囚われ

虚無感、脱力、倦怠感・・・・絶望。

貴方の中にもありませんか??

私の中にはそれらが渦巻いていて、小さな暗い空間から出ることができません。

怖いのです、外の世界がとてつもなく怖いのです。

漠然とした感覚なのは分かっていますただただ怖いのです。

人の評価、あの人の私への心象、向けられた微笑みの真意、全てが怖いのです。

そんな私の生活の一部を聞いて欲しい。

私が抱えている「秘密」を貴方に共有して欲しいのです。

まずは私について少しだけお話ししたいと思うのですが

私の事となると、私は何の才能もないごく平凡な人間だということしか言い様がないのです。

つまらない人間それが私の自己紹介です。

そんな私にも、人並みの悩みがある。

私には許せない人間が居ます、私に敵意を向けてくる人間全てが憎いそして怖いのですが

その中でも許せない人間が居ます。

A女史ここではそう名づけましょう。

私とA女史との付き合いはかれこれ何年になりましょうか・・・・。

もうそんなことがどうでもいい程長いこと近くにいて私に害をなしてくるのです。

時には笑顔を携え、時には怒りを持って私に近寄ってくるのです。

女史は言います。

「お前は我儘だ。」と「お前はずるい。」と「お前は弱い生き物だ。」「お前は面倒な人間だ」とそしてこうも言うのです

「お前は私に従うべきだ」「お前は私に許可を乞うべきだ。」と。

節々に私を洗脳し、私を下僕に扱うように接しようとしてくるのがありありと見えるのです。

私はそれが気に食わない。

私はそれが許せないのです。

私はA女史に言い返す術も力もないとずっとその言葉を頭の上から足の先まで受け

耐え忍んできたのです。

しかし私にも、ある時転機が訪れたのです。

ある夜を境に

私にも意志があり、私を認めてくれる人が居るのだと気がついた。

私でもA女史に勝てるかもしれないそう思いました。

嬉しかったとても嬉しくて震えたちました。

その震えは更に私に力を与えました。

私はその足で、女史のところへ向かう。

A女史は何の心配もない自分の世界が保たれたベットで眠っている。

彼女は私が苦しんでいる時もそこでのうのうと眠っていたのです。

そう思うと私の脳は沸騰するように燃え上がり。

そして身体は凍ったようにキンキンと冷えてゆくのです。

A女史は寝息を立てている。

私はそっと女史に近寄る。

女史の首元にそっと触れてみる。

ピクリと動く他に目覚める気配はない。

私は可哀想な生き物だ、私は自分に言い聞かせる。

私はこのA女史のせいで苦しんでいたのだ、また私は自分に言い聞かせる。

そしてちょっとずつちょっとずつ彼女の首元に触れた指に力を込める。

両の指に全体重をかけて。

彼女に跨り。

少しずつじわじわと。

A女史は苦しさで目を覚ましました。

私は手元を少しだけ緩める。

簡単に苦しみから開放されないように。

「お前に私の何が分かる。」「私の苦しみはこんなものじゃない。」

「私はお前が嫌いだ。」

「高慢さ、我儘さ、その高圧的な態度、優しさにかけた性格。」

「大嫌いだ・・・・。」

毒を吐き出しながら、女史に伝え続け言葉では伝わらないであろう気持ちは

指の力で想いを込めて伝えようと必死になりました。

女史からはこぽぉともかほぅとも取れない声が漏れていて

私の指を引っ掻いてもがいている。

私の話を聞いているんだろうか、私はそればかりが疑問でした。

「聞いているの?私は貴方が心底嫌いほんとうに本当に大嫌い!!」

私が叫んで数秒して彼女は息絶えました。

口もとからは醜く唾液を垂れ流し顎は半分外れかかりなんていうアホづらだろう。

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「起きなさい。」

また起こされてしまった。

と言ってもほとんど眠れているとはいえないのかもしれない。

ただ目を閉じていただけ。

瞳を開けるとA女史、私の母が私を起こすべくベットの脇に立っている。

私の悩みというのはこの母でありこの母を殺める妄想に取り憑かれていることなのです。

誰しもが持っているであろう不安怒り恐怖全てが私には現実ともつかない

妄想となって襲い掛かってくるのです。

いつ人を殺してしまうかわからない。

だから私は外が怖いのです。

私の瞳から脳に繋がる暗闇から外に出るのが怖いのです。

私の「秘密」の一部

貴方なら分かってくれるでしょうか??

分かっていただけないのなら貴方も敵なのかもしれない。

それでも、貴方が聞いてくれることで私は救われるのです。

「言葉にすることでそれが現実になるのだから。」

囚われ

囚われ

  • 小説
  • 掌編
  • サスペンス
  • ホラー
  • 青年向け
更新日
登録日
2013-04-15

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