大切なものは、心でしか見えないんだよ。
いろんなことが一度に多く押し寄せてきた2年間のニューヨーク生活から、再び本拠地をロサンゼルスへ戻した。特に、昨年の夏以降はエッセイを書く心の余裕もなく、ただひたすらアメリカや日本を東奔西走している間に、ハリケーン「サンディ」が襲来して大きな爪痕を残していった。
On ne voit bien qu'avec le coeur. L'essentiel est invisible pour les yeux.
心でしかよく見えないんだよ。大切なものは目には見えないんだ。
このフレーズは、飛行家であり小説家だったアントワーヌ・ドゥ・サン=テグジュペリ(Antoine de Saint-Exupéry)の『星の王子様』(”Le Petit Prince”)の中の一節。原書は、わかりやすく、それでいて、宝石のように輝く美しいフランス語で綴られている。その中でも最も心に残るのが、星の王子様が出会ったキツネのこの言葉だと思う。
今回、ニューヨークからロサンゼルスへ本拠地を移すにあたって、このフレーズが蘇ってきた。情報化、グローバル化にともない、却って自分の「大切なもの」を見失ない苦しんいる人が多い。大切なのは、心でしかよく見えない。だからこそ、闇雲に行動するのではなく、心の栄養になることに時間をかけることが重要だと僕は思う。
『星の王子様』(”Le Petit Prince”)には、心の栄養となるような大切なエッセンスがぎっしり詰まっている。もし、人生に行き詰まったら、フランス語の辞書を引きながらでもいいから、原書で読んでみればそのエッセンスに触れられると思う。僕も太陽の光が眩しいカリフォルニアに2年ぶりに戻ってきたからこそ、再び、そのエッセンスに触れてみたいと思う。
大切なものは、心でしか見えないんだよ。