家族 〜癇癪と憂鬱と〜 その2

「ただいま。」
誰がいるというわけでもない。僕は、リビングの電気をつけた。テーブルには買い物の書いてある紙とお金が置いてあった。ランドセルをソファーにドサッと下ろし、紙をみた。今日は肉じゃかカナ?僕は電気を消して家を出た。

僕が買い物から帰ると、玄関に亜由美さんの靴があった。リビングには電気がついていない。薄暗い部屋のなかで、亜由美さんは、ぼうっとテレビを見つめていた。亜由美さんの白い横顔がテレビに照らされて青く光っていた。
「姉さん、電気つけるよ。」
ビュッ、バシ。
頭にガッという痛みを感じた。僕は一瞬頭が真っ白になり、なにがなんだかわからなかった。僕のランドセルが足下にあって、中身が散らばっていた。
「姉さん?!」
僕が振り向くと、亜由美さんの白い肌が真っ赤になっていた。細い眉がピンとつり上がっている。今度はテレビのリモコン。鉛筆、ノート、台拭き・・・・・・。亜由美さんはテーブルの上にあるものをどんどん僕にぶつけた。投げるものがなくなると、
「姉さんなんて呼ばないで!!」
叫んで部屋を出て行った。

・・・・・・亜由美さんはどういうつもりなんだろう?亜由美さんは、結婚に反対だったのか?頭の中が混乱しながらも、僕はとにかく散らかった部屋を片付けるしかなかった。この部屋をみて、母さんはどう思うだろう?僕は母さんが働いていて本当によかったと思った。母さんには絶対にこの部屋を見せてはいけないと思った。片付けるしかなかった。おでこより心がチクチクするのが痛かった。

家族 〜癇癪と憂鬱と〜 その2

家族 〜癇癪と憂鬱と〜 その2

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-05-12

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