通りすがり
少し前に上高地に行き合羽橋によった折、大勢の観光客の行き交う橋の真ん中で、欄干から真下の川面をカメラで撮っていると、一緒にいた母が「カメラ落としたらどうするの?」と聞いたので「カッパに拾ってもらう」と答えたら、隣にいた見知らぬ女性が急に涙ぐんでしまったので驚いた。あの頭の大きな作家さんは随分と女性にモテるようだ。ここでカッパに会ったというが、私としては、頭頂部の禿げた男に出会ったのだと思う。罪作りなハゲもいたものだ。
本人は一切気づかず通り過ぎただけの、言わば通行人であったにしても、すれ違った誰かに大きな影響を与えてしまう事があるのだな、と思う。自分も通り過ぎただけで、他の誰かに多大な影響をあたえる。そんな事があるかもしれないと思うと。町を歩くのにも妙な面白さが加わる。
通りすがり