ーミッションー
プロローグ. ふと目を開けてみた。この1時間で何が起きたのか、そしてどうして起きてしまったのか、松原叶夢は教室の中央に仰向けで寝転がっている。右手には血のついたナイフ、そして数々の傷跡。ワイシャツは血で真っ赤に染まり、皮膚にぺたりを張り付いている。左手もナイフで刺された後が数多くある。松原が寝転がっている周りには3つ、死体が転がっている。松原はもう一度目を閉じた。そして今までのことを振り返った。そう、全てはあの日から始まった・・・
1. 「おはよっ」後ろから肩を叩かれた松原はビクッと肩を上げ、振り返った。「あ、おはよ」彼女は松浦結衣(まつうらゆい)、松原と同じ北森高等学校に通う高校2年生、俗に言う「花のJK」である。そんな幸せな時間をゆったりと過ごす松浦はクラスの人気者である。「相変らず叶夢は・・・いや、なんでもない」「あ・・・あはは・・」松原は失笑した。「ごめん」「いいって」松原は無理に笑顔を見せたが、その後俯いてしまった。「おはよ!!」教室の扉を開けて陽気な声で松浦は言う。「おはよぉ」引っ付いてきたのは速水優奈(はやみゆうな)、「おっはよ♪」相変らず陽気な2人に松原は笑った。「叶夢さぁ、付き合っちゃえば?」「え?誰と?」「分かってるくせにっ!!蒼汰君とだよっ」「だから好きじゃないって・・・」「あははぁ、素直じゃないなぁ」松浦と速水は扉の前でそんな事をよく言ってくる。「けど叶夢可愛いしフラれる事は無いって!!」「だから好きじゃないって」「素直になりなよ!!」そんな会話に後ろから参加してきたのは岡本雄一(おかもとゆういち)である。「どいてくれない?」「あっごめん」「はぁい!!席に着くように!!チャイム着席を忘れたか!!?」いきなり入ってきた教師に吃驚(びっくり)した生徒は慌てて席に座ろうとする。慌てたせいか、転んだ生徒がいた。「おいそこ、何転んでいる」「いや、ちょっと足腰が脆(もろ)くて・・・」「くだらない個といってないでさっさと座れ!!」それから授業をし、学校が終わったときは既に午後6時過ぎだった。松原は速水と松浦と一緒に帰った。「ねぇ叶夢、昔何か有ったんじゃないの?」聞いてはいけない事を松浦は聞いてしまった。「・・・」「私達親友でしょ?教えてくれてもいいじゃない」「・・・・・」以後黙り込んでしまった松原の肩に手を乗せ「じゃあ明日カラオケ行こう!!」と速水が言ってきた。松原は入学した当時は最悪だった事を2人はよく知っている。そう、あの時は・・・
2. 「はい、皆さん最初に言っておきます。入学おめでとう御座います。私は皆さんの担任、湯川奏志(ゆかわそうし)と申します。では、時間が余っているので初めから自己紹介をしてもらいます。では1番から順に」湯川は出席番号1番の方を見た。それから順番に自己紹介をした。「岡本雄一です。趣味はサッカーです。よろしくお願いします」「高橋蒼汰です。趣味は格闘技です。よろしくお願いします」「速水優奈です。趣味は遊ぶ事です。よろしくお願いします♪」「松浦結衣です。趣味は・・・ありませんっ。うふふ、よろしくお願いしまぁっす♪」「松原叶夢です。趣味はありません。よろしくお願いします」その小さな声に最初は拍手が起こらなかったが外見の美貌に驚きの声や男の歓喜の声が聞こえ、拍手喝采となった。それから入学式やらを終え、今日の学校は終了、松原は下校途中男子に話しかけられていた。「ねぇねぇねぇ、彼氏いる?」「メアド交換しようよ」「俺と友達にならない」「家どこ?一緒に行こうよ」「明日空いてる?」松原は同じクラスの男にナンパされた。それも1人2人と言う数ではない。クラスの男子半分以上に付きまとわされ、溜息をついた。ガタンゴトン、ガタンゴトン、キキィィィ、電車が止まり、乗るとその車両は座る席が無かった。「はぁー」入学式ではずっと立っているわナンパされるわそして座る席が無い。松原は心の中で叫んだ。何でなのよ!!、けど露骨に嫌な表情は表情は出さなかった。仕方なく立った。ガタンゴトン、ガタンゴトン、自分が降りる所はまだ先、10分以上ある。それまでずっと座っているのは退屈である。駅に止まるたびに誰か降りないかと周りを見渡した。降りるどころか乗車してくる人が増えてきた。それから5分後、松原は太腿に違和感を感じた。変な感触。首を動かさずに目だけで後ろを見ようとすると顔は見えないが誰かが自分の後ろに立っている。ワ・・・ワイセツ・・・、松原は心の中で言ったが電車内で助けを求める事は出来なかった。そしてやがてお尻へ手が移動していく。その時、後ろの男が悲鳴を上げた。「いてぇぇ!!!、いていていて・・・や・・やめろよ・・・」咄嗟(とっさ)に振り返ってみるとそこには自分と同じ制服を着た男性が立っていた。足を見るとズボンをはいている。「今、彼女にワイセツしていましたよね?」「し・・してねぇよ!!」顔をしっかりと見るとなんと20代くらいの男性だった。20代くらいの人は左腕を捻りあげられている。