ーアカバル2-
時を司る神、『アカバル』。そんな神に接触してしまった5人の中学生の前に突如現れたマフィア、呆気なくつかまってしまったが運良く脱出に成功。それから二手に分かれ、知らない道をマフィアを倒しながら進んでいく。しかし突如発砲許可が下りた・・・・・果たして5人は帰ることが出来るのか!!?
時を司る神、『アカバル』、そんな神に接触してしまった中学生5人に突然現れたマフィア。
1. 「ボス、分かりやしたぜ」マフィアの兄貴分の人は言う。「
そうか・・・で、どこなんだ?」「とある中学校で召喚されたよ
うです」「そうか・・・ご苦労だった。取り敢えず人数集めてお
け」「へ?」「一応、相手は神だ。我々にはどうする事も出来な
いが人数くらいは集めて置けよ。そうだな・・・100人って所か
」「いえ、しかしボス・・・」「ん?どうした?」「召喚したのは
そこの中学生らしいんです」「はっ!!?」マフィアのボスは驚い
た様子だ。「今は2年生です」「名前は?」「順番に、岡本賢一、
秋元要、松原叶夢、池田亜理沙、上山有紀、の5人です。岡本賢
一が発端だと聞いています」「そうか、取り敢えずその5人を捕
まえろ」「はい」マフィアの兄貴分は部屋から退室した。それを
確認したマフィアのボスはタバコの箱からタバコを取り出し、ラ
イターで火を付けた。「すぅぅぅぅ、はぁぁぁ」白い煙が口の中
から放出される。「苦い」マフィアのボスはタバコを投げ捨てた
。「タバコのどこがいいんだか・・・」その時ノックが鳴り、マ
フィアの兄貴分が入ってきた。「ボス、お持ちしました」「ほう
、これが・・・」そこには5人の顔写真があった。「一応念には
念を入れて5人くらいは連れて行け。「はい」
2. 「あははは」放課後の帰り道、いつもの5人は家が近い事から
か、あの一連事件があった以降いつも一緒に帰っている。「それ
にしてもえぇっと、あ・・・なんだっけ?」「『アカバル』だろ
」「あぁ、そうそう。あれってどうなったんだろうね」「別に気
にすることじゃ・・・」岡本と秋元は話し合っている。「夢じゃ
ないよね?」松原が聞いてきた。「夢じゃない・・・実際にあっ
たことだ・・・」その時黒いスーツを身に纏(まと)った5人の大
人に止められた。「ちょ、どいてくれない?」岡本は睨み付けた
。「岡本賢一、秋元要、松原叶夢、池田亜理沙、上山有紀、お前
らであっているな?」マフィアの兄貴分は言った。「答える義理
はないね」「ちょっと」松原は岡本を止めた。「餓鬼(がき)が随
分強気だね」マフィアの兄貴分は上から見下ろした。「ん?」岡
本は気がついた。さっきは5人居たはずのマフィアが今はこの兄
貴分しかいない。「いやぁ!!!」「え?」岡本は振り返った。そこ
にはマフィアに拘束されている4人の姿があった。「おい!!」岡
本は急いで振り返った。目の前には拳、勢いよく岡本目掛けて殴
りかかってきた。「っぐ!!」咄嗟(とっさ)に顔の前に両手で覆い
、ガードしたが痛みが頭の芯まで響く。「おい・・・餓鬼・・・
貴様なにものだ?」一気に雰囲気が変わる。「俺の攻撃をガード
するとは・・・調子に乗るんじゃねぇぞ餓鬼が!!!」マフィアの
兄貴分は岡本に襲い掛かってきた。「あぶねっ!!」岡本はギリギ
リで交わし、背中を見せるマフィアを蹴り飛ばした。「おらっ!!
