気付いてよ...バカ -3-

3です。
是非、読んで下さい(> <;)

<登場人物>
*岡野 夢空(おかの むく)
*井上 奏哉(いのうえ そうや)
*椎名 由仁(しいな ゆに)
*黄瀬 悠夜(きせ ゆうや)
* ?

...その他

雨→雷→停電→...

-3-

勝負は当然私の負け。
でも、1つ大事なことを決めた。
私は走る。
奏ちゃんのことが好きだから、
諦めずに走り続けることを決めた。

「はい。」
「うぉ!?」
「...なにその反応。」
「奏ちゃんがいけないでしょ!?
急に人の頬に...ジュース??」
「あげる。
久しぶりに全力疾走して疲れたでしょ??」
「ありがとう。」
「ん。」
「でも、私が奏ちゃんに負けたんだよ??
奢らなくていいの??」
「所持金150円の人に奢らせるほど
俺は鬼じゃないよ。」
「...」
「えっ、なに??」
「いや別に??いただきます。」
「どうぞ。」

奏ちゃんが買ってくれたジュース。
小さい頃から大好きだったメロンソーダ。

「覚えてたの??」
「なにが??」
「私がメロンソーダ好きだって。」
「あぁ。
一時期それしか飲んでなかったし。」
「そんなことないよ。」
「あるよ。」
「奏ちゃんの思い込みだよ。」
「そうかな??
...ん、そういえばさ。」
「なに??」
「小さい頃、よく俺の家に
メロンソーダ持ってきてたよね。」
「えっ??...あぁ、あったね。」
「ほぼ毎日。」
「家にメロンサイダーがあったら
絶対持って行ったもん。」
「まぁ、ありがたかったけど...なんで??」
「ソーダと奏哉の響きが似てたから。」
「あー、言われてみればそうかも。」
「だから持っててたの。」
「ふーん。で、もうやってくれないの??」
「えっ??」
「なんてね。
ただ、母さんが大きくなってから来ないから
いつでもいらっしゃいって。」
「うん...ありがとう。」
「母さん、夢空好きだからな。」
「私も、奏ちゃんママ好き。」
「言っとく。」

私が奏ちゃんのことが好きなんだと
自覚してから、
私は奏ちゃんの家に行かなくなった。
なんだか恥ずかしかったし、
自分が“幼なじみ”としか見られていない
事実を受け止めたくなかったんだ。

「...あっ、あのさ奏ちゃん。」
「ん??」
「...今日のノート、ほんとにありがとう。」
「あぁ、うん。」
「明日ちゃんと返すね??」
「いや、いらないから返さなくていいよ。」
「いらないの!?」
「いらないよ。」
「じゃあなんで??
そもそも、心理学の授業取ってないよね??
それなのにどうして、ノートまで取ってたの??」
「んー...授業に出たのは教授に頼まれてたから。」
「えっ??」
「俺、経済学の後
教授に呼ばれてたでしょ??」
「うん。」
「それ。
なんかよく分からないけど、
出てくれって言われたから出た。」
「なにそれ、不思議すぎない??」
「俺もそう思う。
でも、なんか調査みたいだよ。」
「調査??」
「うん。
先生の教え方とか、生徒の授業態度とか
来年に生かそうと思ってるんじゃない??」
「ふーん、大変だね。」
「まぁ、学生全員にやらせるよりは
一人に任せた方が早いからね。
許可は出てたみたいだし、
別にレポートとかも出さなくて良かったし
暇だったから協力した。」
「そっか。」
「ノートを取ってたのは...なんとなくかな。」
「なんとなくか...」
「うん。深い意味はないかも。
...なんで??」
「ううん...ちょっと気になっただけ。」
「そう。
ん、そろそろ帰ろう。今日、雨らしいから。」
「えっ...雨??」
「うん。結構強い雨みたいで、
夜中まで降り続けるらしいけど。」
「困ったな...
今日、家に誰もいないのに...」
「誰も??」
「うん。...奏ちゃん、雷鳴らないよね??」

