ワタシのリップグロス
朝の7時を過ぎた頃
OL片平百合子は、満員電車に揺られながら
ピンクの携帯で編集とメールをしていた。
小説家としても活動をしている百合子。
作家名は、相川百合子
前作の小説がヒットしたせいか
百合子は、編集から実話にに基づいた作品を求められていた。
貴方は何のお仕事をしているの?
と聞かれると、自分については教えたがらず
「 普通のOLです 」
と答えるだけだった。
ナチュラルメイクがベースで
リップグロスの色は桜の色
黒いスーツからは
ほっそりとした太もも
大きな胸と普通の男から見たら
それは唾を飲み込むほど素敵な女性だった。
そんな百合子は電車の中ではもちろん痴漢にあったりするわけだ
お尻の方に違和感を感じては横に動く
後ろには大抵30代~50代と見られるサラリーマンが居る。
「やめて、、下さい」
小さな百合子の声は届かない
誰か助けて───
と電車の中で必死に耐えるだけの毎日。
「 あれ百合子さん?? 」
横から私の顔を覗いてくる青年
───あ、、前島くん
「 助けて 」
小さな声で助けを求めた私の声を
前島くんはヒーローのように聞き取ってくれた。
そうして、後ろにいる痴漢の手を掴み持ち上げて
「 この人痴漢です 」
と大きな声を張り上げてくれたのだ。
そうして、痴漢は次の駅で逃げるように降りていった。
「 ちぇ、逃げられちゃったよ。百合子さん大丈夫? 」
──その目は反則よ、、前島くん。
「 ありがとう、助かったわ。」
私がそういうと前島くんは
「 百合子さん綺麗だもん。俺が痴漢だったらほっておかないよ 」
───なんて笑いながら私に言った
それから毎日前島くんは私の横に居て私を守ってくれた。
社内では、もちろん私と前島くんの噂は広がり始めていた。
前島くんは今年23歳
私は今年で28歳───
少し年の差がある私は前島くんとは不似合いだと若い子から言われていた。
ある日私は、小説に前島くんのことを書く事を決意した。
本のタイトルは「ボディーガード」というタイトルだった。
─── その本を一ヶ月近くで書き上げた私は
やっと1週間の執筆休憩をもらった。
「 百合子さん、今回の作品良かったわよ。出版も決まったし、何部売れるか楽しみね 」
───と担当の美緒さんが私に言った。
──────「ボディーガード」 は今まで自分が出した本の中で最高の販売部数を得た
自分でも驚いたほどだった。
10代~30代まで幅広い票が入っていた。
そんな中である票が目に入った。
20代、男性
作者さんの本、楽しみに読ませていただいてます。
実話を基にしたお話と聞いて
僕の現状と重なる点ばかりでした。
とそれだけ書かれた内容
まさか?と思いつつもそのことばかり考えていました。
「 百合子さん、今度の土曜日仕事入ってます? 」
と前島くんは私に訪ねて来た。
「いいえ、お休みよ。前島くんも?」
髪の毛を耳にかけてスケジュールを確認しながら私は言う。
「はい。なので、一緒にお出かけしませんか?」
───前島くんからのお誘い・・。
私の胸は弾んでばかり。
「 うん、いいわよ。 」
前島くんはプランを考えておくと一生懸命話してくれた。
当日、私は待ち合わせである私の最寄りの駅で待っていた。
時間の少し前に黒い車に乗った前島くんが見慣れない少し男らしい格好で
黒い車に乗って、私の方へ手を振った。
─── 14:49分
しばらくショッピングを楽しむと
車に戻り、前島くんが1本のタバコを吸い終わると発進した。
「 ねぇ、次はどこに行くの? ───」
前島くんは私の問に答えない。
海の近くの公園に車は止まり
車から降りた前島くんが助手席のドアを開けて
「 ついたよ 」
と一言言った───
オレンジ色の夕日が綺麗に浮かんだ海
そこでもじもじと恥ずかしそうにする前島くん
「 どうして海に?? 」
と私が尋ねると
「 百合子さん、、、。 いや、百合子先生。
─── 一生僕は貴方のボディーガードで居たい。」
そう口ずさんだ彼は黒い箱に入った指輪を私の方へ見せる。
───そんな彼のサプライズ
「 ふふ、これからもよろしくね。前島くん。 」
と彼にそう呟いた
あの日、私の指に光った指輪は今でも輝きを失せることはなかった。
───前島くんは私のリップグロスを摂るかのように
何回も何回の唇を重ねて
私の唇は、前島くんというリップグロスの後が
何日も何日も記憶から消えることはなかった。
ワタシのリップグロス