」「うわぁ!!」勢いでマフィアの兄貴分は転んでしまった。「あ
にきっ!!」「く・・・クソ餓鬼が!!!!!!」マフィアは拳銃
を突きつけた。「うっ!!」「動くな・・・撃つぞ・・・・」拳銃
を向けられた岡本は動けなかった。気付くと後ろのマフィアも4
人に拳銃を頭に向けている。偶然ここは人通りが少ない道、助け
は来ないだろう。「悪い事は言わない。大人しく付いて来い」「
ちっ」5人はマフィアが用意した車に乗った。そして大通りへ出
た。5人を乗せた黒い車の後ろに2台の車がついている。恐らく何
か有った時に、ってことだろう。「おい、餓鬼ども、『アカバル
』って知っているか?」助手席から兄貴分が聞いてきた。「知ら
ないね」岡本は言った。「ふぅん、まぁいい」それから車は5人
が知らないところを走っていった。
3. 「降りろ」5人が車から降りた。見知らぬ場所だ。目の前にボ
ロいビルが建っている。「ここが俺等のアジトだ、行け」5人は
拳銃を突きつけられ、言うとおりにした。「ちょっと待て、ボス
!!連れてきやした」そういい、扉を開けた。後ろを向いていたボ
スは回転椅子を利用し、5人の方を向いた。「ほぅ、お前らが・
・・」「なんのようだ!!?」秋元は怒鳴った。「まぁまぁ大人し
く従えば痛い目は見ないで済む」「痛い目?」「我々マフィアは
『アカバル』と言う神を追っている」「っ!!」「勿論お前ら5人
は知っているな?召喚したのだから」「なんで?」「なんで知って
いるか、か?我々はマフィアだ。情報源はいくらでもある」岡本
はボスを睨み付けた。「お前が内の部下を蹴り飛ばした奴か・・
・中々強気じゃないか。我々マフィアに従うか?それとも・・・
」ボスは多少間を挟んで言った。「死ぬか?」「っ!!」「我々は
手荒な真似はしたくない。だがそちらが手荒な真似をしたのであ
ればこちらも手荒な真似で応じるしかない。目には目を、歯には
歯を、だ」5人は緊張感で黙り込んでしまった。「まっ取り敢え
ずお前らには・・・」「ん?」「眠ってもらおう」「は?な
んっ!!!!!!」5人は後ろから迫っていたマフィアに気付かず、ス
タンガンをもろに浴びてしまい、気絶してしまった。
4. 岡本はゆっくりと目を開けた。そして起き上がった。いきな
り起き上がったからか、頭痛がした。「どこだここは?」岡本は
辺りを見渡して言う。辺りは殺風景な部屋。扉と窓が1枚、鍵が
掛かっている。「はっ!!」岡本は近くに4人が倒れているのに気
付き、すぐ起こした。「ここ・・・どこ・・?」池田は恐る恐る
言う。「マフィアのアジト・・・」「そんなことは分かってるよ
」上山は言った。「取り敢えず、静かに喋ろうか」「え?なんで?
」秋元は静かに言った。「監視カメラ・・・」「そうか・・・」
それから5人は静かになり、岡本は寝転がってしまった。その時
いきなり扉が開いた。「え?」5人は扉に注目した。そこにはマフ
ィアの兄貴分が立っていた。「おぉい、クソ餓鬼、ちょっと来い
」兄貴分は岡本に指を指した。「人に指差さないでくれる?」「
くそがぁ、殺すぞ」「出来る物なら」マフィアの兄貴分は座って
いる岡本に拳銃を向けた。「こっちは『発砲しても良い』といわ
れているんだ。大人しく来い」「別に撃ってもいいよ?」「はっ?
お前何言って、拳銃が怖くないのか?」その時岡本は悟った。マ
フィアは5人が体験した出来事を知らない。善良な一市民だと勘
違いしている。そう、『アカバル』を召喚しただけの一市民だと
・・・。「しかたねぇ」パァン!!、マフィアの兄貴分は天井に向
かって銃を発砲した。「これで恐怖心を覚えたか?」「そんな豆
鉄砲で中学生を連れて行こうとするの?だっせぇ」秋元は呟いた
。「おい!!餓鬼!!!!てめぇ、殺されたいのか?」「別に・・・」
「じゃあ黙ってろ」「あん?随分と強気じゃねぇか・・・」岡本
と秋元は立ち上がった。「お・・おい!!餓鬼ども!!近寄るな!!撃
つぞ!!!」2人はマフィアの前に立った。「そうだ、大人しくして
いろ」「構え・・・」「は?」「構えが駄目だね。腰が抜けてる
。人を撃った事無いんでしょ?」岡本は一瞬で構えを見て悟った
。「はぁ?」驚きのあまりマフィアは間抜けな声を上げた。その
瞬間、岡本は拳銃を横に蹴り飛ばした。「あっ!!痛ぇ!!」転がっ
た拳銃を秋元が拾った。そして銃口をマフィアの兄貴分に向けた
。「なっちょ・・・ちょっと待て!!今俺を殺してみろ!!お前ら死
ぬぞ!!!」「一応『兄貴分』って立場なんだよね、なんでそんな
に弱いの?口だけ?要、銃を下げてくれ。コイツと組み手をやる」
「ほぅ、上等じゃねぇか」岡本は脇を締め、総合格闘技の構えを
した。「死ねぇぇ!!!!」マフィアの兄貴分は両手を上げ、襲い掛
かる。岡本はがら空きのマフィアの兄貴分の懐に潜り込み、中指
の第二関節を立てた拳で思いっきりあばらを殴った。「あぐっ!!