私は雷が嫌い。
いや、雷のせいでなる停電...暗闇が嫌い。
小さい頃からで、
それは奏ちゃんと由仁だけが知っている。

「...」
「奏ちゃん??」
「...うん、大丈夫だよ。」

昔から私は、
雨が降る日は必ず奏ちゃんに聞く。
“雷鳴らないよね??”
奏ちゃんの予想は外れたことないから。

「そっか、良かった。」
「...帰ろ??」
「うん。」

奏ちゃんの予想は外れたことない
...今日までは。


家に帰ると、やっぱり誰もいなくて
しばらくして雨が降りはじめた。
私は先にお風呂に入った。
そのあと夕飯も食べて、部屋に戻った。
雨は一向に止む気配がなかった。

「...大丈夫だよね。
奏ちゃん、大丈夫って言ったんだから...」

でも、その数時間後に雷は鳴りはじめた。
奏ちゃんは気象予報士ではない。
だから予想が外れても、おかしくない。
でも、私は初めてのことに驚いた。

雷は鳴ってもいい...
停電して暗闇にさえならなければいい。
そう思ってたのに...
私の願いは叶わなくて、
部屋の電気は突然消えた。

「えっ!?」

私は慌てながらも
ポケットに入れてたケータイを取り出し、
ライトをつけた。
これで完璧な暗闇ではなくなったけど
やっぱり怖いものは怖い。

「...奏ちゃん...」

部屋の外を見ても明かりはない。
ここ一帯で停電してるんだ...

私は奏ちゃんに電話を掛けようと思い、
ケータイを手に取った。
昔から変わらない奏ちゃんの番号。
アドレス帳や履歴から探すより
自分で打った方が早い。
震える手でゆっくりボタンを押していく。
最後の数字を入力しようとした時、
大きな音を響かせ、雷が落ちた。

「...っ!!」

少しパニック状態になりながらも、
私は発信ボタンを押した。

♪~♪~♪
「...奏ちゃん...出て。」

5・6回コールが鳴り続けて、
やっと電話が繋がった。

「はい...もしもし??」
「奏ちゃん...!!」
「えっ??」
「雷鳴ってる...それで停電した...
今日、雷鳴らないって言ったのに
奏ちゃんの嘘つき...」

完全な八つ当たりだ。
奏ちゃんは何も悪くないのだから。
でも今の私には、そんなことを考えられる
余裕はなかった。

「...」
「お願い、黙りこまないで...
なにか喋ってて...怖い。」
「...喋るのはいいんだけど、
でも俺、君が言ってる“奏ちゃん”じゃないよ??」
「...えっ??」
「たぶん、番号間違えてないかな??」
「間違い...」
「俺の番号、0X0-XXXX-XXXXだけど、
これに掛けてない?? 」
「0X0-XXXX-XXXX...あっ。」

最後の番号だけ違う...
きっと、あの時だ...
雷が落ちて、少しパニックになってたから
最後の数字を間違えちゃったんだ。

「...もしもし??」
「あっ、えっと...すいません、
私が番号間違えて掛けちゃったみたいです。」
「そっか。
まぁ、よくあることだよね。」
「...すいません。」
「アハハ。別に気にしてないよ。
雷、怖いの??」
「雷と言うか...暗いところが怖いんです。」
「あぁ、停電してるんだっけ??
俺のところもしてるよ。」
「そうなんですか??」
「うん。割りと近所に住んでたりしてね。」
「...そうかもしれないですね。」

すぐにでも切った方がいいに決まってる。
でも私は、それが出来なかった。

「俺のところ、雨がこんなに降ったの久しぶり。」
「私のところもです。」
「全国的にも、最近晴れ続いてたからね。」
「なんか急に降られると、寒く感じますね。」
「あぁ、分かる分かる。
俺、パーカー2枚来てるもん。」
「そんなに寒いですか??」
「そうでもないけど、なんとなくかな。」
「なんとなくって。」

