甘いれもん

甘いれもん


悲しみで、あふれだしたとき
あなたをみつけた

まわりの人を幸せにしてくれる
笑顔

でも、笑顔の裏は、、

悲しみと嬉しさ
泣き顔と笑顔

自分だけじゃないってしった、あの時

まるで、あまずっぱいれもんのように…

1. 見つけたとき…

今日も、また…

階段をかけ上がり、自分の部屋のドアを閉めた。
ドアによしかかり、ためていた涙をながす…
電気は、ついていない。
夜なので、暗い。

いつものように、また…
意味もなく、瞳からたくさんのシズクをこぼす。

**********************************************

「おっはよぉ!」
現在、私は高校2年。椎名 れもね。(しいな れもね)
「おはよぅぅ…」
「どうした?」
私の友達、君野 夏々(きみの なな)が、いつもよりテンションが低いと思った。
「お腹すいたぁ…」
え…?何だ、いつもの夏々じゃん!
「今、学校に来たばっかりじゃんっ」
「あと…」
何だろう…
次は、本当に深刻な顔をした。
「ふられた…」
「え…」
あっ!昨日、先輩に告白するって言ってたな、、
こういう時って、どんなふうにすればいいのかな…?
「ま、まぁ…きっと夏々には、あってなかったんだよ!」
何言ってんの私っ!?こんなんじゃ、夏々がまたキズつ…
「そうだよね!!
そうだよ!よしっ!悲しんでないで、次の恋しよう!!」
マジで?夏々は、ポジティブだなぁ…
「そぅだね…」
すると、夏々が私をじぃ~と見てきた。
次は、何?
「れもねってさぁ…
好きな人いないの?」
うっ…私の話ですか、?
「いないよ…」
「うそだぁ!」
「本当、本当!」
ごめん…夏々。
夏々の言うとおり、うそです。
でも、夏々みたいにがんばろうとか、思わないんだ。
ただ、遠くから見守っているだけで…幸せだから、
遠くから、笑顔が見れるだけで幸せだから、
************************************************
彼は、いつも青空を見ている。
窓側の後ろから、2番目の席。
そこが、彼の居場所。
私も彼の隣に行って、同じ景色をみたい…
でも、今は彼を遠くから、廊下側の後ろから、2番目の席。
そこから見える、友達と話てる時の笑顔が…好き。

彼を気になりはじめたのは、3カ月位まえかな…
私が、夏々と下校してるとき忘れものをして一度、学校に戻った。

「あぁ~、もうっ!めんどくさい…」
私は、階段を上りながらブツブツ1人で、言っている。
教室の前に来て、ドアに手をかけ勢いよく開けた。
ガラガラ、
「…え?」
教室の中に、誰もいないと思って開けたが
窓の側で、うつむいている男の子がいた…
男の子って言うか、、
同じクラスの愛波 侑(あいば ゆう)くんだった。
彼は、身長が低めだから男の子って思ってしまった。

彼が、外を見つめる横顔に見とれた…
侑くんが、ふりかえり私を見た。
ドキンッ
「椎名 れもね…さん?
どうしたの?」
私の名前、覚えていてくれたんだっ!
「えっと…
忘れ物しちゃって、」
私は、ぎこちなく言う。
「侑くんこそ、どうしたの?」
したの名前で、呼んじゃった!
別に、深い意味はないのに…!
私は、恥ずかしくなった。
「別に…
1人になりたかっただけ…」
1人に…? 何かあったのかな…?
侑くんは、私から目線をまた、外にうつした。
何か……
すごく悲しそうに見えた、、
『1人になりたかった』って
言われたのに、私は…

なぜか、侑くんのそばにいたくなった。
私は、侑くんの隣にいった。
侑くんは、驚いて私を見る…
「この時間の景色…
きれいだね!」
侑くんを見ずに、私は外を真っ直ぐ見て言った。
本当に、ここからの景色は思っていたよりもきれいで
見とれてしまっていた。
「あ…うん、」
その後は、何も話さずしばらく2人で
外を眺めていた…

もう1度、この景色を見たい…


その時の空は、
夕暮れで…
見た人、すべてが目をはなせなくなるような…
きれいで、侑くんにあっていた…

たまに、悲しい目をする侑くんと…
美しく、まわりをトリコにするこの景色…

1人の静かなすっぱさと…
優しくつつんでくれる、甘さ…


まるで…すっぱいけど甘さがある、
れもんのように…

2.あの時の彼…

侑くんとは、あの時話したのが初めてだった。
それから、私は侑くんを目でおうようになっていた。

また、話したい…
次は、もっとたくさん…

そう思いながら、、
私は、誰にもきずかれないように
小さな、小さな…
恋をした…

*************************************************

学校が終わり、家に帰ると
「れもね、お帰り。」
「ただいま…」
お母さんが、仕事から帰っていた。
私には、お父さんがいない…
私が、小さいころに別れた。
お母さんにその話しをすると、
怒るからしない。
大きな声で、怒鳴るからしない。

私が、自分の部屋に行こうと、階段に足をのせた時
「ねぇ~
れもね…」
お母さんに、呼びとめられた。
「何?」
「今日、仕事でね…」
まただ。また今日も、仕事でのグチを言うお母さん…
ズキン、
やだよ…
聞きたくない。
嫌なことあったら、誰かに言いたいのはわかるけど…
そんなこと言う、お母さん見たくない…?
そんなこと私に、言わないで…?
何が理由で、私は
涙をためているんだろう?

また、いつものように…

「そだね…」
それしか言わない。それしか言えない。

また、いつものように…

お母さんの話しが終わり、階段を上る。
そして
ためていた涙をながす…
「…っ、…うっ」
声をころして、ひとつぶ。また、ひとつぶと涙をながす…

いつからだろう…?
こんなことが、続くようになったのは…
どうしてだろう…?

*************************************************

涙をふき、鏡で目が腫れていないか確認して、下におりた。
お母さんに、
「ちょっと、出掛けて来る~!」
と、だけ言い
家を出た。泣いていたと、思われないように明るく言った。

私は、いつもこういうふうに、胸が苦しくなると
向かう場所がある。
私の家から、坂を登って少し歩いた所に
この近くの家が全て見わたせる場所…
侑くんと見たきれいな景色に、にている。
学校も山の方だからかな…?
そして、今もその場所に向かっている。
その景色を見ると、心がおちついて
苦しんだ気持ちが、全部きえる…
何も考えず、幸せな気持ちになれる。
「あれ…?」
でも、今日は
先約がいた…

「侑…くん…?」
ん?でも…
何か、違う…?
侑くんかと思った人は、ふりかえり私にきずいた。
侑くんの髪の色は、わかりやすい茶髪。
でも、彼は。彼の髪の色は、濃い黒。
顔は、似ている…けど、
何か、オーラ?が違う。
侑くんに似ている彼は、私を見て優しくほほえんだ。
ドキン…
「君も、この景色好きなの?」
「えっ、あ、はい!」
急に話しかけられて、あわてた。
私のことを知らないみたいだったから、やっぱり侑くんじゃない
じゃぁ…
だれ…?
優しくふく風が、彼の黒い髪をゆらす。
「僕も、好きなんだ…
僕…愛波 涼(あいば りょう)って言うんだ…」
え…?
「愛波…?」
侑くんと同じ名字、え?
私は、思いきって聞いてみた。
「愛波 侑くんって…人…知ってますか?」
「え…?
侑?侑は…」
ドクンッ
「僕の弟だよ、」
おと…うと…?
双子?
「侑と、知り合い?」
「あ、はいっ!
クラスメイトです!」
そのあと、涼くんは「そっか、」と言い
景色に目をうつした。
その横顔は、やっぱり侑くんに似ていて
少しあるひかりで、髪も茶色っぽくなって
侑くんを思い出した。
私は、涼くんを侑くんにかさねてしまった…
何も言わず、涼くんの隣に行った。
また、侑くんと一緒に同じ景色を見れた気がした…

いつも、1人で見てた景色が今日は
いつもより、すっごくきれいに見えた…

侑くんは、少しからみずらくてすっぱい。
涼くんは、優しく微笑む笑顔が甘い。

3.私の親

―放課後―

今日は、忘れ物なんてしていないけど…
また、教室に戻った。
涼くんに会ってから、侑くんに涼くんの話をしたいと
思っている。
今日も侑くんが、いるって決まっているわけじゃないけど…
私は、期待している…?

