ。さ、入って、入って。」
桃谷に背中を押され、部室に入った。
そこで、一番に感じたことは、
・派手
・ちょー派手
・めっちゃ派手
↑以上です。
そして、もう一つ。
男の子らしい、コロンのいい香りがした。
「・・・・はる、何故こんな女を連れて来た・・・?」
「龍に聞いて~。」
そんな会話から、私は、邪魔だと、認識した。
私は、この隙に逃げようとした。
そのとき。
「おぉ?来てたのか。かな。」
「・・・・かな?」
あの、龍様に見つかったのだから、もう逃げようがない。
そして、もう一人、フードをかぶった冷たそうな男子がこっちを凍るぐらいの鋭い視線が注がれた。
「・・・は、はぁ。お邪魔してます。」
咲かない花