ドモンドクエスト!? 無理ゲーからの脱出!!
プロローグ
走りすぎて足が痛い、足の裏がジンジンと鈍い痛みを発して涙が出る。
ぼやけた視界を袖で拭い、それでもなお走り続ける。
どうしてだろう?なぜこうなってしまったのだろう?
自分はできた人間ではなかった。
人付き合いは苦手だった、目を合わせることもできなかった。
だけど、画面越しの世界はとても広かった。
世界中の人と付き合うことができ、そして同じ趣味や同じ待遇の人と有意義な時間を共有できた。
世界は進歩し、ゲームの世界は広がった。
それなのに、なぜだろう?
自分は走っている、追いかけられている。
母親も父親も助けてくれなかった。
そして、自分を追いかけてくる男たちにこう言っていた。
「できそこないの娘ですが、国の実験体になれるのならば嬉しいことこのうえない」
その言葉を聞き、今までほとんど出たことがない部屋を飛び出しはだしのまま外へ飛び出た。
怖かった、家に上がり込んできた男達が。
だから逃げ出した。
つかまってはいけない、本能がそういう。
「ハァ・・・ハァ・・・ッ」
廃墟に駆け込み、身を隠す。
出てくる涙と嗚咽を抑えることができず、肩が揺れる。
手に握られた薬、これを飲めば楽になるのだろうか?
知らない人から届いた薬を、親はやたら飲ませようとした。
それはどう見ても自分のいい方向には転がらない。そうわかっていたが今の状況がつらかった。
グッ、と一度薬を握りしめた後、それをごくりと飲み込む。
水もなしで飲んだその薬は喉に引っかかり、喉に異物感がある。
ゆっくりと、それが胃袋に落ちていき少女は丸くうずくまる。
そして、つぶやく
「ごめんなさい」と
彼女の意識が途絶えたころ、男たちは少女を見つけ体を抱き起す。
手に持っている薬の空になった薬包紙を見ると男たちは顔を見合わせうなづくと彼女を抱え、車の中に無造作に投げ込んだ。
第一章
「美帆、飲みなさい」
コロン、と転がる丸い固形物に美帆は眉をひそめた。
机の上にそれをおいた母は立ち上がると口紅をつけ自分の顔を飾り始める。
そんなものを塗りたくったところで、どうなるんだ。と言いたいところだが美帆の気持ちはこの白い固形物に向いていた。
自分は親からの愛情をもらっていないと美帆は自覚していた。
兄は、勉強面にも、人間性でもよくできていた。表向きには、だが。
兄は表向きいい面をみせ、溜まるうっぷんを美帆で晴らすという行為をしていた。
それを美帆は自分の人生だ、と納得していたがこれはいったいなんなのだろう?
病気になっても怪我をしても母が自分を構うことはなかった。
しかし今、いたって元気な美帆の目の前に置かれているのはどうみたって百人中百人が薬である、とこたえるだろう。
もう一度、母に目を向けたが母は汚物を見るかのような目で美帆を睨むをもう一度、強い声で言い放った。
「飲みなさい」
渋々、薬を手に取ると口の中に含みすぐさま部屋に駆け込んだ。
バタン、とドアを閉めると向こうから怒鳴り声が聞こえるが知ったもんじゃない。
飲んでたまるか、と薬を吐き出しパソコンの前に座った。
そして、メールを打つ。
自分の友達である、荒木芽衣へのメールだ。
彼女は今、不登校というものになっていた。
そんな芽衣へメールを送るのが美帆の
ドモンドクエスト!? 無理ゲーからの脱出!!