魔法女王と魔女狩り少女
プロローグ
何もない。ここには何もない。服も食べ物も薬も。この先には暗闇しか見えない。
私は、ゴミ山と呼ばれているゴミが積み重なっているところでボーッと立っていた。
私は物心ついた時からゴミを拾い売ることに精一杯頑張ってきた。生きるために精一杯頑張ってきた。いつか救われる日が来るのだと思って。しかし、もう無理ということが今更だけど分かった。
私にはまだ1歳しか経っていない弟がいた。5人兄弟の末っ子だ。太陽より輝いていた弟の笑顔は私たち家族にとって元気の源であった。しかし、ある日その笑顔は、突然曇り始めた。晴れることなく、3日後に弟は死んだ。病気だった。病院に通わせることも薬を与えることもできなかった。
涙は出なかった。涙が出るほどの力もなかった。でも、心の中は涙で溢れていた。
こんな貧乏の家庭に生まれても、家族を憎むということはしなかった。家族は好きだ。だから、一生懸命働いた。働いて家族を幸せにしたかった。でも、できなかった。1人死なせてしまった。
もうダメだ。もう未来はないんだ。ゴミを拾っても拾っても僅かなお金しか貰えない。家族全員食っていけるようなお金なんてないんだ。死にたいと何回も思ったけれど、生きたいっていう思いが邪魔をする。もうどうすればいいの?
そう考えていた時だ。白い影が私のところに迫ってきた。よく見ると、それは人間だった。今まで見たことない真っ白な肌に、さらっとした青くて長い髪。その髪をリボンで2つに纏めている。身長は私より少し高いくらいで、同じ年齢のように見える。しかし、どう見ても私とは違い裕福な家庭に生まれてきただろうと思わせる容姿だった。なぜこんな少女がゴミ山と呼ばれるところにいるのだろう。そう疑問に思っていたら、さっきまで無表情だった少女が私に向かってにっこりと笑顔を見せてきたのだ。そして、口を開いた。
「君、裕福になりたいんでしょう?なれる方法を教えてあげる。あ、そうそう、まず自己紹介しなきゃね。私の名前はタレット…」。
タレットという名前の彼女に会った時から、私の人生が変わった。私たちは裕福になったのだ。
いや、裕福になったというより私が裕福にさせたのだ。
魔法というもので…。
そう、私は魔法使い…。
これから戦いが始まる。
魔法女王と魔女狩り少女