「君、大丈夫?」助けてくれた人に話しかけられた。「あ・・はい・・・」それから偶然隣の車両に刑事がおり、ワイセツ犯は呆気なく逮捕された。それから松原は男の人と立ち話をした。「君、松原叶夢、だよね?」「あ・・はい・・・」「俺の名前・・・分かる?」「え・・・いえ・・・」「俺、高橋蒼汰、よろしく!!」明るい彼の顔を松原は見ていた。「ん?俺の顔に何かついてる?」「ううん」イケメン、松原は顔を赤らめ、俯いた。「松原さぁ、ずっと俯いてるよね」その言葉にドクッ、と心臓がなった。どうしようか、いっそのこと全て話しちゃおうか、松原は迷っていた。「松原・・・松原叶夢、ん~どこかで聞いた事のある名前だなぁ。テレビかな・・・」っ!!、その呟きに肩をあげた。「ん?・・・テレビ・・・あ・・・お前・・まさか・・・」全てを知られてしまった松原は涙をポロポロと流した。「そうか・・・俺が中2の時、テレビで見た・・・確か松原叶夢って、珍しい名前だから覚えようって・・・そんな・・・」その時松原が降りる駅に到着した。松原が降りようとすると高橋も降りた。「え?松原もここ?」「う・・・うん・・」松原はワイシャツで涙を拭いながら言った。「そうか・・・じゃあ一緒に行こ」「ぅん・・・」それから松原は色んな話を聞いた。偶然高橋と家は近く、歩いて5~6分で着くマンションに住んでいるようだ。「一人暮らしって・・・最初は不安なんだよな。ちゃんと生活できるかなって。でも案外簡単だったよ、両親がサポートしてくれたし、最初は洗濯機の使い方がわかんなくって適当にやって壊したっけ、両親に叱られた」「蒼汰君でも失敗するんだ」「そりゃ勿論(もちろん)、完璧な人間なんていないよ」それからT字路で別れた2人は家に向かっていった・・・
3. あれから1年間、女子が引っ付いてきて無口はなんとか解消されたが相変らずの静かさ、だがそれを好む男子が増えてきた。特に引っ付いてきたのがあの松浦と速水だった。この学校は3年間クラスが変わらないため、ずっと同じだ。「じゃ、放課後カラオケ集合ね」「う・・うん・・・」放課後にハイテンションな松浦を見て失笑した。「あ・・そうだ」フッと思い立ったかのような言葉を漏らし、松原に言った。「蒼汰君も誘いなよ」「えぇ、悪いよ」「メアド知ってるんでしょ?誘っちゃいなよ!!」2人は笑顔で言ってくる。松原は最初はストレスが溜まったが最近は逆に嬉しいと思っている。こんな友達と出会えたのだ。けど賢一達を忘れてはいけない。彼らがいなかったら私は今居ない、そう思い仲良くしすぎるのは極力避けていた。結局2人のしつこい要望に耐え切れずに誘う事になった。「はぁ」家に着いた松原は自分の部屋に入った。そしてベットに転がり込んだ。「あぁ、蒼汰君誘わなきゃ・・・でも疲れたなぁぁ・・・」段々瞼が重くなってきたが急に目が開いた。いきなり携帯にメールが入ったからだ。「誰からだろう・・・え?非通知?」メールの内容を見終わった松原は驚愕した。「何・・これ・・・『ミッション』出席番号が奇数の人は学校に集まるように、逆らった場合は抹殺します』」また携帯が鳴り出した。松浦からだった。「ねぇ、メールみた?」「見たよ・・行った方が良いのかな?」「一応行って見ようよ、怖いし」「だね・・一緒に行こ?」「いいよ」それから松原は部屋を飛び出した。あんなゲームが行われるなんて知らずに・・・
4. 「あれ?集まったのはこれだけ?」教室に入った2人は教室の中に居る人数を見て驚いた。合計で20人くらいしか居ない。男子12人、女子8人。「いや、俺は誘ったよ?けど馬鹿馬鹿しいって」「そうなの・・・」「あっ!!」松浦は松原の肩を叩いた。「あれ・・あれ!!」「え?・・・あっ」松浦の指差す先には高橋がいた。その時いきなり放送が入った。「集まってくれた諸君、感謝する。今日君たちを呼んだのは・・・今はいえない。だが今回ここに来なかったメンバーは既に抹殺してある」その言葉が発せられた瞬間、教室内はザワザワとした。「君たちも我々の『ミッション』を達成できなかった場合、即抹殺する」その途端、クラスの男子達が騒ぎ立てた。「おいあんた!!一体何なんだ!!?」「姿見せろよ!!」「そうだそうだ!!」「あっ放送室に行けば分かるだろ?いこうぜ!!」「よし!!」男子3人が教室の扉を開けた瞬間、「『ミッション』教室から出るな」いきなりの放送に男子は強気だった。「ふん、そんな適当な事言って俺等を笑うつもりだろ?かかるかよ!!」男子3人は教室から出て行った。彼らの悲鳴が聞こえたのはそれから数分後のことだった・・・