」殴られた右側のあばらを脇で締める。「く・・餓鬼が・・・」
「あれぇ?どうしたの?俺はただのネトゲオタクだぜ?なんでそん
なに弱いのかな?」それを見ていた女子3人は秋元へ駆け寄った。
「え?なんであんなに強いの?」「『アカバル』の事があって俺等
2人は強くなろう、って決心したんだ。賢一は古武術や合気道、
護身術と総合格闘技、修斗と空手、キックボクシングとボクシン
グの技をネットで習ってる。あとは我流の、かな。俺はキックボ
クシングを習ってる。まぁ、見てろ」秋元は賢一を指した。3人
は注目する。マフィアが右ストレートをしたが、岡本は後ろに下
がり、右手を両手で掴んだ。そして反対側へ曲げた。「あれは小
手返しって技、相手は倒れちゃうし派生技で組み付きや袈裟固め
が出来る。ほら、してるよ」岡本は倒れたマフィアの左手を左手
の脇で締め、右手をマフィアの背中に回し、スーツの右のエリを
掴んだ。「あれで一般人は絶対に動けない。右手も左手も。足も
出ない」「へぇ」「あっ!!あぁぁ!!!クソっ!!!離せ!!!!」それか
らマフィアは暴れたが、岡本はずっと固めたままだった。やがて
疲れたマフィアは動かなくなった。「どう?諦める気になった?」
「クソ餓鬼、殺すぞ」「だからしてみなって」マフィアは静かに
なった。「おい、賢一。そいつ、どうすんの?」秋元は袈裟固め
している岡本に話し掛けた。「ん~どうしようかねぇ地味に疲れ
るし・・・あっ今扉開いてるから今の内に逃げてよ」「お前を置
いていけないし・・・」「俺も一緒に逃げるよ?」「え?じゃあ」
「こうする!!」岡本はエリを掴んでいた右手を離し、解放された
右手でマフィアの下あごを殴った。「ううぅ」そしてマフィアは
気絶してしまった。「下あごって上手に入ると脳震盪(のうしん
とう)起こすんだぜ?知ってるか?」「知ってるよ」「取り敢えず
、後ろの3人!!」「えっあ・・はい・・・」びっくりした松原は
跳ね上がり言った。「逃げるぞ」それから5人は部屋から出た。
5. 「あっ・・・」廊下を歩いていた5人の前に1人の大男が現れ
た。そしてその大男の背中からボスが姿を現した。「監視カメラ
を忘れて居ないよな?」「あっ」5人はすっかり忘れていた。「い
やぁ、見事だねぇ。特にそこの岡本君、古武術は習ったのかな?
いや、合気道の技もあったし・・・まぁどうでも良い。ここから
逃がすわけには行かない。逃げたかったら俺等2人を倒してみろ
」「おやすいご用さ」岡本は強気で言う。「ふん、じゃあやって
みろ」それから3人の女子は後ろに下がり、大男とボス、岡本と
秋元の戦闘が始まった。「てやっ!!!!」岡本はボスに向けて右ス
トレートを放ったが、ガードされてしまう。「クソッ」「遅いね
!!」ボスは岡本にキックしてきた。ギリギリでガードしたが、数
メートル飛ばされてしまった。「え?」岡本は疑問に思った。こ
んなに飛ぶ物なのかと・・・。大男は秋元の前に立ち、両手の両
指を組み、上からハンマーのように振り下ろしてきた。秋元はギ
リギリで避けた。「ん~、中々やるねぇ」ボスは余裕ぶっている
。「調子に乗るなよ。おらっ!!!」秋元はボスに回し蹴りをした
。ボスはガードするが、秋元は隙無くボスの後ろに回る。「あっ
しま・・・」ボスは遅かった。秋元はボスの首筋をチョップしよ
うとした、が、大男が横から秋元の事を蹴り飛ばした。「うぐっ
!!!」がら空きだった脇腹を蹴られた秋元は壁に叩きつけられた
後、動かなくなった。「要!!」「お前の相手は・・・俺だ!!!!」
岡本は前を見た。マフィアのボスが組み付きの体制に入る。岡本
は素早く避けたが、すぐに大男の回し蹴りが来る。回避は不可能
だと思い、手でガードした。ガードした左手を見ると青くなって
いた。恐ろしい威力。「さぁ、もう諦めたらどうだ?」「誰が!!
