『19時の鐘が鳴ったら』

043-×××……

公衆電話からあの子の家にかける

あの子が出るかな

それともご両親が出るかな

あの子じゃなかったら

なんて切り出そう



お付き合いさせていただいています

……実際は 自分の片思い

仲のいい友人です

……仲がいいって、勘違いじゃないよね?



あの子に電話番号を

教えてもらって 早三ヶ月

二週間に一度 遊びに誘う

もう番号は 目をつぶっても押せる



043-×××……

公衆電話からあの子の家にかける

家からかけると家族がうるさい

どこの子と聞く母親

もうキスしたと聞くませた妹

そんな2人を見ながら 無言で頷く父親



なにが恥ずかしいって

父親の反応が一番恥ずかしい

なにか言ってくれる方が すっとする

何か言われないと 何も言えない



19時ちょうどくらいに家を出る

万が一にも家族にでくわさないように

家からちょっと離れた公園に行く



人があまり来ない公園

電話ボックスは暑くて寒い

夏はうちわを片手に

冬はカイロを相棒に



あの子の声が聞きたくて

あのこの笑い声が聞きたくて

今日も19時に 家を出る

『19時の鐘が鳴ったら』

『19時の鐘が鳴ったら』

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 青年向け
更新日
登録日
2013-04-29

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