5. 「何なの・・・一体・・・」教室内は余計ザワザワし始めた。携帯で来て居ない人に電話を掛けるが出ない。あの3人はどうなったのか、けど出て行ったら殺されてしまうかもしれない。「おい、このまま動かないのかよ」皆座っていたが、1人が立ち上がった。高橋だった。「何か勘違いしているかもしれない。彼ら3人は自然的に死んだんじゃない。誰かに殺されたんだ。それも悲鳴と言う事はこの世のものとは思えないものを見た、とか・・・」「え?」「つまり、そいつに殺(ヤ)られなければ俺等は生きて帰れるって事だ」「か・・・格好良い・・・」松原は言葉が漏れてしまった。「え?」速水は敏感に反応するが「あっなんでもない」と言った。「やっぱりすきなんだ」漏れた言葉を聞いた松浦は冷やかしてきた。「いや・・だから・・・」「好きなんでしょ?」「声デカいってっ!!」松原は顔を赤らめて言う。「え?何言ってるの?」高橋が3人に聞いてきた。「え?聞こえちゃった?」松浦は責任を感じるような口調で言う。「いや、聞こえなかったけど・・・俺の話聞いてた?」「うん、聞いてたよ。続けて」松原は咄嗟に言った。「まぁだから・・・俺の仮説が正しかったら俺等が協力したら確実にここから出られる。けど・・・」「けど?」「犠牲は・・・出るかもしれない」「おいちょっと待てよ!!何リーダーぶってるんだよ。第一実際に殺されたか分かんねぇのに、俺等に危機が迫っているのか分かんねぇのに何で危険を冒さないといけないんだ?ここでじっとしていれば助かるんじゃねぇのか?」「・・・」その時放送が入った。「これからそのメンバー、17人で・・・」「17人で・・・?」「殺し合いをしてもらう」「・・・?」「現在の時刻は午後8時56分、午後10時になるまでに残りの1人になれ。もし10時時点で2人以上生存者が残っていた場合、その2人を抹殺する」「おい、それ・・・どういうことだ・・・」高橋は動揺を隠しきれて居ない。「では・・・スタート!!」「え・・・」「皆・・・」「『ミッション』9時の時点で死人が1人以上出る事。教室から出る事を許す」松浦、速水、松原の3人は教室から出た。それから続々と人が出て行く。「ちょっと・・・どうするのよ?」「どうしよう、これって・・・」「これが本当だとしたら・・・」「待って、取り敢えず考えよう。『ミッション』は9時までに1人以上死人が出る事よね?それは私達に出ている。と、言う事は達成しないと私達は・・・」松原は途中で声が出なくなった。「嘘・・・」「取り敢えず・・・何か有ったときのために武器を手に入れよう」「けどどこにあるの?」「野球部の部室には金属バットが、料理部の部室には刃物が沢山あるわ」「じゃあ私は野球部の部室に行って来る」「え・・優奈大丈夫?」「うん・・じゃあ結衣と叶夢は料理部の部室に行って」「うん、じゃあ武器手に入れたらまたここに集合ね」「うん、じゃ」あの時別れていなかったら、なんて後悔してももう遅い・・・
6. 「着いた・・」松浦と松原は料理部の部室に到着した。現時点でもう9時は過ぎていた。松原は携帯の画面に見入っていた。「ねぇ叶夢!!どうしたの?」「もう・・・9時過ぎてる・・・」「え?・・・」けど抹殺されない。どうやら・・・、松原は口が裂けてもこんな事は言えなかった。「まぁ、早く武器を」「うん」2人はなるべく鋭利なものを探した。包丁ではなくナイフを探しようやく良いのを見つけた。「これなんてどう?」松原はナイフを突きつける。「それってパンを切るナイフね、良いんじゃない?」「結衣は言いのあった?」「私は・・・これ・・」松浦が出したのは果物ナイフだった。「へぇ、良いじゃん・・・、あ・・あと予備でもう1つ持っていこう」「そうだね・・・」「じゃああそこに戻ろう」「うん」2人は集合場所に到着した。速水はまだ来ていなかった。「あれ?野球部の部室って料理部の部室よりも近いよね?」「バットが無いのかな?」「無かったらもう来てるでしょ?」「うん・・・・・え・・・・・・まさか・・」松原は顔色を変えた。「え・・・」「取り敢えず早く行こう」それから2人は野球部の部室へ向かった・・・
7. 野球部の部室を覗いた2人は驚愕を顔に浮かべる。「優奈!!」「優奈!!」そこには頭から血を流している速水の姿があった。壁には速水の血と思われるものが付着している。恐らく壁に頭をぶつけ、倒れたんだろう。「え・・・どうしよう・・」「あっ脈!!」急いで松原は脈を計るが・・・、「はぁ・・・」一瞬天井を見て俯いた。「え・・・」「もう・・・死んじゃってる・・・と思う・・・」「えぇ!!!そんな・・・」松浦の目から雫が零れる。「最初の死人が・・・優奈だったなんて・・・」「誰かに・・・殺されたんだわ」松原は言った。「え?」「だって壁に頭をぶつけるなんてそんなアホじゃないわ。誰かと戦って、壁に頭をぶつけられたんだわ。見て、顔にアザが・・・」「本当だ・・・誰だろう」「私は・・・水上だと思う」「ミナカミ?あぁ、蒼汰君に『リーダーぶるな』って言った人ね。ありえる」「許せない・・・」「叶夢・・」その時ばたんと野球部の部室の扉が開いた。「え・・・」2人は振り返った。そこには腕に歯型がくっきりと残っている水上が立っていた・・・
