気付いてよ...バカ -4-

4です。
なかなか更新出来なくて
申し訳ないです(>△ <;)

<登場人物>
*岡野 夢空(おかの むく)
*井上 奏哉(いのうえ そうや)
*椎名 由仁(しいな ゆに)
*黄瀬 悠夜(きせ ゆうや)
*藤池 翔太(ふじいけ しょうた)

...その他

運命的に出会いたい。

-4-

昨日のことがあったから、
私は朝、奏ちゃんにメールをして
一人で大学に向かった。
別に一緒に行く約束をしてるわけではない。
でも、一緒に行く日が多かったから
お互いの時間が合えば一緒に行っていた。

いつもより早く大学に着いても、
やることがない。
由仁が来るまで気長に待とう。
そう思い、とりあえず自動販売機に行った。

「夢空??」

声のする方に振り向くと、由仁がいた。

「由仁、早いね。」
「そういう夢空もね。
何、奏哉とケンカでもしたの??」
「えっ!?」

なんで!?
別にケンカじゃないけど。

「私のところにメールされても...
私、夢空と一緒に行く約束してないし??」
「メール??」
「奏哉と私、間違えてない??」
「...嘘!?」

私は急いで確認をした。

「...どう??」
「間違えてた...ごめん。」
「ん、だと思ってた。」
「...奏ちゃんに連絡しなおさないと...」
「出来るの??」
「えっ??」
「なんか、今にも泣き出しそうな顔してる。」
「...」
「...声、出さないでね。」

そう言って、由仁は
スピーカーをONにして電話を掛けた。

「もしもし。」
「私、由仁だけど。」
「うん。」
「今、家にいる??」
「いるよ。そろそろ出るけど。」
「そう。たぶん夢空、家にいないと思うわ。」
「...なんで??」
「私のところに“今日は一緒に行けません”って
メールが来てたの。
でも、私と夢空は一緒に行く約束してないし
たぶん、間違いかなーって。」
「...そこに夢空いる??」
「いたら私から電話なんてしないわよ。」
「そっか...ありがとう。」
「うん...夢空が先に行くなんて珍しいよね。
あんたたち、なんかあったの??」

由仁は私を見ながらそう言った。
奏ちゃんにだけではなく、
私にも聞いているんだ。

「...」

私は黙ってることしか出来なかった。
でも...

「いや...特に何もないよ。」

奏ちゃんにとっては何ともなかったんだね...

「そう。じゃあ、用件はそれだけだから
そろそろ切るわ。」
「うん。連絡してくれてありがとう。」
「じゃあ。」

そうして、由仁は電話を切った。

「...ありがと、由仁。」
「夢空、奏哉と何かあったの??」
「...」
「無理に聞こうとは思ってないから...
話せそうだったらでいいから。」
「うん...ありがとう。」

私は由仁に昨日あったことを全て話した。

「...そっか。」
「奏ちゃんの優しさだって分かってる。
小さい頃からそうだったし。
でも、その優しさが...昨日はツラかった。」
「うん。」
「やっぱり奏ちゃんにとって私は
ただの幼なじみでしかないんだなって。」
「...それで??」
「えっ...」
「そんなの分かってたことじゃないの??」
「...」
「分かってて...
13年間も片想い、続けてきたんでしょ??」
「...」
「私は、そんな弱々しい夢空より、
奏哉が好きだって
堂々としてる夢空の方が好きだけど??」
「...そっか。」
「うん??」
「...ありがとう、由仁。」

ただの幼なじみでも、
それでも私は奏ちゃんが好き。
ただの幼なじみだから、
他の子よりも近くにいれる
今の私には、それだけで十分だよね??

「さて、じゃあ授業行く??」
「そうだね。」
「行こ。」

私たちは教室に向かった。


教室に入ると、
まだ人は少なかった。

「あっ、奏ちゃん。」
「悠夜もいる。」

私たち4人が被ってる授業は
そんなに多くない。
だから4人の授業が被ると必ず
左手から奏ちゃん、私、
由仁、黄瀬くんの順に
一列に並んで座る。

「あっ、由仁ー!!」
「悠夜と奏哉、おはよう。」
「おはよー。」
「奏ちゃんに黄瀬くん、おはよう。」
「おはよう。」
「朝はごめんね。」

でも、こうやって座って
しばらく経つと必ず
奏ちゃんと私、
由仁と黄瀬くんの2組に分かれる。

「ううん、大丈夫だよ。
なんかあったの??」
「うん...ちょっとね。」
「そう。」
「うん...」
「...昨日のことだけど...」
「えっ??」
「あの後、大丈夫だった??」
「あぁ...うん。
すぐ電気ついたから大丈夫だったよ。」
「そっか。」
「うん...わざわざ来てくれてありがとう。」
「ううん。」