ガラガラ
教室のドアを開けた。
…いた
侑くんだ…
侑くんは、ドアが開いたのにきずき
私の方を見た。
「なんだ…
椎名さんか、」
なんだ?なんだって言われたぁ!
私は、少し腹がたった。
でも、心をおちつかせて
侑くんの隣にまた、行った。
「今日は、何?」
え、
そんな、はやくでてけみたいな!←そこまで、言っていない。
何か、今日の侑くんつめたい…
「別にぃ~」
私…侑くんと話すの2回目なのに
こんな、気軽でいいの?
「あっ、そぅ」
ん~…やっぱり、今日の侑くんさめてる!
あっ!そだ、
「侑くんさ…
お兄ちゃんいるんだね。」
景色を見つめていた侑くんが、驚くように
私を見た…
「…っな!」
え、そんな、驚かなくても…
「昨日、会ったんだ!
涼くんって言うん…」
私が、まだ話している途中に侑くんが
口をひらいた。
「……ちが…ぅ」
「え?」
私は、うまく聞き取れず
侑くんに聞き返した。
「俺には、兄貴なんていない…」
え…?
どういうこと…?
じゃぁ…あの涼くんは、だれ…?
「え?
何言ってるの?
涼くんは、侑くんの…」
「いない、つってんだろ!!」
ドクン…
侑くんが、怒鳴った?
「あんなやつ…兄貴なんかじゃ、ねぇ…」
そう言い、侑くんは教室を出ていこうとした。
ドクン…ドクン…
どな…った…?
ドク、ドク、ドク
鼓動が速まる。
やだよ、 怖い…
ズキッ
私の頭の中で、あの時のお母さんがいる。
お母さんが、私に冷たい視線を向けて大きな声を出している。
「ごめ…なさ…ぃ」
ごめんなさい、許して、ごめんなさい
「はぁ、はぁ、はぁ…」
呼吸が、荒くなる。
胸がくるしい、
頭が痛い、
私は、床下にひざをついた。
ドアを開けようとしていた侑くんが、ふりかえり
驚いて、私の方に来た。
「おい!大丈夫かよ…?」
侑くんも床下にひざをついた。
そして、私の背中をなでる。
「おちつけ、大丈夫だ。」
優しく、優しく背中をなでる。
「大丈夫。大丈夫。」
私は、少しずつ呼吸をととのえる。
ひざをついたままでも、うっすらと見えた。
あの景色…
私は、おちついた。
「大丈夫か…」
侑くんは、本当に心配そうな瞳で私を見る。
さっきの冷たい視線は、なんだったんだろう…?
「大丈夫、
ごめんね…
ありがとう…」
私は、立ち上がり、あの景色をもう一度
しっかり見る。
心が、癒される。
消えていく…嫌なこと、全部…
坂の上の景色じゃないと
ムリだと思っていた。
でも、違った。ここにもあった。
―侑くんの隣

私は、話しだした。
侑くんに。
お母さんと何が、あったのか…

「私には、お父さんがいないの…」

「いなくなったの…」
************************************************

―8年前―

「ただいま!」
小さい頃の私は、何もわかっていなかった…
小学校から、帰り
大きな声で『ただいま』と言う。
いつもなら、お母さんが『お帰り』と言うのに
その日は、なかった。
どうしたんだろ…?
「ただいま!お母さん!」
私は、お母さんのいつもの『お帰り』が
聞きたくて、何回も叫んだ。
お母さんをさがしながら…

でも…いなかった…

買い物かな?
お父さんは、仕事だし…

私は、夜まで1人だった。

どんなに、待っても来なくて
時計の針は9をさしていた。
この歳の私でも
さすがに怖くなって、お母さんに電話した。

「もしもし?
お母さん? れもねだよ!もぅ、9時だよ。 どうしたの?はやく帰って来てよ!」
つながった。
私は、つながったことだけでうれしかった。
でも、お母さんから帰って来た言葉…
「あんたのとこになんか、帰るわけないでしょぅ?」
え…?
お母さん…?
「じゃぁね」
お母さんは、それだけ言い電話をきった。
プー、プー
私は、その後
椅子に座って考えた…
お母さんが、言っていた言葉の意味を

11時を過ぎた頃
お父さんが、仕事から帰って来た。
私は、あわててお父さんのもとに行った。
「お父さん、お帰りなさい。
あのね、お母さんがね…」
「っんだよ!あいつ、
れもね、おいてったのかよ…!」
お父さんは、私が説明しなくても
どんな状況か、わかっているらしい…
お父さんは、しゃがみ
私と同じ目線になった。
そして、笑顔で言った?
「待ってろ、今、お母さんに電話してやるから…」
私は、お父さんの笑顔が大好きだ…
私は、安心して
お父さんとお母さんの電話を聞いていた。
「おい!
こいつおいてくなって、言ったろ! かってに決めんなよ!」
お父さんとお母さんは、電話ごしでケンカして
言い争いをしている。
「だから、れもねだよ!
こいつ、ジャマなんだよ!」
あれ…?
さっきのお父さんの笑顔が、ウソのように
私を…
にらんで、こう言った。
『ジャマなんだよ!』
ドクン…
涙は、でなかった…
言い返しもしなかった…
何も言わず、黙って
目の前にいる男の人を見つめている。
この人…誰…?
私は、その後
親戚の家の人に
ひきとられることになった。
でも、別れる時にお母さんが言った。
「やっぱり私、あんたと
暮らしてやってもいいわよ。」
お父さんや親戚の人は、驚いている。
でも、私は
驚かない…
泣かない…
喜ばない…
「何か、反応しなさいよ…」
お母さんが、きれそうだ。
私は、「はい」とだけつぶやいた。
そして、結局お母さんと暮らすことになった。

「あんたがいて、れもねがいて
助かることもあると思うし…」
何言っているんだろう…?
この人は
一度、私をすてたくせに…
「何なの?
表情、1つかえないで…
言いたいことあるなら、言いなさいよ!!せっかく私が…」
私は、言われたとおりにしたはずなのに…
「一度私をすてたくせに
何言っているんだろうって、思っています。」
「…っな!」
お母さんは、
私を…

なぐった…

ズキン、
痛い。頬が赤くなった。
「やっぱり、あんたなんかいらない…」
「…あ」
怖くなった。
あの夜、お母さんが、帰ってこなかった夜を思い出した。
怖くなった。
「ごめ…なさ…」
私は、あやまった。
「お母さん、ごめんなさい…
行かないで、もぅ、あんなこと言わないから…!」
「何よ?急に…」
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
私は、あやまった。
そして、お母さんは、私のとこにいてくれる。

自分の部屋に行った。
泣いた。思いっきり。泣いた。
やっと…

それから、私は周りのきげんとりばかりしている。
嫌われないように、
1人にならないように、
おいていかれないように、
すてられないように…

4.侑くんと涼くん

「だからね、私…
何も楽しくないの…」
私は、窓から見える景色を
ずっと見つめたまま、話す。
「人を信用するのが、怖いの…
ウソの笑顔を見るのが、怖いの…」
侑くん、私ね
こんなこと、誰にも話さないと思っていた。
でも、侑くんに話した。
どうしてだろう…?
「だから、だから…」
私は、その後を言えなくなった。
侑くんは、私に近づいて頭を優しくなでる。
侑くんに、このことを話した理由は
きっと…
「侑くんの笑顔は、ウソの笑顔じゃなくて
悲しい笑顔に見える…よ…?」
侑くんも、どんなことかはわからないけど、
苦しかったんだと思う。
「何だよ…?」
「侑くんが、友達と笑っているとき
その時の笑顔は、心から楽しくて
笑っているんじゃない…
そう、思ったの…」
「何が言いたいんだよ、」
私は、侑くんを見た。
「苦しいことが、あるなら…言って?」
侑くん、私…
あれから、人を信じれなかった。
心のおく、ホンネを聞くのが怖かったの…
でも、今の私は
信じたいと思う人がいる。
何でも聞きたいと思う人がいる。
お願い…
侑くんも心をひらいて…

私は、目をそらさない。
私は、

―あなたの事が、知りたいの…

なのに、
侑くんが、私から目をそらした。
「何だよ…それ
同情かよ…!」
え、違う!
同情何かじゃない…!
私は、ただ…
侑くんが、私の肩を押して壁(窓)に押しつけた。
「…ぃたっ!」
何?どうしたの?侑くん?
「侑…くん…?」
侑くんの手が、私の肩に触れてる、
でも、さっきの優しい手じゃない…
侑くんの腕に力が、はいった。
痛い…
よけようとしても、ビクともしない。
何か…
怖い……
「はなして…?
侑くん…」
私の声は、震えている。
「俺には、
兄貴がいる…」
え?
侑くんは、うつむきながら話す。
兄貴って?
いないんじゃなかったの?
「兄貴の名前は、涼…」
やっぱり!
涼くんは、侑くんのお兄ちゃんだったんだ!
じゃぁ、何であの時いないって言ったの?
「あいつは、もぅ俺の兄貴何かじゃねぇ…!」
「どういう…こと?」
侑くん…
お兄さんと、涼くんと何があったの?
侑くんは、下を向いていた顔を上げ
私を見た。
ビクッ
怖い…よ…
侑くんの目は…
今の侑くんの目…
冷たく何も感じていないような目をしている。
あの時の私も、こんな目をしてたのかな…?
「おまえは、
俺のことを知ってどうすんだよ?」
そ、それは…
どうするんだろう?
私は、侑くんの事が好きで
だから、侑くんの事知りたくて…
「侑くん、私は…」
「おまえに言ったところで
俺は、何もかわらない…
勘違いすんな…!」
ドクンッ
侑くんは、教室を出た。

