迷子の少年

お母さんただいまー

そう言って玄関をあけようとすると、鍵がかかっている。
電気も消えて誰もいないみたい

遅く帰ったから怒っているのかな

でも違う、庭が荒れてて日曜日にお母さんと植えたチューリップも、パンジーも咲いてない

よく似てるけど、ここはウチじゃないみたい

もう少しで日も暮れる、いまよりもっと暗く寒くなる、そうなる前に帰らなきゃ

そう思って歩き出したけど
ここはいったいどこなんだろう

知ってる場所なのにどこか違う
さっきの僕の家も似てたけど違うし
みんなの表情もどこか暗い

ここはどこ
ここはどこ
帰れないしどこにも行けない

さっきまで、一緒に裏山で遊んでいた友達は無事に家に帰れたのかな

僕だけが、変な世界に来ちゃったのかな
思い切って道を聞こう

すみません、家に帰れないんです、ここはどこですか?

答えずに無言で消えていく人もいる、答えてくれる人はみんな早口でうまく聞き取れない

怒られてるのかな、わらわれてるのかな、それもよくわからない

ひとりが怖い
あたりは真っ暗ではやく家に帰りたい。

暗い道をひとり歩く
大通りに出れば、きっと何かわかるはず


あ、交番だ
おまわりさん教えてください
よかった、これで助かった

え?、なに?、ゆっくりじゃないとうまく聞き取れないよ。
ねぇ、なんて言ったの?、なんで嬉しそうな顔をしているの?


あれ、変だ頭がくるくるする
助けて、はやく家に帰りたい

ここはどこ
ここはどこ
帰れないしどこにも行けない

ここはどこ
外は暗いし誰も知らない

迷子の少年

迷子の少年

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-04-17

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