オウム

こんにちわです。
完成したものを自分では読み直していませんから、「なんだこれ?」と思われるかと存じます。
それでも、投稿したのは完成した作品としては初めてだったからです。
どうか、温かい目で見ていってください。

11月7日

おや、これはどうも。
あなたも奇怪なところにいらっしゃりましたね。
ご覧ください。12畳はあるこの個室。荘厳な様式で、中世のヨーロッパを思い浮かばれませんか?
…浮かばれない?それは残念であります。
といっても無理はないと思いますね。なぜなら、この華麗な個室にそぐわぬものが一つあってしまっていますから。そこの、ベッドをご覧ください。寝ておられるのはここの主でございます。えっ?静かにしなくても大丈夫なのか、と?
お気遣い痛み入りますが、ご安心ください。このお方はもう二度と目を覚ますことはございませんから。かれはもう、「人」ではなく「死体」という、一物体なのです。
色々と聞きたいことがあるでしょうが、それらの質問は、彼がどうしてこうなったか―。
その経緯を話せばすべてお分かりいただけると思いますので、少しばかりお時間をいただきます。ご了承ください。

11月5日

この日、主のお誕生日2日前ということでして、お祝いをしようと、主の知人やご親戚の方々が様々なところから集まってくださっていました。
主は、数ヶ月前に事故で、妻の頼子さま、長男の孝仁さま、そして、次男の孝嗣さまを亡くされ、ご自身も喉を怪我し、言葉を発せなくなりました。言葉を失ったことよりも自分のご家族を失ったことに心身とも疲れ果ててしまいました。それを元気づけようと、今日からこの屋敷にて、パーティを行おうと、知人の方やご親戚の方々が計画なされました。主は世間一般に名の通った大富豪でありまして、ご関係者の方々も、名立たるお方ばかりでございます。例を挙げますと、国会議員の黒沢 惇吉さま、歌舞伎俳優の四代目獅子堂 麟之助さま、海外貿易会社『seA』の代表取締役 道方 琴音さま。他にもいろんな分野に富んだ人ばかりでございます(主の死に関わっておいでの方々のみご紹介も仕上げさせていただきます)。
総勢23名の著名な方々と主による盛大な宴が幕をあげました。
                

この日については出来事より、皆様方の会話についてお話さていただきます。そのほうが、皆様の性格や、このパーティに来た目的が少しお分かりいただけると思います。
こういうのですから、無論、皆様全員が主を元気づけるために来たわけではございません。
主の死に関わっているのはどなたか。
それも考えながらお聞きください。

黒沢 惇吉さま。

「お誕生日おめでとうございます。まぁ、少しはやいですがね。」
「といえど、まだ心ここに非ずといった感じですね…。心中お察しします。」
「しかし、元気を出してください。まだ、人生は長いのですから。これから、楽しいことや新しい出会いもありますよ。きっと。」
「あぁ、そういえば、今度の選挙で、うちの若いのが出馬表明を出しましてね、そちらの方もこれからお願いします。そして早速あなたにも、後押しをしていただきたいんですよ。あなたが壇上に立たれ、うちの若いののことを話していただけると効果は絶大だと思っているんですよ。あ、返事はいつでも構いませんので。これから親子ともどもよろしくお願いします。」

 どうでしょう?なかなかにして、目に障るお方と思われませんか?先に申しあげたとおり、主は声を失ってしまっております。そのことは黒沢さまも一般的な常識あるお方であれば覚えていただけるくらいの日にお手紙で執事が、お伝え申し上げたはずですが…。
 どうやら、型破りで破天荒な、見た目以上に年月を経たお方のようですね。

麟之助さま
「この度は、この盛大なパーティにおよびいただき誠にありがとうございます。」
「ああ、お呼びしてくださったのは、あなた様ではなかったですね。」
「それでも、あなた様がここにいられることで、わたしもここにおれるのです」
「悲惨な事故でございました。あなた様の辛いお気持ちも痛いほどわかります。」
「しかし、物事は前向きに考えたほうがよろしいと思いますよ。あなた様はもっと自分が生きていたことに喜ぶべきだ。その手助けになればよろしいのですが、今度の舞台。特別席を用意いたしました。ぜひ一度、お見えになってください。」

いやはや、実に素晴らしいお方だ。心から主のことを心配してくださっていらっしゃる、とあなた様は思われましたか?確かに一見、主のことを気遣われてご自分がなされる最高のパフォーマンスで元気づけようと思われるお言葉に聞こえますが、実際はどうでしょうか?
私自身、麟之助さまのことは詳しくは知り得てございませんが、人によれば彼のことを、また彼の言葉をよくは思われない方もいるようなのです。少なくとも主はこのお言葉になんらかの下心を感じられたようです。
道方 琴音さま
「ミスター!!」
(道方さまは、主のことを「ミスター」。すなわち「Mr」とお呼びになられます)
「お久しぶりです。こちらからは何度も連絡したのに返事ひとつ返されないので心配しました。ご家族を失ってしまったことはつらかったでしょうけど、みんなあなたの再起をまっているのですよ。再びあなたが、この日本という舞台にたって私たちを先導してくださるのを私たちは待っているの。期待していますよ!」
「それと、私、6日後にとある国に行きます。その国は最近、大きな戦争が終わったところなのですけれど、生き残った人々は、食べる物がなくて、とても苦しんでいるのです。だから私、そこを助けたいのです。食糧やお金、できれば家や子供たちのための学校も作ってあげたいです。いま、私がもっているすべての力をその国のために使いたいのです。メディアが偽善者と叩いても、世間が不可能と騒いでも私はやってみせます。ですから、ミスターもそれに続いてきてください。待っていますよ!」