侑くん、私ね
あなたの事、信じたいよ…

でも、侑くんはうけいれてくれない、、
私は、侑くんにうちあけた事で少し人を信じようと思えたのに…

大好きだから、知りたいの…


*************************************************


ー次の日の3時間目ー

「うっわ!次、体育じゃん…」
「めんどぃ~」
「何やるんだろう?」
「ボール使うやつだと思うよ!」

今日の私は、いつものように
周りの目を気にして
周りが、嫌な思いしないように
発言、行動をしている。

侑くんも…
いつものように
ふつうに友達と話している。
「また、悲しい笑顔じゃんか…」
私は、つぶやいた。
誰にも聞こえないように。
なのに…
侑くんよりも、私の近くに
人がいたのに
侑くんだけが振り返り
私を見た…
ドキン、
目があった。
侑くんの冷たい目が
私を見る。
怖いのに、目をそらせない。
その時、後ろから夏々が私を呼んだ。
「れもね、行くよぉ~!」
私は、はっ!として
夏々を追いかけた。
「ちょっと待って、夏々!」
夏々にあった、私の視線は
もう1度侑くんに移った。
でも、侑くんは
何もなかったかのように
友達と話してる。

昨日の事も、なかったことに
するきなの…?

私と夏々は、体育館に向かった。

今日の体育は、ドッジボールだった。
「はっ?
何でドッジボールなのよ!」
「ガキくさぁ~
ね、れもね!」
私は、周りに話しをあわす。
「本当だよ!
よりによって、ドッジボールとか
ありえないし!」
正直、そんなのどうでもいい。
ドッジボールだろうが
何だろうが
やることに変わりはない。

「さぁ~!
始めるぞ~!!」
体育の先生が叫んだ。
2つのグループになり
分かれる。
夏々とは、同じチームになれた。
ピーー!!
ホイッスルが、なり
試合開始。
私には、あまりボールがまわってこない。
私にはというか、後ろの方の人たちに。
上手な人たち、やる気のある人たちが
前にでて、ほとんどその人たちが試合をしている。

男子も隣りで
ドッジボールをやっている。
探したわけじゃないけど…
侑くんが、視界にはいった。
あっ!
侑くんが、投げた!
すごい、あたった!!
やっぱり…
私、侑くんの事が好きなんだなぁ…
あんなに冷たくされたのに。
私は、侑くんに見とれていた。
その時、私は腕を引っ張られた。
わっ!
その瞬間、私の目の前をボールが真っ直ぐ
横切った。
びっくりした…
腕を引っ張ってくれたのは、夏々だった。
「もぅ、気をつけてよね!」
「ごめん…」
ありがとう。夏々…

それから、30分くらいたった後
ん?
相手チームで、
私を見てクスクス笑っているように見えた…
女子2人。
ドクンッ
なんだろう…?
私の、
悪口…?
私…何かした?
別に私に言っていなくても
自分のことを悪く言っていると
思ってしまう。
すっごい、ネガティブだ…
私は、こんな自分が嫌い。
周りの人と話すのに、計算をする自分が嫌い…
また、怖くなった。
あの2人を見て、
また…お父さんを思い出す。
お父さんのあの目を思い出す。
ドクンッ

私は、立ちくらみがした。
その時、ボールが私の方にとんできた。
「…あ」
ヤバ…
次は本当に、
バンッ!
本当にあたった。
「いった…」
左手首におもいっきりあたった。
ジンジン痛む。
周りがざわつく。
やっちゃった…
夏々が
「大丈夫?
保健室行こう!」
「え、
大丈夫!自分で行けるよ!
ありがとう!」
夏々の優しさ…
あまえられない。
私は、足を前に出そうとしたとき
また、立ちくらみがして床に膝をついてしまった。
ズキン…
手首も…頭も…胸も
痛い。
私は、自分で立ち上がろうとした時
影が見えた。下を向いていた顔を上げた。
「侑くん…?」
侑くんがいた。何?どうしたの?
侑くんは、なにも言わず
私をおんぶした。
きゃっ
何?侑…くん?
周りがもっとざわついた。
「ちょっと、侑くんおろしてよ!」
「ケガしてるんだから、黙ってろ!」
私は、恥ずかしくなった。
そして、そのまま
保健室へ向かった。

「あらぁ~
けっこう腫れてるわね。
でも、安静にしてれば大丈夫よ!」
保健室の先生が、
私の手首を手当てしてくれた。
私の後ろに侑くんが立っている。
私は、「ありがとうございました。」だけ言い、
保健室を出た。侑くんも私の後をついてくる。
もう、次の授業が始まっていて
廊下が凄く静か。
私たちは、隣りに並んで歩いているけど
何も話さない。
でも、教室につくころに侑くんが口を開いた。
「ごめん…」
「へ?」
急にあやまられたことに、驚き
私は、まぬけな声がでた。
「肩んとこ、赤くなってない…?」
え?昨日の…
私は、1度肩を確認した。
ありゃぁ…少しだけ赤くなっていた。
でも私は、痛くなかったので
「大丈夫だよ!全然!」
私は、笑顔で言ったが
侑くんは疑っているっぽかった。
やっぱり…わかっちゃうのかな?

侑くんが、私のこと心配してくれた。
全然気にしてなかったのに…
あやまってくれた。

少しは、私のこと…

「私、もぅ
侑くんのことについて
ムリに聞こうとしないから…!」
侑くんは、何を言い出すんだって顔を
している。
「侑くんが、自分から
言ってくれるまで、待ってるから!」
目を見開いて驚いている。
私ね、侑くんならいつか
私のことを信じてくれると、思うの…
私は、侑くんを信じてるよ…
「…っ」
侑くんは、うつむいた。
でも、その後
侑くんが私の腕をひっぱり
自分の方に引き寄せた。
「…え!?
侑く…」
そして…

侑くんにキスされた…

5.彼の思い

「俺のまえでまで、ムリして笑んな…」
ドクン…
今、私…
え?
何がおきたの…?
私は、侑くんに何されたのかわからず
固まっている。
侑くんは、うつむいて赤くなった顔を
隠し、先に教室に戻った。
侑くんが、教室のドアを閉めた音で
私は、自分が何されたのか理解した。
ドクン…
どうして…?
侑くんが…
侑くんは、どうして私にキスしたの?
『俺のまえでまで、ムリして笑んな…』
侑くんの言葉が
胸にしみる。
どうしよう…
侑くんは、私のこと信じてくれてるの?
侑くんは、私のことどう思ってるの?

侑くんの事…
もっともっと、好きになっちゃった。
期待しちゃ、ダメだってわかっているのに…
私は…

私は、教室に入った。

***********************************************

授業中
私が侑くんを見てるのは、いつものことだけど…
何か…
侑くんと目があう回数が多いっ!〃
まえまで、いっさい私の方は
見ていなかったのに
今日は、何故か多い!!
私、侑くんと目があってうれしいけど
恥ずかしくなって、そのたびそらす。
私ったら、分かりやすい…!
ヤバイ…
顔、真っ赤だ…

そんなことの繰り返しで
授業が、終わった。
ふぅ…
昨日、あんなことがあったんだから
ふつうにできないよ…
授業なんて、全く頭に入っていない。
侑くんのこと、意識しすぎだよ!

どうしよう…
初めは、遠くから見ているだけで
良かったのに、幸せだったのに…
私…欲張りになってきてる

「れもね!宿題の答え見せて!!」
夏々が、私の机の前に来た。
「めずらしいね、
夏々が、宿題忘れるなんて…」
私は、そう言いながら
ノートを机の中から出す。
「ごめんね!」
夏々は、両手を顔の前であわせて
頭をさげた。
「はい。」
私は、夏々にノートを渡す。
「ありがとー!」
ノートを受け取り、自分の机に戻った。
私が、イスにぐったり座り
真上を見ていた。
私の視界には、天井しかうつっていない。
周りの騒がしい声が、聞こえる。
何も考えないで、真上を見る。
少しだけど、ほんの少しだけど
心が落ち着く。
「……」
1度、目を閉じた。
3秒くらいたってもう1度、目をあける。
「わっ!」
ゆ、侑くん…!
「そんな、驚かなくても…」
侑くんが、私の視界に入ってきた。
上から、のぞくようにして私を見てきた。
ちかっ!〃
私は、頭を前にもってきて
イスにしっかり座った。
ドキンッ
侑くんは、私の机の前に来てしゃがんだ。
「今日、俺のことさけてねぇ?」
「…!」
私は、うつむいたまま
首をふる。
ムリ!侑くんの顔、しっかり見れない…!
周りが、私たちを見てざわつきはじめた。
昨日、みんなの見ている前で
侑くんが、すすんで私をおんぶして
保健室まで、連れて行ってくれたから…
ずっと、噂されてる…
絶対、何かあるよね!
付き合ってるんじゃないの?
あの侑が、あんなことするなんてな…
愛波くんって、そういうことするタイプじゃないよね…
じゃぁ、やっぱり…!