」岡本はボスの前に素早く入り、鳩尾に右ストレートを決めた。
そのスピードに追いつけず、ボスは綺麗に入ってしまった。「う
う!!」ボスは後ろに倒れ、動かなくなった。「ふぅ、1人。あっ
」岡本は大男に右手を掴まれてしまった。引っ張っても離れず、
大男は左手で顔面を殴ろうとしている。咄嗟(とっさ)に古武術の
護身術、手首返しをした。偶然決まり、捻りあげることに成功し
た。「動いたら折る」そういうと大男は動かなくなった。だが、
気を緩んだ隙に素早く左に反転され、捻っていた腕の手首を掴ま
れた。そして左掌底であごを突き上げ、後方に倒されてしまった
。そして馬乗り状態になってしまった。「くっ」一気に形成逆転
されてしまった岡本は次の策を考えた。これも護身術の一つ、両
手で相手の耳たぶを思いっきり掴み、横に倒した。「よし!!」こ
れでまた形勢逆転。馬乗りの状態で岡本は右ストレートを繰り出
した。両足で両手を固定していたため、大男はまともに喰らって
しまう。だが鼻血を出した程度で、全然効いて居ないようだった
。「クソッ!!」大男は暴れ、馬乗り状態は解除されてしまった。
2人は合間見える状態でにらみ合っていた。「はぁー、はぁー」2
人は息が切れていた。だが岡本は果敢に攻撃した。「おらぁ!!!
」渾身の右ストレートは大男の右手によってガードされてしまっ
た。疲労のせいか、そのまま足が崩れ、転倒してしまった。「あ
っしまっ」大男に首筋をチョップされ、頭に激痛が走った。そし
て岡本の瞼(まぶた)は下がっていった。
6. 「え?」目を覚ました岡本は不審に思った。椅子に両手両足を
縛られている。そして4人も座っている。4人はまだ目が覚めて居
ないようだ。岡本は叫び、4人を起こした。4人も岡本と同じ状況
だった。椅子は円を描き、全員中央を向いている。そして皆が見
る先には黒い箱が置いてある。「え?どうしたんだ?」2人は3人の
女子から何が起きたのか説明を受けた。「な・・・情けないな・
・・」「キックボクシングをやっている俺が・・・負けるなんて
」「いや、あれは不意打ちだ」「・・・どうでもいいや。取り敢
えずここから逃げないと・・・」秋元は必死で暴れるが、ロープ
は頑丈でビクともしない。「だめだ、無理だ」その時アナウンス
が入った。どうやら黒い箱の中から聞こえる。「おはよう!!諸君
、我々の目的を簡潔に言おうか。我々は『お前らを始末する』」
「は?」秋元は間抜けな声を上げる。「え?どういうこと?」上山
が言う。「殺され・・ちゃうんでしょ」松原が言う。「え?なん
で?」池田は理解出来て居ないようだ。「『アカバル』の存在を
知ってしまったお前らは生きている事が罪だ。死ね・・・」「ち
ょ・・ちょちょちょ」それから岡本を除く4人は暴れたが、椅子
から開放される事は無かった。「ちょっと・・・本当に死んじゃ
うんじゃない?」さっきは理解できているようだった松原は急に
臆病になった。「取り敢えず落ち着け!!」岡本は叫んだ。「殺す
って言っておきながら殺して居ないのは理由があるんだろう。最
初っから殺す事が目的なら、もう生きてないよ」岡本は目を閉じ
ながら言う。「ほぅ、勘が良いな、小僧。勿論だ、お前らには聞
きたい事が山ほどある」「『アカバル』の事に関してだろ?」「
あぁ」「え?でもなんでそんなに・・・」池田の声は小さくなっ
ていった。「宗教的な?」秋元は答えた。「正解だ」「『アカバ
ル』と遭遇した俺等に拷問でもするのか?」岡本は余裕ぶってい
る。「質問に答えなかったら」「じゃあ条件がある。皆を解放し
ろ」「・・・お前は勘違いしていないか?お前が条件だの言える
立場ではない。今でも殺して良い頃だ」「そうか、なら殺せよ」
「は?」「殺してみろ」「・・・お前に嘘は通用しないようだな
。こちらは『アカバル』の情報を集めている。お前らは知ってい
るようだな。ならば教えてもらおう。勿論逃がしてやる」それか
ら5人は椅子から開放され、情報提供をした。「なるほど、じゃ
あお前らにようはない。さっさと消えろ」「あぁ、そうさせても
らう」アジトから出ようとすると出口の2人のマフィアが邪魔を
した。「ちょっと、どいてくれる?」「『無事に』とは言ってな
いだろ?死ね、ぐっ!!!!」咄嗟に岡本は右ストレート、秋元はミ
ドルキックをし、マフィアを倒した。「全く、冗談じゃないぜ」