もう忘れよう...
昨日の夜、私たちは何もなかった。

「...そういえば」
「ん??」
「先生、来るの遅くない??」

授業開始から15分が経っていた。
普段の授業なら大歓迎な先生の遅刻。
でも、この時間は...
天文学は私が一番好きな授業。

「あぁ、夢空が来る前だったもんね。」
「えっ??」
「さっき別の先生か来たんだよ。
...天文学の工藤(くどう)先生、
昨日の昼間にバイクと
衝突しちゃったらしいよ。」
「えっ!?」
「怪我は酷いらしいけど、
命に別状はないって。
今日は別の先生が臨時で来るんだって。」
「別の先生...」

一瞬、昨日のあの人が思い浮かんだ。
顔を知らないから、
“もしかして”って思っただけだけど。
でも、あの人は明後日からって言ってた。
だから、違うと思う。

「あっ、来たよ。」
「...」

しばらくして授業が終わった。
奏ちゃんと黄瀬くんは
次も授業があるらしくて
すぐ移動をした。
私は由仁と近くのカフェで
時間をつぶしていた。

「2時間も暇だよね。」
「うん。」

私たちの次の授業は2時間後。
それが終われば今日は終わりだ。

「ん、そういえばさ。」
「なに??」
「ちょっと思ったんだけど、
さっきの天文学の先生さ。」
「うん。」
「夢空が話してた昨日の人だったりする??」
「昨日の人って...
私が間違い電話した人??」
「そう。奏哉と間違えて泣きついた人。」
「泣きついてなんか...」
「でも良かったわよねー、優しい人で。」
「まぁ。」
「教師ってことは年上でしょ??
いいなー、落ち着いてる人って。」
「...黄瀬くんに言ってやる。」
「今、悠夜関係ないじゃない。
じゃあ私も、奏哉に言っちゃおうかな~??」
「やめてよ。」
「フフフ。
それで、その人じゃなかったの??」
「...そんなに気になる??」
「うん。だってそんなに上手いこと
先生が事故って
別の先生なんて来ないでしょ??
いくら一昨日からって言ってたとしても
もしかしたらってことが
あるかもしれないじゃない??」
「なるほどね。」
「もしそうだったら、
すごい運命的じゃない??」
「フフ、確かにそうね。
でも残念ながら、あの人じゃなかったわ。」
「なんだ。」
「声が高めで、
たぶん、もう少し若い気がする。」
「ふーん。
でも夢空、ちょっと残念でしょ??」
「まぁ、ちょっとね。
どんな人か興味はあるし、
それにちゃんとお礼も言いたかったかな??」
「もう一度電話してみたら良いじゃない。」
「しないわよ。」
「あー、そうですかー。」
「もし会うなら、
それこそ運命的に出会いたいわ。」
「運命的に??
ちょっと、真顔で冗談言わないでよ。」
「アハハ」
「もう、運命的にって...アハハハ。」

もちろん冗談だった。

「それよりさ、
あの先生教え方すごい下手じゃなかった??」
「下手だった。」
「明日もあるのにな...」
「心配だね。」
「別の先生にならないかな...」
「なるわけないでしょ。」

私たちはそんな話をしながら
少し早いお昼ご飯を食べていた。


由仁とカフェを出て、
残っていた授業を受けた。
「よし。由仁、帰ろー。」
「やっと終わったー。」
「私寝ちゃったよ。」
「うわっ。」
「へへへー。」

由仁と教室を出て歩いていると、
門の近くには
バイクに跨がった黄瀬くんがいた。

「悠夜??」
「あっ、由仁!!」

こっちに気付いた黄瀬くんは
バイクから降りて
まるでわんこのように駆け寄ってきた。

「どうかしたの??」
「由仁、俺明日からバイトする!!」
「バイト??」
「来月買いたいものあるし、
喜ぶ顔みたいからバイトする!!」
「えっ??」
「何を買いたいかとか詳しくは言えない。
でも、浮気なんかじゃないから。」
「...悠夜??」
「ってなわけで、
明日から一緒にいれる時間減るけど
変な勘違いするなよ。」
「はぁ...」
「じゃあ、これから面接だから。
また明日な。」