侑くんだって、わかってるでしょ!
なのに何で…!
侑くんは、小声で言った。
「おまえが、涼とあった場所に
連れて行ってくんない?」
え!
私は、驚いて思わず
顔を上げた。
侑くんと目があった…
「きゅうに、どうして?」
あ、
ふつうに話せた…
侑くんは、少し顔を赤らめた。
そして、私に耳かしてと手で手招きをしてきた。
私は、侑くんに言われたとおりにした。
耳元でうっすらと聞こえた。
「おまえを…れもねを信じようと、思ったから…」
ドクン…

6.決断

まさか、侑くんがあんなこと言うなんて…

信じてくれた。
侑くんが、私を。
うれしい…

私も、侑くんのこと信じてるから…

それからの授業の内容は
全然覚えていない。
早く放課後になるのをまっていた。

授業が終わり、侑くんと一緒に
教室を出た。
また、周りが噂していたのが
聞こえていたけど
もぅ、気にしない。
「そうだよ!」って言いたいくらいだから。
私は、うかれていた。

「行こう!」
侑くんは、うなずき
私についてくる。
何か…かわいい
何て言ったら怒られるな…
私は、ニコニコしながら歩く。

歩いている途中に、侑くんに聞いてみた。
「どうして、急にあんなこと言ったの?」
「え?
だから、れもねを信じようと…」
違う。
「そうじゃなくて、」
ん?って感じで不思議そうに見てくる。
「涼くんに、会おうと思ったの?」
私は、少しぎこちなく言った。
「れもねの話を聞いてたら
ちゃんと向き合わないとなって、思って…」
私の目を見てしっかり、言った。
私の…話?
「涼にぃとちゃんと向き合って、そしたら
れもねには全部話すから…」
侑くんは、優しく微笑んだ。
ウソの笑顔じゃない。
悲しい笑顔でもない。
「うん!絶対、約束!!」
私も、笑顔で言った。

約束何て、信じてなかったのに
侑くんとの約束は、信じる。
こんなに、わかりあえた人…はじめてかも…

「そうだ!
手首どう?」
侑くんが、私の腫れた手首を見て言った。
やっぱり、優しいなぁ
「もぅ、全然大丈夫だよ!」
私は、大丈夫ということをアピールするために
手首をふった。
ズキンッ
いったぃ…
バカだ。私。
全然大丈夫じゃないじゃんか…
「本当に、大丈夫?」
侑くんには、わかっちゃうよね。
ウソつきたくないし、、
「まだ、痛かった…」
私は、正直に言った。
「早くよくなるように
ムリしないでよ。」
ヤッバィ、
侑くんってこんなに優しかった?←しつれい
ドキドキしてる。
「うん、ありがとう!」

それから、少したって
綺麗な音楽が、聞こえてきた。
~♪~♪~♪
ギターの音と歌声。
「侑くん!聞こえる?
なんだろぅ…
きれいだね!」
本当に、綺麗な歌声。
誰だろう?
あれ?
侑くんが、まったく反応しない。
侑くんを見ると…
すごい悔しそうな顔?
憎しみっていうか、何か…
「どうしたの?
侑くん?」
侑くんは、少し間をあけて
小さな声で言った。
「…っ
この歌…」
侑くんは、この歌をしってるの?
私が、不思議に思っていると
あの場所、涼くんとあった場所についた。
「あ…」
いた。涼くんがいた。
涼くんは、ギターを持って歌っている。
あの歌声、涼くんだったんだ…
すると、涼くんが私たちに気づき
ふりかえった。
「あ!れもねちゃん…と
侑?」
涼くんは、笑顔で言った。
ドクン…
ダメ…違う…
この笑顔は、
「久しぶりだね!
侑。」
侑くんは、涼くんの近くに行った。
そして、侑くんが涼くんの
襟元を思いっきりつかんだ。
グッ
「…っ
おまえ…! この歌…」
な、何?
侑くん、どうしたの?
さっきの優しく、笑顔だった侑くんは
消えた。
ここにいる侑くんは…
怖い。
「おい、おい。
侑、れもねちゃんが怖がってるぞ。」
え、
私?
侑くんは、私を見て
悔しそうに涼くんの服から
手をはなした。
一度静まり、侑くんが
口をひらいた。
「その歌…
死んだ母さんが、作った歌だろ。
おまえに…おまえだけの歌…!」
侑くんと涼くんのお母さん?
亡くなったの…?
「俺には、何もなかった。
母さんは、いつもおまえだけに優しくて…」
涼くんは、さめた目をしている。
何で…?どういうこと?
「でも、それでも涼にぃだけは、
俺に優しくしてくれた。」
「は?優しく?んなわけないだろ。」
涼くん…?
2人とも怖いよ…
涼くんも人が変わったみたい。
「だよな!優しくしてくれたんじゃないんだよな!!
だって、おまえ…
何も言わず、突然
俺をみすてた…!」
みすてた…?何があったの?
侑くんが、はっとしたように
私を見た。
「れもねは、帰ってろ」
えっ
そ、そんな…
「だ、だって…」
ヤダ。侑くんと涼くんを2人っきり
にしちゃダメなような気がする。
「大丈夫だから。
明日、ちゃんと話す。」
侑くんは、私の頭をなでる。
この優しい手。温かくて、安心する。
私は、心配しながらも
侑くんの言うことを聞いた。
「わかった…」
私は、チラチラ後ろを振り返りながら
坂をおりていった。
2人だけの兄弟の問題。
家族の問題。
私は、部外者。
無理やり入り込もうとすると
きずつける…
私は
少しでも、2人を助けることはできないの…?


**********************************************

愛波家に、2人の双子の男の子が生まれました。
お兄ちゃんは、涼。
弟は、侑と言う名前をもらいました。

~侑side~

小学5年生

小さいころから、気づいてたんだ。
俺と兄ちゃんの接し方が違うと。
「涼行くよぉ」
「うん!待って、」
母さんの優しい口調。
涼にぃの優しい笑顔。
俺は、どっちも嫌いだった。
「お母さん、侑も連れていこうよ!」
涼にぃは、いつも俺に優しいかった。
でも…
「侑なんか連れて行ってどうするの!
邪魔なだけでしょぅ?
私には、涼がいればいいから。
涼は、余計なこと言わなくていいんだよ。」
いつもこうだ。
涼は、俺を見て悲しそうな顔をして
母さんに連れられて家から、出た。
家の中では、俺1人。
静かで、ドアの閉まる音だけが響いた。
優しい涼にぃも、俺にはきどっているようにしか見えない。
『双子なのに』
『涼くんは、おりこうね。』
『涼くんは、しっかりしてるね。』
涼くんは、涼くんは、涼くんは…
うるさい。黙れ。
俺の頭の中で、ずっとリピートしてる。
今まで、俺も涼にぃと一緒に外に出れていた時
いつも言われていた。
だから、俺だっていい子にしていたつもりなのに
どう頑張っても涼にぃをこすことは
できなかった。
それから、母さんは
俺を一緒に外に連れていかなくなった。

ときどき思うんだ。
本当にこの人は、俺の母さんなのか…?

ある日、涼にぃが驚くことを言った。
「侑、僕たち今日
いれかわってみない?」
「は?」
本当に驚いた。
まさか、あの涼にぃがこんなこと言い出すなんて…
でも、俺は
あの母さんをためしてみようと思い、
涼にぃの言うことを聞いた。
あの母さんが、涼にぃと俺を間違って
俺に優しくするのか。

その日は、ずっと涼にぃの服を着て
いつもより、明るくして
いい子にして
そしたら、母さんは
俺を涼にぃだと思いこんだ。
なんか、すがすがしい気分だった。
俺は、久しぶりに外に母さんと出掛けた。

次の日
俺と涼にぃの誕生日。
突然涼にぃは、この家から姿を消した。
俺と母さんの前から
手紙を1枚だけ残し
家を出ていった。

侑とお母さんへ

急に家を出てしまって、ごめんなさい。
僕は、この家にいるのが辛くなりました。
侑と母さんのことは、大好きです。
僕は、しっかり生きていけます。
探さずに、見守っていてください。

涼、

こんな、理由なんて全然わからない手紙だけを
残して…
それから、母さんはおかしくなっていった。
数日間は、涼にぃが出ていったのは
俺のせいだと怒鳴りつけられていた。
「あんたが、悪いのよ!
お父さんの時と同じ…
全部、あんたがこの家を潰したの!!」
は?何言ってんの?
俺じゃなくて、母さんのせいだろ?
言いたいことは、たくさんある。
でも、言わない。俺は、黙って母さんを見ている。
「何よ!その目!!」
パン!
いってぇ…
こういうふうに、殴られるようにもなった。

でも、急に母さんが別人みたいになった。
「そっか、そっか…
ごめんね。殴ったりしてごめんね。
どうしたんだろうね、」
「え?」
何?急に…
かあ…さん?
「侑は、どうして家を出てったんだろうね?
涼は、気にしなくていいからね。」
何言ってんの?この人…?

