STEP

STEP

今生きている『Stage』で
あなたはどんな『Step』を
踏んできた?

世界には1億人の人々が
それぞれの『Step』を
踏み続けている

だからこの世には1億通りの
バリエーションの『Step』が
存在するわけだ

毎日が
Step up・Step up
たまにStep down

時にはFast step
疲れてしまった時はSlow step

たまに辛くなるとStopしてしまうけど
元気になったら、またStep


さぁ、あなたも
自分しか踊れない『STEP』で
『Stage』にでよう


*2013/5/12 2話更新しました

1話

1話

目の前に満開ピークを迎えた
桜の木が1本。

淡い桃色の飾りをつけた太い幹に
背中を預けると

トクントクンと木の鼓動が
感じられる気がした。





「…遅い」

左腕に巻きつけられた、腕時計は『PM12:34』約束の時刻から最早34分もオーバーしている。

思わずため息ひとつ。

「いつまで待たせるのかしらねぇ?」

誰に問いかけるわけでもなく
気付いたらそう1人で愚痴を零していた。

見上げるとサァッと飾りが揺れ『本当にね』と相槌を打っているように見える。

そして、その飾りの一部がヒラヒラと落ちてきて、長い髪に絡み付いてきた。


それを取ろうと手を伸ばしたとき、

「何してんの?」

急に男の声がした。




「えぇ?…何って…その…」

間を置くことなく声を掛けてきた見知らぬ男はそれを見てにんまり笑うといきなり急接近してきた。

少し恐怖を感じ、身を引こうとしたが
幹に背を預けたままだということを
忘れていた。



「名前なんてゆーの?新入生でしょ?俺2年。先輩ってやつ?」

男は更に顔を近づけてきた。
そして、抵抗できないことを
いいことに男は耳元に唇を押し付けてきた。

「かわいいねぇ…」
「―!」

ハァァ、と耳の穴に生暖かい息が送り込まれゾクゾクと虫唾が走る。
最早、木の鼓動なんて感じている余裕などどこにもなくなっていた。

それどころか、頭の中で危険信号がガンガン響いているのを感じる。

「このまま…お持ち帰りしちゃおうかなぁ…?」
「やっ…」

―この変態野郎!

