-漂流者-秀吉の親友であったとある兵器開発者
初の歴史ものの執筆です。今日までにさまざまなタイムスリップものが出てまいりました。
それにあこがれて書いた作品です。
最後までお付き合いのほどよろしゅうに。
序章 -時間漂流ー
―――昭和18年 7月 真珠湾奇襲から2年後 登戸研究所―――
「・・・・今日もまた最悪な一日が始まる・・・・」
研究所の中庭で曇り空を見上げながらポツリとつぶやく。
昭和16年 帝国海軍による真珠湾奇襲成功から早2年。
東南アジア・アジア方面へ快進撃を続けた日本軍だったが、ミッドウェー海戦を
境に敗戦が続いていった。
そのため大本営はこの状況を打破すべく新兵器開発の催促に来ていた。
「また、徹夜で飲まず食わずで働かされるんだ・・・やってらんねえよな・・・」
そのとき施設内に放送が響き渡った。
『施設内の研究員は至急、第一研究室にお集まりください。繰り返します・・・』
「・・・あ~あ、またか・・・」
ため息混じりに所内へと向かう・・・・・・・・・
所だったのだが、運悪く足元の石に躓いてしまった。
「・・・・へっ・・・・・?」
さらに、運の悪いことに直ぐ側には大人ひとりすっぽり入るくらいの大きな穴が開いていた
「おいおいおい、マジかよ・・・・」
そして、吸い込まれるように堕ちていった。
「うあああああぁぁあぁあぁああぁぁぁあああぁぁ・・・・・・・・・」
第一章 ―猿と科学者―
おーい、藤吉郎。わしの馬はどこじゃ。」
そう呼ばれた小柄で猿顔の男、彼の名は木下藤吉郎。幼少のころ母とけんかをし、家出。
諸国を針売りとして放浪しながら、その目でさまざまなことを学んできた。
しばらくして今川家が家臣松下加兵衛に仕えたが同期の嫉妬のため出奔。
その後、故郷尾張に戻り織田家の下働きとして登用されていた。
「はっ!こちらにございまする。」
明るくにこやかな笑顔で答え、馬の場所まで案内する。
さて、この男。この男にはひとつの夢があった。今まで女でひとつで自分を育ててくれた母に恩返しとして出世し、一国一城の城主となり楽をさせることである。
「おんしも大変じゃのお、こんなにくさいところで毎日過ごして。自分の仕事だけでなく他人の仕事も手伝っているそうではないか。」
「いえいえ、そんなことはございませぬ。このようなどこの馬の骨ともわからぬ拙者を雇ってくださった殿のため、どんな仕事もやり遂げてみせまする。」
「そうか、それならよいが・・・・・。あまり無理をして体を壊すでないぞ。ではなっ!!」
そう言って馬にまたがり走り去っていった男。この男は前田利家といい、織田家の赤母衣衆として活躍しており、藤吉郎とは住んでいる長屋が隣であることから大変仲が良かった。
その彼の背を見送った後、フゥッとひとつため息をついた。
「・・・とは言ったものの、まだまだ先は長いし出世の兆しは見えん。いったい何時になることやら・・・・・。」
そう言ってすぐに首激しく左右に振り自分の顔をたたいた。
「イカンイカン。こんな調子でどうする。こりゃあ、だいぶ疲れがたまっとるんじゃな。
・・・ちとその辺を散歩でもするか。」
そうして、手に持っていた道具をその場に置き馬小屋を出て行った。
「ふう~~~・・・。やはりここにくるとおちつくのぉ。」
川のほとりに寝転がり雲ひとつない空を見上げていた。
そこは清洲城からちょっとしたところにある五条川である。
藤吉郎はいきづまったり、悩み事があったりするといつもここにきて気分転換をしていた。
「しかし、いい天気じゃのお・・・・。まっこと今が乱世の世とは思えんわい・・・・。
・ ・・なんちゅうか、この気だるさを吹き飛ばしてくれるような、アッと驚くようなことはないかのお・・・。」
そう言いつつ大あくびをしている藤吉郎の上のほうから奇妙な物音がしてきた。
「・・・・ぁぁぁぁあああああああぁぁぁあああぁあああぁあぁああ!!!?」
「うん?・・・なんの音じゃ?」
その瞬間、藤吉郎の目の前の河に一人男が水柱をあげて落っこちてきた。
「!!? ななななな、なんじゃ!?なんじゃ!?ひ、人!? 人が天から振って気負った!?」
あまりの突然のことに動揺し、あたふたしている藤吉郎をよそに落下してきた男は川にぷっかりと浮かび、そのまま流されている。
「ハッ!!イカン、そんなことより早う助けんと!!!」
冷静さを取り戻し上着を脱ぎ捨てると、一目散に川に飛び込みすいすいと泳いで男のもとへ近づいていった。
「ぷぅ~。おしっ!!つかんだ。早う引き上げなくては。」
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「おい、おい!!しっかりせい!!生きとるか!? 返事をせい!!」
「・・・う・・うううぅ・・・」
「ほっ。生きとったか。」
男が息をしていることに安心し、安堵の表情をうかべる。
「ここに、寝かしておくわけにもイカンし・・・・しゃあない、うちにつれて帰るか。」
男を背負って自宅である長屋へと引き返していった。
この出会いこそが後に時代を大きく変化させていくのである。
これはその始まりにすぎない・・・・・。
-漂流者-秀吉の親友であったとある兵器開発者