母さんは、俺と涼を間違えだした。
母さんは、俺を涼だと思い
出ていった涼を俺だと思っている。

この人は、大切な涼がいて
必要のない俺は…
いてほしい人といなくていい人
とが、ぐちゃぐちゃになったようだった。

やはり、どんなに頑張っても
俺は、母さんの必要としている人にはなれない…

それから、ずっとずっと間違えられたまま
母さんと2人で暮らした。
涼になりすまして。
あの大嫌いな優しい笑顔。
あのきどっているだけの優しさ。
俺が、大嫌いなことを自分でやりつづけた。

そして、
中2の冬。
母さんは、交通事故で亡くなった。
運転手の飲酒運転だった。
でも俺は、泣かなかった。
いや、泣けなかった。
葬式にも涼にぃは、顔をだすことは
なかった。
いつも周りで手助けをしてくれていた
近所のおばさんたちは、
俺に知らないふりをする。
めんどくさいことには、かかわりたくないらしい。
しょせん、そういう人たちだったんだ。
口では、心配しているように見せて
何も思っていない。
涼にぃ?俺は
ずっと涼にぃということで
過ごして、こんなときでも本当の涼にぃは
帰ってきてくれないから…
俺は、1人で全部やっているよ。

…何で?涼にぃは、何で俺をみすてたの?

高校に入ってからは、1人暮らしで
バイトしていた。
周りの人とのつきあいかたが
わからなかった。
俺は、ずっと涼にぃを演じてたから
本当の自分を見失った。
教室になじめずに1年は、終わり
2年になってれもねに出会った。
そして、だんだん心を許せるようになっていった。
こんなに、信じ会えた人…初めてだった。


***********************************************


「涼にぃは、俺をみすてた…!
きどっていい兄ちゃんに見せてただけで。」
俺は、小さいころを思い出して
悔しくなった。
「俺から、何もかも奪った。
母さんも、家も…
でも、おまえは
いらなくなったら、すぐにすてた!!」
俺の気持ちも考えろよ!
俺は、拳を強く握った。
涼にぃは、俺を睨みつけた。
「そうだよ…きどって、母さんに嫌われないようにしてた。
でも…本当は、あの家にいるのが
つらかった。母さんの隣でいい子にしてるのが
つらかったんだよ…!」
え…?
母さんの隣にいるのがつらかった…?
俺は、それを羨ましく思っていたのに。
涼にぃは、固まっている俺を見て
「母さんも、自分をつくらないで
真っ直ぐ生きていたおまえも
大嫌いだったんだよ!!」
『侑と母さんのことは、大好きです。』
真逆の言葉。
俺が、思っていたより涼にぃは…
「僕は、最後の最後までいい子を演じてた…
何も知らないくせに…!」
涼にぃは、そう言い坂をおりていこうとした。
固まっている俺の横を涼にぃが、通り
後ろから
「あぁ、
れもねちゃん。
あの子おもしろいね…」
ドクンッ
俺は、振り返り涼にぃを睨んだ。
ダメだ…
れもねは、初めて…
もう奪わないでくれ…!
「あいつには、てをだすな!」
涼にぃは、
口角をあげ、何も言わず坂をおりていった。
俺は、涼にぃの小さくなっていく背中を
見つめて、地面に膝をつけた。
クソッ

お願い…
もう、奪わないで…

7.目的

私は、次の日に
学校で侑くんから小さいころのことも
昨日、私が帰った後のことも全部
聞いた。
胸が、ズキズキしている。
侑くんは、きっともっと
苦しいんだろうな…
こういうとき、何をしてあげたらいいのかな…?
侑くんが、私にしてくれたみたいに…
「侑くんと涼くんって
似ているようにみえて
正反対で…
でも、やっぱり
すごく似ているんだよね…」
侑くんは、何言ってんのって顔をしている。
私自身も、何言っているんだろうって思った。
でも、やっぱり…
「似ているよ…2人は。」
「違う…俺と涼にぃは、違うよ…」
私たちは、誰もいない教室でまた
あの景色を見ながら話している。
「だって、侑くんは
いつもお母さんと出掛けて行く涼くんが
羨ましかった。
涼くんは、いい子を演じずにお母さんに
しばられていない侑くんが羨ましかった。だから
いれかわったりしたんじゃない?」
侑くんは、何も言わず外を見ている。
「きっと…
2人ともすれ違っちゃっていただけなんだよ…」
「そう…かな…?」
大丈夫だよ。
どんなにつらくなっても、私は侑くんのミカタだから。
私は、侑くんを見た。
そして、侑くんの頭を撫でた。
「…っなんだよ…」
クス、
「かわいい…」
「はっ?」
私は、ニコニコしながら侑くんの頭を撫でる。
「おい!やめろって…」
侑くんは、私の手をつかみ抵抗している。
でも、笑っている。

私…少しは、侑くんの力になれたかな…?

私は、侑くんに負けじと両手をつかい
頭を撫でる。
クス、クス
片手をつかまれると、もう片方の手で
そして、両手をつかまれてしまった。
「侑くん、両手つかむのは
ずる…ぃ…」
私は、小さい子供のように
楽しげに言っていた。
侑くんに両手をつかまれたとき、侑くんの顔が
近くにあった。
トクン…
廊下で侑くんにキスされたことが
よみがえってきた。
侑くんは、私に顔を近づけてきた。
キスされる…!?
私は、目をぎゅっと瞑った。
ドキンッ
私は、背中の後ろで机に手をおいた
つもりだった。
きゃっ
机から、手を滑らせ
私はおしりから床についた。
「いったぃ…」
侑くんは、立ったまま私を見て驚いている。
ヤッバ
「あ、あはは…
やだもぅ、ごめんね…」
やっちゃった、私。
恥ずかしい…
顔を真っ赤にした私を見た侑くんは、小さく笑って
私に手をさしだしてくれた。
私は、その手をとり立ち上がった。
そして、侑くんが
「れもねのこと本気で信じてるから。
好きだよ…」
初めて聞いた。
侑くんからの
好き。
私は、笑顔でうなずき
「私も、侑くんのこと信じてる…!
大好き…」
そう言い侑くんに抱きついた。
侑くんは、私の背中に手をまわした。
自分で言った言葉で少し、恥ずかしくなった。

次の日また、侑くんと涼くんに会いに坂の上へ
行った。
向かっているさいちゅう、ずっと侑くんが言っていた。
「涼には、気をつけろよ!
何されても、俺が守るけど…
あんまり近づくなよ!」
私は、どうして侑くんがこんなこと言うのか
わからなかったけど、少しテレながら『守る』と
言ってくれたのが嬉しかった。
「涼くんが、なにするの?」
「あ…えっと、それは…」
なんだろう… ?
「侑くん、大丈夫だよ!」
あんまりよくわかっていないけど
私は、あの涼くんだよ、なにするの?って
思った。
でも、侑くんは疑っている目に見えた。
「大丈夫だって!
信じて、ね。」
侑くんは、うんと、うなずいた。