「早くここからでよう」それから出口から飛び出した。しかし周
りの景色を見て沈黙する。「ここ・・・どこ・・・?」上山は言
った。「知らない・・・」松原は小さく言う。「取り敢えずマフ
ィアが追ってきちゃうから移動しよ」池田は冷静だった。それか
ら5人は縦横無尽に動いたが、知らない場所に翻弄されるだけだ
った。そしてあろう事かマフィアと遭遇してしまった。相手は3
人、状況的に圧倒的に不利であるため、二手に分かれた。
7. 「はぁ・・・ここまで来れば・・・大丈夫でしょ」池田と松
原、岡本のグループは膝に手をつけて息を整えている。「あっ、
いたぞ!!」疲れているのに2人のマフィアに見つかってしまった
。岡本はマフィアの方に走り、1人の頬に跳び蹴りをした。その
衝撃で1人は気絶してしまった。もう1人のマフィアは襲いかかっ
てきたが、回避し、後ろから首を締めた。マフィアは暫くもがい
たが、やがて動かなくなった。「ふぅ」ハイテンションな岡本に
2人は愕然としていた。「ん?どうした?」「いや、結構最初の頃
とキャラ変わったね」松原は言う。「そうか?武術ならったから
かな?言っておくけどネットで見ただけだからな。・・・さぁ、
行こう」「え?どこへ?」池田は岡本についていく。「そりゃ勿論
要達のところに決まってるだろ?」「あっそっか」「けど、向こ
うもどこにいるか分からないし。こっちが動いてもマフィアと遭
遇するだけ。今は発砲許可が出てないから銃を向けてこないけど
、発砲許可が出たらコッチは勝てない」「倒したマフィアの拳銃
を奪えば?」松原はマフィアに指を指して言う。「いや、ホルス
ターに入っていなかった」「そうなんだ・・・で、どうする?」
「取り敢えずマフィアに遭遇覚悟で動こう。一応頑張るから」「
賢一と一緒でよかった」松原は小さく言った。「え?なんて?」「
あぁいや、なんでもないよ」松原の頬は赤くなっていた。
8. その頃、秋元と上山グループも岡本達と同様、休憩していた
。「はぁ・・・疲れた」秋元は道路に倒れ込んでしまった。「ち
ょっと、頑張ってよ・・・」上山は息を整え言う。それから秋元
は4~5回深呼吸をして立ち上がった。「よし!!行こう」「え?ど
こへ?」「賢一達の所へ!!」「ああぁ、そうだった。向こう大丈
夫かな?」「大丈夫でしょ。賢一いるし」「賢一ってキャラ変わ
ったよね」「あの『アカバル』の事件があってからな。あのお陰
で誰かを守ろう、って思ったんだし」「要は叶夢と・・・知って
る?」「え?何が?」「あっ知らないんだ。じゃあいいや」「え・
・・気になるじゃん。言ってよ」「いや・・言えな・・あっ」突
然2人の前にマフィアが現れた。偶然単独行動をしていたため、
楽々倒せそうだ。「おらっ!!!!」秋元は回し蹴りをした。両手で
ガードされてしまい、後ろによろけただけだった。「おらおらお
らおら!!!!」秋元はキック、パンチ、ジャブを使いこなし、マフ
ィアに攻撃していく。マフィアは顔の前に両手でガードしている
。「あっ・・・ここがあいてるぜ!!!!!」秋元はマフィアの股間
にキックした。「ぎゃああぁぁぁぁ!!!!!」マフィアは股を押さ
え、悶絶した。そしてやがて気絶した。「よし!!いっちょあがり
」「ちょっと残酷すぎない?」「別に良いだろ・・。いってぇ」
秋元は赤くなった拳を見た。「大丈夫?」「あぁ、殴りすぎた。
よし!!取り敢えず移動しよう」「うん」
9. 「それにしても要たちと合流できないなぁ」岡本は呟いた。
「確かに、歩いてから結構時間経ってるよね?」「あとマフィア
と遭遇する確率があがってるね」「まっ、今は考えないであいつ
らを探す事に集中しよう」「うん」3人は十字路を右折した。す
るとちょうど曲がってきた男とぶつかってしまった。「ああ、い
ってぇ。気をつけ・・・あっ」「え?うわっ!!この餓鬼!!」そこ
にはマフィア3人居た。1人は右ストレートを繰り出そうとしたが
、岡本が咄嗟に鳩尾を左ストレート。「うううぐぐぅうぅぅ」倒
れたマフィアは苦しそうにもがいた。「くっ、この餓鬼!!!」こ
んどは2人のマフィアが襲ってきた。スルリと交わし、背中を蹴
ろうとしたが、もう1人居るのを忘れ、咄嗟に振り向くが、遅か
った。「もらった!!!」「うわあぁあ!!」ギリギリでガードした
のは不幸中の幸いだった。だが、「おい、動くな」1人のマフィ
アが池田の首を絞めている。「動いたら・・・・殺す」松原は咄
