ワールド・ブレイク
はじまり
宇宙の片隅に、小さな生き物が生きていた。宇宙の始まりからずっと生き続けてきたので、かなりの進化をとげていた。猫のような体つきで、背中には無数の触手が生えている。そしていつしか、この生き物の中で、ある感情が芽生え始めた。 その感情は人間で言う退屈に近いかもしれない。地球から何億光年も離れている場所にいるこの生き物は、新たな刺激を求めて旅を始めた。ただただ漂うだけの旅だった。長いこと漂っているうちに、岩石のかけらに遭遇した。その猫のような生物は触手を伸ばし岩石を覆った。すると次の瞬間岩石は赤い光を発しながらその生き物ごと計り知れない速さで宇宙をかけ抜けて行った…
ある日の朝突然、空から小さな赤い隕石が海に落下した。隕石は激しい水しぶきを撒き散らしながら海底へと沈んで行った。隕石落下から数時間後、一隻の船が現れ、あたりを調べ始めた。
「なんだ、この色は」
船の船長が顔をしかめて言った。あたりの海面は異常なほど真っ赤に染まっていた。結局隕石を取り出すことができずにその日の調査はすぐに終了した。
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