『ハーフ&ハーフ』は、10~18%。

当たり前だと思っていたことが、ある日突然、単なる思い込みであったことに気づく。誤りだった、間違っていたと発見することがある。今日もそんなことがあった。それは、スターバックスで起こった。

ニューヨークからロサンゼルスへ戻って来て、しかも、今日は南カリフォルニアならではの夏を思わせる強い日差しが照りつける中、僕はアイスコーヒーを頼んだ。20年前に初めてロサンゼルスにスターバックスがシアトルから出店した頃は、日本のアイスコーヒーのような味ではなく、普通のコーヒーに氷と普通の粉砂糖を入れるだけの薄い味のものだったが、今では美味しくなったものだ。

僕は、コーヒーをホットコーヒーで飲むときはブラックで飲むのだが、アイスコーヒーではミルクを入れる。ただし、ミルクと言っても日本の喫茶店でアイスコーヒーに入れるミルクではなく、牛乳を入れるつもりで、スターバックスのスタンドに置いてある3種類のポットに手を伸ばした。『Whole Milk(ホール・ミルク)』、『Half & Half(ハーフ&ハーフ)』、『Lowfat Milk(ローファット・ミルク)。

年齢を重ねるにつれて、健康に対して運動だけではなく、食事にも多少は気を遣うようになった。だから、今日も『ホール・ミルク』(日本でいうところの牛乳)は避けて、『ローファット・ミルク』(低脂肪乳)を一度は手にしたものの、やはり少し薄い味がすると思い直して、その「中間」ということで『ハーフ&ハーフ』にした。

その直後である。僕がどれにしようか?と迷っているのを後ろで待って、その光景を見ていたのであろう背の高い初老の白人男性が、「『ハーフ&ハーフ』は、脂肪分が多いよ!」と声を掛けてきたのは。非常にフレンドリーな感じだから、僕もその優しさと自分の心を読み取られた少しばかりの焦りから、「でも、『ローファット・ミルク』は薄いから」と答えた。

すると彼は、「だから、『ホール・ミルク』がいいよ」と笑顔で言った。しかし、僕の頭の中は、「???」になった。だって、僕の今までの理解は、牛乳100%が『ホール』、牛乳と低脂肪乳の半分ずつ混ぜたのが、『ハーフ&ハーフ』だと思い込んでいたから。僕は思わず彼に、「どういう意味?」と怪訝な顔で尋ねた。

彼は自分のコーヒーに少しだけ低脂肪乳を入れた上で、僕の肩を抱くようにして二人で一緒に腰掛けようという仕草をして、ソファの方へと僕を導いた。彼は学者のように、「何パーセントの脂肪分がそれぞれに含まれているか、知っているかい?」と僕に尋ねた。しかし、なおも怪訝な顔のままで腰掛けた僕に対して、彼は続けて、まるで順位発表!というように順番にその含有率を列挙した。

「『ホール』は3%~4%、『ローファット』は1~2%だけど、『ハーフ&ハーフ』は10%~18%もの脂肪分が含まれているんだよ!」と。僕は、「なぜ?」って思わず声を上げながら、「牛乳が4%だとして低脂肪乳が1%だとしたら、その半分ずつを混ぜ合わせた『ハーフ&ハーフ』は2.5%になるんじゃないの?」と算数の数式のように述べ立てた。

結局、その後、「君は誤解している!」と彼が言って、その説明を聞いて僕は納得した。僕は、通常の牛乳と低脂肪乳を混ぜたものが、『ハーフ&ハーフ』だと思い込んでいた。ところが、実際は、低脂肪乳どころか牛乳の4倍もの脂肪分が含まれる『ハーフ&ハーフ』は、生クリームと牛乳の混合だと初めて知ったのだった。このスターバックスでの出来事が僕の今日の新たな発見だ。

思い込みは怖いなあとあらためて思う。常に日々瞬間瞬間、リフレッシュ・スタートしていかなくては!と心に誓った。

『ハーフ&ハーフ』は、10~18%。

『ハーフ&ハーフ』は、10~18%。

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-05-11

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