私個人の意見ですが、琴音さまは「真の善人」と思っております。
主が事故にあわれる前にも、何度か主を訪問しておられましたが、その度に主と日本の未来や、世界のことを話されておいででした。ただ、よく私がお聞きしたのは子供たちの話でした。ストリートチルドレンや少年兵など、口を開けば酷な運命を課せられた子供たちの話ばかりでした。そのことを日夜考えられていたので、今回のボランティア活動を計画なされたようですね。

さて、以上のことが、主が死に至る前までのお話でございます。このお三方が主の死に関わっておられます。
では、そろそろフィナーレと参りましょうか。
と、その前に一つちょっとしたキーワードをお伝えします。

あなたさまは、いま「主を殺した人物はだれか?」とお考えになっておいでですか?



11月6日
パーティが終わり、来客の方々はまばらにお帰りになられました。お泊りいただいていた方々も正午までには誰もおられなくなりました。
最後のお客人を見送ると主は一人このお部屋に戻られました。そして、自分の机に座られ、何らかの分を記されました。
私の方からでは見えませんでしたが、腕の動きから推察するに主は遺書を書かれていたのでしょう。
内容は以下の通りだと思います。
「私はもう疲れた。私の知人は自分の保身や金の動きしか見ていない。慰めてくれとは言っていない。だが、わざわざ私の家に来て、自分たちの利益しか語らない。幼稚園児の発表会のようにだ。私はもう疲れた。
私はこれから自らの生命を絶つ。だが、それは愚かな知人どもの行動・言動からではない。」
「私自身が犯した罪を償うためだ。」
「私は妻子を持ち、そして失った。本当につらかった。その時自殺も考えた。今思えばこの時に死ぬべきだった。私は妻子を失う前に、妻とは別の女性に恋をした。一方的な片思いだった。しかし、妻も愛していた。つまり、私は二人の女性を愛したいと思っていたのだ。こんなことを思ってはいけない。何度もそう自分を言い聞かせた。」
「だが、彼女が私を訪ねに来るたびその感情は舞い戻ってきた。彼女自身はそんなことを考えてもいないだろう。彼女はただ一途に私を信頼できる仲間と思ってくれているのだろう。」
「だが、その思いを踏みにじっている自分に私は吐き気すら覚える。」
「そして、私が自殺を決めたのは今朝方、脳を横切ったある一つの思いだ。それは私を最低の人間へと堕ちさせた。」
「私は、昨日、彼女に久方ぶりに出会った。そして、同じ日に分かれ、今朝目を覚ました時に思った。」
「助かってよかった、と。」
「自分で自分が信じられなかった。この思いは「命があってよかった」ではない。妻子を失って自分だけが生き残ったことにより「彼女にだけ尽くせる」ということだった。」
「私は妻を愛していると思っていた。しかし、結局「思っていた」だったのだ。」
「ゆえに私は死ぬ。自分の罪を悔い改める。死をもって償う。むこうで妻に謝り、息子たちに殴られよう。だが、最後にこの文だけは記させていただこう。」

「わたし、岸部 伴次郎の全財産を、海外貿易会社『seA』 代表取締役 道方 琴音に託す。」


いかがでしたでしょうか。主の死の真相。犯人は誰だ、と聞かれますと主自身とお考えになられる方もいらっしゃるでしょうが、差し支えなければ「犯人は存在しない」という結論になられてはもらえませんでしょうか?主は自分を責め続けられました。ですので、主に悪人というレッテルを張られるのは私の心が痛みます。どうかご理解ください。
さて、そろそろお別れの時としましょうか。
…え?私が誰なのかと?
まぁ、詳しくない人にはお分かりいただけない者でしょうか。そこらの輩たちとはちがい、見事な体でしょ?自慢といえばやはりこの口でしょうか?まぁでも、主のように、私を飼われるのは少し骨が折れるかもしれませんね。
ではそろそろ、おいとまさせていただきましょう。主がなくなられては食べる物もいただけませんから。
しかし、やはり不安ですね。野生生活とは。
うまくやっていけるでしょうか?

では、ごきげんよう。




11月6日
岸部 半次郎の遺体が見つかった。現場には市販では売られていない睡眠薬のビンが空っぽになっていたこと、そして本人が書いたと思われる遺書と思われる文書が見つかったため、警察は自殺と断定。遺体が見つかった部屋を家に使える執事に聞くと、岸部 半次郎がパーティで肩に乗せていたオウムの姿が見当たらないとのことらしい。

オウム

 

オウム

要素の方にサスペンスとミステリーにチェックを入れさせてもらっていますが、正直なところ、どちらでもないような気がします。ですので、謎解きやハラハラドキドキを期待してくださっている方々には申し訳ないことになっているかもです。 ごめんなさい。

  • 小説
  • 短編
  • サスペンス
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-04-28

CC BY-NC-ND
原著作者の表示・非営利・改変禁止の条件で、作品の利用を許可します。

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