6月26日

近頃、不眠症に悩まされている。寝ようと思うと怖くなってしまうのだ。
寝ると無意識の状態に陥る。無意識のうちに自分がなにをしているのか。
もしかしたらずっと無意識のままで、次の日には目を開けられず、
そのまま死んでしまうのではないか、考えれば考えるほど恐ろしさが増していく。
まるで底の無い沼。寝よう寝ようと思えば思うほど考えてしまう。
僕は死ぬのが怖い。死にたくない。別に僕は友達もそんなにいないし、
妻もいなければ彼女もいない。この世がすごく楽しいわけでもない。
けれども死にたくない。生きている以上死にたくない。
何故かは僕にもわからない。きっと本能がそうさせているのだろう。

今日も眠れなさそうだ。

6月27日

あれこれ考えるうちにわかった。寝るのが怖いのだから
不眠症に悩まされる必要はないのだ。寝たくはない。
だからこれはよいことなのだ。しかし寝ないというのは疲れる。
このままでは眠って死ぬ前に疲労で死んでしまうだろう。
生き物がすべて死を恐れるのなら僕はこの世に生まれたくなかったかもしれない。
そうすれば、死の恐怖から逃れられる。
しかし、それは不可能だ。

ああ、僕はもうじき死ぬのだ。

6月29日

僕はトラックに轢かれた。
寝ていないために頭が働かなかったのだ。
幸い、街中だったために僕はすぐに病院へ運ばれた。
しかし僕はもう、道端に捨てたられたゴミのようにボロボロだった。
僕は死ぬんだ。嫌だ。あああ。恐怖。死にたくない。死にたくはない。

ではこの日記を書いていたのは誰だったのだろう。
僕はなんだろう。

  • 小説
  • 掌編
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-07-02

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