「とびら」
開けてはいけない、秘密の扉。
開けられない、秘密の扉。
その扉はこの世で命をもらってから、誰もが受け継ぐもの。
扉が開くときは、その人にとって一つの挑戦を終えたとき。
恋をした、告白した、ふられた、また恋をした。
一つ一つ、小さな挑戦を終えるたび、扉が開いていく。
ある日の扉は木製で、ある日の扉は鉄製で。
またある日は、透明な扉で。
一つ一つ、扉を開けるたびに人は成長していく。
扉の素材は、心の強さ。
心が強くなると、扉の素材は頑丈になっていく。
きちんと、順番に、ゆっくりと。
自分の寿命が尽きるその日まで、扉を開け続けていく。
順番を守らずに、一度に何度も扉を開けてはいけない。
まだその扉に対応できない心の強さで開けようとすれば、
その先に広がるのは、深い……闇。
今まで光が道を示してきたのに、その光は闇に呑まれる。
深い闇はどこまでも続き、振り返って見えるのは、頼りないロープが一本。
そのロープは今にも切れそうで、体重をかければ奈落の底へ人を導く。
深い闇を抜け出したい。
そう思って、ただ前へ進む。
その先にあるものは、光が煌めく世界か。
それとも、さらなる深い……闇か。
光の扉、闇の扉。
行き先を決めるのは、自分次第。
どんな選択も、全て自分で決めなければいけない。
「とびら」