電車内で化粧する女とは?

時々、思い出したようにマスメディアが、マナーと称して電車内の携帯電話や立ち振る舞いについて、御託をならべてくれますね。

その中でも電車内、特に通勤電車内での化粧は、コメンテイタ―のニューハーフやら毒舌夫人に、批判されます、マァ私なんぞ「お前に言われたくないでしょう、言う権利あるの?」とか思ってしまいます。

まぁ・・・批判することで、自分自信が教養人を気取れるというメリットがあるのでしょう。
・・・そんな事は一旦置いといて、電車内で化粧する女とは?一体どんな方でしょう、考察してみたいと思います。

山手線、内回り。

山手線は一周34.5キロ、駅数29、日本国の首都を環状に走る鉄道路線である。

これが一般的な定義であるが、路線名称としての山手線は品川―新宿―田端間の20.6キロである。

現在において東海道本線と東北本線の連絡路としての認識が強いが、文明開化の建設当初の目的は、

日本有数の貿易港である横浜港と関東内陸を結ぶ貨物線であった。

その後の人口爆発、終戦、やがて戦後・・・そしてバブル経済を走り続け今なお世界有数の巨大都市、

メトロポリタン東京を動かす必要不可欠の大動脈である。

そんな山手線内回り、大塚駅から一人の女が乗ってきた、年齢はおよそ24~5歳であろう、少し寝癖の付いた髪、

いわゆるがり勉メガネの厚レンズ、通らない鼻筋、色あせたような唇、そして肉厚のある頬・・・・

だが、足と手はスラリと伸びていて胸も豊満である。

そしてブランドのバックを持ちどこかで仕立てたような高級感のあるスーツが、

彼女の顔の不細工さを、なお一層と引き立てていた。

彼女が電車に乗り込むと二人の男が席を立ったので、彼女はそこに滑り込み、髪をとかし始めた。

午後三時の車内は比較的空いており、同じ車両内なら彼女は何処からでも見れた。

案の定、彼女の対面席に座るおばさん連中が何かひそひそと話し始めたが、彼女は全く気にしない。

(ブスが髪とかしてる)

電車はやがって池袋に着いた、ひそひそ話のおばさん連中と入れ替わりに、

暇を持て余したようなマダム連中と対面になった。

それに若いOLもチラホラと・・・髪をとかしていた彼女はそれを確認すると先ほど立ち上がった男二人に、

素早く目配せした。

男二人は、黙ってうなずいた、彼らはボディーガードのようなものなのだろうか?

少し離れて彼女に背を向けた。

彼女は髪を終えて、膝の上に化粧ポーチを置いた、化粧ポーチの上にハンカチを置き化粧を始めた。

有閑マダム達は、一様にしかめ面を始めたが、OL達はスマホいじりに夢中・・・

がり勉メガネをはずし、眉を整えアイラインを引くと、少しだけ印象が代わってきた、

しかめ面の有閑マダムは少しだけドッキリしたが、口には出さない。

「どうせ、どこかのキャバクラでしょ」「まったく下品」「恥じらいってものないの?」

電車はやがて目白に着いた。

目白ではさらに有閑マダムが増えた、女性の乗車率は70%近くに思える。

彼女はさらに化粧を続けた。

目から口へ、そして頬、有閑マダム達のしかめ面は消えていた、スマホいじりのOLもいつの間にか、

彼女を凝視していた、さっきの「どうせ、どこかのキャバクラでしょ」「まったく下品」「恥じらいってものないの?」

は、もう忘れ去られ、「あんなに、変わるわけない」「ウソでしょう」「私より綺麗?」そして嫉妬心が芽生始めた。

有閑マダム達の嫉妬心をチラッと確認すると彼女はわざと顔を隠すようにした。

「もっと魅せて、もっと綺麗になって、もっと華麗に・・・・」いつの間にか彼女に引き込まれた。

頬のファンデーション、そしてチークを入れるともはや、別人だった。

女優でもここまで綺麗ではない、大塚駅から乗ってきたブス丸出しの女が、

池袋~目白の電車内の化粧で女優を超えてみせた、まさに奇跡の目撃。

やがて電車は高田馬場、そして新大久保へ、その間視線は彼女にくぎ付け、

同じ車両の全乗客が、心を奪われていた。

もっと彼女を見たい、ず~と見ていたい、色気を清純で隠すとこうなるのだろうか?

