17歳

「ほら、春だ。」

少年A


今日は部活で、明日はバイトで、明後日もバイトで、その次は部活で。
楽しみにしているのは好きなバンドの新譜と好きなバンドのライブで。
専業主婦の母さんとサラリーマンの父さんと俺より少し出来のいい妹とペットはインコで。
部活の先輩と最近入った後輩と中学から一緒の親友と上辺だけに思わなくもないクラスメート。

部活はバスケ部に入った、女子にモテるかななんていう下心丸出しで入部を決めた。
実際は中学時代に想像していたようなキラキラしているものではなく
「漢」という漢字で表せるようなむさ苦しい日々だ。

小遣い稼ぎにバイトも始めた、家から徒歩5分のコンビニのアルバイト。
バイトを始めて分かった事はコンビニ店員は見てるほど楽じゃないって事。
多分楽な仕事なんてないんだろうなと分かってはいるけど。

バイトと部活の両立が初めのうちは苦しかったんだけど慣れって奴は恐ろしい。
気付けば一週間休みなしに身体が動き続けている。

そんな中ライブハウスに通うこと。これが俺の中で生き甲斐になった。
多分父さんが土曜の夜にビールと自分の分の美味しい物を食べるのと同じ感覚だ。
青春真っ盛りの男子高校生が中年サラリーマンと何の変わりもないのだ。
そう考えるとふと切なくなる。


似たような毎日を繰り返してる間に気づけば高校に入って2回目の春だった。


「ほら、春だ。」

誰だよ、高2にもなって何今更春を感じてるんだよ
ふと耳に入ったきっとクラスメートの誰かの声が意味のない自己解析から俺を連れ戻す。


窓の外を見れば桜がほのかに散っていて、丁度この角度は空がピンク色に染まっている。
それを綺麗だとは感じるんだけど

17歳

17歳

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-04-19

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted