消えた法連草

夏の終わりを告げるかのように蜩の声が響き渡る夕暮れ前、ケンヂは
晩御飯の漬物に使うホウレンソウを収穫する為に庭の畑へと足を運んだ。

「うわぁ・・・・」

いつもと変わらない庭の畑が今日は何かが違った。

「ホウレンソウが全部なくなってる・・・・!「なんで?!」

畑に生っていたホウレンソウが全て無くなっていた。

「やべぇー・・・・母ちゃんに怒られる・・・・・!」

ケンヂの思考回路は母親に咎められてしまうのではないかという
恐怖と不安が入り混じったような感情がぐるぐる回っていた。

少年はあーあーと言いながら項垂れていた時すぐ横の叢でガサガサという物音がした。
もしかして犯人はそいつじゃないか、だったらとっ捕まえてやるとケンヂは頭を上げるとそこには何処にでもいそうな黒い猫が1匹だけいた。

「なんだ・・・・猫か・・・・」

猫はホウレンソウなんて食べない。だから猫は犯人じゃない。ケンヂはそう確信した後
死んだ魚のような目をしたままだらだらと家の中へと戻っていった。

ケンヂが家の中へ入るのを見送るや否や猫は尻尾を揺らしながら山へと続く畦道の方へ走りだしていった。

その後もケンヂはホウレンソウの犯人が誰かずっと考え続けていた。

ホウレンソウが盗まれて1週間が経った夕月夜の頃、ケンヂがお遣いから戻ってきた時
畑の方に人の気配を感じた。

「おい!お前!ココは俺ん家の畑だぞ!出てけよ!」

ケンヂがそう叫ぶとぼさぼさの長い髪に黒いTシャツと黒いズボンに眼鏡という
如何にも怪しい風貌の男がいた。その手元には畑から盗ったのであろう胡瓜が入ったビニール袋があった。

余りにも突然の出来事だったので男はビニール袋をその場に落とすと畦道に向かって走り出した。

「待て!警察に訴えてやる!」

ケンヂは自転車で男を追いかけたが、男の足は人間とは思えないほど早く、いくら自転車と言えど
子供のケンヂは体力的に限界になったのかスピードが徐々に落ちて行った。

このまま逃げられてたまるかとケンヂはただ只管自転車を漕いだ。10分ほど追いかけっこが続いた時目の前に強い光が現れた。
暗闇の中でカメラのフラッシュを炊かれたかのような衝撃により男はふらついた。ケンヂはこれはチャンスだと自転車をその場に捨て、
男の腕にしがみついた。そして「コイツ家の畑の野菜盗ったんだ!!!」と叫んだ。

それから5分後、男は窃盗容疑で逮捕された。先程の光は自転車で巡回していた警官の懐中電灯の物だった。

「防犯対策はしっかりしておいて下さいね。」

「はい・・・・、えっと・・・・あの・・・・・ありがとうございます・・・・」

余りにも一瞬すぎる出来事であった為か、ケンヂは口をぽかんと開けて呆然としていた。

「それから、猫には気を付けて。」

警官の言った意味がケンヂには理解できなかった。

「ケンヂ、もう遅いから家に戻るわよ。」

「はーい。」

ケンヂと母親は警官に深くお辞儀をした後家へと戻っていった。

ケンヂは一旦立ち止まって振り向くと警官と男の姿はなく、代わりに黒い羽がその場に落ちていた。
一瞬彼の頭の中に疑問符が湧き上がったがまあいっかと事故解決した後家の中へと入って行った。

月が照らす群青の空の中を1羽のカラスが2本の尻尾を持った猫を掴みながら飛び去って行った。

消えた法連草

ホウレンソウはそこまで好きではなかったり。

それと展開が早すぎたりグダグダだったりで読みづらかったらすいません。

男=猫又、警官=烏天狗です。
姿形は人間と全く一緒なんだけど人間の見ていないところでは本来の姿に戻っているんです。

消えた法連草

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-05-09

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted