なんだっけ?
デビルサバイバー2より、ジュンゴとアイリのお話です。
は?
「…今、なんて言った?よく聞こえなかったんだけど。」
落ちつけ。落ち着け。ワタシは、少し冷静になるように自分に言い聞かせた。
「だから、みんなが言ってた。アイリはジュンゴが好きだって。」
このバカは、ご丁寧にさっきよりもかなりの大声で、ワタシの耳元でまったく同じことを繰り返してくれた。
なんでかは知らないけど、ワタシがこのバカジュンゴのことが好きだって噂が広まっているらしい。
「何言ってんのよ、ワタシがアンタのことなんて好きなわけないじゃん!!!!!」
思いっきり否定してやった。当たり前じゃない。好きでもなんでもないんだから。
いつものようにケロッとした反応を示すと思いきや、ジュンゴは意外な反応をした。
「…そうなの?でも、ジュンゴはアイリが好き。大好きだよ?」
は?なんなの?その悲しそうな顔は!哀しそうな瞳は!!そんな瞳でワタシを見ないでよ!!!!
しかも、しかも、、、、好きって…大好きって…それ、どういう意味の好きなわけ???
「ば…バカジュンゴっ!なぁにが大好きよ!そんなの『じゅんご』の『好き』と変わらないんでしょ!?」
「ん…じゅんごも好き。アイリも好き。でも、アイリはジュンゴのこと好きじゃない…?」
やっぱり期待して損した!じゅんごの好きと変わらないじゃん!まあ期待通りの好きでも困るんだけど!
「知らない!バカジュンゴは茶碗蒸し食べすぎて死んじゃえっ!!!」
去り際のジュンゴの悲しそうな顔が気にかかるけど、そんなこと関係ないっ!
どうして?
名古屋支局の広場。そこにジュンゴはつったっていた。
「…アイリ、なんで怒ってた?」
ジュンゴにはわからなかった。アイリがなぜ怒っていたのか、自分がなぜ怒らせたのか。
「よおジュンゴ。さっきアイリとなんかやりやってなかったかあ?」
自分たちの、いや、特にアイリの声が全体に響き渡っていたらしく、たまたま近くを通りかかったダイチの耳に届いたらしい。
「ん…ジュンゴ、アイリを怒らせちゃった。」
ダイチはニヤッとした。問題のウワサを流した張本人はダイチだった。
「ははーん。さてはジュンゴ、アイリにオレが言ったこと言っちゃったんだろ~?」
ジュンゴはなんでわかった?と言わんばかりの顔をする。
「そりゃアイリがあんなに怒るなんてそれくらいしかないだろ。で?どんな話してたんだよ、話してみ?」
ジュンゴは少しずつ、アイリにいった言葉と、アイリがいった言葉をダイチに話した。
「…そうしたら、アイリが急に怒った。なんで?」
「…そりゃ怒るだろ!!アイリのことが好き~とか言われたから ええー!私たち両想い?! なんて思ったら猫と同じなんてさあ~!」
「猫じゃない、じゅんご。」
「あー、だから、じゅんご?と同じ好きってさあ、アイリにはショックだったと思うよ~」
ジュンゴはわからないという顔をする。
「わからないかなあ?多分な、アイリは誤解しちゃってると思うんだよなあ…」
ばかじゅんごお
「ジュンゴのばかー!」
ひと気のないところで思いっきり叫ぶ。ストレスたまった時はこれに限る。
「なんなのよ、もう…」
深呼吸をする。新しい酸素が肺から脳へ伝わり、ワタシを落ち着ける。
ジュンゴに好きって言われたとき、本当にドキッとしたし、たぶん、嬉しかったんだと思う。
それなのに!猫と一緒って!!しかもオスだよ!
だいたい、ジュンゴに『女性としてアイリが好き』なんて感情自体、無理なのかなあ…
ジュンゴってさ、ワタシの口に茶碗蒸しついてた時とかさ、平気でさ、
「アイリ、ついてる。」
ってさ、ついてた茶碗蒸しゆびですくって自分の口に運んでたしさ…
ダイチたちとの別れで少し涙が出ちゃったときとかも涙をゆびで拭いてくれたりさ…
普通彼女とかにやることを平気でワタシにしてくるんだよね!
それで意識しちゃったりとかしてさ。でも、当たり前に、自然にしてくるもんだから
ジュンゴには普通のことなのかなあって思ったりしてさ…
「ワタシのこと、どう思ってるんだろ…」
ふいに口に出た言葉に、すごく驚いた。
「そっか、ワタシ、ジュンゴにどう思われてるか気にしてるんだ。」
ずるいよね。ワタシばっかりドキドキしてさ。ほんとずるい…
ん
「わからないよ…ジュンゴは、アイリが好き。じゅんごも好き。」
ジプスに与えられた個室で、一人たたずんでいた。
「なあーん?」
正確には、一人ではなくて一人と一匹であったが。
ジュンゴは、じゅんごを優しくなでる。
「でも、この二つの好きは同じ?考えたことない…」
アイリもダイチも、『猫と同じ好きじゃダメだ』と言っていた。それがジュンゴにはよくわからなかった。
何が同じで、何が違う?
「なあ、ジュンゴはラブストーリーのドラマとか本とか読んだことないわけ?男女がお互いを愛し合うみたいなさあー。」
「…どういうの?」
「よくあるのでさあー主人公の女の子はある男の子が好きでさあ、その人のことを見るとドキドキしたり、話せただけで一日嬉しい気持ちになったりするって感じのヤツだよぉ!」
ずっと前にした、ダイチとの会話を思い出す。
「違うのかな…」
ジュンゴは、いつの間にか、眠りについていた。
???
ゆっくりと目覚めた、ジュンゴ。でも、それはジュンゴであってジュンゴではなかった。
「…また、私が呼び出されたか。ジュンゴも、そうとう悩んでいるみたいだな。」
いつもぼーっとしているジュンゴとは顔つきも、口調もすべてが違う、もう一人のジュンゴ。覚醒ジュンゴがそこにいた。
ベッドから起き上がると、部屋を出る。ある人物のもとへ向かうために。
しかし、どこにいるかわからない。
通りすがりの人たちに聞いてみると、その人はプラネタリウムにいるらしかった。
プラネタリウムの扉をそっとあけると、何も映らない映写室の片隅に、座っていた。
「…アイリさん。」
ビクッ!と肩を震わせ、おそるおそるこちらを向くアイリ。その顔はすぐにしかめっつらに変わる。
「な、なによ、ジュンゴ。。。さん付けで呼んだって許さないわよ。。。」
「私はジュンゴであってジュンゴではない。もう一人のジュンゴだ。」
「…何いってんの?」
「本当だ。」
はっきりとしゃべる口調と、アイリを見つめる今までのジュンゴとはちがう瞳を見たアイリはしぶしぶ信用した様子だった。
「…それで、なんの用ですか…。」
「今日、ジュンゴから変なウワサの話を聞いただろう?あれは、本当は違うんだ。」
「…当たり前でしょ。ワタシがジュンゴを好きだなんて…」
その言葉を聞いた覚醒ジュンゴは、やはり、というような、やれやれ、というような表情をする。
「そうではない。あのウワサは、ジュンゴがダイチにこんな話をしたことが始まりだった。」
ほんとのこと
ジュンゴは、ゆっくりとしゃべり始めた。
「“彼”は、何を思ったかダイチにこんなことを言いだした。『自分が最近おかしい』と。」
「…」
「ある人のことを見ると、心がわくわくしたり、明るくなったりする。という内容のものだ。ダイチも私もすぐにそれが何かわかったが、本人だけはこの気持ちがなんなのかわからなかったみたいだ。」
「…ある人ってさあ…」
アイリは口をとがらす。話の流れから、自分の考えている答えがそれを指しているが、少し緊張した。
「ああ。アイリさんの思っている通り、あなたのことだ。」
「ッ…!!!」
予想はしていたけど、いやむしろ予想なんて全くしていなかった。アイリの顔がみるみる紅くなっていく。
「その、え?えっと…?ワタシがジュンゴを好きなんじゃなくて、ジュンゴがワタシを好きだったってこと…?うわっ!自分で言ってすごい恥ずかしっ!!!」
覚醒したジュンゴは、ジュンゴとは違う大人びた笑顔を見せた。
「ああ。そういうことだよ。アイリさん。もう時間だろうか。意識が遠のいてきた…」
ジュンゴは椅子にもたれかかり、ゆっくりと目を閉じる。そして、目を開けたときにはジュンゴがいた。
「…あれ。ジュンゴ、お部屋で寝てたはず…?…ん…?」
ここまで来た覚えのない場所。そして、横には顔を真っ赤にしたアイリ。
「アイリ?どうしたの、顔が真っ赤だよ。熱でもあるの」
ジュンゴは、アイリのおでこに自分のおでこを合わせる。
「~~~ッ!!!!」
アイリの顔は赤いを通り越して赤紫になっていた。恥ずかしさと怒りと…少しの嬉しさがまじって。
教えてあげるわよ!
「ややややっ!やめてよバカジュンゴ!!!」
いつものように頭をはたく。
「あ、じゃなかった…。ねえ、ジュンゴ…」
「なあに?アイリ。」
「あのね、ワタシといると、楽しい?」
「…? うん。」
「ワタシといると、嬉しい?」
「うん。」
「その気持ちってね、なんていうか知ってる?」
ジュンゴの言葉が止まる。
「あのね。“恋”って言うんだよ。ジュンゴはね、ワタシに恋してるんだよ。。。」
アイリの顔はまた赤くなっていた。
「じ、自分で言うなんて自意識過剰勘違い女じゃない!!!あー恥ずかしっ!!!!」
笑って冗談ぽい空気にしようとするアイリとは違い、ジュンゴは真面目な顔。
「そっか。ジュンゴは恋してるんだ。アイリに。アイリがジュンゴのこと好きじゃないって言ったとき、すごく苦しかった。悲しかった。ケイタに言われたときよりもずっと。」
ジュンゴはアイリを見つめる。
「ジュンゴはアイリが好き。大好き。恋してるんだね。……でも、アイリは…」
ジュンゴの顔が少しくもる。
「ッ!そんな悲しそうな顔しないでよ!!!ったく、鈍感だよねバカジュンゴはさあ!ワタシだってね…」
「ジュンゴが好きだよ、大好きだよ、ばあーかっ!!」
なんだっけ?
ジュンゴとアイリがあまりにアニメではラブラブなので書きました。本当はジュンゴとフミ派。今回はやっつけです><