嗟に岡本に駆け寄ろうとしたがもう1人のマフィアに捕まってし
まった。「さ、アジトへ来い」岡本は静かに歩いた。
10. 「はぁ」歩きつかれたのか、上山はその場に座り込んでしま
った。「大丈夫か?有紀」「うん、ちょっと疲れた」「無理しな
いようにな」「あっいたぞ!!!」その声に秋元は振り返る、そこ
には2人のマフィアが居た。「あれ?やられっぱなしなのに2人で
大丈夫なの?」「お前らには生憎だが、3人の餓鬼の確保に成功し
た」「っ!!?」その事実は2人には信じられなかった。「賢一がい
るのに・・・?」岡本の強さは秋元は一番知っていた。一度秋元
が自分が習っているキックボクシング場に岡本を誘ったが、トー
ナメントで1位になった。決勝は秋元と岡本だったが、秋元は負
けてしまった。
11. 「ここだ。俺が習ってるキックボクシング」「キックボクシ
ングってルールとかあるの?俺よくわかんないんだけど」「ん~
、まぁ喧嘩みたいなものだよ。えぇっと、このパンフレットに載
ってることを守ればいいんだよ」「うわぁ、色々あんなぁ」「ま
ぁまぁ」それから2人は試合着に着替え、キックボクシング場に
入った。「あっ、コーチ。賢一です」「ほぉ、君が・・・」「岡
本賢一です。今日1日よろしくお願いします」「うむ、では早速
だが最初に秋元は岡本のスパーリングに付き合ってくれ」「はい
」それから軽い準備運動をした後、トーナメント表が発表された
。岡本と秋元は真反対の場所におり、出会うのは決勝のみだった
。1試合目は岡本の試合だった。「ファイッ!!」審判の声と共に
岡本は間合いを詰め、十分な距離が確保できたら左足を上げた。
そして勢いよく回し蹴りをした。それが偶然なのか、狙ったのか
下あごに命中し、相手はダウンした。「おぉぉおぉぉ!!!!」周り
は歓喜の声で溢れていた。あまりの強さに次の試合の人は少々ビ
ビっていた。それから秋元も順調に上がり、準決勝。ここに勝て
ば決勝にいける。岡本の相手は身長が180位ある長身の男だった
。これで中学生と考えると吃驚(びっくり)した。「ファ
イッッ!!!」脇を締め、間合いを詰めようとしたが、最初の回し
蹴りを警戒し、相手は距離を離す。「あれ?確かキックボクシン
グって階級が無かったっけ?こんな大きな奴と戦って勝てたら凄
いよな・・・」そう思っていた岡本は素早く間合いを詰めた。そ
の動きに反応できず、ガードの体制に入った。岡本の殴る音が響
き渡る。そして鳩尾が空き、そこにボディブローした。「ぐぅぅ
う」相手は立ち上がることが出来なかった。「はぁ・・・」ベン
チに座り、秋元の試合を見ている。前半は秋元がガードをしてい
たが、後半は秋元が一方的に攻めている。そして相手は耐え切れ
ず、ダウンしてしまった。多少の休憩を挟み、決勝。「ファイィ
ィィ!!!」「まさか決勝まで来るなんて・・・」「習っているお
前が負けるなんて事ないだろ?」「お前だって調べてるくせに」
今までの試合が手を抜いていた事に気がついた岡本は距離を置い
た。相手がどんな技を繰り出すか知らないからだ。「おいおい、
ビビってんじゃねぇよ」「ビビってねぇよ。行くぞ!!!」秋元の
挑発に乗り、岡本は間合いを詰め、右ストレートをした。だが、
秋元のガードに弾かれてしまい、攻撃が決まらなかった。「よし
!!本気で行くぜ!!」秋元も本気になり、2人は2人だけの平成の関
ヶ原の戦いであった。ガードを怠った方の負け、それは2人は分
かっていた。「よし!!」覚悟を決めた岡本は最後のスタミナを振
り絞って全力で殴りにかかった。秋元は咄嗟にガードしたが、顔
だけガードしたため、ボディブローを防ぐ事が出来なかった。そ
して秋元はダウンした。優勝、岡本賢一。
12. 嘘だ、賢一が負けるなんて、秋元は信じられなかった。しか
し驚いたのにも関わらず、秋元は表情を変えなかった。「寝言は
寝て言え」「悪いが嘘ではない」「なら・・・俺を捕まえてみろ
よ!!!!」秋元は全力右ストレートがマフィアの顔に当たった。鼻
の骨は木端微塵(こっぱみじん)になっただろう。「あ・・ぁぁ」
もう1人のマフィアはその強さに腰が抜けていた。「おいこら・
・・」「く・・・来るな」「ふん」腰が抜けているマフィアに向
かって秋元は顔を前蹴りした。そしてマフィアは動かなくなった
。「あいつらが言う事は恐らく本当だ。取り敢えずあいつらを助