ー坂の上ー

やっぱり、涼くんは今日もいた。
「涼くん、あのね。
侑くんから、話し聞いたんだけど…」
私が話している途中に、涼くんがはいってきた。
「あぁ~!何で、侑いるんだよ!」
え…?
急に何?
「れもねちゃんが、来てくれたのに…」
え…?
私は、自分の話しをもってきた。
「だ、だからね。涼くん!」
「ねぇ~、れもねちゃん」
もぅ!
私、まだ話してる途中!!
侑くんは、ずっと涼くんを見つめている。
次の涼くんの言葉に、私も侑くんも
驚いた。
「デートしよ!」
はいっ!?
な、な、何言ってんの?
侑くんも、驚きをかくせないようだった。
固まっている。
「ね!ね!いいでしょっ!」
イヤイヤイヤ、ダメに決まってる!
「冗談でしょ…?」
「んなわけないじゃん!
本気だよ!」
マジですか、
えっと…私は、、
「でも…私
侑くんと…
つ、つきあってるから…」
ヤバイ…恥ずかしい…
自分で言ったのに、
侑くんも、テレてはいたけど
少し喜んでいるようにも見えた。
「やっぱな!
だと思ってたよ。
じゃぁさ、れもねちゃん…」
思ってたって、そんなにわかりやすいの?
「僕とゲームしない?」
は?
今日の涼くんは、本当に人がかわったみたいで
ちょっと、怖い…
侑くんが、気をつけろよって言っていたのって
このこと…?
ダメだ…涼くんに、ふりまわされてる…
「どういうこと?」
はぁと私は、ため息をついた。
「僕と侑が、順番にれもねちゃんとデートするの!
そして、どっちがよかったか決める!」
本当にあきれた…
何言ってんの?涼くん…
「で、侑が勝ったら僕は、何でも言うこと聞くよ!」
え…
何でも…
じゃぁ、侑くんとやりなおしてって言ったら聞いてくれるの?
私が、侑くんを選ばないわけはないんだから…
それなら、、
「わかった。」
「は?何言ってんの!れもね!!」
侑くんは、私の答えに驚き
止めにはいった。
「だって、このままじゃぁ
涼くん、まともに話し聞いてくれない…!」
「だからって…」
侑くんは、まだ反対していたが
涼くんが進めた。
「よしっ!じゃぁ決まり!
後でメールして、ルール言うから
メアド、交換しよ!」
涼くんは、ポケットからケータイを出し
笑顔で言った。
私は、何も言わずケータイを持って涼くんのとこに行く。
「ちょ、れもね!」
侑くんは、必死に私を止めようとしている。
ごめんなさい。侑くん。
気をつけろよって言われたばっかりなのに…
でも、これで涼くんが侑くんの気持ちわかってくれるのなら。
それにね…
侑くんとデート…したいっていうのもある…

涼くんが私のケータイのリストに登録された。
侑くんの上にのっている。
「よしっ!OK!
あ!僕が勝ったら…れもねちゃんは、僕のものね!じゃぁね!」
涼くんは、坂をおりていった。
笑顔で手を振りながら。
何?私…デートの約束するためにここに来たみたい…
私が、涼くんの背中をボーとしながら
見ていると、後ろから声が聞こえた。
「どうすんだよ…負けたら、れもね…」
侑くんが、ちょっとキレぎみで私に近づく。
え…?負けたら…
さっき聞き流してしまった、涼くんの声がよみがえった。
『僕が勝ったら…れもねちゃんは、僕のものね!』
えぇ!?
ダメだよ!ダメ、ダメ、ダメ!
「大丈夫だよ!
私が、侑くんを選べばいいんだら…!」
「そうだけど…
涼と…デートさせたくない…」
侑くんは、うつ向いていたが顔が
真っ赤だった。
今、『きゅんっ』ってなった。
「大丈夫!すぐおわらせてくるから!」
「うぅぅ…」
大丈夫だよ!
侑くんは、心配性だな…
私は、侑くんに「行こう!」だけ言って2人で坂をおりていった。
侑くんも性格がかわった気がした。
いい意味で!

夜に涼くんから、メールがきた。

TO 涼くん
宛先〈・・・・・・・〉

こんばんは!
今日、言っていたことだけど
明日と明後日あいてる?



何か…思っていたよりもシンプルで
返信しやすかった。
私は、


こんばんは!あいてるよ!!
とだけ返信した。
ピロリロリン♪
「はやっ…」
今私が、返信したばかりなのに
もう、涼くんからきた。

TO 涼くん
宛先〈・・・・・・・・・〉

よかった!
じゃぁ、明日は僕だから!
○○時○○分に△△に来てね!!

ちょ~楽しみ♪

ちなみに、明後日は侑だよ!
時間と場所は、同じだゆ!!



一日目が、涼くんか…
ん?
涼くん字、間違えてる、
同じだよ!!って打ちたかったみたいだけど
同じだゆ!!になってる、
もしかして、メールあんまりしないのかなぁ?
何か…意外…
私は、小さく笑った。

りょーかい!

じゃぁ、明日ね( @´∀`@)/
おやすみ…

私は、ケータイを枕もとに置き
寝た。

8.あなたと彼?

すごくいい天気の朝。
カーテンをあけ、おもいっきりのびた。
ふぅ、
今日は、涼くんとだ!
よし、はやめに帰ってこよ!
どうやっても、私が涼くんを選ぶことは
ない。
絶対に、侑くんを選ぶ…

私は、準備をして指定の時間に間に合うように
家を出て、待ち合わせ場所に向かった。
つくころに時計を見ると
予定より、15分くらいは早くつきそうだった。
どうしようかな…?
と思ったけど、待ち合わせ場所には…
「涼…くん…?」
もぅ、涼くんはいた。涼くんも私に気がついたようだった。
私は、涼くんのもとへかけ足で行った。
「おはよう!れ、れもねちゃん!」
涼くんに、笑顔を向けられた。
でも、何かぎこちない…
「おはよ…」
涼くん?早すぎない?
「何時から、待ってたの?」
「え?あ…えっと、
そんなことよりさ!
どこ行きたい?」
ごまかされた…!
けっこう、早くに来てたんだよね…
どこ行きたいって…決まってると思ってた…
「別に、どこでも…」
私は、1つため息をついて
一番いやな答えを言った。
でも、涼くんはそんなことは気にせずに
「じゃぁ、映画と買い物
どっちがいい?」
え…
決めさせてくれるの?
えっと、じゃぁ…
「買い物…が、いいかな…?」
私は、ぎこちなく言った。
「よしっ!じゃあ、行こう!」
涼くんは、私の手をつかみ歩きだした。
「ちょ、ちょっと!」
手をつかまれたことに、驚き私は、手を振りほどこうとしたけど
ぎゅぅと手を離さない。
涼くんを見ると何か悲しげな顔に…見えた…?
「…手、離して…」
何か、少し恥ずかしかった。
だって、男の子と手をつないであるいたら
付き合っているように見えるじゃん!
「あ、えっと…手、手ぐらいいいじゃん!
デートだし…!ね!」
ね!って…
私が、断る間もなく涼くんは、また私の手をひっぱった。
でも、やっぱり何か…我慢しているっていうか
さみしそうに見えた…
どうしたんだろう?


*********************************************

涼くんといろんなお店に、行った。
思っていたよりも、楽しくて
たくさん買い物しちゃった。
今、私たちは次の店に行こうとしている。
手は…つないだまま。
急に涼くんが、立ち止まった。
「疲れてない…?」
え…?
心配…してくれるの?
涼くんって、優しいんだ…
侑くんの優しさに、にている気がした…
「大丈夫だよ!」
あ、また言っちゃった…
また、つくった笑顔をした。
本当は、少し疲れたのに…
あれ…?
涼くん、うたがってる?
「次の店に行く前に、あそこよらない?」
と言い、涼くんが指を指した先には
小さくてかわいい喫茶店が、あった。
え、何で?
「あ…うん。」
私は、別にどっちでもよかったから
こんな返事をした。
すると、涼くんは
「よし!じゃぁ、行こう!!」
と笑顔で言った。
涼くんの笑顔…?
ウソの笑顔じゃない…?
心からの…
どうしよう、、
今…
きゅんっ
って、なった…
だ、だって涼くん…なのに…
ありえない、、
今日の涼くんは、何か…


小さな喫茶店に入り
私は、紅茶。
涼くんは、コーヒー
を頼んだ。
私は、紅茶を一口飲んでから
紅茶を見ながら
ポツリとつぶやくように言った。
「涼くんさ…
侑くんのこと嫌いって嘘でしょう…?」
涼くんの顔は見ていない。
涼くんから返事が返ってきたのは
3秒ほど後だった。
「ん~…
あ、、」
言いずらそう。
私は、涼くんの顔を見た。
「ごめんね、
言いずらかったら、いいよ!」
今日の涼くんは
ぎこちないけど、優しくて
温かい笑顔。
侑くんと
ーかさなる…

「で、でも、れもねちゃんのことは
好きだよ、」
あ、涼くんだ…
「私は、侑くんが…
好きなんだよ…」
顔が、熱くなった。
やっぱり、恥ずかしい。
何でだろう…?
涼くん、少し微笑んだ。
「そ、そっか…
あ!でも、ぼ、僕が
れもねちゃんのこと、好きなのには
かわりないからね!」
「あ…うん…」
涼くんは、ニコニコしながら言う。
どうしたんだろう…?

