びゅーてぃふる ふぁいたー(13)

対決Ⅱ―Ⅴ

 スカートの裾がじいさんの頭を突き抜けた。紺色のスカートがどす黒く変わった。情熱の赤、爽やかな青。単色であれば、それぞれの色の持ち味を出しているのに、何故、二色が混じれば、黒く、不吉な色になるのだろう。二色は相いれない存在なのか。それは、あたしと頭を切られたじいちゃんとの関係であり、このゲームソフトを支配しているマザーとあたしとの関係なのだ。
 あたしは後ろに下がる。スカートは再び、じいちゃんの頭を横切る。何の抵抗もない。じいちゃんの血糊がいかないでくれと叫んでいる。スカートが去った後、頭は二つに別れ別れになってしまうからだ。だけど、じいさんの血の意思なんてどうでもいい。あたしは一歩後ろに下がる。まだ、スカートは回転し続けている。あたしは、画面の外を見る。プレイヤ―に軽く目配せをする。プレイヤーも気が付いたのか、ボタンを操作する。スカートの回転は止まった。
 ずれていく頭の上部。まだ、離れることを拒むのか、なかなか落ちない。そうりや、そうだ。長い年月の間、じいちゃんの頭はひとつだったのだから。名残も惜しいだろう。だが、別れは、どんな物にもくる。見下ろすあたし。じいちゃんのエネルギーを見る。プラスマイナスゼロだ。負のエネルギーもとうとうつきたらしい。一瞬が永遠に感じられる瞬間。
 ドテ。じいちゃんの頭半分が地面に落ちた。笑った。もう少し、ましな、効果音がないのか。マザーは、映像には凝っていても、音にはリアル度を求めていないらしい。勝負ありだ。
 ふう。ため息をつくあたし。このため息もプログラミングされているのか。画面にテロップが出る。ジ・エンドだ。最終ステージもクリアした。いよいよ、マザーとの対決だ。画面が閉じられる。画面の外のプレイヤーを見る。何かをなしとげた満足そうな顔だ。このゲームの中での、閉じられた空間での達成感なのか。外の世界、つまり、人間の生活での世界では、満足できることはないのか。あたしにはわからない。
 あたしは、目の前の敵を倒し、この世界を操る、世界を構築しているマザーを倒すだけだ。あたしが負ければ、再び、チャレンジだ。だが、もし、あたしが勝てばどうなるのか。この世界の崩壊?つまり、あたしの死?それでもあたしはマザーを倒すのか。
 敵を倒すことこそが、あたしの存在意義であり、あたしが生きている存在理由なのだ。あたしが戦わなければ、あたしは死んでいることなのだ、もうすぐ、このステージがクリアされる。再びの眠りの時間であり、やすらぎの時間であり、死の時間でもある。画面が消えた。 あたしはしゃがみ込み、両膝を両手で抱く。頭を膝かしらの上に乗せ、眠りについた。意識が切れた。

びゅーてぃふる ふぁいたー(13)

びゅーてぃふる ふぁいたー(13)

対決Ⅱ―Ⅴ

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-04-20

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