この人、奏ちゃんに少し似てる。

「今、笑ったでしょ??」
「はい、すいません。」
「そう言いつつ、今も笑ってる。」
「もう大丈夫です。」
「本当に??」
「はい。」
「笑うなんて失礼な子だ。
これでも一応、俺は教員なんだけど。」
「えっ、そうなんですか??」
「一応ね。
明後日から新しい学校に入る。」
「5月にですか??」
「まぁ...そこはさ、大人の事情っていうことで。」
「あっ、そうですか。」
「俺の予想だと君は学生だと思うけど??」
「あたりです。」
「やっぱり。」
「なんで分かったんですか??」
「声かな。」
「声...」
「声が少し幼かったから。」
「よく言われます。
でも、小学生じゃないですよ??」

私は冗談で言ったのに、
向こうはなんだか、笑いを堪えてるみたいだった。
思いっきり聞こえてるんですがね。

「あー。君、おもしろいね。」
「普通だと思いますよ??」
「アハハ。」
「...??」
「あぁ、よく笑った。」
「なんでですか。」
「おもしろかった。...ごめん、怒った??」
「いえ、大丈夫です。」
「ありがとう。...あっ。」
「どうかしたんですか??」
「雨。止んできてるよ。」
「えっ??」
「雨音小さくなってきてる。」
君のところは、まだ雨音聞こえる??」
「少し...でも、もう止みそうです。」
「大雨が降ったから、明日は晴れるよ。」
「だと良いんですけど。」
「大丈夫。俺、晴れ男だから。」
「フフフ、だったら
これから毎日晴れますね。」
「そうだね。」
「...ありがとうございました。」
「ん??」
「おかげで怖くなかったです。」
「もう大丈夫そう??」
「...はい。」

まだ電気は点かないままだけど、
見ず知らずの人に
これ以上迷惑を掛けるわけにはいかない。

「そっか。」
「本当にありがとうございました。」
「じゃあ、“奏ちゃん”と仲良くね。」
「...はい。」
「一瞬、間があったけど??」
「大丈夫ですよ。」
「そう??ならいいけど。
じゃあ...またねって言うのは変だけど。」
「...それしかないですよね??」
「さよならは素っ気ないからね。」
「そうですね。」
「じゃあ、またね。」
「はい、また。」

そう言って、電話を切った。
今思うと奏ちゃんの声とは全然違った。
奏ちゃんの声よりずっと高くて、
ゆっくりと話す人だった。

そんなことを考えてると、
家のインターホンが3回連続で鳴った。
この鳴らし方は...

「奏ちゃん??」

私はケータイの明かりを頼りに下まで降りて
ゆっくり扉を開けた。
そこにいたのはやっぱり、奏ちゃんだった。
傘をさしてこなかったのか少し濡れている。

「夢空、大丈夫だった!?」
「奏ちゃん...奏ちゃんこそ、大丈夫??
濡れちゃってるよ??
今タオル取ってくるから待っててね。」
「いや、俺は平気。
それより...ごめん。
本当はもっと早く来るつもりだったけど、
兄貴の子供が泣き出しちゃって、
ちょうど家に俺しかいなくてって...
言い訳だよな。ごめん。」
「ごめんって...なんで謝るの??」
「...本当は分かってたんだ、雷が鳴ること。」
「えっ??」
「夢空の家に誰もいないって言ってたから...
ごめん、俺なりに気遣ったつもりだったんだけど
裏目に出た。...ごめん。」
「...奏ちゃん。」
「ん??」
「ありがとう。」
「えっ??」
「私のこと、心配してくれたんでしょ??」
「当たり前じゃん。」
「それだけで十分だよ。」

彼女でもない、
ただの“幼なじみ”の私を心配して
わざわざ家に来てくれた。
今はそれだけで...十分だよ。

「...今日の夢空、なんか変じゃない??」
「そんなことないよ。」
「ふーん。」
「...奏ちゃん、もう帰っちゃう??」
「帰ってほしい??」
「やだ。」
「電気が点くようになるまでいるよ。」
「ありがとう。
寒いでしょ??中入って??」
「お邪魔しまーす。」
「どーぞ。」

昔から奏ちゃんは“入って”と言われたら
素直に入る。
...変わってないんだ。

「暗いから気を付けてね??」
「んー。」
「お茶いる??」
「暗いからいいよ。危ないじゃん。」
雨止むまでだから
どうぞ、おかまいなく。」
「そっか。
キッチン寒いから、私の部屋にどうぞ。」

階段を上がる奏ちゃんは
ふと足を止めた。
私と奏ちゃんは、階段1段分の距離。

「...夢空さ。」
「ん??」
「...なに考えてんの??」
「えっ??」

奏ちゃんは、昔と変わってない。
だから私は昔と同じように
部屋でいいかなって。
さっきまでエアコン使ってたから、
その方が快適温度だと思った。
...何か変なこと言ったかな??

