おとぎばなし

むかしむかしのおはなしです。
こころがつよい、勇者のおはなしです。
あるところに、ひとりの青年がいました。
その青年は体があまりつよくないのですが、それでも日々を幸せに生きていました
そして、青年は恋をします。
青年は、意中の女性に話しかけては、笑い、楽しみ過ごしてきました。
しかし、そんな日々は突然終わります。
闇が世界をおおったのです。
世界中のひとが恐怖にふるえます。
そして、闇の奥から魔王がでてきていいました。
「コノセカイヲ、ホロボス」
青年は、空に浮かぶ魔王に声の限り叫びました。
「なぜだ! なぜこの世界を滅ぼす!」
青年が今まで出したほどのない大声です。
おかげで青年はふらふらになってしまい、立っているのもやっとになりました。
「リユウナドナイ。シイテイウナラバ、ヒマツブシダ」
その言葉は青年のこころにとどめをさすには十分すぎました。
青年のこころは傷つき、ついには倒れてしまいました。
青年は、夢を見ました。
それは、強く願えば世界を救う力を手に入れることができる、という夢でした。
しかし、その代償は――。
青年は目を覚ましました。
顔の上には、青年の恋焦がれた女性の顔がありました。
彼女は不安でおしつぶされそうな顔をしています。
その顔を見た青年は、ひとり覚悟を決め、自分の家をとびだしました。
そして、青年が恋焦がれている女性とよくきた、思い出の丘で強く願いました。
セカイヲ、カノジョヲスクイタイ。
すると、天が明るく光り、白銀の剣が地面にささりました。
彼はそれを手に取り、魔王を打ち倒すことを決めました。
次から次へと、敵をなぎ倒して先へ進む勇者。
今までの体の弱さが嘘のように軽やかな動きです。
いよいよ敵も勇者におそれをなして、勇者を避けるようになりました。
そうなると、魔王が使えない部下を押しのけて先頭にでてきます。
そして、魔王は言いました。
「キサマ、ドノヨウニシテソノチカラヲ」
勇者は言いました。
「願った! 私はこの世界を、彼女を救いたいと! ただ、それだけだ!」
勇者は白銀の剣を振るいに振るって、魔王と戦いました。
それは、長い死闘でした。
国を防衛していた軍隊と相手の魔王の手先も、ふたりの戦いに見とれました。
そして、長い戦いの末、魔王は打ち破れました。
世界中がひとびとの歓声につつまれるなか、勇者はひとりどこかへ行きました。
青年は、丘に来ていました。
彼が恋焦がれる女性との思い出深き丘に。
青年は丘からの景色を眺めます。
青年が景色に見とれていると、後ろから女性が歩いてきました。
その女性は、青年を抱きしめると、耳元で何かをいいました。
すると、青年は涙を浮かべました。
そのまま、青年は女性に抱きしめられたまま、目を閉じてしまいました。

むかしむかしの、おはなしです。

おとぎばなし

おとぎばなし

むかしむかしの、こころつよき勇者のおはなしです。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 恋愛
  • 冒険
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-04-11

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