遠距離の近距離

貴方が笑うとき、私も貴方の隣で静かに笑っていたい。

ソファーの上で貴方の膝の上に頭を乗せて

貴方を見上げる。

少しだけ目元にかかった髪に隠れた貴方の瞳が私を優しく見つめる。

「なに?」

「何でもないですよ?」

「その割にものすごい勢いでこっち見てるねさっきから。」

言うほど私は貴方を見つめていただろうか?

自分でも意識はしていない。

彼は上司で私とは違う県の店舗に務めていて、会えるときは少ない。

だからこそ今この時間にどれだけ貴方を感じていられるか私に取ってはとても重要なことなのかもしれない。

「ナデナデしてくれますか?」

「・・・・・・嫌だ。」

「・・・・・・・・・・・・。」

貴方が意地悪なことを言うのはいつもの事で、私はしゅんとした顔を見せる。

「嘘だよ。」

そう言って繊細な貴方の指が髪に触れる。

心地が良い。

少し横に傾き窓を覗けば高層階らしく綺麗な星と綺麗なビルの光が見える。

「ねえ、今。」

「ん?何?」

「ロマンチックですね、とか言ったら馬鹿にします?」

「するだろうね。」

真顔で答える貴方と言葉を交わして二人小さく笑う。

これが幸せの時間なのかもしれない。

その間も優しい感触が髪を伝い更に私の耳を指が掠める。

「んっ。」

「くすぐったかった?」

「いえ・・・・・。」

「気持よかったの?」

くすりと笑う貴方。

私はなんとも答えられずに貴方のお腹の辺りに顔を埋める。

「恥ずかしがってんの?」

私の行動が毎度のことのように貴方の悪戯心に火をつける様で

そんな時間も、そんな態度も大好きだとまた私に自覚させる。

「・・・・・・・すき・・・・・です。」

「なんで今更?」

「むぅ・・・。」

「嘘だよ、嬉しいぞ。」

「いっつも私には言ってくれないんですね?」

「それこそ今更だろ?」

「でも・・・・。」

貴方はまた小さく笑い、私を少しだけ真剣な目で見つめる。

「ぅんっ。」

優しく貴方の顔が近づき私の唇に優しく柔らかい感触が触れる。

舌先が優しく私の唇を撫でる。

「・・・・・・・これで伝わってるだろ?」

「・・・・はい。」

私達のこの時間は短くて、側に要られることがまだ当たり前ではないけれど、この時間は私にとって永遠の幸せ。

いつまでもこの幸せは私のもの。

どんな時も、どんな未来があろうとも。

貴方との今をずっと大切にしたいと願う。

離れた唇。

触れるまた私に触れる指先。

私は静かに貴方に埋もれて目を閉じた。

遠距離の近距離

遠距離の近距離

  • 小説
  • 掌編
  • 青年向け
更新日
登録日
2013-05-11

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