そう言って黄瀬くんはバイクに跨がり
面接に向かった。

「...」
「来月ってさ、由仁誕生日じゃない??」
「まぁ。」
「アハハハ。
黄瀬くん、相変わらずバカ正直だね。」
「本当。
普通にバイトするって言えばいいのに。
てか今日面接って...
まだ決まってないじゃない。」
「“来月、由仁に
誕プレ買いたいからバイトする”って
言っちゃってるようなものだよね。」
「...バカなんだから。」
「でも、愛されてるね。」
「...うん。」
「フフ。帰ろうか、由仁。」
「そうだね。」

黄瀬くんが何のバイトを受けたのか
少し気になるけど、
明日聞けば分かることだよね。


次の日。
私は奏ちゃんと一緒に大学に向かった。

「そういえば、奏ちゃんは
黄瀬くんがバイトするの知ってる??」
「知ってるよ。
由仁に誕生日プレゼント買うためでしょ??」
「そうそう。」
「昨日、天文学の次の授業で言ってたよ。」
「へぇー。
昨日が面接だったって言ってたけど
そんなにすぐ見つかるもの??」
「あぁ、悠夜のバイト先、
俺の兄貴の店だからじゃないかな??」
「お兄さんの??」
「うん。
カフェだかオープンさせるって。」
「相変わらずすごいね。」

奏ちゃんのお兄さんは
よくお店をオープンさせている。
よく分からないけど、
そういう業界では有名らしい。

「俺も一緒にやろうかな。」
「...奏ちゃん買いたいものあるの??」
「そういうわけじゃないけど、
社会勉強しとこうかと思ってさ。」
「あぁ、そういうことか。」

てっきり奏ちゃんにも
バイトをしてまで何かをあげたい人が
いるのではないかと、
嫌な想像をしてしまった。

「夢空は??」
「えっ??」
「バイトしないの??」
「あぁ...したいとは思うけど...」
「そう簡単には見つからないよね。」
「うん。」

奏ちゃんもバイトを始めちゃったら
一緒にいられる時間...減っちゃうんだよね。

「頑張って探すか。」
「...うん。...そうだね。」

“そんなの嫌”なんて言えるわけない...


今日の天文学は2時間連続。
前まではすごく楽しみだったけど、
あの先生だと思うと少し残念。

「あっ、夢空。おはよー。」
「おはよう。」
「夢空ちゃん、元気ないの??」
「んー...あの先生の教え方嫌い。」
「それで朝から機嫌が悪かったの??」
「...まぁ。」

それだけじゃないけど...

「あぁ、そのことね。」
「耐えるしかないよ、夢空ちゃん。」
「うん...」
「でも、夢空なら
授業受けなくても天文のこと
詳しいと思うけど??」
「奏ちゃんには負ける。」
「そんなことないよ。」

小さい頃から
星もか月が大好きだった。
一般の人よりは詳しいと思う。
でもそれは、全部
奏ちゃんが教えてくれたこと。

「でも、夢空。
今日の授業プラネタリウム見るらしいよ。」
「えっ、本当に??」
「本当だよ。夢空と奏哉待ってた。
移動しよ??」
「やった。」

私たちはプラネタリウムがある部屋へと移動した。
しばらくして授業開始時間になった。
みんなは席に着いていた。

「...あれ??」

昨日の先生がいない。
また遅刻かな??

「由仁、先生来てなくない??」
「隣の部屋じゃない??
あの先生、ここのプラネタリウム使うの
初めてだし、説明受けてるとかじゃないの??」
「あぁ、そういうことか。」

しばらくして、
プラネタリウムが始まった。
今日のは始めから音声が入っているやつだった。

黄瀬くんを始め、たくさんの人が寝ている。
私や奏ちゃんは今日初めての授業だけど
フルで出ている人は
2~3時間の授業を受けている。
暗闇でこんなにゆっくりしていたら
寝てしまうのは無理はない。

私は暗闇が嫌いだけど、
プラネタリウムは大好き。
大好きな星がずっと見れていられるのなら
幸せな瞬間だった。

「...プラネタリウムの暗闇は平気なの??」
「えっ??」

急に誰かに話し掛けられた。
暗くて誰かは分からない。
でも、奏ちゃんでも由仁でもない声。
...あの人みたいな声だった。

「...夢空、どうかした??」
「ううん...なんでもないよ。」

まさか...そんなことあるわけないよね...

