家族 〜癇癪と憂鬱と〜 その1

人の家のことに興味なんか持つなよ、と行ってやりたかったけど、勇気の八の字に曲がった眉をみて、僕は

さっきからうるさく鳴り響く目覚まし、僕は
「うゔっ。」
と、うめく様な声をだしながら寝返りをうった。窓から差し込む光が眩しい。

のそのそと一階へ降りた僕に
「おはよう。」
という低い声がとんできた。そこで僕は思う。
ああ、そうだ。今日から家は「ステップ・ファミリー」(義理の家族)となるのだ。
「おはよう、・・・ございます。」
僕は口の中でもごもごと新しい倒産に挨拶した。
「亜由美さんは?」
僕はカリカリのトーストを頬張りながら母さんに聞いたのだが、母さんが答える前に
「姉さんなら、まだ寝てるんだよ、きっと。」
と穏やかな顔で新しい父さんが答える。父さんも母さんも限りなく幸せそうな顔だった。でも僕は、朝からそんな顔はできそうになかった。これから僕は、この人を
「父さん。」
と、七歳年上の亜由美さんを
「姉さん。」
と呼ばなくてはならないのだから・・・。

学校へ行っても僕はなんだか憂鬱だった。朝会の時間に、先生が僕のことを話した。親が隠すことでもないと、どうせ分かることなんだから、変に噂から広まるよりは、子供たちでもきちんと理解できるように説明してくださいと、先生に頼んだのだ。
休み時間には、みんなの関心が僕に向けられた。質問が僕を囲む。
「再婚するって聞いたとき、どう思った?」
「新しい家族は優しい?」
ねえ、ねえねえ・・・。
僕は答えるのが面倒臭いから、机に顔をくっつけて眠った。遠くで
「・・・んっだよ、答えろよ。」
って声が聞こえたけど、僕は気にしなかった。そのうちみんな飽きて、よそへ行ってしまうだろうと思った。
—別に、ステップ・ファミリーなんて昔からあるし、珍しくもないじゃないか—
新しい家族のことを考えているうちに、僕は本当に眠ってしまった。

「ねえ、ねえ、」
僕は誰かに起こされた。頭がガンガンする。
「もう、起きた方がいいよ。」
それは通路を挟んで隣の席に座る一島勇気だった。もう、周りには誰もいなかった。僕は、ふぅ、とため息をついた。
「ねえ、知らない人とすむってさぁ、どんな感じ?」
変に小声で聞いてきた勇気を僕はイラっとして睨みつけた。
「なんで、そんなに俺の家のこと聞くわけ?」
僕に言われると、勇気は困った顔をして
「だって、興味あるし・・・。」
と、小さくつぶやいた。人の家のことに興味なんか持つなよ、と行ってやりたかったけど、勇気の八の字に曲がった眉をみて、僕は
「まだ、よくわかんないんだ。」
とだけいってやめておいた。勇気の顔がピンク色に染まった。

家族 〜癇癪と憂鬱と〜 その1

家族 〜癇癪と憂鬱と〜 その1

田舎の小さな町に暮らす、小学5年生の「僕」 「僕」の家は今日からステップ・ファミリー(義理の家族)となる。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-05-12

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