心の中で毒ついた。

唇が震えて声が出ない。


抵抗できない自分が
かっこわるかった。



「…♪」

するすると、男の手は
下半身に移動していく。

昼間ではあるが人気が全くない桜の木の下に、発情した男と嫌がる女。

最悪のシチュエーションだ。

半ば諦め、これから起こるであろうことにギュッと目を瞑ったとき―




「―この変態野郎!」



本日2度目の見知らぬ男の声がした。



「っ!」

ビビったのか変態野郎は行為を中断し、
体から離れた。

そして、新しくやってきた人物に対して早くも戦闘態勢に入っている。

「だ、誰だてめぇは!!」
「まてまて、人に名前を聞くときはまず自分から名乗るっていうマナーが世の中の決まりだぜ?」

必死にしゃべる変態野郎に対し、軽い口調であしらった。



「あぁ!?何生意気言ってんだ!」

その軽い口調に挑発されたのか変態野郎はツカツカと新しく来た男に歩み寄っていった。

変態野郎と密着していた体も、太ももに当たっていた妙な硬い感触からも解放され安堵のため息が零れる。



「おーい、大丈夫?」

「え?あ、はい!」

「よかった。この大学はこういう変態野郎多いから気をつけな」

「はい…」



「おい!てめぇら無視すんな!!」


変態野郎そっちのけで会話していたことが気に入らなかったのか、男はたいそうご立腹のようだ。



「あ、やべぇ忘れてた」

変態野郎はジロリと歩み寄った人物を睨みつける。

こうして2人一緒に見ると身長も堅も変態野郎の方が二回りくらい上回っている。


「…てめぇ、1年か?あんまり先輩怒らせっとこの先楽しい大学生活送れねぇーよ?」

ドスの聞いた低い声で脅すように変態野郎は問いかける。

しかし、それに対し相手はひるむこともせずに余裕の笑みを浮かべた。



「…顔」

「あっ!!?」

男はピッと人差し指で変態野郎の顔を指さす。


そして、笑いながら一言

「―すっげぇ不細工!!」



一瞬その場が凍りつく。

しかし、次の瞬間変態野郎が顔を真っ赤にして拳を振り上げた。

「このやろぉぉ!!」



怒声と共に振り上げられた拳は男目掛けて炸裂した。


ブンッ、と重々しく空を切る音。


そのパンチがもし
男にヒットしていたら

「バキッ」とか「グシャッ」とか
「いってー」とか呻き声とか

聞こえるはず

しかし、それに連なる音は無い。



「がぁっ!?」

それどころか、攻撃を仕掛けた本人の間抜けな声と
『ドテンッ』と地が震えた。




案の定、変態野郎の威勢が込められたパンチは男にヒラリとかわされていた。



それどころか攻撃を仕掛けた本人はあまりにもパンチに力を込めすぎたのか
その反動でバランスを崩しその場に尻餅をついていた。

「よっしゃ!ずらかるぞ!じゃあな変態野郎!…ちなみに俺は3年だから」



「…わっ!」

グッと手を引かれ思わずよろけたが
なんとかバランスを保つ。

そして、男に手を引かれたままその場から
走り去った。


チラリと地に座ったままの
変態野郎を見ると、



さっきとは打って変わって青ざめた表情をしていた。

2話

2話

「急に走らせちまって、悪かったな!」

「全然ッ…ハァ…ッ…大丈夫ですッ…」


―…凄い足の速さ…しかも、息乱れてないし。
なんか、ハァハァ言ってる自分が恥ずかしい…



「足、速いんですね…」

「え?うーん、まぁね!」

「助けてくれて、ありがとうございました」


息を整えながら、ぺこりと頭を下げて
再度お礼をする。



「いや、いいって。それに大したことしてねーし!」

「いやいや!先輩が助けてくれなかったら…今頃どうなってたか…」


先輩は頭を掻きながら困ったように笑った。




「まぁーね!この時期は動物でいう"発情期"ってやつだかんね!」

と発言したが、すぐに
あ、あいつ人間だったわ!と先輩は自分で突っ込みをいれていた。


そんな先輩がおもしろくて、私は声を出して笑ってしまった。



「ってか!何年生?」

「あ、1年です」

「1年!若いなぁー、俺はもう3年だかんなぁ……やべぇ。じじぃだ」

「まさか!まだまだ若いですから!…そういえば、先輩の名前は――」


『―伊梨亜っ!』



名前を聞こうとした拍子に自分の名前が呼ばれた。
そしてパタパタとこっちに向かってくる影。

「―圭!」

「ごめん!遅れた!今日までのレポートがなかなか片付かんくて……つーか、そこの人誰?」

圭はジロリと先輩を睨む。
私は慌てて説明しようと口を開いたが―




「この人は――」

「―わりっ!俺邪魔者みたいだな!もう行くから」

「えっ!?ちょっと待っ…」


しゃべる間もなく先輩は『じゃあなっ』と
とっとと行ってしまった。



「ねぇ伊梨亜、あの男誰?」

再度私に尋ねてくる圭の声はやや不機嫌気味なトーン
いくら状況を知らないといえど、そんな圭の態度に思わず腹が立った。



「…あの人は、変な奴に絡まれてた私を助けてくれた人!」

「えっ…!!」

「先輩が来てくれなかったら今頃どうなってたか…なのに、あんな態度とって、最低じゃん!」

そう吐き捨てるとくるりと圭に背を向け、その場を去ろうとした。



「待ってよ伊梨亜…!」


さっきとは打って変わった弱弱しい圭の声
最初はシカトしようとしたが仕方なく足を止めた。

「あのさぁ、そういう女々しいの、やめて」

「……伊梨亜、怒ってる?」

また出た…圭の人の顔色を伺う癖
私が一番嫌いな部分だ。



「当たり前でしょ?あんな失礼な態度とってさ…しかも、待ち合わせに30分も遅れてきたくせに…そもそも、"今日提出のレポート"とか言ってたけど1週間前から提出期限を告知されてたじゃん」

「っ…本当にごめんって…」

シュンと子犬のように背筋を丸めて落ち込む圭
今はその姿にさえもイラついてしまう。



「…もういいよ」

適当にそう言い、さっきより早く歩き始めた
後ろから再び弱弱しく呼び止められたが、足を止めることはなかった。

3話

3話


「―女々しいね。その彼氏」

モグモグと口を動かしボソリと呟く少年
彼の手には"新作!ツナマヨネーズ・青のり"というコンビニのおにぎりが握られていた。

「本当、嫌になっちゃうよ。…てか、それ美味しい?」

「うん。意外と美味」

そういうと少年は残りのおにぎりを口に頬張った。そして再びカサカサとコンビニの袋をあさり
"明太子バターキムチ"と書かれているおにぎりを取り出す。




彼の名前は"宮城 海"
唯一の"ダンスサークル"のメンバーである。



「まぁ、最近の男共はそういうの多いからねー、根性が足らんというか」

「うん…圭も海君みたいに男らしくなってほしいよ」

「つーか、そいつダンス始めたいとか言ってなかったっけ」

海の言葉に、グッと息が詰まった。

STEP

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伊梨亜はダンスが大好きな18歳。入学した大学に"ダンスサークル"が無いことを知り、メンバーを集めて自らダンスサークルを立ち上げるが挫折者多発、メンバーは2人と危機的状況に追い込まれる。そんな状況に頭を抱える伊梨亜だった。ある日、彼氏の『圭』を待ち合わせているとき1人の男が伊梨亜に近づいてきて…!☆続きは本編でお楽しみください

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-05-11

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