「なみだ」

今は昔。私が中学生のころ。

あの頃の私は、人を好きになる感覚がわからなかった。

告白されて付き合ったのに、友達の延長でしか付き合えなかった。

それでも別れた当日、やっとその感覚がわかった。

この気持ちが、人を好きになるってことなんだ…………

そう思ってすぐに振られ、私はまた誰かを好きになれなくなった。

周りが恋をしていくのを見て、私も、また誰かを好きになろうと思った。

リハビリをしよう、そんな風に思った。



リハビリを始めた当初、軽い気持ちだった。

けれど、リハビリを経て本気で好きな人ができた。

普段よりもオシャレなあの人を見て、私は初めて嫉妬した。

他の誰でもない、私だけのためにオシャレをしてほしいと思ってしまった。



あの人を好きだと自覚してから、私は涙を流すことが増えた。

友人から言われた何気ない一言が。

あの人が言った、何気ない一言が。

その一言一言全てが、私の涙につながった。

何度も、何度ぬぐっても、止まらない涙。

タオルで目を覆って、家族に聞かれないように声を殺して泣いた。

散々泣いた後、シャワーを浴びる。

止まったはずの涙は、またシャワーの音に混じって流れた。

シャワーを強めにして、また泣く。

しばらくしたら、少しだけ落ち着いた。

部屋で泣いて、お風呂場で泣いて。

そんな日の私は、最後まで泣いてしまう。

ベッドに入って、また気持ちがぶり返す。

涙が頬を伝い、枕を濡らしていく。



私は、泣き疲れてそのまま目を閉じた。

「なみだ」

「なみだ」

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 青年向け
更新日
登録日
2013-04-16

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