8. 「掛かったな・・・」水上は息を荒げている。「もしかして・・・」「あぁそうさ、ソイツを殺したのは俺だ・・・はぁ・・」「何で・・・」なみだ目の松浦はその事実を受け入れる事が出来なかった。「9時までに誰か死ななきゃ俺が死ぬんだよ!!だから殺した・・はぁ・・全くタフな奴だぜ・・殴っても立ち上がりやがって、挙句の果てに噛み付いてきやがった。ほら・・・」水上は右手を見せる。それを見た2人は口が閉まらなかった。水上の右手の小指の第2関節から先がないのである。そして切断部分付近には歯型が残っている。速水が噛み千切(ちぎ)ったのであろう。その激痛に水上は顔をしかめている。「全く痛すぎるぜ、で、お前ら『ミッション』知っているな?最後の1人にならないと生きて帰れない。その最後の1人になるのは・・・誰だと思う?」「それは・・・」「俺だ!!!」水上は松浦にいきなり襲い掛かってきた。「いやぁ!!」水上は松浦の右手を掴み、振り回した。「い・・いやぁ」その勢いで松浦は転倒してしまった。「ちょっと!!」後ろから松原が水上の後頭部にキックをした。が、全然効いて居ないように思えた。「クソ女がっ!!」水上は立ち上がり、松原に襲い掛かる。「いやぁっ!!・・・あっ・・」途中で気付いた松原はポケットからナイフを取り出した。勢いの付いた水上はそれを認識しても停止する事は出来ず、松原はナイフに自ら刺さりに行ってしまった。「ううぅぅ!!」ナイフが抜けると赤く染まっていた。「あ・・・」水上は腹部を押さえ、倒れた。やがて水上が立ち上がることは・・・無かった。「はぁ・・」松浦はその光景をただ見ているだけだった。「死んで当然なのよ・・・コイツは・・・。結衣大丈夫?立てる?」「う・・うん」それから立ち上がった2人は部室から出た・・・
9. 暫(しばら)く何も喋らずに歩き続けたが、突然松浦が口を開いた。「あのさぁ」「何?」「別れて行動しない?」「え?」「私と叶夢がずっと一緒に行動してるとここから出られないでしょ?」「そうだけど・・・」「大丈夫。・・・・じゃぁ」それから2人は二度と会うことはなかった。「はぁ、こんな・・・」松原はふと思い立った。「そうだ・・・放送室に行こう」それから松原は急ぎ足で放送室へ向かった。放送室の扉は堅く閉ざされていた。施錠されており、松原の力では到底及ばなかった。どうしよう・・・、松原は放送室から離れた。その時、「きゃぁ」松原は何かに当たり、後ろの倒れた。顔を上げると人影が・・・
10. 「はぁ」松原と別れた松浦は恐怖で疑心暗鬼になっていた。「なんであんな事いったんだろう。でもあそこで別れないといずれ叶夢と殺し合いをしてしまう。なんならいっそ・・・」そう自分に言い聞かせ、前を見ないであるいていた。その時、頭が痛くなった。何かが頭皮を伝って零(こぼ)れてくる。頭の痛みは続く。膝から倒れ込み、頭を抱えた。そしていきなり気を失ってしまいそうになった。だが松浦は気を失う直前に前を見た。人影が・・・右手にはナイフ、目がぼやけてきた。そしてゆっくりと瞼を閉じた・・・
11. 「結衣大丈夫かな?」なぜか心配になってきた。もしかしたら・・・、時々そう考えてしまうが頭の中で消した。「大丈夫だろ」「そうよね、結衣は強いもんね・・・」一瞬笑顔を見せたがすぐ俯いてしまった。「だから顔上げろって」「はい・・・」やっぱり優しいなぁ、この人と会えてよかった。現在の時刻は9時39分、出会いは9時30分の時だった。
12. 何かとぶつかり、転倒した松原は咄嗟に立ち上がった。そしてナイフを相手に突きつけた。「えちょ・・なんでそんな物騒な物持ってんだよ」「え・・・」驚いたせいか、自然にナイフが下がってしまう。目の前には・・・高橋蒼汰がいたのだ。「ごめん、大丈夫?」「あ・・うん、大丈夫だよ。蒼汰君は?」「大丈夫、え?」「どうしたの?」「連れは?」「クレハ?」「え?違うよ、連れはいないの?」「・・・・居ないよ・・・」松原は俯いてしまった。「あ・・・・ごめん」「いや、大丈夫だよ」「速水と松浦か・・・」「優奈はもう・・・水上君が・・・」「水上・・あいつ・・・」「結衣は一緒だと最後まで2人で生き残っちゃうから、とかの理由で別れちゃったんだ」「ふぅ~ん、水上はどうしたんだ?」「ろ・・た・・」「え?」「殺した」「えぇぇぇぇ!!?」「・・・・」「いや、正当防衛だろ?文句ないさ」「蒼汰君はどれくらい・・・?」「・・・5人を・・・」「え!?」「勿論全員男さ?向こうが襲い掛かってきたんだ」「・・・」「こういう話はやめようか」松原はちょっと笑顔を見せた。そして今後のことを・・・、と想像してしまったが、一瞬にして現実に引き戻された。「蒼汰・・・」後ろから小さな声だったが微かに廊下に声が響いたのは、現実に引き戻されてから10秒後のことだった・・・