「...俺、一応男なんだけど。」

男??
まぁ、確かに奏ちゃんは男だけど。

「知ってるけど??」
「...雨の日に家に一人でさ、そんな時に
そんな簡単に男を部屋にあげていいの??」
「えっ...」
「もう大学生なんだから、それくらいは分かってよ...」

...なんで、なんで奏ちゃんは
急にそんな意味深なことを言うのだろう??
私は意識しないように
いつも通りに接してたのに。

「なんで...急にそんなこと言うの??」

私、期待しちゃうよ??

「なんでって、俺は心配してるんだよ。
...幼なじみだから。」

あぁ...期待して、バカみたい...

「...あぁ、そっか。」
「もっと危機感持たないと、危ないよ。」
「...うん、そうだね。」

やばい...涙出そう。

「自分の部屋に招くとか、
それは俺じゃなくて彼氏とかにしなよ。」
「...うん...そう、だね。」

耐えられなかった。
やっぱり私と奏ちゃんは、ただの幼なじみなんだって。
奏ちゃんは私に恋愛感情がないんだって。
...そう痛感させられた。

「...夢空??もしかして泣いてる??」

暗闇だから、バレないと思ったのに。
見にくいけど、顔だけは見られたくなくて
私はしゃがみ込んだ。

「あっ、うん...
やっぱり、怖いかも...」
「大丈夫??」
「ん...平気。」
「階段降りる??」
「大丈夫。...このままでいい。」

大丈夫なんかじゃない...このままなんて嫌だよ。

奏ちゃんもしゃがみ込んだ気配がして、
背中に何かが触れた。
あぁ...背中をさすってくれてるんだ。

「...大丈夫、俺はここにいるから。」
「うん...ありがとう。」

でもそれは、幼なじみだからだよね??
...いつかこの手は離れていって、
他の人の温もりになってしまうよね??
そんなことを思うと、涙が止まらなかった。

「夢空??」
「奏ちゃん...」
「ん??」
「怖い...1人にしないで...」
「しないよ。」

奏ちゃんは少し躊躇いながら、
昔みたいに私をそっと抱きしめた。

「...奏ちゃん??」
「1人にしないよ。...大丈夫。」

私は奏ちゃんの温もりを感じていた。
それは幼なじみと言う甘えだったけど、
奏ちゃんの温もりが嬉しかった。

数分して、電気が点いた。
「あっ、電気...」
「良かった、戻ったね。」
「...」
「...」

お互い顔を見合わせると、思ったより近い。
抱き合ってたから当たり前なんだけど、
やっぱり照れる...

「...」
「落ち着いた??」
「あっ...うん。...ありがとう。」
「いーえ。」

奏ちゃんはゆっくり離れてた。

「...」
「...俺、帰るよ。」
「うん...何も出来なくてごめんね??」
「平気。
風邪引かないようにな、おやすみ。」
「...おやすみ。」

パタンと扉が閉まる。
...態度も変わらなかった奏ちゃん。
私と抱き合っても、何も思わなかったんだ。
私はまた涙を堪え、部屋に戻った。
だから私は...

「...なんなんだよ...この動悸...」

奏ちゃんが私の家の前で
そう言ってたことなんて...知らなかった。

気付いてよ...バカ -3-

更新が遅くなりました...

これ、読んでくれてる人は
果たしているのかな??

私なりに頑張っていきます!!
温かく見守って下さい!!!!!

気付いてよ...バカ -3-

  • 小説
  • 短編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-04-15

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著作権法内での利用のみを許可します。

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