カラッポな夜に

カラッポな夜に

今日別れ話がでなかったら、自分から振るつもりだった。

今日別れ話が出なかったら、自分から振るつもりだった。
そんなこと考えるほど頭固くないけど、受験勉強で、互いに構え合えなくなってることは事実だったし、その反動で、会えば互いに今まで以上に求め合ってしまうこともまた事実だった。
はっきり言ってソレは私の将来には邪魔だった。
自分よりも相手のことを考えられるほど私は大人じゃなかった。
二人の目指す道が違うこともまた明らかで、どっちかが相手に合わせられるほど、私たちは愛を知っていないと思う。
自分を犠牲にするのは嫌だった。
道は一つしかなかった。
遠距離が上手くいくなんて考えられるほど私は子供じゃなかったし、愛を信じれる自信もなかった。
そう、道は一つ。
それで「嫌だ」と叫ぶような男なら、こっちから願い下げだ。

「別れよう。」
嗚呼・・・。それは確かに衝撃だった。
私はいつだっていい女でありたいと思った。
私の知っているいい女ってやつはこういうときに、男にしがみついて泣きながら「嫌だ、嫌だ」を繰り返したりはしない。相手の目を見て、理解ある笑顔で言うんだ。
「バイバイ。」

風はなめらかに吹いて木がざわざわとなり続ける。人はこれを快いなんて感じるのかもしれないけど、私は心臓までざわざわ鳴り続けるのが、とても不快でたまらない。

帰り道。
私は彼の自転車の後ろに乗りながら、別れ話を切り出せないでいた。
いつもの場所で降ろしてもらって、言われた。
「今日の夜・・・。電話する。」
「うん。」
—・・・くる・・・—
彼は私の顔をみなかった。

でも電話じゃなくたっていいじゃない。
最後に目を合わせたのはいつだっけ?

カラッポな夜に

誰もが経験する「別れ」。
毅然としていたいけれど、事実は辛く、頭の中でばかり自分を貫こうとする。
頭だけがぐるぐる動いて、心の中はカラッポ。
そんな夜に読んでほしくて書きました。

カラッポな夜に

別れを決意した私の心境を綴った物語

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 青年向け
更新日
登録日
2013-05-10

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