13. その声に反応し、2人は後ろを振り返る。振り返った2人は愕然としてしまった。「お前・・・」高橋は亡霊でも見ているかのような目で見た。「俺は・・死なねぇぞ・・・絶対に・・」「誰?」「俺が・・・殺(や)った1人」「え!!?」咄嗟に松原はポケットの中のナイフを握り締めた。もしもの時のため・・・、「その女も・・・殺すのか?」「っ!!?」「俺のように・・・殺すのか?」「勘違いしないでくれ、あの行動はお前が俺に『殺してくれ』と言っているようなものだったじゃないか。俺は入学式の最初に自己紹介で『格闘技が得意』と言ったはずだ。そんな人間にナイフを向けるなんてお前が悪い」「はっ、いきがりやがって」「ね・・ねぇ」「ちょっと黙っててくれ・・・あいつは・・・俺を狙っている」小声で松原にそういい、高橋は前に出た。それを見た相手も前に出る。2人の距離が3メートルくらいに近づいたとき、相手はナイフを突きつけた。「お前には負けねぇぞ、調子に乗りやがって」「今度こそ・・・死ね・・」その2人の言葉を聞いた松原は興奮した。2人はあいまみえている。これから激闘が繰り広げられてる。止めようと思ったが防衛本能だろうか、体が動かなかった。「お前は・・死んで当然だ・・・」「お前が言うな」相手が息切れしているのに松原は疑問に思った。いや、息切れと言うか、痛みに堪えているようだった。「確実に殺したと思っていたのに・・」そうか、蒼汰君が・・・、松原は立っていることしか出来なかった。これ以上犠牲を出したくない、けど体が動かない、どうしよう。松原は俯いた。途中、ボキッと音がなった。それに吃驚した松原は顔を上げた。高橋は足を上げ、相手は後ろから倒れた。「え?」一瞬の出来事に反応できなかったが大体予想は付いた。「さぁ、もう行こう」「う・・うん」それから2人は逃げるようにその場を離れた・・・
14. 「残り時間・・・20分か・・・」松原は高橋の方を見る。「俺等も・・・別れるか?」「え?」「お前と殺したくは無い」「でも・・・」バタン、いきなり近くの教室の扉が乱暴に開かれた。それに2人は肩を上げた。高橋は振り返った。グサリ、「え?」「え?」2人は何が起きたのか分からなかった。だがその瞬間、高橋が腹を押さえ、倒れた。手には血が付着していた。「え?」高橋は手に付いた血を見て何が起きたのか全て理解した。目の前には黒い影、刺されたのだ。何者かに。黒い影は右手にナイフを持っている。高橋は立ち上がろうとするが、傷口が開き、激痛で立ち上がれない。それどころか刺された激痛で気絶しそうだった。「
え・・・」松原は全てを理解するのに時間が必要だった。目の前には人、そしてその足元に蒼汰君、あ・・・そうか、刺されたんだ。「逃げろ・・・」どこかからか声が聞こえた。「逃げろ!!」それは高橋の叫びだった。「でも・・」「はや・・・」高橋は激痛に襲われた。背中が・・・痛い、黒い影は高橋の背中を刺したのだ。それを見た松原は必死で逃げた。振り返る事は、一度も無かった・・・
15. 「痛ぇぇぇ!!!!」刺された高橋は叫びで痛みを誤魔化した。「テメェ!!」立っている黒い影の足を蹴り、黒い影も倒れた。その時偶然頭を打ち、頭を抱え、相手は目を細くした。「お前・・・」激痛で立てない高橋は座ったまま相手の姿を確認した。「何でお前が・・・」黒い影はゆっくりと立ち上がった。途中、ふらついたが、しっかりと立った。「おい、いくらハンデを背負っているからって・・・女子には負けねぇぞ!!!」激痛に耐え、高橋は立ち上がった。高橋の目の前には・・・そう、松原叶夢の友人、松浦結衣がいた・・・
16. 嘘・・・、松原は信じられない事があった。黒い影はスカートをはいていた。あの時は頭の整理が付かず、視界がぼやけていたが、スカートをはいていた事はきっちりと確認した。目のピントを合わせようとした時、高橋に逃げろと言われ、逃げてきたが、正体が気になり戻ろうとしたが、蒼汰君なら大丈夫だろう、と自分に言い聞かせ、その場からなるべく離れた。さて、これからどうしようか、取り敢えずナイフは持っているから襲われても一応大丈夫だろう。松原はもう一度放送室に向かった。あれ?扉が開いている・・・
17. 「おい、立て」誰かに呼ばれた松浦はゆっくりと目を開けた。あたりを見渡し、ここが教室だと判断した。「殺さなかっただけ感謝しろよな」松浦は椅子にロープで縛られていた。あれ?頭を刺されて殺されたんじゃなかったっけ?松浦は疑問に思っていた。「あの時、お前に刺したのは針だ。家庭科室にあった針を頭に刺した。その針に実験室から持ち出した睡眠薬を仕込ませた」「どういうこと?」「だから・・・実はナイフで刺したんじゃなくて睡眠薬を仕込ませた針で刺した、って事」「けどあの時ナイフを・・・」「あぁ、確かにあの時『左手』にナイフを持っていた。そして『右手』には針を持っていた。視界がぼやける中、針を見るのは無理だろ。んで、殺さなかった理由は1つ、『ある人』を殺してほしい」「『ある人』?」「・・・・・・高橋蒼汰だ」「っ!!?」その言葉に最初は首を振ったが、ナイフを首に突きつけられた。「断るんだったら今殺す」「う・・・・」「アイツを殺すだけだ。真正面からやると殺される。不意打ちしろ。嬉しい事にお前には『松原叶夢』がいるだろ?そいつに接近して会話している間にでも殺せ」「・・・・」ロープの縛りを解除された松浦は渡されたナイフを見つめていた。どうしよう・・・