けないと・・・」「けどアジトはどこ?」「分からない・・・適
当に歩いたから」「そう」「じゃあ向こうが自力で逃げるしかな
いのか・・・」バン、2人の背後から発砲音が響いた。
13. 「おら!」3人をマフィアは無理に部屋に入れた。「くっ、て
めぇ!!あ・・・ちっ鍵掛けられたか」「ごめん・・・」池田は小
さな声で謝った。「いや、お前らは悪くない。謝るのはむしろ俺
だ。ってそんな事はどうでもいい、早くここから逃げないと・・
・」岡本は周りを見渡したが窓は強化ガラス、そして扉は鉄製で
頑丈な扉だ。「強引に出るとしたら、窓を割るしかないな」「割
れるの?」松原は興味を持ってきた。「いや、強化ガラスだ、拳
で割るのは時間が掛かる。その音でマフィアが来てしま・・・あ
っ」岡本は部屋の端に掛けられた角材を手に取った。「これで割
れないかな?」「取り敢えずやってみようよ」「はいはい・・・
」岡本は角材を右手で握り、一気に窓目掛けて振り下ろした。バ
リィン!!!強化ガラスが呆気なく砕け散った。「よし!!早く出よ
う。あいつらが来るぞ」「うん」3人は割れたガラスの破片をど
けながら窓から脱出に成功した。「ちっ、逃げられたか」3人が
逃げてから2分くらいが経った頃、マフィアが入ってきた。「ま
ぁいい、おい!!もう片方の餓鬼はちゃんと処分したんだろうなぁ
!!?」「はい、確かに」「よし、上出来だ」
14. ボスの部屋に兄貴分が入ってきた。ご立腹なボスは足を組み
ながら言った。「餓鬼相手にマフィア何人使った?」「え・・え
ぇっと、合計で30以上」「何をしている!!!!ここはマフィアの地
域で住民は近寄らないが一応住民はいるんだ。それでマフィアが
餓鬼を追っている所を目撃されて通報されたらお前は責任を負え
るか?死ぬくらいしか償えないぞ」「はい!!」「もういい、発砲
許可を出す。住民に聞かれても仕方ない。取り敢えずあいつらを
始末しろ。『アカバル』の存在は知ってはいけないんだ」「はい
」その時兄貴分のトランシーバーに音声が入った。「アニキ、餓
鬼発見しました」「発砲許可が出た。撃ち殺せ」「で・・・でも
・・・死体は?」「ボス、死体はどうすれば?」「背負ってアジト
に持って来い」「背負って持って来い。なるべく迅速にな」「は
い」それから頭を下げて兄貴分は部屋を出た。
15. バン、「う・・・うぅぅう」秋元の腹部に激痛が走った。何
かが突き刺さった。秋元は自分で確認すると制服に血が滲んでい
た。「あ・・ぁぁ」その激痛に秋元は膝から崩れ落ちた。「要!!
」上山は秋元の肩を掴んだ。だが秋元が拒否した。「逃げろ・・
・」最後に秋元は弱々しい声で言った。だが上山も同様、マフィ
アに撃ち殺されてしまった。上山に銃弾が突き刺さった頃には秋
元は目を閉じていた。「殺したぞ・・・」「よし!!早くアジトに
持っていこう」「あぁ」2人のマフィアは急ぎ足で2人を背負い、
アジトの元へ走り出した。
16. 「逃げ出せたぞ・・・はぁ・・」「やった・・」3人はずっ
と走り、アジトから距離を離した今、路上に座り込んでしまった
。「これで・・・当分大丈夫・・だろう・・・はぁぁ・・」それ
から3人は5分間休憩し、立ち上がった。「取り敢えず要達を探そ
う。そして逃げる。ん?」「どうしたの?」池田が膝に手をついて
いった。「いや、誰かの話し声が聞こえたんだけど・・・」「冗
談でしょ?」「ちょっと見てくる」岡本はT字路に飛び出した。バ
ン、後ろの2人は一瞬の出来事に何が起きたのか理解できなかっ
た。岡本の頭に何かが突き刺さった。その衝撃で岡本は反対側に
倒れ、動かなくなった。そして道路には赤い血が流れる。「え・
・・えぇぇ・・・・」2人は愕然とした。T字路から姿を現したの
はマフィアであった。「よし、1人。さぁ、お前らも」マフィア
は2人に拳銃を向けた。単独行動だった。「死ね」「ま・・まっ
て」池田は必死に止めた。「なんで・・・撃ったの?」「発砲許
可が出たんだ。お前らが余りにも抵抗する物だからボスが切れた
んだよ。全てお前らが悪い」「そんな・・・」松原は泣いていた
。初めて出来た恋人が・・・、涙を拭い、マフィアを睨んだ。「
許せない。あなたは人を殺したのよ!!」「おいおい、怒るなよ。
全てお前らが悪いんだから」「叶夢」池田が小さな声で言った。
「何?」「私が止めるから、逃げて」「え・・出来ないよそんな