私たちは、そのあと沈黙が
続いた。
めっちゃ、ぎこちない…
そんなとき
隣のテーブルの人たちの
大きな声が聞こえた。
「だから、こっちにしようって!」
「これより、こっちの方がかわいいから!」
「だからぁ…」
言い争い?
私は、体の向きはかえずに
顔だけ隣の方に向けた。
私たちが、この喫茶店に入った時には
もういた。
その時は、すごく仲がよさそうだったのにな、
隣のテーブルは、広くて6人ほどで
3対3で、分かれている。
なんだろう…?
雑誌をテーブルの上にのせ、指を指しながら
言っている。
何かを決めるのに、もめているらしい。
やだな。
こういうの…
女子だから、余計に。
絶対、この話終わった後に
分かれてグチグチ悪口を言う。
怖い…
6人の中の1人が
「私は、~~だから、~~だと思うから
こっちがいいの!」
私は、彼女に見とれた。
かっこいいな…
言い方的に周りは、嫌がるタイプかも
しれないけど
私は…羨ましいと思う…
そんなふうに周りの目を気にせずに
堂々と発言できる人。
すごいなぁ…
さっき、発言した子の前の席の子が
「だから、なんなのよ…」
つぶやいた。
でも、私にはしっかり聞こえた。
きっと、周りの人にも聞こえていたと思う。
何か…空気が一気にしんみりしたな…
でも、言われた方の子は
悲しんだり、苦しみの顔はいっさいしない。
すごい…
私には、できない、
「何?~だったら、いいの?」
また、反抗…
そのあとも、隣の言い争いは続いた。
私は、涼くんとの会話は
続かず、居心地悪かった。
隣の反抗していた子が
「わかったよ!!もういい。
私たちは、私たちで買うから
そっちは、そっちで買いなよ!!」
と言いテーブルを強く叩いた。
ビクッ
3人の子たちは、店を出ていった。
他の3人の中の
2人も
「じゃ、行くね…」
と言い、私がすごいと思った子
1人が残された。
その子は、静かに
「バカみたい…」
と言い、涙を隠しながら
流した。
ズキン…
胸が…痛い…
やっぱり、平気なわけないよ。
つらいよ。苦しいよ。
なのに、大丈夫なふりをして
頑張っていた。
その子を見ていると…
何か…
昔の自分がよみがえった。
そのあと、侑くんや涼くんのことも
頭をよぎった。
ズキン…
痛い…
今日は、自分で心を整えれる。
大丈夫。
私はうつ向きながら、呼吸を整えていた。
その時、背中に手が…
私の背中を撫でている
涼くん。
あの時と同じだ。
教室で侑くんと話した2回目のとき。
優しく、優しく撫でてくれた
温かい手。
今も、同じ。
あれ…?
「侑…くん…」
「え…」
あ、れ?
ち、違う!
「ご、ごめんね!
涼くん!ありがとう!」
本当に侑くんに、見えた。

頭が、ぐちゃぐちゃになってきた。
「今日は、もう帰ろう!」
「え…?」
涼くんは、私の腕をひっぱり
店を出て、家までおくってくれた。

「何か…ゴメンね…」
え?
何で、涼くんがあやまるの?
私の家の前で、話している。
「なん…で?」
涼くんは、自分の髮をくしゃっとして言った。
「早く帰っちゃったし、
それに…あんま、楽しくなかった、かなって…」
涼くんは、うつ向いた。
私は、首をふった。
「そんなことない…
楽しかった…よ?」
なに言ってんの?私!
相手は、涼くんだよ!
これは、侑くんに言う言葉。
「本当!?よかった…」
ドクンッ
涼くんの笑顔…?
やっぱり…
「僕も楽しかった!」
ウソのない
こんなに綺麗な笑顔。
どうしよう…
どうしよう…
彼は、、
「じゃ、またね!」
涼くんは、私に手をふり背を向けた。
ドクン…ッ
ウソだ…
私は、どうしてたんだろう…?
何で、こんなことをしたんだろう…?
とっさに、私は涼くんの服の裾をつかんだ。
ぎゅぅ…
「え…?」
涼くんは、私の行動に驚き
振り返った。
「ウソつき…」
私は、つぶやいた。
そのあと、私は何をしているのか理解した。
あ…
「あっ!いや…ごめんなさい…!!」
慌てて、服から手をはなした。
な、なにしてんの私!
涼くんもぎこちなく
「い、いや…じ、じゃあね…」
と言い、帰って行った。
私は、その背中を小さくなるまで
見つめていた。

でも、私は確信がついた。

*****************************************


昨日の涼くんのことを
思い出しながらも、
今日は、侑くんとのデート!
服を選び、待ち合わせ場所に向かった。
「おはよう!まった?」
侑くんの方が、先にいた。
私は、駆け足で侑くんのもとに行った。
「ん?大丈夫だよ!」
待ち合わせ時間は、まだだった。
「じゃ、行こうか!」
侑くんは、笑顔で私の手を握った。
笑顔で私の手を握った。
笑顔で私の…
『笑顔で…』


違う…


私は、彼の手を振り払った。
彼は、驚いている。
「え…?何?どうしたの?
れもね…?」
私は、彼を睨んだ。
「違う…
ウソつき…」
つぶやくように言った私に、聞き取れなかった彼が「え?」と聞いてきた。
「違う…違うよね…
あなたは…


侑くんじゃない…

涼くんだよね、、」



本当は、昨日から気づいていたんだ。
でも、
でも今日、彼は侑くんじゃないと
すぐにわかった。
違ったんだ…
彼は、1度驚いたが
すぐに、にやついた。
そして、かつらをはずし、
「すごいよ!
れもねちゃんの言う通りだよ!
どうしてわかったの?」
私は、表情を変えない。
「違ったんだ…
全部。
でも、1番は『笑顔』が違った。」
「は?」
人が変わった。侑くんじゃない。
確実に、私の目の前にいる人は
侑くんじゃない。
「もぅ、侑くんは心から笑える。
でも、あなたの涼くんの笑顔は…
まだ、ウソの笑顔だよ…!」
怖い…涼くんの目。
「へぇ、笑顔ね…
意味わかんないや…」
どうでもいいように、笑いながら言う
涼くん。
涼くんだって、初めはこんなんじゃなかったでしょう?
「どうして、こんな…」
私は、悔しい気持ちでいっぱいだった。
昨日、侑くんに会ったとき
見た瞬間に気づけなかった…
涼くんは、またにやついて
真顔になった。
「言ったでしょぅ。
ゲームだって…」
ドクンッ
「ゲ、ム…?」
ドクンッ
「うん!
僕と侑がいれ変わって
れもねちゃんが、気づけるかっていうゲーム!」
また、ウソの笑顔。
怖い笑顔。
こんなのを笑顔というの?
「僕の負けだよ!
侑が、今どこにいるのか教えてあげる。」
どうして、そんなに笑っていられるの?
「侑くんだって、苦しかったんだよ!」
私は、言いたかったことをムリやりにでも
言うことに決めた。
「涼くんが、苦しかったぶん
侑くんも苦しかったの!!」
どうしよ…
何でだろう…
泣きそう。
「は?
れもねちゃん?なに言っているの?」
感情のない笑顔。
心。
「侑くんは、涼くんが出ていった後
1人で頑張っていたんだよ!
支えてくれる人何ていないのに…!」
涼くんは、うつ向き
そのあと私を
睨んだ。
ビクッ
「おまえに何がわかるんだよ…!!」
怒鳴った…
もう、逃げない。
大丈夫、大丈夫。
自分に言い聞かせる。
「わかんないよ!
部外者の私には!!」
『大丈夫。』
「でも、知りたいの!!
信じたいの!
信じてほしいの!!」
『私は、変わってきているから…』
「はあ?」
『信じられる人がいるから…!』
私は、
足を前にだし、涼くんに近づいた。
そして、
涼くんに抱きついた…

『侑くんに出会えたから…!』

9.彼とあなた?