18. 「はぁ・・・はぁ・・・」腹と背中を刺された高橋は激痛に堪えながら構えた。「死ね・・・」「あ?」「死ね」「何で・・お前に・・・はぁ・・殺されなきゃならねぇんだよ・・・」「死んでもらわないと・・私が・・・」いきなり目元をワイシャツの裾で拭った。いきなり泣いた松浦に高橋は戸惑ってしまった。その瞬間、松浦がナイフを突きつけ走ってきた。それに反応し、右足でナイフを蹴り上げた。上がったナイフは天井に刺さり、やがて落ちてきた。そのナイフを松浦の反対側に蹴り飛ばし、松浦に前蹴りをした。「っ!!」「寸止めだ。本気でやってたら、今頃お前は・・・死んでる」バァン、その銃声が鳴り響いた後、松浦は倒れてきた。倒れてきた松浦を高橋は受け止めた。後頭部に穴が・・・「お前・・・」目の前には、バァン。もう一度、銃声が廊下に響いた・・・
19. 「っ!!?」どこからか、聞こえてきた銃声に松原は敏感に反応した。もしかしたら・・・蒼汰君・・・、いや、今はそれどころではない。放送室の扉が開いていると言う事は誰かが出入りしている、と言う事だ。松原は右手にナイフを握り、ゆっくりと放送室に入った。常に周りを警戒し、一瞬の油断を見せない松原。1つ1つ扉を空け、人が居ないか確認する。そして最後の扉、ここは放送部が放送する部屋、つまりここで誰かが放送した事になる。ここに誰かがいるはずだ。松原は固唾を呑んだ。汗を大量に掻きワイシャツは皮膚にペッタリと張り付く。雫が額をツーッと下っていく。それをワイシャツの裾で拭い、勢いよく扉を開けた。松原は呟いた。「誰も・・・居ない」松原は部屋の隅々を調べた。しかし何も無い。「なんで」ピュッ、放送室に妙な音が鳴った。その音が鳴り、松原は左腕を押さえ、絶叫した。「あああぁぁっぁぁぁああぁぁ!!!!!」松原は左腕を確認する。「え・・何これ?」松原は痛みを堪え、振り返った。そこには・・・ボウガンを松原に向けている男の姿があった。松原はゆっくりと顔を確認する。「え・・・」ピュッ、ボウガンの発射音がまた鳴った。次は、松原の頭に向かって進んでいく・・・
20. 「いやぁあぁぁあぁぁぁぁ!!!!」頭を両腕で覆い、ガードした松原は叫んだ。ボウガンの矢が右腕に刺さっている。貫通はしていなかったが、激痛だ。「くそっ」相手はボウガンの矢を入れている。その隙を逃さなかった。松原はボウガンの矢を強引に引き抜き、両手てナイフを握り、上から相手の背中に刺した。「あぁぁぁぁ!!!!」刺された相手はもう一度立ち上がろうとしたが、次はナイフを頭に刺した。「・・・・・」相手は動かなくなった。そして前のめりに倒れた。「はぁ・・・・」松原は両腕を確認する。左腕は矢は腕を貫通してしまったようだ。刺さった反対側に小さな穴がある。そして右腕、そこまで重傷ではなかった。多少刺さった程度であったが、激痛である。「はぁ・・・血がとまらな・・い・」傷口をみた松原は呟いた。そして後悔した。圧迫止血されていたのに自分で引き抜いてしまったのだ。血が止まらないのは当然である。偶然放送室に体育祭で使うハチマキがあったため、それで適当に止血したが、痛みは治まらない。だが今は弱音を吐いている暇は無い。松原は治療した後、死体を確認した。「え・・・?」今まで気付かなかった。この男・・・松原の担任、湯川奏志だった・・・
21. 「せ・・・先生・・・」自分は先生を殺してしまった。どうしよう、いや、これって正当防衛だよね?そうだよね?松原は自分に問いかけた。そしてその場から逃げるように放送室の扉を閉め、両腕の痛みに耐えながら廊下を走った。蒼汰君、どうなったかな。「あっ・・・」松原は目の前の光景を目の当たりにする。廊下の床に血痕が残っているのだ。ここは高橋が刺された場所、死体処理は誰が?そもそもどちらが死んだのだ?疑問ばかりであった。松原は過去を振り返った。そうだ、放送室に入るとき、銃声が2回聞こえた。1人に1回だとしたら、松原は頭の中の想像を消した。「大丈夫」・・・・ん?何か左腕に違和感を感じる。熱い?いや、痛い。松原は左腕を確認した・ワイシャツが切れている。ボウガンで付いた傷ともう1つ。「え!!」松原は急いで振り返った。「死ねぇぇぇえぇ!!!!」
22. 「いやぁぁぁ!!!!」松原はナイフで応戦したが、相手は男、力で敵うはずもなく、挙句の果てにナイフを蹴り飛ばされてしまった。ナイフは廊下を滑り、遠くに行ってしまった。それを相手は急ぎ足で取りに行く。「こ・・これでお前の武器はない・・・勝ったぞ!!」松原は相手を確認した。「岡本君・・・」相手は岡本雄一であった。どうりで蹴りに強さが桁外れなわけだ。「死ね・・・」岡本はゆっくりと近づいてくる。どうしよう、こっちには武器が無い。相手はナイフを2本持っている。その上躊躇(ちゅうちょ)なしに殺しに来る相手。勝つすべはなかった。「死ねぇ!!」岡本は2本のナイフを上に掲げ、振り下ろしてきた。「あっ、えい!!」松原は避けようとしたが、気付いた。予備で2本持っていたことに・・・
