「えがお」

あの人が笑えば、私も笑う。

あの人の微笑みが、私を癒す。

あの人の笑顔は、本当の笑顔。

私の笑顔は、偽物の笑顔。

あの人は笑いたいから笑う。

私は、笑う場面だから笑う。

あの人が見せる、無邪気な笑顔。

私は、口角を上げただけ。

心の底から、笑うあの人。

心の底から、笑っているように見えるあの人。

あの人の笑顔はいつもまぶしくて、私はいつも目をそらす。

けれどあの人の笑顔が見たいから、すぐに視線を戻した。

笑ったときに目を細める、あの人。

その顔を見ると、ささくれた気持ちが消えていく。

あの人の笑顔は、きっと、魔法に違いない。

だって、あの人の笑顔を見ただけで、人を憎む気持ちが消えていく。

醜い気持ちなんて初めからなかったように、消えていった。

あの人の笑顔は、私の癒し。

あの人の笑顔だけが、心をきれいにしてくれる。

大好きなことをするよりも、読書で時間をつぶすよりも、

あの人の笑顔を見た後は優しい気持ちになれた。

あの人に会えない日は、ゆっくりと目を閉じる。

暗い闇の中で光る、あの人の笑顔を頭に浮かべた。

あの人はいつも笑みを絶やさない。

その笑みを見ると、ポッと、心に明かりがともった。

そしてその光は徐々に広がって、「前向きな私」を、作り出してくれる。

あの人が笑えば、私も笑える。

あの人の微笑みは、私の灯火。

あの人は今日も、あの笑顔で、私を癒してくれた。

「えがお」

「えがお」

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 青年向け
更新日
登録日
2013-04-16

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