脳内と現実の境界線

私の現実と妄想の繋がり・・・・・・・・・。

私は恋をしている。
それが、現実なのか妄想なのか私の本意なのかただ夢見がちなのかそれすら私にもわからない・・・・・・・・。
ひとつ言えることといえば私は恋が好きなのだ。恋することに囚われている。

私が現実を捨て布団の中で夢と妄想を波のように行き来する時間。
遠くから掛けられる声。
夢の中でのパートナー。
狐のような細い目をし黒髪から覗く素肌の白さが異様に目立つ「優男」が私に囁く。
真っ暗な空間の中で。
「また、夢を見ているのかい?」
「これは、現実ではないのね?」
「あぁ・・・・君にとってはどうなのだろう?」
「私のこの妄想と言う夢は私の感覚では現実に近しいものよ?」
「現実には起きていないのではないのかい?」
「現実に起きうる可能性のあるものに、私の本物の想いを込めているの。」

優男は口もとを一瞬嫌味に上げ笑う。
優男の癖である。
彼は素直に笑わない。
いや・・・笑えなくなっているのだろう、これは私のせいではない。

「君は実に面白いね。」
「褒めてくれているの?ありがとう。」

私は毎回彼の言葉にきちんと返事をしているけれど、途中で気がつくのだ。
妄想の邪魔をしないで欲しい。
何故かいつの間にか彼は私の妄想の一部となっている。
不思議なものだ。

「おっと、邪魔をしたね。」
「気がついた?」
「君の表情ですぐに分かるよ、僕は君の一部だからね。」
「なんだか少し・・・・その表現は・・・。」
「気持ちが悪いかな?」
「・・・・・・・。」
「それはね、きっと君が君自身を理解していないからそういう感情が起きるんじゃないだろうか?、と僕は思うんだよ。」
「難しいことを言うのね。」
「そうかい?」
「ええ。今の私にはまだ分からない。」
「まあいいさそのうち分かるだろう、妄想を続け給え。」
「ありがとう。」

そう言うと私の視界から溶けるように彼は消える。
そして黒い小さな(点)が大きく開いていく。
小さな部屋、薄暗い室内。
ここは私の求めたものが全て揃う場所。
そこには私の求めた背中がある。
ここは、私の妄想の世界。たったひとつだけの。

愛おしい背中。
私に背を向けた「彼」は少し猫背気味にPCの画面を凝視している。
私が近づくと、静かに横目で私を確認する。
会話なんてなくていい。
貴方の匂いを感じる、近づくと体温すら私の脳に運ばれてくる。
これが私の妄想とは思えぬほどに。
室内には机とPCと彼とベット。
現実ではなにか物足りないはずのこの部屋も私の妄想の中でなら充分なのだ。
「来るか?」
低く通った声が私を椅子の下に誘う。
やはり現実では起きうることのないような私の定位置。
彼の足元に擦り寄ると、ジーンズ越しに生暖かい太ももの感触を楽しむ。
そっと撫でられる頭。
「んっ。」
私はさらなる刺激を求めて、彼を上目遣いで見つめる。
もう一度私を覗きこむ。
彼はふんと鼻を鳴らし私を一瞥すると私の前髪を掴み上げる。
一連流れを堪能すると、半分現実にある私の身体も満足感を得る。
もっと、彼のサディスティックな行動に溺れていたい。
現実にある私も妄想に浸かる私もサディストが好きだ。
幸せはここにあるのだ。



「・・・・・・・・・・・おっと、邪魔をするようだがね・・・・。」


イイトコロナノニ・・・・・・・・。


優男の声が耳に届く。
「何?」
私の大事な居場所がまた小さい点と化していく。
私はため息をつきながら返事をする。
なぜ自分の妄想なのに、都合よく行かないものか。
優男が意思を持つように邪魔をするのか。
「君は、自分に自信がないようだがねそんな事はないのだよ。」
「そんな事を言いに来たの?」
「いや、良いのだけどね今言っておくべきかと思ったのだよ。」
「ただ、邪魔をしたいだけなんじゃない?」
少し不機嫌気味に私は優男を一瞥する。
しかし私は優男の気分屋なところが好きなのだ。
邪魔をされ茶々を入れられる事を少し楽しんでいる。
ああ・・・・・そうなのだ彼だって私の妄想なのだからあたり前のことだろう。
優男はそれを知ってか知らずか楽しげに笑う。
「君のもう一人の「彼」がまた奇行を起こすんじゃないのかと思ってね覗いていたのだよ。」
「それはまた変態的なことね。」
「君はそう言った変人が好きだったと認識しているがね。」
「それと、私の自信の無さに何の関係が?」
「いや、君がねそう言ったぷれいに溺れているのを見て思い出しただけさ。」
「・・・・・・・・・・・・・本当に・・・邪魔ね。」
「そうだね。」
優男もまた私を一瞥するように鼻にかけた笑いを向けてくる。
これも心地が良い。
「そろそろ良い?」
「おや、まだ妄想を続けるのかい?今日は粘るね。」
「そういう気分なのよ。」
私は何故自分で創りだしたこの生き物に妄想を管理されなくてはいけないのだろう。
そして報告してしまうのだろう。
まあいい、私はまた自分のもう一つの世界に意識を集中する。


「なんだ?呆けた顔をして。ボーっとするなよ?」
夢のなかで目をつぶる、目を開けると私は先程と同じ体制で彼の太ももに顎を乗せている。
妄想とは便利なものなのだ。
彼は私の頬をぺちりと叩き顎を指で持ち上げる。
「ちゃんと集中しておけ。」
なぜ・・・・私はこの自分の管理した妄想の中でまで命令束縛詮索そんなものを求めているのだろう。
自分自身でも問いかけるときはあるのだけれど、ただ単なる妄想にそこまで時間を割く必要もないだろう。
私自身そう解釈している。

続きに集中しよう・・・・・夢の続きに
そう思う内に脳が、精神が覚醒していくのを感じる。
瞳を開けたくない。


ねえ迎えに来て?もう一度邪魔をしに来て?優男に囁きかける。
もっと深く私を犯して今以上の刺激をもっと続きを彼に求める。


答えない、もう帰らなくてはならない。
視界が明るくなる・・・・・・。
目覚める・・・・現実に帰る。
私は瞳を開ける。
私が妄想をしていた時間はほんの数分で
私はいつもと変わらずラフな格好で
布団に横になっているだけ。
私は恋が好きだ現実でもそうだろう。
私はサディストが好きだ。
何も変わらない妄想と現実の境目なんてほんの僅かなものでしかない。
現実では優男に似た彼が寝ぼけた私を見て鼻で笑っている。
そう何も変わらないのだ。

脳内と現実の境界線

脳内と現実の境界線

  • 小説
  • 掌編
  • ホラー
  • 青年向け
更新日
登録日
2013-04-15

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