23. 「うぅぅ」ナイフは腹部に刺さり、痛そうに岡本はナイフを投げ、腹を抱える。「・く・・・お前・・・俺を・・殺した・・・殺人鬼・・・あはぁ」腹部を刺された岡本はまだ死ななかった。松原は「とどめ」の1撃を刺した。動かなくなった岡本のナイフを奪い、その場から去ろうとしたが、死体処理の人を確認したくなり、物陰に隠れ相手を待った。数分が経った、黒いスーツに身を包んだ人がそこに来て、岡本を引っ張っていった。「待って!!」松原は物陰から飛び出した。「え・・・」「おや、松原叶夢ちゃんじゃないか・・・」松原は黒服の顔に覚えがあった。「嘘でしょ・・・」
24. 松原は過去を思い出した。「アカバル」の事件でマフィアに追われたこと。そこで惜しい人を亡くしたこと。今でも忘れない。彼らが私を守ってくれたのだから。そしてテレビでマフィアの縄張りを警察はSIT、SATが乗り込み、全員捕まった事。嬉しくなったがテレビに釘付けになった。ボスの顔が違かったからだ。そのマフィアのボスが・・・ここに。「相変らずタフだね。そんなに怪我しているのに」松原は両腕を確認する。岡本との戦闘で体中ボロボロだ。それからボスはその場を走り去った。体力は限界を超えていた為、追いかける事が出来なかった。松原は休憩したいと近くの教室に入った。そして教室の机に座り、改めて両腕の確認をする。「あぁ・・ボロボロ」怪我してから時間が経ったため、痛みには慣れたがワイシャツが張り付くたびに痛みを感じる。ワイシャツには血と汗が混ざり合った『液体』がしみこまれているからだ。「出血は止まった。痛みも無い。大丈夫よね・・」傷口を確認した松原は部屋から出ようとした。その時、教室の扉が開かれた。そこから3人の男子が入ってきた。全員包丁を持っている・・・
25. 「え・・・」松原は教室の端に追い詰められた。「まさか女子が残ってるなんて」「しかもあの松原かよ」「殺したくないな」3人は喋っている。「な・・なによ!!」「おいおい、怒るなよ。『これから死んでもらうだけだ』」「っ!!」「死ねぇ!!」3人は襲いかかってきた。「いやぁぁ!!!」それから3対1の戦いが始まった。「いや!!」包丁で首筋を切られた松原は傷口を押さえた。「ん~、そんなに避けるなよ・・・」「なんで殺そうとするのよ!!」「そりゃ・・・俺等が出られないからだろ?」「ら?」「は?」「貴方たち馬鹿じゃないの!!最後の1人にならないと出られないのよ!!」「え?」「そうなのか?」「まじで?」それから3人は見詰め合った。「いや、最初にコイツを殺そう。その後考えよう」それから3人の攻撃は止まらなかった。現在の時刻、9時56分・・・
26. 「はぁ・・はぁ・・」「すばしっこい女だな・・」「早く殺そうぜ」「痛い」松原は言葉を漏らした。両腕にはナイフの傷が多数ある。太腿にもナイフの跡。「しねぇぇ!!!」3人は同時に襲いかかってきた。松原はその攻撃を避けた。その時「あぁぁ!!!!」3人のうちの1人が悲鳴を上げた。そして倒れた。腹部に包丁が刺さっていた。「おい・・おめ・・え・・・」それから動かなくなった。「おい!!お前何やってんだよ!」「ちげぇよ!!アイツが避けるから切ろうと思ったら刺しちゃったんだよ!!」「お前・・・次は俺を・・・」「なわけないだろ」「そうはいかないぞ!!死ねぇ」それから男子2人の戦いが始まった。それを松原は見ていた。「ぐはぁぁ」2人とも互角の戦いであったが、最後に力尽きた1人が倒れた。「はぁ・・・はぁ・・・」もう1人も瀕死状態だ。現在の時刻、9時58分・・・
27. 「いやぁぁぁ!!!」松原は瀕死状態の男子にナイフを投げた。すると男子の頭にぐさりと刺さり、男子は倒れた。「・・・・」松原は目の前に広がる世界に飲み込まされそうになった。殺戮が繰り広げられたのだ。「はぁ・・・」松原は溜息をついた。「あと1分か・・・」「おりゃぁぁ!!!」「っ!!」松原は足元を確認する。左足に包丁が刺さっている。「きゃぁぁぁぁ!!!!!!」死んだはずに1人が最後の力を振り絞って包丁を刺してきたのだ。「はぁ・・いったぁ」松原は片足で歩き回った。「はぁ・・はぁ・・・痛い・・・」その激痛に松原は耐えられなかった。「もう!!!!」松原は持っていたナイフでその男に刺した。「今度こそ・・・地獄に落ちなさい!!」頭にナイフが刺さり、その男も動かなくなった。もう1人は腹部を刺され、最初に死んだ男。匍匐(ほふく)前進で駆け寄り、脈を確認した。「死んでる・・かな?」念の為、ナイフで手首を切っておいた。そして教室の中央に仰向けで寝転がった。どうして、こんなことに・・・