しばらくして、
プラネタリウムは終わった。
徐々に電気が点き始めて、
寝てた人は起き始めた。

「んー、おはよ。」
「おはよう。よく寝てたね。」
「うん。由仁は起きてた??」
「ちょっと寝た。」
「やっぱ寝るよね。」
「お前ら...ちゃんと授業受けろよ。
夢空はずっと起きてたぜ??」
「...」
「夢空??」
「ねぇ、誰か私に話し掛けた??」

この3人じゃないことは分かってる。
でも、もしかしたら
ただの私の勘違いかもしれない。

「いや、俺は話しかけてないけど??」
「私も違うよ??」
「俺は寝てたから。」
「...そっか。」
「どうして??」
「誰かに話し掛けられたの。
でも、人違いだったのかな??」

その時、チャイムが鳴った。
90分間ずっと
プラネタリウムを見ていたはずなのに
30分も見た気がしない。

「夢空、休憩だよ??」
「...うん。ちょっとトイレ。」
「行ってらっしゃい。」

あの声...本当にあの人に似ていた。
電話の時より小声だったから
確信はないけど、確かに似ていた。

教室に戻ったのは
休憩が終わる5分前だった。

「あっ、おかえりー。」
「ただいま。」
「混んでたの??」
「ううん。お茶飲んできてた。」
「そう。
あっ、夢空に良い知らせ!!」
「良い知らせ??」
「昨日来てた先生、
臨時の臨時だったんだって。」
「臨時の臨時??」
「うん。なんでも学校側のミスで
臨時の先生今日からって伝えちゃったみたい。
だから、その先生が来れなくて
昨日の先生は
臨時の臨時として来てただけなんだって。」
「...嘘。」
「夢空??」

奏ちゃんが心配そうな顔で
私の顔を覗き込んだ。

「...あっ、ごめん。」
「大丈夫??」
「...うん。
他の先生だったなら良かったーって。」
「そっか。」
「うん...」

もしかしたら...本当にあの人なのかな...
あの人も今日から
新しい学校だって言っていた。
そして、あの声...

「あっ、授業始まるよ。」

由仁のその声で私たちは席に座り、
チャイムが鳴った。
隣の部屋のドアが開いた。
昨日とは違う、先生が出てきた。

「皆さん、始めまして。
工藤先生が完治するまで天文学を担当します。
藤池 翔太(ふじいけ しょうた)です。」

確信はない。
絶対という自信もない。
でも...あの人だ。

「...そんな偶然...」

あるわけないって思ってたのに。

「はい。では早速ですが、
さっき見たプラネタリウムの感想文を
一人2枚書いてください。
30分間、書く時間を取ります。
残った生徒は課題として、
来週までに提出です。
残りの1時間は...
まぁ、のんびりやりましょう。
それでは、プリントを配ります。」

感想文を書かせるのは
天文学ではよくあること。
工藤先生も何度か書かせていた。
その度に生徒からの
ブーイングがすごかったけど、
この人...藤池先生は
書く時間よりのんびりする時間の方が長い。
だから、ブーイングが起こらない。

「...」
「藤池先生って、頭良いね。」
「奏ちゃんもそう思う??」
「人とどう接したらいいか、
ちゃんと分かってる人だと思う。」

藤池先生がこっちに来る。
別に如何わしいことなんてないし、
藤池先生は私に気付いていないはず。
...まぁ、あの人が
藤池先生だったらの話だけど。

「はい。」
「ありがとうございます。」
「君が、井上奏哉くん??」
「...はい。」
「...」
「あの、なにか??」
「いや...先生方の話でよく出てくるからね。」
「はぁ...」
「失礼したね。」
「いえ...」

奏ちゃん、よく話に出てくるんだ。
まぁ、この顔で優秀生だもんね...
有名なわけだよね。

「岡野さん。」
「はい。」
「...」
「えっ??」
「...フフフ、暗闇は大丈夫だった??」
「...!?」
「フフフ。これからよろしくね。」

そう言って、藤池先生は由仁の方へ
足を進めた。

「...夢空??」
「...やっぱり...」

...やっぱり、あの人は藤池先生だったんだ。

気付いてよ...バカ -4-

まだまだ続く予定です...

先日、確認してみたら
アクセス数が50を突破しました。
私的にはとても多いです!!

見てくれてる人は
多くて10人くらいだと思っていました。
それなのに、50!!

本当に感謝しています!!
これからも頑張りますので
よろしくお願いしますm(_ _)m

林檎

気付いてよ...バカ -4-

  • 小説
  • 短編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-04-23

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