こと。私が止めるよ」「いや、叶夢が逃げて。恋人が死んじゃっ
たのよ?貴方が逃げたほうが賢一が喜ぶよ。精一杯生きてね」「
ちょっと・・・」松原は止めようとしたが遅かった。池田はマフ
ィアに襲い掛かった。そして顔を引っかいた。爪が長く、それが
目に当たり、マフィアは目を押さえた。「くそ、餓鬼が!!」「亜
理沙!!」「逃げて!!!」バン、2人の別れの悲しみに水を差すよう
な発砲音が響いた。「亜・・理・・・沙・・・」松原は何も考え
ずに必死に逃げた。道を適当に、迷う事は無かった。適当に、走
り続けた。すると奇跡が起きた。目の前に大通り、大勢の人、ど
うやらマフィアの地域からは逃れたようだ。そして松原はタクシ
ーを拾った。泣いている松原に運転手は気を遣い、「料金は良い
よ」と言った。そんな優しさに余計涙が出た。「お客さん、泣い
てても仕方ないよ。行く場所があるんだろ?そこに行かないと、
なぁに、そこまで僕がちゃんと連れてってあげるから」「う・・
・うぅぅ・・・北森中学校・・まで・・・」「よし!!」それから
タクシーは北森中学校に向けて発進した。
17. 4人がいなくなり、それからの松原は絶望的だった。話しか
けても返答は無く、ただボーッとしていた。4人の行方について
、松原は答えなかった。答えられなかったのだ。これ以上犠牲に
出来ない。警察が入れば戦争が始まる。そんな恐怖に耐え切れず
、口を開けなかった。帰り道、多くの男子が松原に寄り添う。岡
本賢一、と言う叶わないライバルが消え、それを幸運に思ったの
か。それとも本当に慰めているのか。分からなかった、けど松原
は口を開かなかった。家に戻ると母親が待っていた。「おかえり
なさい、さぁ、着替えていらっしゃい」松原は母親だけに口を開
いた。だが『開いた』と言ってもごく僅かである。自分の部屋に
戻り、ベットに寝転がった。「皆・・・」松原の目から1粒の涙
がスゥッと零れた。「会いたいか?」突然部屋から声が聞こえた
。「え?」「皆に会いたいか?」「誰?」「知っているだろう?『ア
カバル』だ。今回は世話になった」「あなたって本当に?」「『
アカバル』だ」「いや、そうなくて、神様なの?」「あぁ」「神
様みたいな喋り方じゃないね」「ほっておけおけ。で、今回は世
話になった。だから1つ、願いをかなえてやる。だが時を司る神
だから時間関係の事しかできないが・・・」「・・・」「4人に
会いたいだろ?じゃあ時間を戻せば良い、指定すればこちらは戻
せる」「会いたい・・・けど・・・」「けど?」「やっぱりでき
ない。過ぎたはずの時間を過ごすなんて」「なぜだ?会いたいん
だろ?」「だって、今回は、皆私のために戦ってくれたのに、私
が戻ったら皆の苦労が全て水の泡じゃない」「そんなことは無い
。『今』『の世界は滅びる。そして『過去』と言う世界が誕生す
る。お前以外の人間は『今』の記憶は無い」「でも出来ない。過
ぎた時間を過ごすなんて、頑張った皆に失礼だわ、理不尽よ」「
そうか・・・ならば・・・」「ありがとう、気を遣ってくれて。
でも私は大丈夫」「神様は・・・人間に迷惑を掛けてはいけない
んだ。お前ら5人は俺のせいで・・・、だからこちらは償わない
といけない。だがお前が求むのなら逆らったりしない。神様では
あるが消されてしまう。だが俺はいつも見てる・・・」それから
声は聞こえなくなった。
18. あの事件があってから1ヶ月、段々松原は警察に口を開くよ
うになった。そして全てを打ち明かした。警察は「待ってました
」の如くすぐに準備し現場に向かった。住所は言ってないのにな
んで分かるのだろう、松原は疑問に思い、聞いてみたらあのマフ
ィア地帯は結構有名なようだ。そして警察に打ち明けてから2日
が経った。松原は晩御飯を食べ、お風呂から出てテレビを付けた
。テレビの内容に松原は目が釘付けになった。「えぇ、次のニュ
ースです。中学生失踪事件から1ヶ月が経ち、重要参考人の中学
生の証言どおりに警察が動きました。そして調査の結果、中学生
4人は死体で発見されました。現場は『マフィア地帯』で有名な
○○でした。死因は射殺、警察は現場に行き、マフィアのボス含
む62人を逮捕しました。そして・・・」松原はそのニュースの途
中に出てきたマフィアのボスの顔写真に違和感を覚えた。「違う
・・・この人、ボスじゃない・・・今もボスは逃げている!!!」
ーアカバル2-