28. 足の痛みに慣れた松原は血が止まらない事に気がついた。「止血しないと・・・」松原は何か縛る物はないかと探したが、辺りに見当たらなかった。「仕方ないか」松原はワイシャツを脱いだ。「いったぁ」摩擦で傷口を傷みつけるワイシャツに怒ろうとしたが抑え、頑張って脱いだ。そして腕を通す所を切りおとり、そしてそれで止血した。「はぁ。着ないといけないの・・・」松原は恐る恐る左腕をワイシャツに通す。切り落としたのは左腕の部分であり、痛みはさっきよりはましだった。「そうだ、右も切ろう」そう思い、松原は左手でナイフを持ちながら切り落とした。そしてワイシャツを来てボタンを締めた。その時、放送が入った・・・
エピローグ. 「生き残ったのは松原叶夢、おめでとう。君は気付いたかな?最初に私はこういった。『これから17人で殺し合いをしてもらう』気付いたかな?」「その放送に『まさか!!』と痛みを堪え、起き上がった。「私は『ミッション』とは言って居ない。本当のミッションは『9時の時点で死人が1人、それを達成し、学校から逃げればよかったのに誰もそうしなかった」「そんな・・・」「だから殺戮を繰り広げる必要はなかったのだよ。この世で一番恐ろしい事は『後悔』だ。永遠に自分の過ちを悔やむが良い。松原叶夢よ・・・」「ううぅぅぅ」松原は涙をポロポロと流す。自分の近くに落ちているナイフを見た。色んな人の血が混ざり合っている。松原は教室の中央でずっと泣いていた・・・
おまけ. 「ニュースです。昨日の午後9時から10時ごろ、北森高等学校で生徒による殺し合いが発生しました。詳細は今の所不明ですが、唯一無事だった『松原叶夢』さんを警察は保護し、事情聴取している模様です。詳細が分かり次第、お伝えします」
-解説- 過去の自分が書いた小説を今の自分が評価
自分は昔の自分が恥ずかしい。「え?なんでこんな情景描写をするんだろう」とたびたび思うからだ。けど「あっこういうことをするとリアリティになるのか」と昔の自分に教わる事も多々ある。
自分はこの小説を見て、恥ずかしくなった。どこからどうみても「ダイ・ハード3」に出てくる「サイモンが言った」のまねである(起源はジョナサン・ヘンズリー作の「simon says」だが、ダイ・ハード用に書き換えられたらしい)。その映画を映画館で見た自分は「これなら行ける」と思い、家に大急ぎで帰り、この小説を書き上げたに違いない(昔のため、記憶が曖昧だ)。
話を変えるが、最近の小説(この小説を含め)を見ると疑問に思う。「未成年の人間がナイフで刺された激痛に耐えられるであろうか?」こんな事を考えたが、一瞬で答えが分かった。「無理」そうだ、これは小説の世界ではないか。小説の世界はなんでもありだ。どうしてこんな事に気付かないのだろう。
自分は(今は)小説を書くときに心がけている事がある。「想像力」を限りなく使うこと。そして「世界観」を出す事。取り敢えず(今の)自分は最初に小説を書くとき最初に「オチを考える」そして「そのオチにどのように結びつくかを考える」そして適当に小説の形が形成され、文字を当てはめていく。最後にきっちりと読み直す。これで自分の小説が作られる。そうだなぁ、1つの小説に2~3週間も掛からないだろう。それはその筈、自分はネットの小説掲示板で存在する「名も無き小説家」なのだから。実際の本みたいに原稿400字のやつに200、300枚と書くわけではない。「メモ帳」にブラインドタッチで文字を打つだけだ。2~3週間は実は「遅い」ことになる。
おっと、話が逸れてしまった。小説は「想像力」と「世界観」。この2つが混ざり合って森羅万象。
なんてね♪
けど笑いで誤魔化したが実際はそうであろう。この小説は「世界観」が出ているであろうか。自分の「想像力」を搾り出しているだろうか。いいや、2つとも当てはまらない。
この小説は最初からオチが分かっている。「途中で出てくるものは殺され、主人公は生き残る」これが定番だ。だからこの小説にはオチがない。オチが無い(オチが分かっている)小説は発揮されるのはオチにどのように繋がるか、だけである。この小説はなんとプロローグでオチを明らかにしてしまっている。さぁ、自分の小説はどうだったか、自分は「駄目」だと思う。それは当然である。「真似」をしてしまったのだから。あぁ、恥ずかしい。
だけど自分は「わざと」この小説を(今の自分が)書き換えなかった。昔の自分の小説を(今の自分が)読むのはとても楽しい事である。比喩表現をするのであれば「タイムカプセル」の「手紙」と同じであろう。いや、多少違うか。まぁいい、自分の文章に「ツッコミ」を入れる、と言う事に関しては全く同じであろう。この小説も(今の自分が)「ツッコミ」を入れながら楽しく読めた。
最後に、「先入観」「アカバルシリーズ」「殺戮ゲーム」も過去の自分が書いた作品である。勿論一切手は加えて居ない。実際「呪われた館」や「死神」も暇だったから書いた小説であり、「息抜き小説」と自分は呼んでいる。
自分は「過去に書いた小説」を読んだ後に自分が書いた小説を読んで自分は叫んでしまった。「成長してネェ!!!」まぁいいや。
あぁ、次は何をYO☆MO★U☆KA★NA☆?★
ーミッションー