否、逆に清純を色気で隠したのか? 妄想は繰り広げられた、そして


化粧でここまで変わるのなら、「私も」皆がそう思い始めた。

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車両内の羨望のまなざしを充分に集めてから、スクッと立ち上がった。

誰も、もう彼女に彼女のマナーについて意見しようとか、注意しようとは思っていなかった。

それよりもう、彼女の美貌、そして化粧テクニックが気になって仕方ない。

彼女は立ち上がるとき化粧ポーチに被せてあったハンカチを綺麗にたたんだブランド鞄に収めた。

その瞬間を有閑マダムとOLは見逃さなかった、化粧ポーチには大きくブランド名が書かれていたのだった。

そして彼女はなぜか別車両へ。

スクッと立った彼女はゆっくりと歩き出した、それはファションショーのモデルウオーク。

「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」、まさに古来の慣用句通り。

電車は待ち焦がれた新宿へ到着した。

主人公を失った車両の乗客たちは、こぞって降車した。

誰も言合せた訳ではないのに、最寄りのデパートへ、勿論行先は一階にある化粧品コーナー、

そしてあのブランド・・・

 
彼女はゾロゾロト降りる乗客をホームの端から確認していた。

もちろんボディーガード風の男二人と一緒だった。

「う~ん30人ってとこ?」彼女は問いかけた。

「そうですね、だいたい掛ける事の50だから1500ってとこです、主任」

主任と呼ばれたのは彼女だった。


彼女はデパートの従業員通路から入ると、制服に着替え化粧も今度は販売員風にかえた。

男二人はメーカーの広報担当と営業社員だった。

「すごい効果だな!いろいろ電波とか紙とか使ったけど、直接的な効果は分からなかったし、

女優のギャラはもう半端ないし・・・』広報が言った。

「そうでしょう、もちろん彼女の化粧テクニックがなせる技だし、、後の口コミにも期待できるし」そう営業が答えると

「後の口コミ?」広報が聞き返した。

「分かりませんか?」「いや、なんとなく分かるけれど」

「教えましょう、今日の事黙っておける女性なんていませんよ、ブスな女が電車内で化粧してたなんてね、

それが化けて見せるわけですから・・・」「うん!なるほど」

「しかし、どうやってあの化粧したんだろうね、元々綺麗だった?、それとも違うの?」と広報

「実は、私も素顔は知らない、彼女が主任になってからここら辺のデパートの売り上げが上がっている、しかも彼女が担当

するブランドが特にすごい、って噂で聞いて彼女に聞くと秘密を教えてくれた」

「それじゃぁ、うちのブランド以外にも・・・彼女にキャシュバックとか入るの?」

「キャシュバック・・・そんなものは求めていませんよ、売り上げが伸びればそれで満足だとか、

うちの会社、最近売上落ちてたから・・・助けるつもりで演じてくれたんじゃないでしょうか」

「そんな、心の綺麗な人がね・・・女性って分からないね」


小一時間してから男二人は彼女に礼を言うべく化粧品コーナーを訪ねたが、やっぱり大盛況でごったがえしていた。

「すごいな~」「でしょう?」感心していると会釈する一人の見覚えのない販売員がいた。

否、正確には知っていたが・・・名札を確認するまでそれが先ほどの彼女だと分からなかった。

二人は改めて思った、「凄いなぁ、しかし素顔が気になる」

                 電車内の化粧は化粧より素顔が気になる、貴方は?
                            (完)  生死一如

                                               (完)
                                                  生死一如

電車内で化粧する女とは?

個人的な事ですが、社内での通話なんて全然気にしない方なんです。

結構古くから携帯電話持ってまして・・・本来、携帯電話ってそういう使い方じゃないのでしょうか?

誤解なきように言いますが、使いませんよ。
それより公共の場ではスマホとにらめっこの方が危険だと思いますね。

公共の場は暗黙の了解の元、相互監視で安全をお互いが守っている、

マナーというより男気でしょうかね、ヒーローに成りたがりかもです。

電車内で化粧する女とは?

通勤電車内での化粧は、人々の神経を逆なでする力を持っています。 はしたない行為に蔑み(さげすみ)の視線をくれる人々。 ある人はあきれ返り、ある人は軽蔑・・・やがてそれは怒り代わっていく。 しかしそれを承知の上で今日も、化粧する女が一人います。 彼女の目的は、なんぞや?。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-05-02

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  1. 山手線、内回り。
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