「は?
な、なんなんだよ…」
『涼くんに抱きついた…』
お願い…
信じて…
「涼くんも苦しかったんだよね…」
私は、涼くんに見えないように
顔を埋めて…泣いた。
「涼くんも侑くんも苦しかったんだよね…」
泣いていてうまく言えない。
「信じられる人が今まで、みつけられなかったんでしょう?」
ねぇ…
信じて…
「私が、私が…っ…」
涙が止まらない。
どうして?って
聞かれたら、何て答えればいいの?
私は、一生懸命言った。
「…っ私が…

涼くんの信じられる人になる…っから!」

あれ?涼くん…泣いてる?
「何で、おまえが泣くんだよ…っ」
聞かれちゃった…
「わかんない…」
「は?」
思ったとおりのリアクション。
「私が、私が、 っ…

涼くんを信じるから…!
信じてるから!!」
言いきった。
お願い…涼くん…
私の頭の上で、優しい声が聞こえた。
「わかった…
わかったから…」
え?私は、涼くんから体を離そうとした時
次は、涼くんが私を離さないようにぎゅぅと
した。
涼くんは、何も言わない。
泣いてるとこを隠すためかな…

それから、少したって
涼くんが、私を離し
笑顔で言った。
「ありがとう」
笑顔。
ウソの笑顔じゃなく
悲しみの笑顔でもない。
やっと、やっと…
心から、幸せのつく笑顔に
私は、見えた。
そして、涼くんは
私の頭を優しく撫でてくれた。
優しく、温かい手。
やっぱり…
ー侑くんに似ている。

「あっ!
そうだ、侑の場所…」
え?
そういえば…
あぁ!!
侑くんに、、
「侑はね…」

私は今、走っている。
走って、走って、走って…
息が切れるほど、走って…
「はぁ、はぁ、はぁ、、」
苦しいよ。
でも、それ以上に
あなたに会いたいの…
侑くんに会いたいの…
私ね、侑くんに会ったら話たいことが
たくさんあるの。

どうして、涼くんといれ変わるのを
良いって言ったの?
『侑はね…』
どうして、また涼くんのふりを
していたの?
『れもねちゃんと初めて、出会った場所…』
どうして、私に…
ウソをついたの?
『自分が変われた場所に、いるって言ってたよ…』
ガラガラー…
私は、学校にいる。
考えるより先に
体が動いた。
ドアを開けた。

そこには…ー

10.甘いれもん~last~

『あの…教室。』

見覚えのある背中が
振り返った。
ドキン
「侑…くん」
どうしよう…
さっき、止まった涙が
また溢れだした。
「気づいたの?
俺と涼が、いれ変わっていたこと…」
どうして…?
侑くん、なんか怒ってない?
「気づいたよ!
気づいてたよ!!」
私は、大きな声で言った。
「昨日から、本当は気づいてたよ…」
涙が止まらない。
「え?」
侑くんは、少し驚いたようにしている。
「私ね…侑くんに聞きたいことが
たくさんあるの…」
私は、ドアのとこから侑くんの近くに
行った。
侑くん…
「どうして、私をだましたの…っ」
涙がこぼれ落ちる。
侑くんの答えを聞くのが、怖い。
もし、もしも…
私のこと初めから、信じてなんかいなかったって
言われたら…?
遊んでいただけって言われたら…?
私は、本気で侑くんのこと信じてたよ…
今も、ずっと信じてる…!
侑くんの本当の気持ち
教えて、、
「…んでだよ…っ」
「え?」
侑くんは、1度うつ向いてから顔を上げ
私の顔をしっかり見た。
すごく真剣な顔。
「侑くん、私はっ…」
次の瞬間
侑くんが私を
抱き寄せた。
ドキンッ
「おまえを信じていたからだよ!!」
ぎゅぅ
と強く抱きしめながら、侑くんは
大きな声で言った。
信じていたから?
どういうこと?
「あの後、坂を降りていったあと
その日の夜に涼にぃから、電話がきたんだよ…」
侑くんは、話はじめた。
だましたわけじゃないの…?

********************************************



~侑side~

デートの約束をした夜。
俺は、部屋にはいりベッドに飛び込んだ。
「涼にぃとれもねが、デートなんて
ありえねぇし…」
ため息を1つついて、枕に顔を埋めた。
俺って、けっこう嫉妬深いのかな…
てか、涼にぃ何であんなこと言ったんだよ…
れもねも何で、いいよって言ったんだよ…!
あぁ~もう!
~♪~♪~♪
ん?
俺のケータイがなった。
電話?
俺は、ケータイを耳元にあてた。
「もしもし…」
『侑?僕だけど、涼!』
!!
涼にぃ…?
どうして?
「なんだよ…」
声が低くなった。
『デートのことなんだけど…

侑、僕たちいれかわってみない?』

ドクン…
侑、僕たち今日いれかわってみない?
昔の涼にぃの言葉が頭をよぎった。
「な、何言ってんだよ…」
何言い出すんだよ…
『だって、ゲームだよ!
普通にデートしたって、おもしろくないよ!』
は?
れもねをだませって言ってんのか?
ありえねぇし…!
それに…母さんの時みたいになったら
怖い…
「絶対イヤだ!」
『信じてんだろう?』
え…
俺が、拒否したあとすぐに
言葉をかぶせるように言った。
『れもねちゃんのこと…』
信じてるよ、
信じてんにきまってんじゃん!
だから、ウソつきたくないんだよ!
「信じてるにきまってんじゃん…」
『だったら、
れもねちゃんは、お母さんとは
違うって証明して見せてよ…』
は?
母さんとは違う…
『お母さんは、僕たちのこと
見分けられなかった。
しょせん、その程度の人間だったんだ…
次は、侑が信じたれもねちゃんは
その程度じゃないって…』
れもねは、違う…
母さんとは、違う…
れもねは絶対、、
「…っ」
ここで、ひきうけなかったら
れもねのこと信じていないってなるのか?
俺は、れもねのこと信じてる。
『しっかり、僕にわからせてよ!
信じてもいい人間がいるって…!!』
れもねなら、絶対…
俺のことわかってくれる!
「わかった。」
大丈夫だ。
れもねなら。
『よし!じゃぁ、あとのことは
メールするから!』
涼にぃは、そう言って
電話をきった。
大丈夫だ。
俺は、れもねを信じてる…!!


******************************************


「そのあと、メールきて時間とか
場所とか…」
侑くんの手に、力がはいった。
そうだったんだ…
じゃぁ、私のこと信じていたから…
私の涙は、いつの間にか止まっていた。
「ごめん、ウソついて…でも、れもねのこと信じていたから…!」
うん、うん!
ありがとう!侑くん…
侑くんは、自分から私を離した。
そして、優しく優しく
いつものように、頭を撫でてくれた。
やっぱり、私は侑くんの手が好き。
温かい手が好き。
侑くんが好き。
私は、笑顔で言った。
「侑くん…
大好き…!」
侑くんも、笑顔で「俺も大好き」って…
言ってくれた。


私たちは、今
2人並んで、誰もいないこの教室で
外を見ている。
「れもね、俺の目の前で侑くんのことが好きなんだよって
言ったよな。」
え?
侑くんは、楽しそうに言い出した。
あ…言っていたかも…
恥ずかしい…〃
私は、顔を赤くした。
話をかえようと
違う話をして、ごまかした。
「侑くん、まえから気になっていたんだけど、あの木ってなに?」
私は、侑くんに初めて会った時から
気になっていた大きな木を侑くんに聞いてみた。
「あぁ、あれは
れもんの木だよ。」
れもん?
こんなとこに、れもんの木?
「れもんって…侑くんみたい!」
私は、笑顔で言った。
だって…
初めは、かかわりずらくて
心をとざしていて
でも、本当は
優しくて温かい心を持っている。
れもんは、すっぱいって
みんなに思われているけど
でも、本当は
甘いところもある。

侑くんは、外を真っ直ぐ見ながら言った。
「俺じゃないよ…
れもねに似ている。」
「え?
私?」
れもんと私…
何が似ているんだろう…?
「れもねと似てるよ…
あの木…
れもねを信じられるまえから
あの木は、俺を支えてくれた。」
あの木…侑くんを支えてたの?
その木が、私に似ているの?
何か…嬉しいっ
私は、侑くんを見た。
「侑くん、ありがとう!
私…侑くんが初めて心から、信じられた人だから…!」
侑くんは、私を見て驚いている。
そして、あの優しい笑顔になった。
「俺も、初めて信じられた人はれもねだった。
れもねでよかった。」
侑くん…
「「ありがとう」」


ねぇ、侑くん…

もしかしたら、似ているのって
私と侑くんなのかな…?

信じてるよ…
ずっとずっと、、

大好きだよ…
ずっとずっと、、

まるで、あまずっぱいれもんのように…


ーENDー

甘いれもん

「甘いれもん」を読んでいただき
ありがとうございました。

ついに、「甘いれもん」も完結しました。
あなたには、信じられる人はいますか?

家族
友達
恋人


あなたには、『愛する人』はいますか?

人を信じることは、怖いことかもしれません。
でも、とびこんでみてください。
きっと、
信じられる人が、できたら
景色は変わるはずです。

心から、信じられる人を…

最後まで読んでくださったかたがた
本当にありがとうございました。

続編を書くつもりでいます。
その続編や「彼女と瞳」
という作品も読んでいただけるとうれしいです。

これからも、「美歌~mikan~」を
どうぞよろしくお願いいたします。

甘いれもん

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-05-02

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 1. 見つけたとき…
  2. 2.あの時の彼…
  3. 3.私の親
  4. 4.侑くんと涼くん
  5. 5.彼の思い
  6. 6.決断
  7. 7.目的
  8. 8.あなたと彼?
  9. 9.彼とあなた?
  10. 10.甘いれもん~last~